509号室−迷宮の設計者
名取事務所
小劇場B1(東京都)
2024/02/16 (金) ~ 2024/02/25 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
まずまずであった・・とは期待の高さゆえの感想。
名取事務所の韓国現代戯曲シリーズでこの作者、金旼貞(キム・ミンジョン)作品は三度目の登場らしい。作者の傾向は判らないが、他公演の概要を見ると一つは日帝支配下の朝鮮を舞台、一つは現代(戦後のどの時期か不明)を舞台としたいずれも濃厚な人間ドラマといった風だが、今作は対象との距離を取ったドキュメントなタッチで韓国の民主化闘争時代の弾圧の側面にフォーカスした舞台。
韓国の著名な建築家・金氏の設計とされている元政治犯収容施設を案内人と共に写真家が訪れる現代と、当局から設計を依頼された当時の経緯、そして現代の案内人の元恋人かと想像させるある収監者のこと、この三つの逸話が錯綜して劇が展開する。
後で振り返ってもたげた要望は、できればその高名な建築家の人生に迫るドラマとするか、拷問を含めた権力の術策を赤裸々に抉り出す告発劇とするか、、どちらかに寄せたものを観たかった。
理由を考えてみると、民主化を弾圧した権力は憎むべき相手である。これに異論は無い。ありようがない。
だが、水責めが行われた独房を、「その用途を知った上で建築家は設計したのかどうか」を問い始めると、「そのように意図したか否かに関わらず負う責任」が埒外に置かれ、問題が矮小化して行く感覚に陥る。
仮に建築家がそんな事を意図しなかったのだとしたら、(政治的スタンスを巡る市民の責任に関して)「あまりに鈍感」である事にある種の咎は生じそうである。
実際にはその高名な建築家は中々当局のリクエストに対して(多忙ゆえか、多忙との弁解が可能だからか)回答を延ばし、会社で対応に当たった部下の一人の青年が、登場人物としてフォーカスされている。実際には彼が設計を行ったらしい推測が成り立つ格好で、芝居の中で「告発」まがいの視線を受けるのは彼である。
写真家(フォトジャーナリスト)が最後に問い詰めるのは彼である。彼女はまた、案内人に「収監者」との関係も問うが、固有名詞を担うのは建築家のみ。数知れない被投獄者を代表する舞台上の彼が、その案内人にとって誰だったかはさほど重要でない。また同様に数知れなく居ただろう権力への協力者に関してもそれが誰にとっての何者であったかは重要でない。
重要となるのは、案内者である彼女が客観的事実を述べる範疇を逸脱し、「私的」言動を取り始めてからの話で、しかしこのドラマではその瞬間は訪れない。弾圧の事実の告発は私的であり得る事を超えて大きく公的な問題群となる。
三者がそれぞれに抱えた人生の断面が見えて初めてドラマは動き始めるのだとすれば、この舞台はそれぞれの人生の行方を微かに予感させるにとどまった。作者は実は人を登場させながら無機質なその建造物を、というより建造物の無機質さ(非人間性)を感覚的に観客に届ける着想があったのでは、等と想像する。その部分に呼応するような効果音(音楽)が印象的ではあった。
養生
ゆうめい
ザ・スズナリ(東京都)
2024/02/17 (土) ~ 2024/02/20 (火)公演終了
実演鑑賞
スズナリ公演であるのと蠱惑的なチラシに惹かれて観に行く。相変わらずシビアな、ブラックな状況と独特なエスケープのカタルシス。深夜バイトで男3人、実体験がベースにありそうだが生々しさと滑稽さと奇妙な装置による効果でフワッとしてる感触もゆうめいらしい。
ウンゲツィーファ主宰の本橋龍、青年団俳優・舞監の黒澤多生、俳優の田中祐希三名による臨場感のある(ふと訪れる夢的な時間も)芝居空間が、その空間の心地良さを維持して続いて行く。冒頭の本橋氏の語りがまずドキュメントな空気満載で、これ実体験でなきゃこうならんだろ、と思わせた最初に観た「弟兄」(だったか..これはかなり実体験反映のケースだったがそれでも脚色創作部分があったのだと知って結構衝撃であった)以来、ゆうめい舞台に漂う空気である。
現代の職場空間、人間関係、状況適応テク、相互の浸食具合等の描写に目を見開かれるのだが、それら細部に時代の風景が逆照射されて行く感じもある。
猛獣のくちづけ
くちびるの会
OFF OFFシアター(東京都)
2024/02/22 (木) ~ 2024/02/27 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
話は説明通りです
で なかなかに
話のインパクトと演者さんの熱量に圧倒されて
眠気も出なかった100分の作品
不条理SF系となるかしら
結構自分的には気に入りました
もとは仙台演劇祭での
40分の短編だったものに
今回は追加をしてアフタートークまで付けての
出血大サービスな作品と
あいなっておりました
長谷川圭一事件簿 ~Episode Zero~
劇団Cheminèe
エリア543(東京都)
2024/02/23 (金) ~ 2024/02/25 (日)公演終了
寉峯~カクホウ~
ラビット番長
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2024/02/22 (木) ~ 2024/02/26 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
将棋の駒を作る駒士の話です
半生ものであり
丁寧に作られた話で
人の人生を垣間見れるのは
なかなか興味深かった
舞台美術も綺麗でしたわ
Bチーム 『心の炎消えぬ間に、恋せよ乙女』
下北沢演劇祭実行委員会
北沢タウンホール(北沢区民会館)(東京都)
2024/02/22 (木) ~ 2024/02/25 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
短編ながら丁寧に作られていて
観ていてホッこりとする話でした
無料でもあり
演劇というものを広めようとしてるのが
なんとも心地よかったかなぁ と
長谷川圭一事件簿 ~Episode Zero~
劇団Cheminèe
エリア543(東京都)
2024/02/23 (金) ~ 2024/02/25 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★
2022年に観劇した別団体サンの作品が非常に素晴らしく、その関係者サンが所属する劇団ということで初回のステージを観に行きました。
コメディーと銘打っていたのにクスリともしなかった。その上演技も荒削りで、セリフすら覚えていない。(カーテンコールで演出家?の方が「短い準備期間で…」と言い訳をされていたが恐らくほとんど稽古をされていないのではないか?)
苦し紛れのアドリブが飛び交う舞台でした。
皆さんお若いので演技が未熟なのはまだいいにしても、全編を通して控室からの喋り声が丸聞こえで、それが現場での相談の類ならまだしも、「今のシーンよかったね〜」や「やらかしちゃった〜」という言葉が笑い声と一緒に聞こえてきて非常に不快だった。
団体内でこれを注意する人はいなかったのか?と不思議だった。
アフタートークも終始グダグダで、役者サンたちが「お気に入りのシーン」として、こちらからは何が面白いかわからない場面を「笑いを堪えるのに必死で〜」と喋っており、稽古場での内輪のノリを舞台に持ち込んだのだと合点がいった。
この規模とクオリティに対して三千円という料金は相場としてはかなり高く感じた。物販として戯曲も売っていたが、これも私としては高すぎるように感じ、そのためか買ってる人は見かけなかった。原作付きの演目ということで、もしかしたら原作者のマージンがかなり高いのかもしれない。
客出し時に周りを見ると結構な割合が出演者サンのお友達のようだったので、もともと身内に向けた発表会で、私のような演劇ウォッチャーははなからお呼びでないということなのだろう。
今までコリッチは会員登録観てきた!を書いたことはないのだが、今回はどうしてもと思い、不躾に失礼いたしました。
ふるさとの灯
劇団カオス
大阪公立大学杉本キャンパス旧教養地区北食堂2階オアシス(大阪府)
2024/02/23 (金) ~ 2024/02/24 (土)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
とにかく舞台となる民宿の舞台美術、登場人物が共に魅力的で「こんな民宿に泊まりたいのよー」と思わす安らぎの空間感がたまらんかった🎵そこで繰り広げられる物語は比較的地味なお話だけど明るいシーンや暗いシーンを照明の明るさとリンクさせる演出などで見やすかった♪久しぶりに学生演劇を観たけど改めて良いなーって🎶普段行けない大学キャンパスを訪れるのも楽しいしネ♪あと灯里役のぷてらさんがめちゃ可愛くて僕はメロメロになってしまいました\(^o^)/
長谷川圭一事件簿 ~Episode Zero~
劇団Cheminèe
エリア543(東京都)
2024/02/23 (金) ~ 2024/02/25 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
四年ぶりの公演、おめでとうございます。
第一印象は、「とにかくみんな若い」ということです。パンフレットを見たら、「高校生で劇団を旗揚げ」と書いてありました。納得。
さて、劇評になりますが、まだ若々しく、所々、せりふを滑らせたり、間合いが今一つ遅れたりしたりしていて、萌芽木期の劇団という印象でした。しかし、それゆえに伸びしろも大きいといえるので、公演の回数を重ねる中で、どんどんと演技に磨きをかけていってほしいと期待します。
それにしても高校生の旗揚げということに尊敬の念を抱きます。私が演劇に興味を抱いたころに、すでに旗揚げを考えていたとは。すばらしいですよね。
できれば、このメンバーの中に、一人でも二人でも、ベテラン風のメンバーが入ればとも思います。今回の推理&コメディーでは、どうしてもみなさんの演技が軽くなっていましたから。知り合いの劇団から「引き抜き」(笑)でもできませんかね。そうでなければ、しばらくは学校の「お楽しみ会」の劇くらいの軽さになってしまうと思います。劇団の構成メンバーのバランスというものも軽視することはできません。
これからの伸びを期待しています。見守っていきますね。
長谷川圭一事件簿 ~Episode Zero~
劇団Cheminèe
エリア543(東京都)
2024/02/23 (金) ~ 2024/02/25 (日)公演終了
リベルテ Vol.26
END es PRODUCE
本所松坂亭(東京都)
2024/02/22 (木) ~ 2024/03/03 (日)公演終了
川にはとうぜんはしがある
ばぶれるりぐる
こまばアゴラ劇場(東京都)
2024/02/22 (木) ~ 2024/02/25 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
出演者が誰でも観に行こうと思う劇団の1つが、ばぶれるりぐるです。
でも、今回の出演者は私得でした。
メガネニカナウというイベントの主催をされていて、関西では知らない人のいない役者でもある上杉逸平さん、ばぶれるりぐるの常連で関西の演技派女優、大江雅子さん。東京の劇団、劇団5454(ランドリー)の窪田道聡さん、唯一観たことなかったけど、とっても元気で可愛かった梨花ちゃん。
続きはネタバレBOXで、
寉峯~カクホウ~
ラビット番長
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2024/02/22 (木) ~ 2024/02/26 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
素晴らしい。ただただ素晴らしかった。
西川さんの役とシンクロしている存在は、それだけでもう感動的。
演劇における演者の魅力はやはり大きいなあ。と再認識でした。
ふるさとの灯
劇団カオス
大阪公立大学杉本キャンパス旧教養地区北食堂2階オアシス(大阪府)
2024/02/23 (金) ~ 2024/02/24 (土)公演終了
満足度★★★★★
凄く良かった‼️
今の関西学生劇団ではNo.1ではないかな🎵
めっちゃ泣きました‼️ビジュアル的にも、内容も最高😃⤴️⤴️
この流れを継続して欲しい‼️
長谷川圭一事件簿 ~Episode Zero~
劇団Cheminèe
エリア543(東京都)
2024/02/23 (金) ~ 2024/02/25 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
面白かったです。
事件が呆気なく解決してしまう印象はありましたが、何となくレトロな雰囲気の楽しい作品でした。
登場人物達のキャラも良く、特に主人公の長谷川圭一は、憎めない愛されキャラでした。
手作り感のある良い舞台でした。
寉峯~カクホウ~
ラビット番長
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2024/02/22 (木) ~ 2024/02/26 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
優しさあふれる作品で、とても良かったです。
将棋の駒を主軸とし、家族や仲間、恋愛や仕事等、様々な要素が詰まっていて観応えがありました。
役者さん達の演技も素晴らしく、笑いあり感動ありで、あっという間に時間が過ぎました。
改めて、家族について考えさせられ、心にじんわり響く良い舞台でした!
寉峯~カクホウ~
ラビット番長
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2024/02/22 (木) ~ 2024/02/26 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
凄く色々な方法論を試していて、物語の語り口としては非常に評価したい。辻褄の合わない時空間を超えた語り手の移行は徹底すればかなり面白い成果を得たと思う。
遠藤正己氏、駒師の雅号は寉峯(かくほう)。漆への拘りと盛り上げ将棋駒が特徴。駒は漆の塗り方で種類があり、「彫り駒」(文字の部分が凹んでいる)、「彫り埋め駒」(文字の部分が平ら)、「盛り上げ駒」(文字の部分が盛り上がっている)となる。
現代の名人五名とされている駒師の一人、大澤富月(ふげつ)氏に師事。富士駒の会(静岡県富士宮市で富月氏が主宰している駒師育成会)に所属。
2018年11月、第31期竜王戦(羽生善治竜王対広瀬章人八段)第三局にて寉峯の駒が選ばれる。将棋の駒は指して貰ってなんぼ。究極の高みに立つプロ棋士のタイトル戦に選ばれるということは全てが揃ったということ。この駒こそ、この対戦を飾るにふさわしいと。ボクシングの世界最高峰のタイトルマッチで選ばれるグローブのような崇高さ。人生を懸けるに値するとトップの面々を納得させる本物の重み。駒に「落ち着きがあり、見易く指し易い」と棋士達の評価は高い。
59歳で駒師になり、僅か7年でここまで辿り着いた天才。現在の駒師の中で群を抜く人気の彼の人生を紐解く。
最愛の妻と居酒屋を経営、順風満帆。44歳の時に妻が交通事故死。失意の中、店を畳む。仕事を転々とし、将棋サロン経営を思い立つ。良いものを揃えようと展示即売会に足を運ぶが将棋駒は非常に高価。手をこまねいていると「自分で作ることも出来ますよ。」と声を掛けられる。59歳にして、自分で将棋の駒を彫り出すことに。
寉峯~カクホウ~
ラビット番長
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2024/02/22 (木) ~ 2024/02/26 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
音楽の効果や照明もうまく使い、時制の往き来など展開もスムーズ。父娘の関係を、これ見よがしの泣かせ芝居にしないあたりもラビット番長の品の良さ。
養生
ゆうめい
ザ・スズナリ(東京都)
2024/02/17 (土) ~ 2024/02/20 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/02/16 (金) 14:00
百貨店の展示替えの深夜アルバイトの大学生(後に正規採用)二人と正社員による三人芝居。これも作者の実体験に基づくもの? だとすれば過去と較べて毒(?)が薄れてマイルドになった印象。
が、今回特筆すべきは3台の脚立を組み合わせた可動/変形式の大中小三大の装置を主とした舞台美術で「それをそう見立てるか」なども含めて堪能。
また、アルバイト時代と正規採用後を並行して見せ、ワキを同じ役者が片や正社員、片や後輩となる新入社員と演じ分けるのも面白い。
天才バカボンのパパなのだ
吉本興業
本多劇場(東京都)
2024/02/21 (水) ~ 2024/03/03 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/02/23 (金) 19:00
チョー有名なマンガを別役実が戯曲に、って、どんな風になるんだ、と思って観に行ったのだが、すごく面白かった。75分。
吉本興業主催ということで、コント系かと思う芸人と何人かの演劇人による公演だが、バカボンの世界観をある意味で忠実になぞった「不条理」のかたまり。笑うタイミングも人によって違うあたりも面白い。古くから知ってる浅野千鶴が]フツーに異常なこと言ってるのを観るのも、また楽しい。「脳が溶ける」印象。