時をかける206号室
企画演劇集団ボクラ団義
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2015/08/19 (水) ~ 2015/08/30 (日)公演終了
満足度★★★★★
物語の力を感じた
私にとって初めてのボクラ団義本公演でした。7月上演の壊れかけの恋唄で久保田作品初体験で、その一度だけでは評価しかねたので今回の舞台で久保田作品が自分に合うかどうか確認の為に観劇しました。結果、次の本公演も絶対観に行きます。素晴らしかった。あの複雑な物語を生み出し表現し完成させる久保田さん演者の皆さんスタッフそしてあの世界観に寄り添うような音楽……ああこの舞台観てよかった。舞台からのエネルギーが半端じゃない。観劇から一週間経つ今でも物語の余韻を引き摺っています。複雑なストーリーで観る方は上演中も上演後も頭を使う。単純明快で気軽に楽しめるような作品ではないけれど伏線を追っていくと散らばったピースが次々にはまっていくさまは鳥肌が立つ。この感覚は久しぶり。東京に住んでいれば毎日でも観に行くのに。
虹とマーブル
森崎事務所M&Oplays
世田谷パブリックシアター(東京都)
2015/08/22 (土) ~ 2015/09/06 (日)公演終了
結菜ちゃん初舞台おめでとう
休憩2回挟み、2時間40分だったけれどあっという間に終わってたな。しかし、チケット発売開始と同時に予約入れたのに三階の最後列って…。
メラニズム・サラマンダー
May
シアターシャイン(東京都)
2015/08/28 (金) ~ 2015/08/30 (日)公演終了
満足度★★★★★
今、日本の演劇界に必要なのはこのような作品だ。
先ず、melanismという単語の意味が即座に分かる人は、多くあるまい。ヒトの場合は、メラニンが異常に沈着して皮膚や髪の毛が黒ずむ症状を呈する症例を指すが、動物の場合は、黒色素過多症を意味する。
またサラマンダーは、サンショウウオも意味するが、大抵の人は、火の中に住んで焼けないとされた伝説の蜥蜴を思い出すであろう。だが、この単語には他に火・熱に耐えるものの意味もあり、転じて砲火の下をくぐる軍人の意味がある。何れにせよ、この言葉は、1953年7月以来、一応休戦はしているものの、小競り合いの絶えない朝鮮族の現代史を在日として生きる作家によって書かれた。(追記2015.9.1)
ネタバレBOX
舞台は、同一民族の中で夢や血や歴史やイデオロギーやパースペクティブやなんだかやが、煮詰まって一緒に来たハズの仲間うちにさえ、なんでこんな奴と一緒に居るんだ? 足が痛くて歩きにくいのも、こんなに疲れたのに止まれないのも、みんなこいつのせいじゃないのか? などと自問するように追い詰められてしまった彼ら自身のうちに蠢き、ますます肥大してくる黒い炎を上げる火蜥蜴、サラマンダーを内に抱えて生きる孤児に等しい境遇の少年を中心に進む。現在、少年は、黒色素過多症。即ち限りない歴史の負の部分を背負っている。呆けたような、現在の少年の位置に投げ込まれたのは、過去の彼自身である。幸いなことに彼の炎は、その頃、紅蓮であった。物語は、紅の炎と黒の炎との争闘とも取れるストリームと少年を囲む大人たちの、この状況下での日々の変遷を同時並行的に進めてゆく。この作品構造と訴える内容が、被差別者として差別を日常的に受け、時に逆差別と言われ兼ねない反応を示す他、有効な対応を持たない差別される側の暴発に、差別する側に居るハズの敏感な人々が傷つく、ということを繰り返さざるを得ないような苦く苦しく重い、が充実しているという幻想にすがりたい鑢のような人生を、狂わず、自殺もせず、考えながら生き抜いてきた。その、実感を劇化、シナリオ化して見せた、文化を信じる態度の作品である。
By the way,戦争をする為の法は、何も安保法制だけではない! ということをどれだけの日本人が意識できているのか? 甚だ心もとない。実際、共謀罪、秘密保護法を始めとして教育基本法改悪、国旗国歌掲揚法、住民基本台帳法改悪、通信傍受法、周辺事態法、情報公開法の死文化等々、ちょっと思い浮かべただけでもここ十数年の間に国民を戦争へ追いやるために監視・公乃至国畜化するための法が次々と成立してきた。
今作は、その涯に来る世界と世界観を表したような作品である。作家は、在日のマイノリティー、国籍は北である。被差別・差別を苦しみながら生き抜いてきた人間の孤独・孤立と論理を屹立させる他なかった生を結実して深く、尖鋭である。
更に今作は、今までのMay作品と比較しても異色である。今までこの劇団の作品には日本の歌謡曲が多用されてきた。その用い方が頗る上手で、こんな捉え方、聞き方があったのか! とハッとさせられる新鮮でヴィヴィッドな聞き方・捉え方がなされてきたのだが、今作では、暴動に付随する様々な音、発砲音だの砲撃音だの、群衆のざわめきだのが、ずっと流れてくるだけである。
荒れ果て、戦いのみが続き、人々は難民化してあてどもなく彷徨う中、他人を殺したくもなければ殺されたくもない、と逃げ延びた7人が、落ち延びた廃屋が舞台である。だが、ここには自らをアンドロイドだと主張する女性(型アンドロイド?)が居た。彼女は、極めて鋭い論理で武装しており、グループ内で唯一元戦闘員であった男と対立する。そんな中で仲間が死ぬ。死の真相はどこにあるのか? を巡って疑心暗鬼が募り、ひと時の安寧を齎してくれたこの場所から出てゆこうとする者も現れる。無論、外に出れば命の保証はない。自らが生き残る為には、他人を殺さなければならないかも知れない。そんな状況を背負い続けながら、ヒトはどのように狂わずにいられるだろうか? 狂わなかった者は、どのような生き方ができるだろうか? 血を分けた者さえ、信じられない状況で、人は果たして人足り得るのか? という所迄問い詰めた作品として読むことは、今作に限ってはたやすい。それほど、深く、観た己を自問に追い込む作品である。作・演出の金 哲義の才能を称揚すると共に、在日日本人である木場女史の、聡明と豊かで暖かで信じるものを的確に選び出す優れた能力に対し、迷いの多い中、本当に労苦をねぎらいたいと思う。また、演技レベルでは、拳に傷を負いながら、そんなことを微塵も感じさせず、いい演技を貫いたアンドロイド役も褒めたい。無論、この劇団は他の役者の生き方のレベルも高い。
時をかける206号室
企画演劇集団ボクラ団義
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2015/08/19 (水) ~ 2015/08/30 (日)公演終了
満足度★★★★★
わかっても楽しめる!
1度目は物語を把握する事で必死で、物語を理解した上で、もう1度観たいと2度目の観劇でした。
物語を知ってるという心の余裕を持つ事で、伏線を探しながら、演者さんの動きや間の違いを味わう事で出来たと思います。
また、知っているからそこの発見や新たな視点もあり、2度目でもとても見応えがありました。
参加した日はイベント日だったため、ローズインメニーカラーズさんとのトークショーが開催され、アルファさんは喉の治癒のため歌えないとおっしゃっていたのに、生歌でシーン再現をしてくださり、感激しました。幸せな時間でした。
そして、2度観てもまだ観たいと何度でも観たいと感じる舞台でした。
【↓時間軸ネタバレ↓】
ネタバレBOX
事実の時間軸と疑問点を頭の整理と理解の手助けになれば良いなと書いていきたいと思います。
あくまで、私の見解ですので、違う!こうだ!ってとこがあったら教えて貰えると嬉しいです。
(数字)はざっくり割り出した主人公の年齢です。
みかと結婚する
京子と出会う(5ヶ月以上前)
京子が太った元彼と別れる(4ヶ月前)
みかの元から姿を消す(3ヶ月前)
みか妊娠
京子妊娠発覚
トトロ20回見る
【201号室の話】(24)
3人で暮らさない、スペーシアで栃木行こうと提案
ゆうくん(しゅうくん)離婚届けを置いて姿を消す
京子出産子供の名前はカンタ
みか出産子供の名前は幸子
みかが京子の赤ちゃん(カンタ)を誘拐
↓?
主人公ゴミ収集の作業員になる
主人公京子の元へ戻る
京子と結婚
【202号室の話】(25)
栃木からスペーシアで赤ちゃん誘拐(かずき)
京子殺害、逮捕
刑期(殺人罪で10年ほど?)
出版 事実しか書けない小説家誕生
麻薬、ひったくり
編集の篠田と結婚
中年女性ひき逃げ(りょうたの母死亡)
【203号室の話】(35)
編集さん殺害
獄中にて、自分が関わってきたその後そうであって欲しい人間達の物語を執筆。
書きかけで出版
↓?
解離性同一性障害発病
部屋探しで娘に出会い、話を聞く。(50)
【204号室の話】を書き上げる。
202号室の話で栃木から誘拐されたが2日程で元の両親に戻されたかずきと203号室の話でひき逃げされた中年女性の息子りょうたが漫才コンビを組み、かずきは201号室の話のみかの娘である幸子の恋人となり、みかが誘拐したカンタは幸子の兄として1つの部屋で暮らしていた。
【205号室の話】
血の繋がらない歪な家族
みかの娘幸子とひき逃げした中年女性の息子りょうた、元編集の妻と主人公がマンションゲームをする部屋。
物語がなぜ2階かを表すために存在?
204号室の話を書き上げた事で、不要となる。
【206号室の話】
篠田との娘による創作。
破り捨てる。
父と娘でこれから書き上げる物語。
物語の舞台はみかと結婚し暮らしていた106号室
朝劇 下北沢「下北LOVER」
朝劇
VIZZ (ヴィズ) (東京都世田谷区北沢2-23-12 Mビル1F)(東京都)
2015/01/18 (日) ~ 2015/09/27 (日)公演終了
満足度★★★★★
12公演目
朝劇は、これで、12公演目の観劇ですが、
いつも新鮮で、驚きがあり、楽しさがあります。
観に来ている人たちの事を考えていただいているという空気が、ひしひしと感じられます。
ゲストも素敵です。
ふじきみつ彦・山内ケンジ 傑作短篇集
E-Pin 企画
小劇場B1(東京都)
2015/08/25 (火) ~ 2015/08/30 (日)公演終了
満足度★★★★
ある意味衝撃的だった。
ふじきさん・山内さんの本も舞台も初見だったのですが、エロティシズム&ブラックユーモア、というか、オ・ト・ナな空間だったなーと。
そう、田島ゆみかの生脚は要チェック、との事だったのでしっかりチェックしたよ。ご本人は謙遜してたけど笑
あ、明日はトンカツ食べようっと(^^;;
おかえり
86会PRODUCE
ウエストエンドスタジオ(東京都)
2015/08/27 (木) ~ 2015/08/30 (日)公演終了
満足度★★★★★
おもしろかった
夫婦の場面がどう繋がってくるかと不思議でしたが、最後分かって『なるほど』と納得。
のりたまくんとたかしくんのやりとりはおもしろかったし、最後は本当に良かったなと思いました。
でも増田さんの役が謎!
でも『謎のまま』っていうのがいちばんいいような気がします。
時をかける206号室
企画演劇集団ボクラ団義
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2015/08/19 (水) ~ 2015/08/30 (日)公演終了
満足度★★★★★
迫力の演技
加藤凛太郎さんが出演されるので観劇しました。
複雑な展開でしたが、一呼吸おくタイミングや、語り手がフォローするようなところもあり、話に追いつけないということはありませんでした。迫力の演技に、舞台を広く感じます。
客席のすべての列に段差があり、とても見やすいですが、後方になるほど舞台を見下ろすかたちになると思います。5列目でもわりと高さを感じました。
ネタバレBOX
漫才師のおふたりに限らずですが、主演のおふたり以外の出番は、基本的には各部屋の場面だけなので、それほど多くはありません。しかし、シリアスな中でのお笑い要素はかなりの存在感です。目を見開いて静止している役者さんの表情にも注目してほしいです。
時をかける206号室
企画演劇集団ボクラ団義
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2015/08/19 (水) ~ 2015/08/30 (日)公演終了
満足度★★★★★
魅了されてます。
好きな役者さんが観たくて観に来た舞台。3公演だけ観る予定が、もう1日…もう1日…と日にちが増えて今日のマチソワで10公演目になってましたよ。それ程に魅了される舞台です。
時をかける206号室
企画演劇集団ボクラ団義
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2015/08/19 (水) ~ 2015/08/30 (日)公演終了
満足度★★★★
超会話劇!!!
躍動感のある会話劇です!舞台セットの衝撃が…(笑)もうネタバレされてるので言いますが、ぐるぐる回転するんです!ぐるぐる回転しだした時の世界に引き込まれていく感覚…毎回鳥肌がたちます。あのセットじゃないとこの話は成立しないし、お客に伝わらないなー。と!!!(このセットでも伝わりにくいシーンあるのに)roseさんの曲は本当に素敵です!素敵しか言えないのが悲しいですけど、本当に!素敵なんです!最高なんです!お話は、はっきりいって頭の中はごちゃごちゃします。でも、訴えかけてくるものは明確なので何をテーマにしているのか、何を伝えたいのか、しっかり心に届きました。一度はみてみるべき。はじめから引き込まれること間違いなしです。もうあと3回しかないけど、今ならまだキャンセル待ちではいれます。みなさん、みてください。
贋作写楽
劇団そとばこまち
近鉄アート館(大阪府)
2015/08/28 (金) ~ 2015/08/30 (日)公演終了
満足度★★★★★
まさに絢爛豪華
初めの劇団そとばこまちさんを堪能しました。まさに絢爛豪華の一言です。「シナリオ」も「パフォーマンス」も最高です。当日券を当てにしていきましたが、危ないところでした。キャンセル枠でぎりぎりの観劇でした。予約必須です。
サンプリングデイ
壱劇屋
in→dependent theatre 2nd(大阪府)
2015/08/21 (金) ~ 2015/08/24 (月)公演終了
満足度★★★★
パフォーマンス最高
壱劇屋さんのパフォーマンスは最高です。これだけも見る価値はあります。ただ、元々の脚本のテーマが何だったのか、共感が得られるものだったのか、伝わりにくいものでした。
浅草紅團・改
劇団ドガドガプラス
浅草東洋館(浅草フランス座演芸場)(東京都)
2015/08/21 (金) ~ 2015/08/31 (月)公演終了
満足度★★★★
目指せ!浅草公会堂!
「改」とあるけど,正直どこがどう違ったのかわからなかった^^;でも,関東大震災後の浅草の怪しい雰囲気(もちろん知っているわけはないのだが)は十分伝わってきた。もっと,ケバくても良いんじゃないかしらとは思ってしまうけど。あと,アングラ色が強くなったのかなぁ。これ以上アングラ色が強くなってしまうとついていけなくなるよなぁ,自分的には。この劇団が終演の挨拶でいつもやる,あのコール。頑張っていてほしい。応援します。
嘘でしょ。
艶∞ポリス
OFF OFFシアター(東京都)
2015/08/26 (水) ~ 2015/08/30 (日)公演終了
満足度★★★★★
笑った
女性同士の言葉のかけあい、あるある!という感じ満載で、
とてもおもしろく、笑えました。
両隣の男性と、笑うポイントが微妙にずれているのも
私的には、面白かったです。
「巡光ーめぐるひかりー」
エビス駅前バープロデュース
エビス駅前バー(東京都)
2015/08/28 (金) ~ 2015/09/09 (水)公演終了
満足度★★★★★
密度の濃い60分
最初は嫌悪な雰囲気から
じょじょになぜか和らいで協力していく。
まさに、ひかりが巡ってきているんだな。と感じた。
広瀬さん演出で密度の濃い60分になってます。
また観に行きます。
時をかける206号室
企画演劇集団ボクラ団義
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2015/08/19 (水) ~ 2015/08/30 (日)公演終了
満足度★★★★
脳負担重い
舞台装置が面白いというか、役者さんたちの対応力が良かったというべきか。
ネタバレBOX
アパートの各部屋で起きた出来事がほとんど自分のことだったとは。
解離性同一性障害、所謂多重人格で、顔かたちや性格が違う各部屋の住人を一人と考えるのは至難の業で、私の脳には負担が重いです。誘拐され、誘拐しについても、役者も変わるし誰が誰やら。
作家の娘さんが丁寧に説明してくれましたが、種明かしに時間を掛けてくれましたが、難解でした。
舞台上には回転する舞台が三つ、中央の円状の舞台にはさらに二個の回転する舞台があって、役者さんたちが移動するときに回転するアパートの壁の部分とかによくぶつからないものだと感心しました。
美しい日々
TEAM 6g
萬劇場(東京都)
2015/08/26 (水) ~ 2015/08/30 (日)公演終了
満足度★★★★
スッキリした方が好み
とても丁寧な万人受けする作り。
自分にはS.Eが邪魔だったかな。十分物語に入り込めていたので、却って興を醒ます結果に。
いい話なので、シンプルに贅肉を削いだ方が個人的に満足度は高い。
KUNIO12『TATAMI』
KUNIO
KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)
2015/08/22 (土) ~ 2015/08/30 (日)公演終了
満足度★★★★★
観客の、それぞれの状況によって、異なった深読みもできるのではないか
特に、この内容を身近に引き寄せてしまった観客には、苦い味がするに違いない。
(あとはネタバレで)
ネタバレBOX
脚本が柴幸男さん。
何気ない日常の中にドラマを見出す作品が多いと思う。
ドラマチックなことではなく、日常を見せるという意味でのドラマだ。
日常は日常であっても、その当人にとっては重要なことであり、また、日常だから忘れ去り、消えて行くものでもある。
その、一瞬一瞬が残像となってしまう日常を描くのがうまいと思う。
だからこそ、観客は、作品に自分のことを投影してしまうのだ。
この作品も、日常的なことで作られている。
一見、「人生を畳む」ということで、大変なことのように見えるのだが、それを大上段に構えないところから、観客が入り込む“スキマ”ができる。
それは、全体に流れるユーモアも関係するだろう。
ある日息子が実家に帰ると父親が「畳む」と言い出して、実際に家具や諸々をかたづけていた。
そんな2人の会話が作品の中心にある。
息子世代から見れば親のこととして、親世代に近い人からは自分自身のこととして、あるいは両者についてのこととしてなど、観客の年齢や状況によって見え方が変わるだろう。
作品が「どうすればいいのか」という問い掛けに感じて、自分の中で現実と(少しだけ)向き合うことになるのだ。
だから、それぞれごとに深読みすることも可能だ。
特に、この内容をぐんと身近に引き寄せてしまった観客には、とても苦い味がするに違いない。
畳んでいく父親と息子を描いているのだが、どうも少しだけ違和感がある。
それは、息子が父親を訪ねたときに、父親の痴呆が始まっているようなシーンが2回あるのだ。
もちろん、ラストで明かされるように、父親の記憶を「畳型記録装置(笑)」で何度も繰り返し見ているということもあろう。
息子の息子に「もうやめたら」的なことを言われてしまうぐらい、彼は父親の記憶を振り返っているに違いない。
ただ、息子が、親が痴呆になって死ぬ間際までの記憶を見たいと思うだろうか?
親のそんな姿は見たくないはずだ。
健康で、自分のイメージにある親の姿をいつまでも見たいと思うのではないか。
では、どういうことなのか。
これは「自分の人生を、自分の意思により畳んだ男(父親)」と息子の話ではなく、「自分の人生を、きちんと畳めなかった男(父親)」と息子の話ではないのか。
つまり、ロボットのヘルパーや、自宅の回りの町ごと「畳んでしまった」というのは、なんか変であり、さらに息子は実家に帰ってきたはずで、隣の町まで人間の足で一週間もかかるような場所に来たという記憶がなく、交番のあったところが急に沼になっているはずもないからだ。
家を畳むシーンでも、ロボットが手伝うわけでもなく、屋根や壁を父親は「畳んで」しまう。
演劇的な手法と言えば、そうかもしれないが、父親の中でのリアルと見た。
それは、「畳めなかった男」の妄想ではないのか。
つまり、痴呆になってしまい、もう自分では何もできずにいる男の、きちんと自分のいろいろなことを整理できずにこうなってしまったという、後悔が見せたものではないのか。
痴呆になったと言っても、考えることはできるし、痴呆になってしまったことが苦しくて辛いという感情も、初期にはあるだろう。
だから、「畳んだ」という妄想をしてしまった。
だからこそ、歩けなくなり、口の中にガンが出来、食べられなくなってしまった、という現在の状況まで「自分で畳んだ結果だ」と思い込んでしまったのではないだろうか。
「母と言い張る男」の登場も、「息子と言い張る」、今目の前にいる、まったく見たことのない男も同じだ。
息子はもっと小さいはずと父親は思っているから、「息子と言い張る大人」と「母親と言い張る男」は、父親にとって同列の出来事になる。
このように、「畳めなかった男の妄想」であると見てしまうと、この物語はさらに辛いものとなる。
自分の親が後悔しないで畳むにはどうしたらいいか、自分が後悔しない畳み方はどういうものなのか、それはいつから始めたらいいのか、などという、いろんな想いが脳裏に渦巻いてしまう。
かつて、心臓が動き出し、身体を動かすことができ、いろいろなことができるようになって今があるので、今度はそれを逆にしていく、というような台詞があった。
また、畳むというのはなくすことではない、畳んだ後は残る、というような台詞もあった、これがヒントになるのかもしれない。
ただし、そう思っても実際に行動に移すのには、相当高い壁がある。
実際、畳める人は極少数派ではないだろうか、多くの人は畳めずに終わってしまう。
自分の想いがこもっているいろいろなモノ、本や写真や家や、そんなものとどう向き合って、どう処分していったらいいのだろうか。確かに自分が大切なものは、子どもや孫にとって大切なものとは限らない。
しかし、かたや、モノには記憶が残るのは確かでもある。
写真など具体的モノに限らず、普段使っていた食器とかペンとか机とか、そういうモノには記憶が残る。
正確には、それらのモノが媒介となって、残された者の記憶を呼び覚ますのだ。
なので、劇中に出てきた「畳型の記憶装置」はまさにそれを指しているように思えた。
実家に帰って、畳の上に寝転がって天井を見上げれば、現実の「畳型の記憶装置」が作動する。
それは、そんな機械が発明されていなくても、すでに誰の実家にもあるものなのだ。
つまり、それは畳型とは限らない。記憶を呼び起こすモノは、椅子型かもしれないし湯飲み茶碗型かもしれない。
それは、モノに記憶が記録されている、と言っていいのではないだろうか。
素の舞台のようで、そうではなく、ダイナミックさもあるし、照明もいい。
広い空間に4人の役者だけなのに(ほぼ2人だけしかいないことのほうが多い)、スカスカ感がなく、それでいて、「畳んでしまった家」という、ガランとした空間を感じさせる、杉原邦生さんの演出と美術がいい。
シンプルな舞台装置が、柴幸男さんの戯曲にはマッチする。
父を演じた武谷公雄さんと、息子を演じた亀島一徳さんの掛け合いが素晴らしい。
テンポの良さに、引き込まれるし、笑いも生まれていた。
家具もなにもない家に、エリックサティの『ジムノペディ』が流れていた。
サティは、「家具の音楽」と称していたから、それで選曲したのだろうか。
音楽の家具が、何もない、がらんとした、畳まれてしまった部屋に置かれていた。
浅草紅團・改
劇団ドガドガプラス
浅草東洋館(浅草フランス座演芸場)(東京都)
2015/08/21 (金) ~ 2015/08/31 (月)公演終了
満足度★★★
何を伝えたかったんだろう
歌やダンスを挟みながらの芝居、ドキドキ・ワクワクしながら見ていました。
でも、何を伝えたい芝居なのかが、何だかボヤけて判りませんでした。それとも、この劇団の芝居は、そんな事を考えずに見るものなのかな。
ネタバレBOX
届いた案内状にしたがって購入の申し込みをしても連絡一つなし。申込みを受付けられたのかすら判らず。
PCで再購入し、当日の精算時に「すいませんでした」と声を掛けられたが、時すでに遅しだろう、劇団の姿勢を感じました。
芝居以前に不愉快を感じる観劇になりました
時をかける206号室
企画演劇集団ボクラ団義
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2015/08/19 (水) ~ 2015/08/30 (日)公演終了
満足度★★★★★
観れば観るほど楽しめる作品
ボクラ団義さん初体験でしたがメンバーの皆さんもゲストの方々も素敵な役者さんばかりで、何度でも観たいと思える作品でした!圧倒されるストーリー、舞台装置は絶対に生で観てほしい。
1回目はただただストーリーについていくのに必死でパニックになり(笑)、2回目はそうだったのか!と頭の中でパズルのピースがはまっていくような感覚になり、3回目はそれまで見えてこなかった新しい発見が見えてきて、4回目はこれまでを踏まえて役者さん一人一人の熱のこもった演技を目に耳に頭にしっかりと焼き付けて、と回を追うごとに毎回違った楽しみ方の出来る作品でした。今ではすっかりボクラ団義さんの大ファンです(笑)
かっこいいだけが役者じゃない。キャストの皆さんの、感情を魂を爆発させた演技も必見です。人間の感情の複雑さや生きることの難しさを考えさせられました。公演も残りわずかですが、是非沢山の方に観てほしい作品です。