最新の観てきた!クチコミ一覧

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兎、波を走る

兎、波を走る

NODA・MAP

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2023/06/17 (土) ~ 2023/07/30 (日)公演終了

実演鑑賞

今回も舞台美術が面白かったです。いろいろ不条理なお話でした。
体調がイマイチだったせいか・・・。なので満足度はもう一度観られたらと言うことで。
チケットは今回分しか取れていませんが。プレオーダーであちこちに5回くらい、しかも第3希望まで申し込んだのに、1回分しか取れなかったのでした。リセールに期待しています。

幸演会

幸演会

オパンポン創造社

in→dependent theatre 2nd(大阪府)

2023/06/15 (木) ~ 2023/06/18 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

とにかく野村さんが東京に行っちゃうと思うと全てが尊く感じてグッとくるものがありました☆オパンポンの裸踊りは「人は裸で産まれて来るのだから裸一貫になったとて体一つあればなんとかなる」を正に体現する舞いだったんだなと改めて感じました♪オパンポンの20年は野村さんが現状に満足出来ないジレンマを抱え続けた歴史なのかなと考えたりして…天才だから故の葛藤が東京行きの最大の要因と言うのは考え過ぎかな…

ホテル・ミラクルThe Final

ホテル・ミラクルThe Final

feblaboプロデュース

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2023/06/08 (木) ~ 2023/06/20 (火)公演終了

実演鑑賞

どうもこの劇団や24/7ラボなんかは、軽いものよりシリアスな作品の方が良作、傑作が多いきがします。少なくとも私には。

舞踊詩劇「田園に死す」・幻夢活劇「チャイナ・ドール 上海異人娼館」

舞踊詩劇「田園に死す」・幻夢活劇「チャイナ・ドール 上海異人娼館」

吉野翼企画

パフォーミングギャラリー&カフェ『絵空箱』(東京都)

2023/06/15 (木) ~ 2023/06/21 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

滅茶苦茶面白かった。前から一度はこの劇団を観ようと思っていた。勝手な先入観として閉鎖的な内輪受けのつまらなそうなイメージ。だがそれは全くの偏見、もっと早くに観るべきだった。疾走感、リズム感、サービス精神が段違い。思い入れたっぷりにたらたら演るのは寺山修司っぽくない。訳も分からぬまま、捲し立てるひとときの騒乱。一瞬の積み重ねだけがこの世の全て。やはり演出(音楽性)のセンスなんだろう。寺山修司の書いた詩をノイズで掻き鳴らせ。
構成・脚色・演出の吉野翼(たすく)氏は会場の絵空箱の店主でもある。好き放題、会場も使って楽しませてくれる。正しい寺山修司の面白さの伝え方。筋肉少女帯、石井輝男、澁澤龍彦・・・。サブカル連想ゲームの脇にはいつも寺山修司が突っ立っていた。(『田園に死す』はジョージ秋山の『告白』が元ネタなのでは?)

ラストのまさにクライマックスで地震、凄いタイミング。虚構と現実の壁が崩壊するのかと思った。
全員(ほぼ)すっぴんで現実サイドから虚構サイドを眺めるラストの演出が効果的。女優のすっぴんはどんな化粧よりも美しい。
ギターのなすひろし氏とキーボードの秋桜子(あさこ)さんのユニット『みづうみ』が生演奏。LIVEに行きたい位良かった。

開場時から、からくり人形のように寺山スローモーションを奏でる5人の女優。芹澤あいさん、井口香さん、内海詩野さん、福田晴香さん、村田詩織さん。

①幻夢活劇「チャイナ・ドール 上海異人娼館」
原作はポーリーヌ・レアージュ(ドミニク・オーリーではないらしい)の『ロワッシイへの帰還』。1981年、寺山修司の監督した映画『上海異人娼館 チャイナ・ドール』を岸田理生がのぐち和美さんの為に1990年に戯曲化したものだそうだ。

ヒロインの小寺絢(こてらあや)さんが娼館に自ら入る。自分の純愛を無数の見知らぬ男に抱かれることで証明しようと。そこで彼女が目撃し体験したものとは!?

②舞踊詩劇「田園に死す」
寺山修司が自身の少年時代を舞台化。母親の呪縛に嫌気が差し、隣家の若妻と東京へ駆け落ちする約束。だがそんなものは嘘っぱちでしかない。何一つ上手く行かない現実、惨めな自身を背負ってよろよろと歩くのみ。

寺門祐介氏(現在の寺山修司)
多賀名啓太氏(少年時代の寺山修司)
キンカナさん(富田靖子の「さびしんぼう」風味の空気女)
中島猛氏(ブロッケンJr風味の逆関節男)
篠原志奈さん(母親)
制作&場内誘導の神崎ゆいさんも出演シーンあり!

こういう作劇を全面的に支持。面白かった。

ネタバレBOX

②恐山のイタコの舞踏シーンが最高。亡者達が変顔をしながら刻むド迫力の舞踏。

ステージ背面のシャッターが上がり、街角からガラスのドア越しに舞台を覗き見る出演者達。現実世界からするとこれは異質なお芝居でしかない。演っている役者達もこんな虚構にいつまでも付き合っちゃいられない。「ビール持ってきて!」
人狼TLPT O (オービット)

人狼TLPT O (オービット)

株式会社オラクルナイツ

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2023/06/06 (火) ~ 2023/06/11 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

大千秋楽を観劇。
言わずと知れたアドリブ劇ですが、オービットでは若手を多数起用しているようです。

ネタバレBOX

人狼TLPTオービットは昨年上野ストアハウスで行われた際にも見ていますが、同じ役者さんでも演技力・人狼ゲーム的な推理の組み立てなどが成長している感があって、感慨深い。
アビリティイレブン

アビリティイレブン

Monkey Works

シアターサンモール(東京都)

2023/05/31 (水) ~ 2023/06/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

憧れのサンパチマイクが面白かったので、観てみました。

ネタバレBOX

アビリティ紹介の小芝居が11人分繰り返されるのは正直微妙だった…。
笑劇とか純コメディ的な作品ならともかく、物語の骨格自体はシリアスなお話ですし…。
ああいうギャグ的要素は織り交ぜる形だから、面白いのであって、そればかりではだれると思う。
R.P.G. ロール・プレーイング・ゲーム

R.P.G. ロール・プレーイング・ゲーム

ワンツーワークス

赤坂RED/THEATER(東京都)

2023/06/09 (金) ~ 2023/06/18 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

原作未読、情報ゼロでの観劇。
ワンツーワークスの作品はジレンマジレンマ以来ですが、やはり凄い。
結構こみいった脚本だと思うのですが、役者陣の演じ分けも上手い。

舞台「キノの旅Ⅱ -the Beautiful World- 」【6月22日~23日公演中止】

舞台「キノの旅Ⅱ -the Beautiful World- 」【6月22日~23日公演中止】

ゴーチ・ブラザーズ

あうるすぽっと(東京都)

2023/06/15 (木) ~ 2023/06/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2023/06/17 (土) 13:00

座席1階

時雨沢恵一のヒット小説の舞台化第2弾。漫画やゲームなどにもなっており、舞台では連作の短編をピックアップする形で構成されている。人気小説の世界観をどこまで舞台で表現できるか、という観点で書きたい。

小説の世界観は、基本的には読み手の主観でつくられるものだから、多くの読者の考える世界観とそれほど離れていなければよいのかもしれない。しかし、自分としてはやはり舞台では無理があったのではないかと思う。主人公のキノの胸の内は短編をつなぎ合わせていく中ではどうしても二の次になってしまうだろうし、オートバイである相棒エルメスは小説で擬人化するのはたやすいが、舞台だとどんな美術や演出を施しても不自然になる。今作で辻凌志朗が両腕につけているホースはオートバイの部品を模しているのだが、最後まで不自然さが抜けなかった。

映写を活用した演出の努力は多としたい。が、例えばロードムービーのような形ならもっとスムーズだったのかも。舞台で諸国を旅する状況を表現するのは苦労したと思う。一方で、さまざまな文化や背景、価値観を持つ国々が登場する物語の面白さは舞台でも味わえる。どの国が登場するかはネタバレに相当するので触れないが、舞台ではその国の描写や人間たちにあまり深入りしている余裕がないためか、ちょっと表層的な感じもした。原作者がパンフレットで語っている「舞台で魅せるための独創的なアイデア」とは何を指しているのだろうかと思った。

比較するのは適当でないかもしれないが、例えばハリーポッターの映画は、原作の世界観を大切にして作ってあったと思う。これはやはり、映画だからできたのではないか。生身の人間が目の前で演じる舞台では、どうなんだろうか。
やはり、舞台では限界がある。それを承知で、どこまで没頭して楽しめるかにかかっている。

幸多かれと願ふ者

幸多かれと願ふ者

RTC project

大阪市立芸術創造館(大阪府)

2023/06/16 (金) ~ 2023/06/18 (日)公演終了

満足度★★★★★

SFファンタジー ディズニー顔負けの完成度 人間の傲慢さと、トップに立った人の心境の移り変わりをとても上手く表現している
それ以外にも、恋愛や師弟関係を交えながら観客を飽きさせない
良い劇団を発見できた感じ

キラメキ 2023

キラメキ 2023

関西演劇集団 Z system

駅前劇場(東京都)

2023/06/15 (木) ~ 2023/06/18 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

5年前のproject真夏の太陽ガールズでの東京公演がすごく良かったので、もう1度観たいと思っていた作品。今回もパワフルで素晴らしかった。何度もうるうる。

雨の世界

雨の世界

SPIRAL MOON

「劇」小劇場(東京都)

2023/06/14 (水) ~ 2023/06/18 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

ウテン結構の時とはストーリーや演出に違いがあったがこれはこれで面白かった。

ネタバレBOX

終盤の幸子とカミーユの会話は何度見ても良い。
壊れた風景

壊れた風景

劇団かに座

スタジオ「HIKARI」(神奈川県)

2023/06/02 (金) ~ 2023/06/04 (日)公演終了

実演鑑賞

老舗の域になる神奈川の地域劇団だが、世代交替が実現している模様で活動の主体は若手。前に観たのが10年前、今回2度目であった。5年前に別役戯曲に挑戦していて、今回「壊れた風景」をやるというので久々に出かけた。スタジオHIKARIも暫くぶり。
「壊れた風景」は私が別役作品の秀逸な世界観を知った最初の戯曲で、別役に「強い」名取事務所が周到に構築したシュールで怖い舞台だった。
別役戯曲がその成立のために要求する役者力、演出力を、失礼ながら備えている劇団とは思わないながら、しかし意外に迫れているのではないか、との“若干の”期待もあった。当日は遅れて入場。野山を行く者が持主のいないシートに置かれた荷物と鳴り続けている蓄音機に目を止め、次第に集まって来る。何のかのとうまく正当化をしながら置かれている豊富な食べ物に手を出していく。別役らしい丁寧な言葉遣いによる会話全てが、さもしい自己正当化のために為されて行く光景は日本的な村社会の縮図であり、そして他人の物を奪う侵略の構図でもある。
平常な会話は意外に(失礼ながら)面白く進んで行く。だがラストに至って浮かび上がるもの・・これが見えて来なかった。それはやはりそれまでのやり取りの中で欺瞞に満ちた人間の本質が伏線として表現し切れていない所にある。最後のオチは別役氏が作品を着想した実際の事件の顛末なのだろうが、この戯曲は冷や水を浴びせるような警官の報告を聞いて、死者たちの遺した(れっきとした持主が存在した)食べ物を食欲にあかして口にしていた、という己の行為を突きつけられ、動揺させられる風景でなければならない。そこを到達点とすると、やはりこれは一筋縄で行かない戯曲であった。
会話のテンポは中々よく、アプローチによって芝居の核に迫れたのでは・・という感触は残った。

雨の世界

雨の世界

SPIRAL MOON

「劇」小劇場(東京都)

2023/06/14 (水) ~ 2023/06/18 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

月の公演を観劇。劇場に向かう途中から雨が。上演内容とリンクでもしてるのかと思うくらいの天候でした。
実際に雨女だったら、どこに行くのも天候悪いなんて可哀そうすぎる。不思議な世界観に浸れました。

Family~明けてほしくなかった梅雨~

Family~明けてほしくなかった梅雨~

ヒューマン・マーケット

ウエストエンドスタジオ(東京都)

2023/06/13 (火) ~ 2023/06/18 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

「Family」シリーズ、初観劇。観劇中は鈴木家と佐藤家がごっちゃになっていたが後で当日パンフで理解した。確かに分かりやすい芝居で最後まで楽しめた。

ネタバレBOX

照明の暗転や音響がない舞台は極めて珍しい。でもセリフのテンポ、役者の出入りのタイミングがいいので不足感はない。物語はちょっとして事件が起こったりしてホームドラマにありがちなパターンだが、(ちょっとクサいけど)素敵なセリフが散りばめられていたり、個性的でひたむきなキャラクターを役者陣が好演していて、スッと心に入ってきてジンワリ浸み込んでいく佳作になっている。全身黒ずくめの謎の女がいい触媒になっており、まさに“雨降って地固まる”だ。今後の展開にも期待したい。
新ハムレット

新ハムレット

パルコ・プロデュース

PARCO劇場(東京都)

2023/06/06 (火) ~ 2023/06/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

深刻劇や英雄譚のようにとられるハムレットを、ただの世慣れない反抗的若者に変えて見せた。それは自負と自己嫌悪がない混ざった太宰治その人の分身なのである。だからハムレットは「自殺 苦しみから逃れる方法はそれだけなのだ」「よってたかって僕を機違いにしようとしている(バビナール中毒事件!)」とごちる。それを、クローディアスは「国のため)君の実感を欺いてください」といさめ、「先王が生きてていれば先王に反抗している。先王を軽蔑し、てこずらせているでしょう」と見抜いている。一場の二人のやり取りだけでも、太宰治の才能は明らかであり、五戸真理枝のカット・演出はよくできていた。

レアチーズ(駒井健介)は屈託のない陽気な青年、ポローニアスはただの子煩悩の好々爺である。これはハムレットの家族と対照的。ただポローニアスは次第に舞台回しへと役割を上げていき、王を試す芝居もポローニアスの発案で行われる。太宰版ハムレットはそんな人物ではないからの選手交代である。

男優陣が好演。とくにポローニアスの池田成志は、この芝居の中軸を担って力演だった。ハムレットの木村達成もこんなにうまい俳優とは知らなかった。立ち姿もセリフも、感情のニュアンスもいい感じだった。平田満も、出番はこの二人に比べて少ないが、渋い苦労人ぶりがよく出ていた。唯一、家族外・宮廷外の人間であるホレーシオの加藤諒は、舞台をかき回すトリックスターで、ユーモアとデフォルメがよかった。

太宰自身が「上演するための戯曲ではない」と前口上しているように、原作はそれぞれのセリフがとんでもなく長い。小説は人間の内面を語るためのものだということがよくわかる。特に一人称小説はそうだ。五戸真理枝さんは舞台用にうまく刈り込んでメリハリをつけた。編集はさすがだった。

ネタバレBOX

先王殺しはうわさに過ぎないようだが、ポローニアスの「私は見たのです。見たのです」(何を見たかは不明)の執拗な攻めに、さしものクローヂヤスもキレて刺し殺してしまう。太宰の改変悲劇である。ただ、クローヂヤスがシロなら、騒いでいるだけでポローニアスを殺すのは行き過ぎでは? 殺すということは「クロ」なのかという疑いも起きる。実はクローヂヤスの容疑はグレーのままと言えるだろう。(本人は「一度頭で考えただけ」というが、それも当人の弁でしかない)

ガーツルードが(オフィーリヤのかわりに)池に身を投げるのも、少々苦しいつじつま合わせでしかない。(「ハムレット」なのだから、もう少し人が死なないと、という)

しかし家庭の悲劇が高まったちょうどその時、大音響とともに「戦争」が始まる。なんと! 原作の出版は1941年7月。すでに日米開戦は必至と思っていたのだろうか。舞台でも中央の赤丸を大きく右にずらした日章旗もどきが掲げられ、クローヂヤスのカーキ色の服の胸にも同じ日の丸もどき。小さな悲劇(王家だけど)を、国家の暴力が飲み込んでいく様は、シェイクスピアのノルウエーの進軍をもとにしながら、それを超えた。
ノートルダムの鐘【1月6日~8日公演中止】

ノートルダムの鐘【1月6日~8日公演中止】

劇団四季

京都劇場(京都府)

2022/12/18 (日) ~ 2023/04/09 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

大司教フロロー(野中万寿夫)の若き日の弟との別れから、カジモド(寺元健一郎)が怒りと悲しみからフロローと対決するまでをテンポよく見せていく。ただ一つ一つの情景がアッサリ気味。たとえばカジモドがジプシーのエスメラルダ(松山育恵)と出会う、祭りの日も、カジモドがタブーを破って人前に我が身をさらすためらいが少なくて、十分な葛藤なしに流れてしまう。フロローがエスメラルダに横恋慕するのも、なぜそれほどに恋焦がれるのかわからない。そう決まっているから恋するというように見える。

カジモドの心のうちを示すため、聖堂の聖人像やガーゴイルたちがコロスになるのも、説明的な感じ。シリアスな悲劇のつくりなのだが、物語の大きなうねりにのれなかった。

東京の四季劇場で23年5月27日(土曜)夜に見たのだが、サイトにその情報がないので、ここに書いておく

音楽劇「ブンとフン」

音楽劇「ブンとフン」

NHKエンタープライズ

よみうり大手町ホール(東京都)

2023/06/15 (木) ~ 2023/06/23 (金)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

井上ひさしの、お偉いさんを揶揄し(「権威がなければ皆ただの人間」)、戦争にあきれ(「魂がないと人間は」)る歌の数々がおもしろい。フン先生(橋本良亮=イケメン)のパソコンから飛び出した=50年前の原作の設定がアップデートされている=ブン(浅川梨奈=かわいい)の奇想天外の大泥棒の話である。「ブン、どこにでもいるブン、誰にでもなるブン、ふしぎなブン、ゆかいなブン」のブンの歌を聴いて、「ブン=文=ことば」なのだと初めて気づいた。井上ひさしは芝居に演劇論をおりこむように、小説に文学論を入れていたのだ。言葉こそ、何でもできる不思議で愉快な存在なのだと。しかも原作の小説よりも、この歌が長く、内容を膨らませている。この脚色のおかげで、一層井上ひさしの隠し味がくっきりした。(権威を盗め」の歌も、拡充している)

ブンが誰にでもなるところを、フン先生以外の俳優が、入れ代わり立ち代わりブンになって見せる演出も面白かった。
ブン逮捕のため呼び出される悪魔(松永玲子)が、弾けた演技でキャラが立っていて面白い。今回トップの怪演である。

ピアノ(かみむら周平、音楽も)、ギター、ヴァイオリン(鹿野真央、出演も)の音楽をバックに、朗読劇としては十分に質の高いものだった。ナレーターは升毅。

ネタバレBOX

ブンとフンは愛し合うようになる展開は、小説だと親子のような愛情だが、舞台では恋人同士に。俳優に合わせた自然な変更だ。おかげで若い人気俳優二人のロマンスで舞台もロマンチックに。ロマンスは芝居の脚色なので「ただ好きなのさ 理屈はいらない」の歌もは脚色かと思ったら、原作にあったのは意外だった。原作の持つの幅の広さ、人生の知恵の豊かさは半端ない。

ラストは小説とは違っていた。裁判で有罪になったブンは、北朝鮮とロシアのブンと衝突し、危なくなる。それを救おうと、フン先生が小説に新たに手を入れよう、というところで幕。原作では、刑務所は嫌なものという常識を覆し、「ブンにならって盗みましょう、みんなで仲良く盗みましょう」「はいりましょうよ 刑務所天国良いところだよ」と、さわがしい大団円?になる。

今ふと思ったが、井上ひさしのこのラスト、ひさしの個人的ナンバーワン映画「ミラノの奇跡」に似ていないか? 「ミラノの奇跡」は、バラックのユートピアを警察に追われた貧民たちが、みんな揃って天国へ登っていく。
夏至を待つ

夏至を待つ

遊気舎

in→dependent theatre 1st(大阪府)

2023/06/15 (木) ~ 2023/06/18 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2023/06/17 (土)

おばあさんの住んでいた古い家でドラマは展開します。いくつもの時代を経た家族の愛と人生の物語です。文学的な香りのお芝居でした。

少女都市からの呼び声

少女都市からの呼び声

新宿梁山泊

花園神社(東京都)

2023/06/11 (日) ~ 2023/06/26 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

唐十郎らしい初期の作品だ。
唐十郎もすっかり現代演劇古典の一角を占めるようになって、この唐節満載の舞台にも観客は慣れている。ことに今回は、このテント公演を皮切りに、続いて、渋谷のおしゃれの先端パルコ劇場で、ジャニーズやタカラヅカ、さらにはナイロンの人気者を迎えてひと月(30公演)の公演を控えている。秋にはこの本で劇団新宿梁山泊の新人公演をザ・スズナリでやるという。この興行形態もかつてない挑戦的な試みである。昭和後半以降の劇作家で、小から大まで、どんな劇場でも上演できる作品が描ける作家は数少ない。
赤テントの継承劇団では最大の劇団の首領・金守珍の演出で、続くパルコ公演も、ほとんど脇は同じキャストでやるらしい。他の継承劇団がもっぱら唐作品だけしかやらないのに、新宿梁山泊は、キムの作品をはじめ韓国作品など手数も広く、テントに変わる主劇場・すみだパーク倉もある。今回は始祖の地、新宿花園神社の境内に紫テントを張って夜だけのの16回の公演である。
「少女都市からの呼び声」は初期の唐の奔放な劇的世界がよく現われた作品だ。
主人公の名は、いつもの田口。舞台が開くと田口(六平直政)は原因不明の病で倒れ、緊急手術の手術台の上にいる。緊急手術の結果、田口の腹の中からはふさふさとした女性の髪の毛が摘出される。それは、双子として生まれるはずだった妹、雪子(水島カンナ)が田口の体内で育った髪の毛だった。田口は幻の雪子を探して旅に出る。
さすがに作者だけのことはあって、唐十郎本人の雪子の説明はうまい「男が起きるときだけ起き上がるもろいガラスの少女、自分の変わりに生まれていたかも知れない少女、舞台には、いつも、損阿はかなく美しい妹が潜んでいるのです」。かくして、ガラスの体をもった少女は、満州の荒野をさまよい、オテナの塔を目指した旅する田口の前に清純と淫靡のさまざまな姿で現われる。
満州に君臨するフランケ醜態博士(金守珍)、日本軍の連隊長(風間杜夫)、彼らを支える看護師たちや兵隊、乞食老人が紡ぎ出す幻の世界を縫って蝶の羽を背に一輪車に乗った子供のような島田雅彦(染谷知里)が駆け回る。
話の筋はよくわからない。しかし見ていれば、舞台に引き込まれてしまうのが唐マジックである。奔放なイメージで次々に現われるシーン、言葉の力。何かにとりつかれたような俳優の演技、押し被せるような大音響の音楽。かつての暴力的な力は薄くなっているが、それでも、舞台はテントを圧倒する。
ここには出発点の唐の演劇が残っている。それが、あの、パルコ劇場は移ってどうなるか。一部の俳優が変わるだけで、唐を引き継ぐこの演出が大きく変わるとも思えないが、たのしみではある。


ネタバレBOX

戯曲が手に入りやすい形で出版されている。読むとなるほどとよくわかる。早川書房刊の演劇文庫。
雨の世界

雨の世界

SPIRAL MOON

「劇」小劇場(東京都)

2023/06/14 (水) ~ 2023/06/18 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

二度目のSPIRAL MOONは前回に同じく「劇」小で。ウテン結構作品を初めて取り上げた上演の由。一時間余の小編である。私としては物語の要素を回収し切れたのか?という戯曲の問題が残ったが、若い作家の若い作品をSPIRALの手で端正な舞台に仕上げた、と見るべきだろうか。

ネタバレBOX

雨男、雨女に着眼した意欲的な作品だが、Spiral所縁のはせひろいち氏ならばどう書いたか、前川知大なら?などと想像する。SFや空想科学なフィクションで重要なのは設定で、役者がその世界を生きられているか。私が観た組はその存在である主役は秋葉女史。初日だったせいか台詞の一瞬のまごつきも(ステージが間近なだけに)見えたが、役の存在を人生観にまで落とし込めていたか、あるいはそれが可能なテキストだったか、気になった。彼女にとって雨は小さい頃からイベント毎に降られていたものだった、とすると、それが彼女自身にどう影響したか、また通った小学校は不運な年代として全校児童が共有する記憶になるものだろう。実は百発百中ではない、という事であれば、本人も周囲も奇異には感じなかったという事があるだろう(個人的にはその線で行きたい)、そうすると四人組の友達でやった「実験」の結果の捉え方もより緩やかになろう。それがある確信に至るまでもう一プロセス必要だろう、とか。
エピソードは面白い。恋と友情の青春時代、そして雨女の由来に迫り「立ち向かう」人生の師として現れた姉の存在等。その人の人生にはいつも雨が降っている、というイメージは強く感覚に訴えるものがある。舞台はそれを意識した感があった。
が、上記諸々により終演時に浄化へ到達しなかった後味である。以後のステージではどうなっているか、また別の組もあるとの事で、見てみたい気持ちはある。

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