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ナイゲン(全国版)

ナイゲン(全国版)

アガリスクエンターテイメント

にしすがも創造舎 【閉館】(東京都)

2015/10/03 (土) ~ 2015/10/04 (日)公演終了

満足度★★★★★

無題1615(15-304)
17:30の回(曇)。

(スリッパに履き替え、1Fで待機)、17:00、3Fで受付、開場。元中学校(世田谷ものづくり学校、3331 Arts Chiyodaよりもっと「教室」っぽい)が会場。

机をロの字で囲み、壁沿いの3面に椅子席、正面の黒板側に「議長他の委員」、時計回りに「2年」「3年」「1年」。校庭側には大きな窓があり明るい室内(ミラクルとはずいぶん印象が異なります)。

17:29前説、開演~19:28終演、トーク(ゲストは池田さん)19:35~20:03。

座ったのは「3年生(淺越さん)」の後ろあたり。

「ナイゲン」は2012/2013を観ていて、今回3公演目、11月の@新宿も予約済みですが、サイトや当パンに「劇団本公演としてやるのはこれが最後になると思います」とあります。※サイトの「潜入記」は観劇後がいいかも。

会場の造りが違うので、声が大きく(やや団子状)聴こえます。

個々のシーンで細かいところの変更・追加(より濃い目に等)はありましたが、お話の構造(セリフのつながり、場面の切替)は変わらず。

個人的には「どさまわり」のこだわり感が薄まってしまったように感じました。高校生、15~18歳、入学年が違えば先輩後輩の関係、そんな中にも制御不能の猛者がいてもいいなと思うのでした。3年生側なので塩原さんの表情を直接見る機会は少ないのですが、うずくまったその姿、じっと動かないその背中はとても雄弁でした(褒めすぎか?)。

マンザナ、わが町

マンザナ、わが町

こまつ座

紀伊國屋ホール(東京都)

2015/10/03 (土) ~ 2015/10/25 (日)公演終了

満足度★★★★

熊谷真実さん素敵!
レーガン大統領が謝罪した後の作品という感じでした。

ネタバレBOX

1942年のカリフォルニア州マンザナ強制収容所が舞台。所長の命で芸能に秀でた日本人女性が集められ、慰問と宣伝を兼ねたお芝居の練習をする話。

熊谷真実さんのコミカルな演技が冴えていました。三味線も弾き、浪花節も上手そうでした。

青年座劇場で『第十七捕虜収容所』を観たばかりだったので思うのかもしれませんが、捕虜収容所にはスパイがつきものというか、むしろ井上さんはオマージュの意を込めて書いたのではないかと思いました。

1993年初演。1988年にレーガン大統領が謝罪した後ということもあってか、収容所内外を問わず米国で生きる上での理不尽さなどへのツッコミ方は穏やかだったように思います。
三十と十五の私

三十と十五の私

張ち切れパンダ

【閉館】SPACE 雑遊(東京都)

2015/09/30 (水) ~ 2015/10/05 (月)公演終了

満足度★★★★

時間軸の交錯が面白かったです
日常の中でのザラッとしたお話といいましょうか。
ギザギザとまではいきません(笑)
脚本、演出、演技ともしっかりしており、初見でしたが、また観てみたくなりました。

このために生きている

このために生きている

PAPALUWA

インディペンデントシアターOji(東京都)

2015/10/03 (土) ~ 2015/10/07 (水)公演終了

満足度★★★★

とても良かったです。
演出面や役者さんの演技などおもしろかったです。お疲れ様でした◎

月光条例 ~かぐや編~【全公演満員御礼!ありがとうございました!】

月光条例 ~かぐや編~【全公演満員御礼!ありがとうございました!】

カプセル兵団

笹塚ファクトリー(東京都)

2015/09/27 (日) ~ 2015/10/04 (日)公演終了

満足度★★★★★

さすが、カプセル兵団
上演時間2時間50分
うち、前編、月光編の時にカットされた箇所で今回必要なところを織り込みつつの説明で50分、そして今回のカグヤ編の物語でおおよそ2時間
普通なら、長いというようなことを感じてしまう時間だが、演出の巧さ、息をつかせぬ場面展開、緩急の具合によって全く飽きさせない時間でした。
鉢かづきの鉢が取れたシーンの再現。そして、漫画とは違うけれども、舞台らしい』ラストシーン。なによりうれしかったのは、大阪でうしおととらを上演しているシアターOMの潮ととらを巻き込んだ、藤田作品三作の舞台上での共演!原作ファンでよかったと思えた瞬間でした。 DVDが楽しみです

第十七捕虜収容所

第十七捕虜収容所

劇団青年座

青年座劇場(東京都)

2015/09/29 (火) ~ 2015/10/04 (日)公演終了

満足度★★★★

のぞき見をしたような感じ
冒頭、セットの有刺鉄線を張り巡らせた柵があがって始まり、最後それが閉じることによって閉ざされた空間を覗き見ているよな感覚になりました。
そして、あらすじのスパイはだれ?という単純な問題でなく、人間の本質が描かれているのだなぁと思いました。
主役のセフトンやそれにかかわる同じ部屋の人々の変化が面白かったです。
端の席で拝見したので、見逃しているところが多々ありそうで複数回観れなかったのが心残りです。

幸せを運ぶ男たち

幸せを運ぶ男たち

アナログスイッチ

小劇場 楽園(東京都)

2015/09/23 (水) ~ 2015/09/27 (日)公演終了

満足度★★★★★

登場する人みんな好き☆
観劇したの10日前だけど。。思い出してはにやけちゃうし、また観たいって思う公演だったから書き込み。
アナログスイッチさんは3回目で、素直に笑えて、ほっこり出来て、出てくる人がみんな可愛くて好きだなって思ってた劇団さん。今回は期待以上。前よりもっと好きになりました。

ネタバレBOX

小劇場楽園は初めてで、まずその形にびっくり。舞台上で見えないとこ出てきちゃうって座ってがっかりしたけど、結局気にならなかった。笑
再演だけど初見だったので、全くの前情報なし。座敷わらしが5人いて、家主には見えてない。でも、気になる彼女には見える。うんうん、よくある設定。
でもアナログスイッチさんが作るとテンポがよくて、登場人物みんなに愛があるものになる。リアルすぎるセットとあの小さな劇場が相まって、正にアットホーム。終始集中して観ていたけど、のめり込むというより観客みんなで見守っている感じ。
関ヶ原で一人 〜lonely SEKIGAHARA〜

関ヶ原で一人 〜lonely SEKIGAHARA〜

ENG

六行会ホール(東京都)

2015/09/30 (水) ~ 2015/10/04 (日)公演終了

満足度★★★★

凄く楽しかった!
いつものセットパターン!人の入れ替わり、と久保田作品の特徴満載の作品。
いつもなら“また”と言うところだけど、今回は面白かった!このパターンの中で断トツの出来と言えるかな?と思う。しかし、せっかく丁寧に作り上げた作品の中で肝心の人の感情がご都合で消されてしまっているのは残念!このところそういう部分が目に付いてしまう。仕上げには客観視することも必要かと・・・。

4時44分、せつなに青く。【ご来場ありがとうございました!】

4時44分、せつなに青く。【ご来場ありがとうございました!】

劇団えのぐ

上野ストアハウス(東京都)

2015/10/01 (木) ~ 2015/10/04 (日)公演終了

満足度★★★

キャラ設定が・・・
ホラー、コメディな要素を取り入れ、落差を表現したい脚本・演出なのだろうが、
それぞれ消化不良の感が否めない。

殊に、“校長”、“教頭”、“ハブ子”のキャラ設定には首を傾げる・・・。

“七不思議”を題材とした着想はいいと思うので、、“その辺り”を煮詰めなおすことでもっと良い作品になるのでは・・・。

後半の展開が良いだけに勿体無いと感じた。

瀧夜叉傅

瀧夜叉傅

Will-o'-the-Wisp

シアター風姿花伝(東京都)

2015/10/01 (木) ~ 2015/10/04 (日)公演終了

満足度★★

導入部はビジュアルから
女性目で観て、こういう話はやっぱり衣装が大事!予算がどうのという事はあるだろうが、もう少し頑張れないだろうか?主役の滝夜叉が美しく見えないのは痛い(容姿の話ではなく)。人外のものの神秘性とか、将門の姫という気品とか、そういうものが全く感じられなかった。全体として、芝居は全く絡まず、ガッチリ組んだ感じがしない。殺陣も確かに迫力のあるシーンが無かったわけではないが、“これっ!”と言うオリジナル性が見当たらない。反省点は山とあるのではないだろうか?

4時44分、せつなに青く。【ご来場ありがとうございました!】

4時44分、せつなに青く。【ご来場ありがとうございました!】

劇団えのぐ

上野ストアハウス(東京都)

2015/10/01 (木) ~ 2015/10/04 (日)公演終了

満足度★★★★

重たいテーマでした
前半のテンポいい展開から一転、後半は重く辛いシーンで、見終わった後しばらく考えさせられました。
最近学生の嘱託殺人事件が話題になったばかりで、なんといっていいやら。劇場は夢の空間だと思うので、個人的には超シリアスな展開より、心が温まるような展開のほうが希望でした。しかしながら、作・演出の佐伯さんや、演者の方々の才能が感じられる、斬新な舞台であったことは確かでした。
次回来年3月の番外編に期待しています。今年5月の番外編は、最高でした。

ダイヤモンド

ダイヤモンド

ドリームダン

ぽんプラザホール(福岡県)

2015/10/03 (土) ~ 2015/10/04 (日)公演終了

満足度★★★★

もう一度観ると更に楽しそう。
後半が面白かった。くだらないことを真剣に詰め込んでいた。観終わって、もう一回観るとまた楽しめそうな内容だった。次回来福公演も期待。

このために生きている

このために生きている

PAPALUWA

インディペンデントシアターOji(東京都)

2015/10/03 (土) ~ 2015/10/07 (水)公演終了

満足度★★★

あっち方面は
嫌いです。

ネタバレBOX

昔、表さまと呼ばれる神のお告げによって喧嘩で勝った村一番の男に娘が授かったり結婚ができたりしたことから、5年毎に喧嘩祭りを続けている集落の話。

この年は複合レジャー施設反対派と容認派が決着を付けるための喧嘩祭りとなりましたが、祭りの掟を一部破ったということで山の一部が崩れ、結果複合レジャー施設の用地となり、めでたしめでたしでした。

石からパワーが出ているとか言うスピリチュアル高校生なる人物が登場しましたが、霊感商法的発想は大嫌いです。
Five Star Splash!!

Five Star Splash!!

W.Strudel

ABCホール (大阪府)

2015/10/02 (金) ~ 2015/10/05 (月)公演終了

満足度★★★★

珠玉のエンターテイメント☆★
壱劇屋と佐々木ヤス子さんのファンやけど、全ての出演者さんが素敵やった♪♪上演時間の長さも、こういうお笑いの要素もあるアクション活劇は動きを追いかける五感が働いて観れるんで、最後まで楽しめて観れました☆★作演の内村正年さんの計算された構成、演出が観る者の五感を刺激するんでしょうね♪ドラゴンナリタや金金金など、過去公演のキャラクター達が登場するのが嬉しくてワクワクしっぱなしでした☆★是非シリーズ化して欲しい贅沢なコラボ公演で大満足でした(^o^)v

4時44分、せつなに青く。【ご来場ありがとうございました!】

4時44分、せつなに青く。【ご来場ありがとうございました!】

劇団えのぐ

上野ストアハウス(東京都)

2015/10/01 (木) ~ 2015/10/04 (日)公演終了

満足度★★

前半の、この劇団の言うところの“コメディ”部分(?)が作品をぶち壊してしまった
後半は、少しは良くなるのだが。

ネタバレBOX

高低差があり、シンプルながらいいセットなので、期待した。

しかし、冒頭から、あまりにも学芸会的(見た目の若さもあって)な台詞と演技に、「これがずっと続くのか」と少々うんざりした。

いかにも“キャラやってます”的な登場人物たちがとてもイヤだった。
特に、キセルにきもの風の衣装の校長と、「コナン」的な副校長には、ため息しか出なかった。
前半の中で、コナン副校長のキャラ(というかアク)が強すぎて、意味がない。

前半のガチャガチャしたシーンの連続には、ついにまったく笑えなかった。

「七不思議」と言いながらも、それぞれの「不思議」を丁寧に提示してくれるわけでもなく、主人公が取り戻したい“記憶”のヒントがそこに丁寧に描かれているわけでもない。

そこが大切なのだから、こういうベタな演出ならば、「ここがそうですよ」とシンプルに提示すべきではなかったのか。

しかし、後半がグッと良くなる。
主人公の記憶が蘇ってくるところから、“作られていたキャラ”から、“等身大の人間”に戻った彼らの姿が結構いい。

主人公を虐める3人が活き活きしていて、とってもいいのだ(前半に比べて)。
主人公の少女も生き返ったようだ。彼女の台詞や叫びにもリアリティが感じられた


ただし、前半が酷すぎた。
(観客席に向かって話す登場人物に)「誰に向かって話しているの?」や、「自分の出番が少ない」的な台詞など、なぜだか前半には、単に面白いという理由だけなのか、「演劇である」ことのアピールがいくつかある。
これはダメではないか。
後半の重くリアルであるべき話を、前半でぶち壊しているのではないか。
前半のガチャガチャしたコメディ(と思われるシーン)が、「ギャップ」がある、というよりは、きちんと設計されてない印象だ。

面白い格好や言葉が面白くても(面白くないのだが)、後半にそれが活かされてなければ、1つの作品としてのまとまりが出ないからだ。

また、後半は前半と比べていいだけであり、例えば刑事たちが、“まるで他人事のように”「いじめって何ですかね」的な会話をするところがあったりして、それが後半の、役者たちが“等身大”で演じている自分たちのことを、否定しているのではないか。

せっかく“身近”に引き寄せたものを、あっけなく手放して、遠くの他人の出来事にしてしまう。
それはないと思う。

イジメとその“非現実的”な状況から、“非現実的”な「七不思議」を結びつけ、「不思議は、その人それぞれの中にある」とした、この作品の根幹はとても面白いと思った。
しかし、それを見せる方法が違ったのではないだろうか。

「面白く見せる」ということで、「面白いキャラを出す」という選択は安易すぎる。
また、「親友が好きな人を取ったと勘違いされていじめに遭った」という設定も、ありがちだし安易すぎてガッカリだ。

もっと身近な問題として描くべきであったろうし、いじめの原因ももっと「どうしてなんだろう」と思えるような些細なこと、あるいは理由がよくわからないこと、にしたほうが良かったのではないか。

ラストも、その結果、残されて者たちは、どう感じたのかがほしかった。
主人公とはほとんど接点のない刑事に話させるのではなく、主人公と接していた加害者たちはどう感じたのかは観たかったと思う。

そうしないと単に「いじられた少女がいました」「彼女は友人を刺しました」というだけの話になってしまうから。

当日パンフは、役者さんたちの似顔絵だった。
誰が誰だかまったくわからない。役名もないから余計に誰なのかわからない。
役者の顔は知ってもらえたほうがいいのでは?
手のひらを 透かしてみれば

手のひらを 透かしてみれば

企画室磁場

Route Theater/ルートシアター(東京都)

2015/09/30 (水) ~ 2015/10/04 (日)公演終了

満足度★★★

テンポの良い台詞の応酬がいい
たぶん、相当きちんとした練習を積んだのだろう。
台詞自体も丁寧に吟味したあとが伺える、言葉がある。
しかし……

ネタバレBOX

受付の対応からこの団体のきちんとしたところが感じられた。
全体的に落ち着いている印象で、(やや)大人の劇団という感じがとてもいい。

さて、作品だが、丁寧に作られているのがよくわかる。
役者の台詞のやり取りがとてもスムーズでいいのだ。
単にスムーズというのではなく、会話としてのテンポが小気味いいのだ。

きちんとした演出により、練習を重ねてきたことがよくわかる。
そして、台詞自体もとても言葉がいいのだ。
時間をかけて吟味したのではないかと思わせる。

しかし、残念ながら、内容に深みを感じられない。


一見、彼を取り巻くさまざまな出来事についてをテーマにした作品に見えてしまうのだが、そうではない。

つまり、これは、シャッター商店街の生き残り策の話でもなく、結婚、恋愛の話でもなく、ましてや日本のエネルギー政策や、イラン、イラクの中東の戦争の話ではない。
つまり、主人公の心のありようを、それらを通して描いているのだ。

スムーズな会話は、主人公の心情をよく表していたことに気づかされる。

自己中心の主人公は、会話はスムーズで淀みがない。
そのことは、彼の頭の回転の速さを表しているのと同時に、「何も考えてない」ことを表していたのではないか。

つまり、話を合わせているだけで、自分にとって「利」があるかどうかが大切なのだ。

商店街の人と一緒にやって行こうと行った口で、会社の方針だからと彼らを切ってしまう。
それは、一見、“会社の都合なので”という理由で述べているようで、本当のところ、商店街の人のことを本気では考えてなかったことがわかる。もちろん、“仕事”としては、本気で商店街を海外にアピールして良くしたいと考えていただろう。しかし、“彼自身”が本心からそう考えていたのではなく、あくまで“仕事”だったのだ。

友人から会社の不正を聞かされ、それに荷担しない選択をしたのも、友人や会社、ましてや社会のことを考えたのではなく、自分のことを考えていたにほかならない。
だから、エネルギー関連の上司からの誘いには喜んで乗るわけだ。
恋人との関係も同じ。

結局、「人を簡単に切り捨てることができる男」の話なのだ。
それは、詰まるところ、主人公、いや現代人の、心のありようの問題だと、この作品は言いたいのだろう。

とは言え、「何言ってるんだ。深刻なのは、お前ではない」と主人公に言いたくなるほど、彼はイヤなヤツだ。
主人公にかかわった3人は、本当に大変なことになっている。彼らの言葉は、実は主人公自身の心の声ではないか。

主人公は身勝手に彼らを切り捨て、勝手に苦悩している。
自分自身のそうした姿に苦悩しているようには見えてこない、という部分で作品のテーマを見せることに成功しているとは思えない。

現代人の心のありようの問題であれば、彼の姿は我々自身なのだろう。
イヤな醜い姿が我々なのだ。
そう感じさせてほしかった。

冒頭のモノローグは、役者自身が気持ち良さそうなだけで、イマイチ伝わってこなかった。
ラストのモノローグは、先に書いたとおりに「何言ってるんだ。深刻なのは、お前ではない」という感情が出てしまい、苛ついてしまった。

モノローグなんていう安易な方法をとらずに、台詞のやり取りだけで、見せてほしかった。
戯曲の感じや演出の丁寧さから感じる、この作・演の方の力量ならば、それを十分にやれると思った。

……一点、主人公と恋人との会話で「こらぁ」っといいながらぶつ真似をしてみせるという、あまりと言えばあまりのシーンには、観ているこちらが赤面してしまったが(笑)。
ふたりカオス

ふたりカオス

劇団6番シード

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2015/09/24 (木) ~ 2015/10/05 (月)公演終了

満足度★★★★

面白かったが…
妻と一回、ひとりで二回みてきた。五話のオムニバスでストーリーが良くできていて演出も無駄がなく役者さん達も上手く楽しめた。が、なにか、足りない。年に一、ニ度しか芝居を観ない妻の観劇後の感想が「役者さんて凄いね。」だった。この一言に尽きるのかな。いい作品を観終わった後の「あー、面白かったぁ」という高揚感は得られなかった。

想いはブーン

想いはブーン

小松台東

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2015/10/02 (金) ~ 2015/10/12 (月)公演終了

満足度★★★★★

ストレートプレイ好き、演劇好きならば、観てほしい舞台
今、ストレートプレイの演劇で一番面白い戯曲を書いているのは、この小松台東の松本哲也さんではないかと思う。
この最近、小松台東以外にも戯曲を提供していて、非常に多作なのだが、どれも面白い。

今回の『想いはブーン』は、その中でも最高に面白い一作だ。

(ネタバレボックスに書いています)

ネタバレBOX

電気工事会社の詰め所が舞台。
社長が明後日、命にかかわ病気で入院するので宴会が開かれている、一夜の話。

とにかく台詞のやり取り素晴らしい。
どの役者も上手い。
自然に会話をしているし、そのときの気持ちがこちらに伝わってくる。

特に、3人姉妹の会話が素晴らしい。
中盤で3人だけが会話するシーンだ。

長女役の山像かおりさんは、登場した一瞬から3人姉妹の長女であり、母親である佇まいであった。

そして三女役の異儀田夏葉さんはやっぱり上手い。
彼女だけが、3人姉妹の中で、外との窓口の役割を果たしている。
すなわち、男性の登場人物との接点を担っている。
彼女だけを接点とした戯曲の上手さもあるが、その重任を異儀田夏葉さんは見事に果たしていた。

姉妹の間で見せる顔と恋人に見せる顔、ほかの電工さんや、幼なじみに見せる顔が微妙に異なり、その台詞のトーンの使い分けも見事なのだ。姉妹との会話と電工さんの隆史との会話は、落ち着いているようで、実は微妙に違うところが上手すぎるのだ。

次女の森谷ふみさんは出番は少ないのにもかかわらず、彼女の立場が上手く伝わっていた。
昔の恋人との間を突っ込まれながら、(それと気づいて)その彼、隆史(あとでもう一度それが確認できるという演出も上手い)の上着を畳んで見せるという演出も効いている。

役者も上手いのだが、もちろん、戯曲自体もいい。
今、ストレートプレイの演劇で一番面白い戯曲を書いているのは、小松台東の小松台東の松本哲也さんではないかと思う。
この最近、小松台東以外にも戯曲を提供していて、非常に多作なのだが、どれも面白い。
この『想いはブーン』も非常によく出来ていると思う。

台詞の1つひとつが、いろんな出来事や人間関係にきちんと結び付いていく。
ことさらにそれを前面に出しているわけではないが、張り巡らされた台詞(言葉)で観客は知らず知らずのうちに、物語や、そこに描かれる人物の背景の深さを感じるのだ。

だから面白い。

印象的だったのは、長女と三女が抱き合って泣くシーンだ。
その姿に、ぐっときながらも、観客は後から現れた次女と長女の娘の姿に少し驚く。

抱き合う2人の姿になんとなく理解し、一緒に抱き合おうと誘う長女に対して彼女たちはためらうのだ。
確かにリアルに考えれば、それに乗れるはずがない。

ためらうから単に泣かせるシーンにならずに、それよりもさらにいいシーンになるのだ。
次女は、形だけ抱き合って見せるのだ。
わかったと理解して一緒に抱き合うのでもなく、突き放してしまうのでもない。

気持ちは伝わるから、長女、三女、長女の娘と、照れながらも形だけ抱き合うようなことをする。
このとき身体に触れるということが大きいと思う。
このシーンから十分に大人な姉妹たちの、今の姿がリアルに伝わってくるのだ。

3人姉妹のそれぞれの恋愛観が垣間見えてくるのも、戯曲と役者が上手い。
それぞれの立場、年齢、経験が微妙に違うが、“大人の”恋愛模様なのだ。
ほかの登場人物も不器用な恋愛模様がよく出ていた。

他人の介入によって、ほぼどのシーンでも会話は中断されてしまう。
最後まで登場人物に結論めいたことを言わせたりせず、余韻がいい塩梅で残る。

その会話があとの、別のシーンに効いてくることもある。

松本哲也さんが演じる井戸潤の、暴力的とも言える台詞での介入は、舞台に緊張感を生む。
三女の恋人である浩史に「師匠」「師匠」と言うのも、実にネガティヴであることがわかってくる。
カップ麺を食べるときにむせるのは、面白いけどしつこいとは思うが(笑)。

緊張感で言えば、長女の娘が泣きながら戻って来るシーンだ。
誰かに襲われた、ということで観客の多くは今そこにいない男、浩史のことを思い浮かべたのではないだろうか。
登場人物の様子からいってもそう思ってしまい、一瞬ひやりとした観客も多いのではないか。
しかし、襲ったのがイノシシだとわかるのがバカバカしくも面白い。
舞台の上の三女たちの大笑いは、まさに観客の思いと一緒だった。
娘役の小園茉奈さんもいい塩梅の娘ぶりが面白い。

演出で言えば、三女と隆史の会話のときに三女が誤ってコップの酒を少しこぼしてしまう。
それを隆史がさりげなく雑巾のようなものを手にして拭く、というシーンが、アクシデントなのか何なのかわからないほど自然で、痺れた。

三女の幼なじみ(山田百次さん)は、登場から存在自体が卑怯なほど、いい味を出していた。
隆史役の瓜生和成さんはさすがにいい。三女との会話の、気心知れた感なんかとってもいい。

盛り上がっているであろう宴会から聞こえる『山谷ブルース』の歌声が、奥のほうから聞こえてくる様もいい(やはり電気工事会社を舞台にした小松台東『デンギョー!』でも、『山谷ブルース』だったような)。

小松台東は確実に面白い。
これからも期待できる。
4時44分、せつなに青く。【ご来場ありがとうございました!】

4時44分、せつなに青く。【ご来場ありがとうございました!】

劇団えのぐ

上野ストアハウス(東京都)

2015/10/01 (木) ~ 2015/10/04 (日)公演終了

満足度★★★★

驚きの展開
優し気な雰囲気のフライヤー、コメディータッチの前半だったので、楽しい七不思議かと思いきや、後半は意外な展開となり衝撃でした。役者さん達の熱演も良かったです。事実と七不思議を無理矢理繋げているかな?という印象もありましたが、考えさせられる内容でした。ただ、被害者やその家族の事を考えると、もやもやした物が残りました。後味が悪い感もありましたが、意外性のある印象的な舞台でした。

グッドバイ

グッドバイ

キューブ

J:COM北九州芸術劇場 中劇場(福岡県)

2015/10/03 (土) ~ 2015/10/04 (日)公演終了

満足度★★★

喜劇という名の悲劇
 太宰治の原作は定番の「なりすまし」の喜劇であって、つまりこれを面白く見せるための手法も、自ずと定番のものにならざるを得ない。
 それでは脚本の書き甲斐がないと考えたのか、ケラリーノ・サンドロビッチは、新設定を次々に導入、状況を二転三転させるのだが、そうなるとそもそもの原作の設定自体が無意味なものになってしまい、話も笑いも後半に行くほど沈滞化してしまう。
 全体としては焦点の定まらない脚本だが、小出しのギャグには冴えたものも少なくなく、結構笑いは起きている。もっとも「笑い屋」の客が多いから、本当に可笑しいのかと言われると、実態は「そこそこ」と言ったところだろう。客はここぞと待ち構えてはいるのだが、すべってしまったギャグも少なくない。「受け」や「ツッコミ」の間の取り方が巧い役者の場合、笑いはどんどん高揚していくが、そうでもない役者との落差が激しかった。小池栄子のコメディエンヌとしてのセンスが抜群に光っている。

ネタバレBOX

 その小池栄子の舞台映えの良さは、生で観ると一層驚嘆すら覚えてしまうほどのナイスバディに起因しているものではあるが、もちろんそれだけではない。美人の演出というのは案外難しいもので、そこに佇んでいるだけで魅力が生まれるというものでもない。完璧な美人などというものを目指すと、かえって無個性化した、生気のない人形のようなキャラクターになってしまう危険が生じる。どこかを「崩す」ことで、その美を反作用的に演出しなければならない。
 怪力、鴉声で無知無教養、ガサツで上品さのカケラもない永井キヌ子。口さえ利かなければとびきりの美人で、誰もがその正体には気がつかずに済みそうだが、何しろ根が正直だから、すぐにお里が知れそうになる。
 素で振る舞おうとするキヌ子=小池栄子と、それを見て血の気が引く田島周二=仲村トオル。このコントラストが生み出す笑いはまさしく「喜劇」のもので、太宰治の喜劇的センスのよさを感じさせる。
 「おそれいりまめ」と太宰自身もゲスでつまらないと称する駄洒落を口にする小池栄子と、それにとほほとうなだれる仲村トオル。この息の合い方が素晴らしい。ギャグは受けの良さがあってこそ笑いを生む。それを熟知した二人のやり取りが実に楽しく、これが「芸」の持つ力と言ってよいであろう。

 以降、小池栄子の爆発ぶりはいちいち書き起こすとキリがないほどに舞台を攫う勢いを見せる。
 大股開きで飯を次から次へと平らげていく大食、迫ってくる仲村トオルを気合で投げ飛ばす怪力、「曲者」を「まげもの」、「所以」を「しょい」と読んでしまう無学さを恥じることもなく、逆に開き直って「私は『日直』を『ひじき』と読んだ女よ!」と啖呵を切る小気味よさ、いずれも貪欲を体現したような大胆さで、小池栄子以外にこれを演じられる女優がいるだろうかと思えるほどのハマリっぷりである。。
 これまでの数々の映画、ドラマ出演で、彼女の演技力の確かさは世に知れ渡ってはいたけれども、正直、これほどまでに他を圧倒していては、「共演者殺し」と言われても仕方がないかもしれない。

 他の女優陣も、水野美紀、緒川たまき、夏帆、門脇麦と、錚々たる面々で、何とか彼女たちにも見せ場を作ろうと脚本は苦慮しているのだが、それがかえって舞台を沈滞化させてしまっている。
 小池栄子が出ていないシーンは、ただ台詞が流れるだけで、演劇としての躍動感が生まれていない。唯一、小池栄子に拮抗し得たのは、田島の娘の幸子や、「だいたい」占う街の女易者など、その他大勢を引き受けていた池谷のぶえだが、コメディ・リリーフとしての彼女が目立っていたということは、つまりは他のキャラクターは殆ど書割になっていて沈んでしまっていたということである。

 妻・静江(太宰の愛人の太田静子がモデルか?)役の水野美紀、本来は彼女が田島の「本命」であるはずなのだが、全体を通して、女たちの中心にいる感じがしない。田島に愛想を尽かして捨てるのは当然としても、田島に愛人を切るための策を授けた(つまりはメンタル的に田島と同好の)作家の連行(山崎一)に身を任せてしまう急転直下の転換に、説得力がないせいだろう。
 女医の大櫛先生役の緒川たまきは、クール・ビューティーな役回りで、静江から田島を「譲られる」のだが、最終的にその申し出を断ることになるのは見見当が付くが、その結論に至るまでに、静江に対して何一つ心の葛藤を覚えないというのは理解しがたい。それが氷の女の氷である所以かもしれないが、全体的に、女たちが「仲が良すぎる」ので、これでは、ドラマの生まれようもないのである。
 挿画家・水原ケイ子役の夏帆、農家の娘・草壁よし役の門脇麦に至っては、何のためにいるのか、賑やかし以外に役に立っていない。女性を描くことに定評のあったケラリーノ・サンドロビッチの舞台としては、これは失敗作と言わざるを得ないだろう。

 そもそも太宰治の未完の原作、これがたいして面白くもない。
 主人公の名前が「田島周二」であるから、これはもちろん太宰治自身(本名・津島修治)を模している。
 自身を戯画化するのは小説家にはよくあることではあるが、『グッド・バイ』(舞台のタイトルは『グッドバイ』でナカグロがないが、原作にはある)は特に露悪的で、一見、ユーモア小説のように仕立てているところに太宰のゲスさが現れている。
 二十数人の愛人を抱えていて、ちょっと手いっぱいになってきたから、妻子とまっとうな家族生活を送ろうと、要らない愛人たちを穏便に身を引かせようとするのは、何だか最近の岡田斗司夫騒動に共通するものがあるが、もちろん、不逞文士と言われた輩は、昔からそんなことをやっていたのである。太宰治は代表者の一人だろう。

 死の直前、彼には美知子夫人のほかに、太田静子(作家・太田治子の母)、山崎富栄という二人の愛人がいたことが確認されている(もちろん他にももっといたらしいことを太宰本人がほのめかしている)。
 『人間失格』『グッド・バイ』の担当編集者兼秘書として付き従っていたのがその山崎富栄だった。

 戦争未亡人で、美容師でもあった富栄は、『グッド・バイ』に登場する青木さん(舞台版では「保子」と名前が付けられていて、町田マリーが演じている)のモデルになっている。田島の策略であっさり捨てられる役どころだから、原稿を読んだ富栄は、自分も太宰に捨てられるのかと気を揉んだに違いない。そこをどう太宰が誤魔化したかは記録が残っていないが、ほどなく二人は玉川上水で入水して果てる。もしかしたら『グッド・バイ』は、太宰が富栄を死の伴侶にいざなう材料の一つとして書かれたのかもしれない。
 とてつもない美人を妻と称して連れ歩き、愛人たちの方から自然と身を引かせようとするなんてアイデアは、土台、成功する見込みのない机上の空論でしかない。太宰の他愛のない夢想と言ってしまえばそれまでだが、「富栄に読ませる」ことが第一の目的であるなら、小説としての完成度など二の次で良かったのだと考えられるだろう。もちろん、それで富栄が身を引くはずもなく、かえって富栄は太宰の死の旅に付き従う決意をする。太宰がそこまで計算していたかどうかは憶測でしかものを言えることではないが、充分に考えられることだろう。
 女を弄ぶことに関して、太宰は天性の才能を持っていた。「目的」を果たした太宰が、『グッド・バイ』の完結に未練を残さなかったのも当然だろう。

 そんな太宰をケラリーノ・サンドロビッチがどう料理したかというと、正直、よく分からないのである。
 ケラさんが、原作の設定を面白いと思っているのなら、未完に終わったものの結末をこうはしないだろうというオリジナルな展開が、後半は目白押しなのだ。けれども、最後にはいかにも太宰的なご都合主義的なラストが用意されているのだから、ケラさんは太宰が好きなのか嫌いなのかと首を傾げたくなってしまう。 太宰の入水をネタにしてからかってもいるから、人間としての太宰治のことは嫌っているのかもしれない。愛人問題に悩む田島を、連行が何度も「入水するなよ」と窘め、田島が「なぜ入水に拘る」と怒るのだが、客席の受けは今一つであった。太宰治が入水自殺したことも知らない客ばかりだったのかもしれないが、知っていたとしても笑えるギャグではない。

 先述したとおり、太宰が『グッド・バイ』を小説として完成させる意識がちゃんとあったかどうか分からない。今でいうメディアミックスの走りで、新東宝での映画化も決まっていたが、もちろん原作権料は受け取り済みである。脚本の小国英雄、監督の青柳信雄は、ほっぽりだされた原作に何とか結末を付けて映画を完成させた。それは実は「とんでもない美人」の高峰秀子も実はある策略を田島に仕掛けていたという落ちであったが、今回の舞台版は映画版とも違う展開を辿る。
 実は、太宰の原作は未完ではあったが、その落ちを朝日新聞の末常卓郎に語っていた。愛人たちに「グッド・バイ」した田島だったが、結局は計画が露見して、最愛の妻子に「グッド・バイ」されてしまうのである。普通に脚色するのなら、その落ちまでの紆余曲折を描くのが自然だろう。ところがケラさんは、原作を消化した直後に、連行から事の次第を聞いた妻・静江に、田島への三下り半を書かせてしまうのである。永井キヌ子の素性がバレるかどうか、そのあたりの展開を期待していた観客には、今までの設定は何のためにあったのかと呆気に取られてしまう展開である。
 しかも目的を失った田島は、他の愛人たちからも次々と別れを告げられる「逆グッドバイ」状態になる。さらには、いきなり暴漢に襲われて記憶喪失になり、米兵に逮捕されて強制労働に送られてしまうのだ。『恋空』もびっくりの記憶喪失ものへの急激な路線変更だが、これをケラさんは「スクリューボール・コメディ」だと認識しているらしい。「意表を突く展開」のつもりなのだろうが、定番の展開が、別の陳腐なアイデアに移行しただけでは、「脈絡のなさ」が目立つだけである。しかも一年後に帰還した田島は、あっさり記憶を取り戻してしまう。何のために記憶を喪失させたのか、意味が分からない。まだ三谷幸喜に書かせた方が、ちゃんと伏線も貼った喜劇に仕立ててくれたんじゃないかというほど雑然とした脚本であった。

 ラストは、妻や愛人たちはそれぞれに新しい恋人を見つけ、田島は嘘から出たマコトの永井キヌ子との新しい愛に生きる決意をしてみんな丸くハッピーエンドとなるのだが、これは映画版の落ちと全く同じで工夫がないだけでなく、結局は太宰の「好き勝手やっても最後は自分に都合の良い相手が見つかる」という身勝手な妄想を後付けで肯定したようなものである。なのに、カーテンコールでスタンディングオベーションする女性客が多いったらなくて、何に感動したんだか、これまたよく分からない。女性としては、むしろ怒るところじゃないのかと思うが、やっぱりイケメン(この場合は仲村トオルか)が出てるんなら、何をされようが、女として馬鹿にされようが、許しちゃうものなのだろうか。それとも、女として舐められているってことが分かってないのだろうか。

 田島の一周忌(暴漢の死体が田島と誤って荼毘に付されたという展開にも無理がありすぎるが)に、喪服で集まった一同が、生きていた田島とキヌ子の結婚を「たかさごや」をワーグナーの結婚行進曲に乗せて歌うのは、『エノケンの法界坊』で榎本健一が同曲を歌ったことへのオマージュだろう。けれども、あれは亡者になったエノケンが生者の二人を祝福するから、もの悲しくも可笑しくて笑えてしまうのである。単に喪服を着ている人々が婚礼の歌を歌うというだけなら、ギャップの可笑しさはそれほど生まれない。

 総じて、ケラリーノ・サンドロビッチの舞台は、純粋に喜劇を目指したものには失敗作が多い。前回の『社長吸血記』も、下手なタイトル通りの下手な喜劇であったが、今回も喜劇としてのツボを外しまくっている。ご本人は喜劇こそが自身の原点であると感じているのかもしれないが、小出しのギャグはまあまあだが、総体としてのシチュエーションコメディ、スラップスティックコメディは、どちらにもたいした才能は見いだせない。劇場で笑いが起きるのは、殆どが演者の喜劇的センス、タイミングの巧さに依拠している(あとは「笑い屋」とラポール現象のおかげ)。
 笑いにはさっさと見切りを付けて、ホラーな方向での新作を書いてほしいのだけれど、しばらくは喜劇志向が続くような気配なので、傑作に出逢えるのはもう少し後になりそうである。

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