最新の観てきた!クチコミ一覧

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細雪

細雪

明治座

博多座(福岡県)

2017/04/12 (水) ~ 2017/04/28 (金)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2017/04/12 (水) 11:00

座席1階j列42番

価格13,000円

賀来さんの粋な長女としての姿、水野さんの優しい関西弁、紫吹さんの、ふーんの返事の感情の表現、壮さんのたたずまい。とっても、四姉妹の掛け合いが、心を打ち、ラストの枝垂れ桜のシーンでは!号泣してしまいました。細雪の全てに関わる役者さん、スタッフさん、ありがとうございました❤️❤️❤️❤️

竜小太郎陽春特別公演

竜小太郎陽春特別公演

アイエス

三越劇場(東京都)

2017/04/12 (水) ~ 2017/04/23 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2017/04/12 (水) 11:00

生まれて初めて本格的な大衆演劇を観ました。楽しかった。ショートバージョンの『銭形平次』から、早着替えの名人芸、客席通路を練り歩いてのおひねり回収まで、ああ〜、こういう世界なんだと納得。

「漢達(おとこたち)の輓曳競馬(ばんえいけいば)」

「漢達(おとこたち)の輓曳競馬(ばんえいけいば)」

道産子男闘呼倶楽部

【閉館】SPACE 雑遊(東京都)

2017/04/05 (水) ~ 2017/04/09 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2017/04/09 (日) 15:00

価格3,500円

笑えて少し切なくて、とても面白かったです。
犬飼さん演じる内藤の子犬のような可愛い瞳にキュンとしました(*^▽^*)
津村さんは今回初めて拝見したんですが、とても素敵な役者さんでした☆
札幌公演でも沢山の方に観て頂きたい作品です!

新入社員のイジメ方

新入社員のイジメ方

劇団カンタービレ

ウッディシアター中目黒(東京都)

2017/04/06 (木) ~ 2017/04/10 (月)公演終了

満足度★★★

観劇した4月は、新入社員が入社してくる季節。物語はその新入社員研修という社会人第一歩を教育するというもの…ではなくタイトル通り、どのようにイジメるか、そんな悪意ある話である。もっとも新入社員研修のシーンと別のシーンが並行して展開するようで、交互に描かれる物語は、その関係性が弱いと思われる。

この公演…イジメでも楽しめたが、自分としては研修を通して学生から社会人へ変わっていく姿、または変わらない人間の本質的な面を描いた物語を観たかった。もっとも、そうすると劇としては「How To」的になるかもしれないが、そこは工夫次第であろう。
(上演時間1時間40分)

ネタバレBOX

舞台セット(転換も含め)は、面白いし見事であった。研修先の寺・本堂は素舞台に近く、中央奥に布が被せられた仏像らしき膨らみ。一方、この地の自縛霊が集まるスナック(上手側にカウンター・ボトル棚、下手側にテーブルセットが設える)は、ある程度作り込んでおり視覚的に楽しませてくれる。この場面転換が早く感心する。

梗概…第3次採用組7名(日本人に多い姓-佐藤・鈴木・高橋・田中・伊藤・山本・小林-観客の中の同姓者への共感効果を狙ったか?)が山奥の寺で合宿研修する。この採用時点で第1次・2次組は京都の寺という区別・差別を表現する。確かに初めのうちは、社長の名前、社是を問うような研修内容であったが、段々と陰湿な苛めという仕打に変容していく。

この山は姨捨山ならぬ人捨山と呼ばれており、自殺者が入山しくるという。そこに何故か、ゲイママ=スミ子・カトリーヌが経営?するスナックに悲恋の女性(ハナ)、覆面女子プロレスラー=ミス・マスカラス、東大=受験浪人生、侍浪人=斉藤次郎何某…など個性豊かな霊が集まり、夜な夜な繰り広げる騒ぎ。

この2つの話(場面)が交互に出現し、次元が違うが時間軸は並行しているようだ。そして終盤近くで絡んでくるが、その繋げ方が強引のようだ。新入社員が研修の過酷さに耐えかねて自殺又ははずみによる事故か…この出来事によって交錯してくる。

本公演で、研修中は財布・携帯電話等を人事部の人へ預けるシーンがあった。さて、新人にとって電話対応が第一関門となると思うが、受話器(固定電話)を取って対応する不安。また郵便物、ファクスなど日常生活から縁遠くなった手段も復活してくる。それに絡んだ”非常識”という新人(若者)ならではの常識、経験・体験を面白可笑しく研修として観せて欲しかった。

大事なことは失敗から学ぶ、などキレイごとは言わないが、失敗を恐れることは前に進めないのも事実であろう。タイトルにあるカレーライスの意味、「夢」と「希望」というスパイスが利いて美味しそうだと。そうであればイジメという個人的な鬱憤晴らしの仕打ちから会社の研修・制度という大きな枠組みで描いていれば…少し残念であった。

次回公演を楽しみにしております。
喜劇 自称スパイ山田十八朗74歳

喜劇 自称スパイ山田十八朗74歳

劇団ズーズーC

秋葉原ズーズーC劇場(東京都)

2017/04/08 (土) ~ 2017/04/30 (日)公演終了

満足度★★★★

初めての劇団。
秋葉原の劇場?しかも今回の公演を最後に劇場が無くなると言う。
下北沢、高円寺、新宿、渋谷、中野、吉祥寺などの劇場は行ったことがあるけれど、秋葉原は初めてです。客層にも興味を惹かれます。

小さな手作り感の漂う温かみのある劇場でした。
回り舞台まであるのですよ!

漫才のような掛け合いの芝居で、中心登場人物は2人。
でも、2人の会話の中に出てくる強烈で魅力的な女性は忘れられません。
初日でバタバタ感は否めませんでしたが、回を重ねる毎にスピード感も迫力も増していくのではと楽しみです。
劇場のライブ感の好きな方には特におすすめです! 




世界☆独創

世界☆独創

シャービィ☆シャービィ

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2017/02/02 (木) ~ 2017/02/06 (月)公演終了

満足度★★★★

グリーンフェスタ2017参加作品。
基本はポップであるが、その独特な世界観は浮遊と沈殿という両極端を描いているようで不思議。ステージはプロジェクター映像と効果的な照明が印象的であった。

舞台美術は淡色で軽量なイメージであるが、物語の本質は人の底意地の悪さ、ダークな面を抉り出す、そんな重量を感じさせる。
その世界感で無邪気に遊びまわる少女の姿…ラストの台詞に戦慄する。

(後日追記)

不信 ~彼女が嘘をつく理由

不信 ~彼女が嘘をつく理由

パルコ・プロデュース

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2017/03/04 (土) ~ 2017/04/30 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2017/04/11 (火)

舞台を挟んで両サイドに観客席という構成で、最初は対面の観客が気になったが、
すぐに芝居に引き込まれた。
三谷作品らしいジワジワ来る笑いとドカンと爆笑のオンパレードだった。
個人的には戸田さんの無意識の装い方が面白かった。

ネタバレBOX

段田さん演じる男の不倫が展開されたときに、
優香さん演じる女も不倫している事を想像してしまいました。
FOCUS

FOCUS

「ボールルームダンスフェスティバル in 品川」実行委員会

きゅりあん(品川区立総合区民会館)(東京都)

2017/04/08 (土) ~ 2017/04/09 (日)公演終了

満足度★★★★★

社交ダンスの枠にとらわれない多彩なパフォーマンスを一編のストーリーの中に編み込んだ見応え十二分な90分。
最年少キャスト・岡田サリオ嬢のバレエ経験者らしい激しくも優美なダンス、社交ダンスを極めた熟女たちのきらびやかにして艶やかな舞い、男性陣によるコミカルなダンス、濃厚なペアダンスなど、その全てを堪能!
社交ダンスは未知の領域だったけれど、こんなにも素敵なものだったとは…。
何かに目覚めた気分。

ネタバレBOX

全編楽しかったけれど、アフリカ探検隊と現地民との追いかけっこをコミカルかつダンサブルに表現した、男性陣によるパフォーマンスがとりわけ愉快でした。
代役!

代役!

劇団ヨロタミ

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2017/02/22 (水) ~ 2017/02/26 (日)公演終了

満足度★★★★

グリーンフェスタ2017参加作品。タイトル通りトラブルが生じて代役!を立てることになったドタバタコメディ。設定が舞台劇(イベント)ということであり等身大、日常の行動をそのまま公演に持ち込んだようだ。いわゆるバックステージものであり、公演は舞台上のキャストだけではなくスタッフ、関係者の協力なくしては成り立たない。

もっとも演劇に限ったことではなく、社会(企業)においても同様のことが言えるだろう。例えばプレゼンテーションで発表する人、その資料作りに汗をかいたメンバーがいること。そんな縁の下の人々に謝意を込めて創った作品のようだ。

(後日追記)

「うるさくて、うるさくて、耳を塞いでもやはりうるさくて」

「うるさくて、うるさくて、耳を塞いでもやはりうるさくて」

劇団時間制作

劇場MOMO(東京都)

2017/03/29 (水) ~ 2017/04/09 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2017/04/05 (水) 19:00

 5日Aチームの公演を観劇しました。
題名に惹かれて観劇を決めたのですが、口コミを読み少し不安を感じての観劇でした。
精神状態によっては観劇後に落ち込まないかという不安です。

少し緊張しながらの観劇でしたが、若さいっぱいの舞台は爽やかな余韻を感じさせてくれました。

といっても統合失調症の設定に少々無理を感じます。
100人に一人の病気で日常に出会うことの多い病気なのですから、あえて病気にしなくとも人間関係や心の有様を描けたのではと思います。
その方が日常の中に潜む人間の愚かさや弱さ恐ろしさをもっと大胆に描けたのではないかと思います。
 
ちなみに5年前に他界した弟は23歳で統合失調症を発病し、30年あまりの入退院を繰り返していました。






ドラゴンカルト

ドラゴンカルト

劇団ショウダウン

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2017/01/27 (金) ~ 2017/01/29 (日)公演終了

満足度★★★★★

グリーンフェスタ2017参加作品。サスペンス・ミステリーという分野の作品であるが、ノックスの十戒が気になるきわどさ…しかし、そんなことは卑小なこと。過去と現在を交錯させ時間軸を操る事で簡単に犯人へ辿りつけない。その重層的な構成、そこに潜ませた悲しい思いが心に響く。

この劇団、林遊眼という看板女優がいるが、本公演でも主役であることは間違いないが、一人芝居と違って群像(集団)劇である。その中にあって違和感を感じさせることなく、それでも存在感ある演技で観(魅)せてくれた。
(後日追記)

ギンノベースボール

ギンノベースボール

ラビット番長

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2017/02/15 (水) ~ 2017/02/19 (日)公演終了

満足度★★★★★

グリーンフェスタ2017参加作品。この劇団、というか主宰の井保三兎氏の思いかもしれないが「高齢者」と「野球」というあまり結びつきが感じられない切り口。それを古希野球という聞きなれない設定で観せてくるところに、引き出しの多さ豊富さを感じる。

人は誰でも老いていく、それを決して悲観的に描くのではなく、むしろ前向きに明るく描いた秀作。高齢(化)社会という問題と人間の尊厳の両面から鋭く捉える、社会派ドラマ(「戦争」と「平和」も絡め)の中にヒューマン性を取り入れたか、逆に人間ドラマに社会状況を背景として従えたか。いずれにしても奥深い作品である。

(後日追記)

見上げたら、ものすごい星空

見上げたら、ものすごい星空

らちゃかん

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2017/02/23 (木) ~ 2017/02/27 (月)公演終了

満足度★★★★

グリーンフェスタ2017参加作品。賞は惜しくも逃したが、実に観応えのある公演であった。
この公演の見所…舞台美術が登場人物の心象形成に寄り添うようで、物語の展開をより分かり易くしている。また、劇団の特長である舞台となる場所の設定が、この物語を成す重要な役割を果たしている。郊外の人情味溢れるような街、そんな場所だからこそ物語として成立し、また人間ドラマとして心に残る作品になっている。

最前列は子供用のミニ椅子を用意し、子供を優先しているようであった。この公演は小学生でも十分楽しめる内容で将来の演劇ファンを取り込んだかのようだ。
(後日追記)

わが兄の弟

わが兄の弟

劇団青年座

紀伊國屋ホール(東京都)

2017/04/07 (金) ~ 2017/04/16 (日)公演終了

満足度★★★★

随分と昔に観て以来だった青年座だが、作マキノノゾミ、演出宮田慶子のお名前につられて久方ぶりに観劇と相成った。
ストーリーをきちんきちんとみせていく真面目な創りは、やはり青年座らしいといえるか。
笑いもあって、わかりやすく、作、演出、俳優の三者が揃っての、完成度の高い作品であった。

わが兄の弟

わが兄の弟

劇団青年座

紀伊國屋ホール(東京都)

2017/04/07 (金) ~ 2017/04/16 (日)公演終了

満足度★★★★★

遠近法を強調するかのような、前傾になった舞台。皆さん三半規管大丈夫なのだろうか。舞台上の明るい会話もユーモアも、全てにほんのりと死の影を漂わせる舞台です。
ただ、舞台上では誰も死にません、それは語られるに過ぎず、故に死の現実は夢幻のように虚ろで、ただ香り立つしかないのです。
「贋作」いいじゃないですが、立派なチェーホフ傳ですよ。

ネタバレBOX

第一幕のアントンとニーナの軽妙なやりとりから始まり、第二幕に少しだけ影を落とす。その影は、第三幕で確信となり、第四幕で決定的になる。それでも、希望は消えない。アントンが天上の亡き兄ニコライに自分の心情を吐露する部分が素敵だ。目の前には、悲惨な現状(ニーナにとっても、そしてアントンにとっても)が突きつけられているのに、人間は希望と喜びを見いだせるのだなあ。
チェーホフの30歳、なぞのシベリア訪問に材を取った本作は、ラストまで影を濃く濃くし、彼の苦悩を大きく大きくしながら、一気に駆け抜けるように魅せる爽快感も素敵です。そこか、アントンはそこへ行きたかったのだね。この時点で余命14年か。
先月、俳優座で観た「彼の町」で、鈴木瑞穂演ずる老演出家がラスト近くで発する、「チェーホフは、もっと生きたかったのだと思うよ」というセリフが浮かんできて、なぜかとても感傷的になってしまった。
鬼啖

鬼啖

芸術集団れんこんきすた

studio applause (スタジオアプローズ)(東京都)

2017/04/07 (金) ~ 2017/04/09 (日)公演終了

満足度★★★★★

二人芝居という「対話」を通して紡がれ、浮き彫りにされて行く、人の、女の、業と情念、狂気と邂逅と悔過(けか)を描いた舞台。

 劇場の中に入ると、舞台の両側に客席が配され、真ん中に小石が散りばめられた土を模した布が敷かれ、左には、床には山道を思わせる野草と弦や蔦の様なものが這う壁、右には色とりどりの端切れを編んで作った縄のような物が行く筋も伸びた壁。
 
 幕が開き、目の前に現れたのは、真っ暗な闇にぼんやりと差す光に照らし出された、幾ばくかの野草が生える山道と山深い中にある村人に捕えられ、弱っていながら朝に夕に呪いの言葉を吐き続け、村人を恐怖に陥れている『鬼』の棲む洞。『鬼啖』の世界だった。

       【 あらすじ】

 遥か昔、とある村の裕福な村長の家に居た生まれつき心が澄み、慈悲の心篤く、聡明で、村人からとても慕われていた一人の若者を、ある日、村にやって来た鬼が殺し、喰ってしまう。

 村人は、若者の死を嘆き悲しみながらも、総出で鬼を捉え、縄で繋ぎ、山奥の洞に閉じ込めたが、鬼は叫び罵り村人たちを呪うと脅し、村人たちは鬼を恐れ、震え上がっていたある日、この村を通りかかった尼僧は、若者の居た家の村長から、鬼を改心させ、村人と自分たちを呪うのを辞めさせて欲しいと頼む。

 尼僧は、ひとり山道を上り、鬼が繋がれている洞に赴き、鬼に会い、幾日もかけて鬼に経を唱え聞かせ、ありがたい教えを丁寧に説き聞かせ、遂に鬼は大いに泣き、自らの過ちを悔い、改心し、邪悪な心を捨てた。

 あらすじだけを読むと、日本の昔話や神話、説話によくある話のように見える。けれど、事はそう簡単ではない。

 この舞台は、このあらすじを超えた所に真意があるように感じた。

 『桃太郎』然り、『天邪鬼』、『鬼子母神』然り、古来から、「鬼」は、常に無条件に「悪」として捉えられ、描かれて来た。悪なのだから、問答無用で退治してもいいものと看做されて来たようにさえ感じてしまう。

 『泣いた赤鬼』のように、心優しい、人と仲良くしたいと望む「鬼」が居るなどとは古来の人々は思いもしなかっただろう。

 それ故に、「鬼」は全て悪と看做されて、排除するべき存在、排除されてもよい存在とされて来たし、そのように描かれている物が多く流布され、悪=全て「鬼」の所為にされて来たように思う。

 中川朝子さんの「鬼」も、正に、村長と村人たちによって、最初は、そのように描かれている。

 故に、マリコさんの尼僧も「鬼」を悪と看做し、通り一遍に佛の教えを説き、折伏(悪人・悪法、威力を持ってくじき仏法に従わせること)しようとする。

 しかし、その言葉には実感が込もらず、「鬼」の心に寄り添っていない故に、「鬼」の心に響くことも、届くこともない。

 「鬼」を折伏する為には、自らの業や情念、狂気や悔過(自分の罪過を懺悔すること)を晒さなければならない。

 尼僧が、出家するに至った自らの過去の罪業と情念、己の中にその一瞬宿った狂気を「鬼」に吐露し、その悔過を直視し、受け入れた時、「鬼」の心に響き、動かし、「鬼」は、若者を殺し、喰らった事を後悔し、折伏され、「鬼」の魂を救い、愛おしい若者のいる彼岸へと旅立たせることが出来る。

 その尼僧の心と表情の変化を、現実にその場に潜み目の当たりにしているような、マリコさんの声音、目の表情、睫毛の翳り、指先の動きひとつにひとつに表れていて素晴らしかった。

 中川朝子さんの「鬼」は、何故、若者を殺し、喰らったのか、其処には切なくも哀しく、美しくも苛烈な想いがあった、その真実を知った時、確かにそれは、許される事ではないが、そうせざるを得なかったその心情を思う時、膚に喰い込み、引き裂かれ、血が滲むようなやり場のない「鬼」の心の痛みをこの身にまざまざと感じた。

 村長の言ったことも、村人の言ったことも、自分たちを守るために言った嘘。

 真実は、跡継ぎのいない村長が、縁の薄い親類から養子にもらった若者が伝染病にかかると、竹藪の小さな庵に押し込め、邪険に扱い、余所からやって来た女に、余所者だから病が感染って死んでも構わないとばかりに世話をさせながら、女を蔑み虐げ、若者だけが優しく女に接し、自らの命が助からない事を悟り、女に己を殺してくれと頼み、懊悩した末に、女は若者を愛するが故に殺し、死してなお若者と共にいたいが為に、その身体を喰らい、若者を見殺しにした村長と村人を恨み呪い、「鬼」になった。

 人を信じず、村長と村人を呪い、村長たちの言葉のみを信じ、折伏しようとする尼僧を受け入れなかった「鬼」が、自分の言葉に少しずつ耳を傾け、自ら真実を探り出し、自らの過去の罪業を悔過し、直視しし始めた尼僧の言葉に心を開き、やがて折伏され、やむを得ずとは言え、若者を殺し、その身を喰らったことを後悔し、静かに若者のいる彼岸へと旅立つ「鬼」の瞳と眼差しの表情、時に激しく、時に静かに発する声の変化、睫毛の動きのひとつひとつで、その変化を表現した中川朝子さんは素晴らしかった。

 鬼と尼は合わせ鏡で写し鏡。互いの中に鬼が棲み、生身の女が棲む。自分の中にあるその二つをも見据え、認めた時、鬼も尼も己を縛る縄を、楔を解く事ができるのではないだろうか。

 とても濃く、切なく、凄い舞台。男女問わず観て欲しいかったが、とりわけ女性には是非観て欲しいかった舞台だった。色んな感情と思いが胸に去来して、波に揉まれる小舟のように、呑み込まれ、浮き上がる感情と己の中に抱えた何かに翻弄され、その言葉、その台詞、その眼差しのひとつひとつが、膚に喰い込み、心を抉り、爪を立て、引き裂くような痛みが実感として膚に感じ、この舞台を観られて良かったと思える舞台だった。

                 文:麻美 雪

時をかける稽古場2.0

時をかける稽古場2.0

アガリスクエンターテイメント

KAIKA(京都府)

2017/04/04 (火) ~ 2017/04/09 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2017/04/08 (土) 14:00

価格3,000円

最初のゆるーい感じからどんどんテンポアップしていき引き込まれていきました。
色々な作品のオマージュや伏線が貼ってあり回収していく流れがとても自然で素晴らしい。
作り込まれていて細かい表情や行動にも意味があって観てる間、自然と前のめりになって観てました。
出来ればみんなに観ていただきたい作品。

南島俘虜記

南島俘虜記

青年団

こまばアゴラ劇場(東京都)

2017/04/05 (水) ~ 2017/04/23 (日)公演終了

満足度★★★★★

とりあえず、2チーム見た。
収容所暮らしの閉塞感、希望のなさが舞台装置、物語、演出で迫ってくる。2チームともに青年団所属の役者の自由さに比べて、無隣館の役者は固さが抜けていない感じ。それでも、他の多くの劇団から比べれば演技力の平均点は高い。

罠々

罠々

悪い芝居

HEP HALL(大阪府)

2017/04/08 (土) ~ 2017/04/16 (日)公演終了

満足度★★★★★

開演前から始まっていて、終わっても続いている。どこを観るか、何を思うか、色々試されている。観るたびに違う印象になりそうです。次に観る時は何を感じるのかなぁ。

世界は嘘で出来ている

世界は嘘で出来ている

ONEOR8

ザ・スズナリ(東京都)

2017/04/02 (日) ~ 2017/04/09 (日)公演終了

満足度★★★★

「ゼブラ」at 雑遊以来のONEOR8、OR田村孝裕作の舞台。二、三度だけ目にした田村作品の印象は、笑わせてwel-made、少量の毒も終演時には100%解毒。
しかし今回はタイトルから、「毒」有り覚悟せよとの挑戦状? 受けて立つべし・・と観劇に至る(会場がスズナリというのも大きかった)。

甲本雅裕(どこかで見た俳優だと後部座席から見たが終演後その通りだったと確認)、あとカラテカ・矢部(こちらは一目瞭然、確か以前別の舞台でも見た)。
客席に流れる空気が少し違うのは、著名人を見に来てるモードが(大型であるかどうかはこの場合あまり関係ない)じわっとある・・これが嫌なんだと今回改めて自覚したがそれはともかく。・・ONEOR8は著名俳優を使うとはいえ、本来の面構えは普通の劇団・・・つまり舞台を軸足に置いた「作品勝負」の演劇活動に勤しむ風貌だ、と勝手に理解している。
従って断りもなく「普通に」批評対象として扱うが、さて、どんな出来だったか・・。

舞台の平均値的な「出来」はともかく、メジャー・映像系の俳優で作られた舞台の持つ弱点が、どうにも見えて仕方がなかった、そういう舞台であった、という事に残念ながらなる。出来はそこそこ、いやもっと、かなり良い「はず」なのだが・・何故そう感じるのか・・・。(また後日)

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