
明治の柩
劇団東演
紀伊國屋ホール(東京都)
2015/11/27 (金) ~ 2015/12/04 (金)公演終了
満足度★★★★
激動の時代を描く
観る前に漠然とイメージしていたのは、公害と闘った政治家の生涯を描く偉人伝的なものだったが、実際に観てみるとそういう作品ではなかった。
江戸の封建社会からご一新を経て立憲君主制へ。そうやって始まった明治という時代に、誇りを持っていた主人公。
長い長い鎖国が終わり、時代は音を立てて動いている。凄まじい勢いで海外から流れ込んでいく宗教や思想。まだ日本に根付いていないそれらを受け入れる者・退ける者。いや、それ以前に民主主義でさえまだ限定的なものでしかない。
そういう激動の時代の中であがきのたうつ人々。この舞台で描かれていたのは、そういう光景だった。
ここで描かれているさまざまな葛藤を、単に過去のものとはできない。そういう切実さを感じさせる舞台だった。明治から遠く離れても、なお私たちは寄るべき指針を求め続けているのかもしれない。

廃墟
劇団東演
文化アトリエ(東京都)
2015/05/29 (金) ~ 2015/06/01 (月)公演終了
満足度★★★★★
骨太な芝居
観念的な長台詞の応酬が続くのに、なんでこんなに面白いんだろう。それが最初の印象だった。
キャスト陣の熱演に圧倒されると同時に、骨太な脚本を生き生きとよみがえらせる演出が戦後の混乱に生きる人々の姿を明確に立ち上げていたように感じられた。

15 Minutes Made Volume12
Mrs.fictions
インディペンデントシアターOji(東京都)
2015/07/08 (水) ~ 2015/07/14 (火)公演終了
満足度★★★★★
濃密で贅沢な約2時間
15分なんて、ぼんやりしてたらあっという間に過ぎてしまうだろう。そんな短い時間の中で上演された6つの作品は、いずれも、それぞれの世界、それぞれの物語をきっちり立ち上げて見せてくれた。そういう濃密で贅沢な約2時間。
トップを飾った『ミセスフイクションズの祭りの準備』は、これまで拝見してきたMrs.fictionsとは違う手触りもありつつ、でもいかにも彼ららしい、と思える作品だった。

15 Minutes Made Volume13
Mrs.fictions
インディペンデントシアターOji(東京都)
2015/08/19 (水) ~ 2015/08/25 (火)公演終了
満足度★★★★★
祭りのあと
7月のVolume12から続く2ヶ月連続のショーケースイベント。
15分の短編を6本、よくもこんなにいろんな舞台があるものだと思うような個性豊かな創り手を集めた見応えのあるラインナップと、今回トリを務めて2ヶ月続きのイベントを締めくくったMrs.fictionsの作品の完成度が印象に残った。

APOFES 2015
APOCシアター
APOCシアター(東京都)
2015/01/16 (金) ~ 2015/02/01 (日)公演終了
満足度★★★★
大森茉莉子さん渾身の一人芝居『肥後系 雪燈篭』
物語の終わりに、語り手がいったい誰だったのかわかったとき、奇妙な恋が確かな実を結んでいたことを知り、そして、その命を育むことが奄龍の恋の成就だったのだろう、と感じられた。
南国に降る雪。雪模様の燈篭。雪輪柄の着物。毎回のことだけれど、アヤメの品種からとられたタイトルを、どうしてこれほど活かすことができるのか、不思議に想ったりする。
加えて、言葉ひとつひとつのチョイスの確かさと、積み上げていくディティールの説得力。眼で味わい、耳で楽しみ、鮮やかなイメージが、余韻を残す舞台。
渾身の一人芝居と見事な生演奏にがっつりのめり込む約1時間。演じ手に合わせた脚本や演出も堪能した。

《満員御礼》雑種 晴姿
あやめ十八番
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2015/07/22 (水) ~ 2015/07/26 (日)公演終了
満足度★★★★
物語を紡いで……
番外公演と銘打たれた今回の舞台は、老舗のお団子屋さん家族を中心とした15の短編が全体でひとつの物語を形づくる連作短編。
いくつものエピソードがひとつひとつ結末を持ちながら、冒頭からラストに向かって繋がる「晴れ姿」の物語を描き出す、繊細なレース編みのような、いや、やわらかな団子を丁寧に餡でくるむような、そういう優しい手仕事にも似た物語。
ひとつひとつの言葉や場面も、演じている役者さんたちの表情も、そしてあやめ十八番名物の生演奏と生歌によるカントリーの響きも、神棚を模した美術も、思い返すと愛しく感じられる、そういう舞台だった。

長井古種 日月
あやめ十八番
d-倉庫(東京都)
2015/04/09 (木) ~ 2015/04/14 (火)公演終了
満足度★★★★★
物語の豊穣
多重構造の物語の中で描かれた、何を信じるか、という問い。
詩的な言葉の響きや、生演奏・生歌、ダンスなどの豪華さを堪能すると同時に、豊饒な物語とキャスト陣の魅力に溺れる110分。
これまでとは作風が変わった、という感想と、いや、やはりあやめ十八番らしい、という思いが共存する公演となった。

岸田國士 短編四作品上演
劇 えうれか
ギャラリー・ルデコ 5(東京都)
2015/12/08 (火) ~ 2015/12/13 (日)公演終了
満足度★★★★
繊細な時間
こじんまりした空間。ヴィオラの生演奏。短い物語の中でそれぞれの時代と人物を繊細に描き出していく演出が印象に残った。
『ぶらんこ』の、いかにも日常的な朝の風景を過ごす夫婦が夢の記憶を共有している雰囲気と、『恋愛恐怖病』に登場する女の自意識と恋慕にゆれる様子が印象に残った。

さよならブレーメン
ナ・ポリプロピレン
駅前劇場(東京都)
2015/12/28 (月) ~ 2015/12/30 (水)公演終了
満足度★★★
2015年観劇納め
昨年はお休みだったものの、
もう何年もの間観つづけている年末恒例の公演。
今年も笑って笑っての観劇納めでした。
ベテランの役者さんたちがあそこまではっちゃける姿を観られるのも貴重な機会ではないでしょうか。
GUNDAM THE ORIGINを映画館で観るくらいには
ファーストガンダムが好きなので、今回はネタ元が良く分かり一層楽しませてもらいました(ドラゴンボールはさっぱりでしたが)
そして、ガンダムの音楽を久しぶりに聴いて、良い曲だと再認識しました。
タイトルはさよならだけど、また来年も演劇集団ブレーメンの面々に会えますように。

従軍中のウィトゲンシュタインが(略)
Théâtre des Annales
こまばアゴラ劇場(東京都)
2015/10/15 (木) ~ 2015/10/27 (火)公演終了
満足度★★★★
そのまなざしが……
この舞台のテーマは哲学だ、と言ってしまうと、難しいと思われるかもしれない。けれどそんなことはまったくなくて、戦場の緊迫した空気や他の兵士たちとの確執や交流、そして何より、そこにはいない懐かしい大切な友との精神的な交歓が物語を牽引する。
緊張感に満ちた戦場の空気の中で、しかし彼を悩ませているのは死への恐怖ではない。手に取れないものを追う思考は、時には現実から何かを得、時に何かを与える。
俳優の心身が演じる役柄と密接に呼応し、物語は張り詰めたまま進んでいく。
クライマックスの暗闇に、ときおり閃光がひらめく。ガタガタと音をたてる世界に、客席で身体を硬くする。迫り来る敵襲に否応なく高められた緊張感と見えない舞台上を動く兵士たちの息遣い。
そして、明るくなった舞台の上で、ルートヴィヒが到達した思想。それを理解した、とは言わない。けれどたとえば、彼について書かれた本を手に取ってみようか、と思ってみたりもする。
それは、もう会うことのできない友に向けた彼のまなざしが、印象に残ったからかもしれない。

イヌジニ
雀組ホエールズ
OFF OFFシアター(東京都)
2015/07/15 (水) ~ 2015/07/26 (日)公演終了
満足度★★★★★
素晴らしい!
ペットの殺処分の現状を背景に、社会問題に一石を投じる作品。
ただ、ユーモアタップリにエンターテイメント性も持たせながら描かれるので、重くなり過ぎず、時間もあっという間に経ってしまった^ ^
ペットの擬人化がわざとらしくならない演出と演技は見事としか言いようが無い。
2016年の再演が待ち遠しい秀作です!

東京裁判 pit北/区域閉館公演
パラドックス定数
pit北/区域(東京都)
2015/12/22 (火) ~ 2015/12/31 (木)公演終了
満足度★★★★
傍聴席と普通席両方で観劇
Pit北/区域閉館は本当に残念。
傍聴席、普通席と二つの位置から観られる劇場の構造は、
この演目には貴重なファクターだったと思う。
上から見下ろす傍聴席は書かれているメモの中身とか資料の文字とか
妙に冷静にいろんなところに目がいってしまう。
後、後列が無いので身を乗り出せるのもこの席の醍醐味。
ただし、物語に入り込みたい場合は一般席が良いかも。
俳優陣の熱量がすごかった!
観る度に俳優陣の感情表現が豊かになっており、
笑いが起こる場面も増えている気がする。

マクベス - Paint it, Black!
流山児★事務所
座・高円寺1(東京都)
2015/08/14 (金) ~ 2015/08/23 (日)公演終了
満足度★★★★
混沌の面白さ
物語の舞台をベトナムに移し替えたマクベスは、歌や群舞を含めた詩的な印象と、狂言回し的に登場する3人だけでなく全部で17人もいる魔女たちのうごめく様子、客席が揺れるほど迫力ある大人数での殺陣など、多くのみどころに加えて、現代に通じる批評精神のこもったチカラ技ともいえる舞台だった。
男性が演じる魔女の歌声が、観終わったあとも長いこと耳に残った。

「贋作幕末太陽傳」
椿組
花園神社(東京都)
2015/07/10 (金) ~ 2015/07/21 (火)公演終了
満足度★★★★
重なる想い
夏の風物詩ともいえる椿組のテント芝居。今回は鄭義信氏の作・演出で、映画を題材にした群像劇だった。
つぶれかけた映画館。映画の撮影現場。少年時代の思い出。笑いと郷愁、そして映画への愛情を重ねながら描く風景はどこか懐かしさを感じさせた。

ライン(国境)の向こう【ご来場ありがとうございました!次回は秋!!】
劇団チョコレートケーキ
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2015/12/17 (木) ~ 2015/12/27 (日)公演終了
満足度★★★
コラボならでは
設定は秀逸。
ただし、いつものようなヒリヒリした感じではなく、
リアルな中にも笑いが起こる作品でした。
豪華なキャスティングは見応えがあり、
特に戸田恵子さんはさすがのひとことでした。

チャンバラ ~楽劇天保水滸伝~
流山児★事務所
ザ・スズナリ(東京都)
2015/01/17 (土) ~ 2015/01/25 (日)公演終了
満足度★★★★
そうか!
休憩を含め2時間40分という長尺で、生演奏や立ち回りもたっぷりの盛りだくさんな舞台。
パワフルで、したたかで、滑稽で、猥雑で、哀切で、アナーキーで、
そうか、これをひと言で言うとアングラってヤツなのかな、と思ったりする。
2010年に亡くなった山元清多氏の初期の名作戯曲をゆかりの4団体が参加し、ご出演予定であったが上演前に亡くなった斎藤晴彦さんと、お2人の追悼公演となった。
山元さんの弟子である鄭さんが演出されたということで、鄭さんのカラーも色濃く感じられて、どの辺りまでがもともとの戯曲にあったものなのか、たとえばあの人形劇の部分などはどうか、などと言うことが気になった。
人形劇から繋がるあのラストがあるとないとでは、ずいぶん印象が変わるだろう、などと考えたりもした。

幽悲伝
劇団Patch
森ノ宮ピロティホール(大阪府)
2015/12/19 (土) ~ 2015/12/20 (日)公演終了
満足度★★★★
千秋楽…スタンディングオベーション!
千秋楽は、スタンディングオベーションでした!
お安い「初めまシート」にしたのが失敗だったか…。
大きなピロティホールの最後列の端っこの席になってしまいました…。
迫力有る殺陣の筈ですが、ちょっと遠くて、残念。

BREATH
演劇集団キャラメルボックス
サンシャイン劇場(東京都)
2015/12/10 (木) ~ 2015/12/25 (金)公演終了
満足度★★★
祝、30周年!
劇団の30周年最後を飾る作品。
過去作品のあのひとやこのひとがいろんな場面で登場する
古参のファンにはたまらない1本となりました。

わからなければモモエさんに聞け
劇団青い鳥
小劇場B1(東京都)
2015/12/15 (火) ~ 2015/12/20 (日)公演終了
満足度★★★★★
あんな風に歳をとりたい。
楽しいことばかりの人生なんてあるわけない。
辛かったことや悲しかったことだって、きっとあったはず。
それでも、松子さんや彼女が出会う人達のように
キラキラと目を輝かせる瞬間がそこかしこに散りばめられていたら、
振り返った時に、頬を緩ませて逝けるような気がする。
愛しい、暖かい時間をありがとう。

もっとも迷惑な客死
上野くん、電話です
スタジオ空洞(東京都)
2015/11/17 (火) ~ 2015/11/23 (月)公演終了
満足度★★★
ちょっと物足りなかった
「そして彼女はいなくなった」張りのミステリーを期待していたのですが少々肩透かしな感じではありました。
クラシカルなスパイものとしては面白かったです。
演出、音楽が特に格好良かった。
伏線を確認しながらもう一回観たかったです。