諜報員 公演情報 パラドックス定数「諜報員」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    ゾルゲ事件に関連して逮捕された四人(一人はおとりで実は三人)のゾルゲ側諜報員が、お互い何も知らず(あるいは知らないふりをして)尋問に立ち向かったか、という話で、実話がベースになっているが、少人数の腹の探り合いドラマである。事件は複雑ではあるが、かなり事実もわかってきている歴史ものだ。それを背景に内閣情報部と特高警察の捜査の張り合いを枠にドラマが進んでいく。もちろん新聞記者や医者、官僚など、一応その時代でも身分保障されている諜報員は拷問しにくいし、なかなか組織の秘密は口にしない。内報者も潜入されている。ドラマはこういうシチュエーションで描く人間ドラマである。この手の作品を書いたらもうイギリスものの独壇場であるが、野木も懸命に追うが、かなり苦しい。
    落とし穴は意外なところにある。細かく見てみたいところだが、その前に、この舞台斜めに組まれていて声が客席に向いていないだけでなく、ひそひそ声の台詞が多く、ことに幕開きの場はほとんど聞こえない。後ろから3列目でこちらも老年だから、申し訳ありませんというのはこちらかも知れないが、周囲の年配の方はすっかり諦めて寝落ちしていた方もいたから、こちらのせいばかりではない。次の場になると声量は上がる場もあって、以後は聞き取れる場と、聞き取りにくい場が交互にやってくる。話の背景はある程度知っているから訳がわからないわけではないが、舞台としてはどうだろう。
    というわけでとても批評できるほどには見ていないのだが、老年の方は補聴器をお忘れなく。劇場パンフによると演出の野木は、普通の生活のようにと芝居がかる役者を憲明に抑えたと言うが、台詞が通るようにするのと、日常会話を表現するのとは、俳優の訓練術のテクニックである。折角面白い素材なのに残念。

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    2024/03/14 12:21

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