わが兄の弟 公演情報 劇団青年座「わが兄の弟」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    遠近法を強調するかのような、前傾になった舞台。皆さん三半規管大丈夫なのだろうか。舞台上の明るい会話もユーモアも、全てにほんのりと死の影を漂わせる舞台です。
    ただ、舞台上では誰も死にません、それは語られるに過ぎず、故に死の現実は夢幻のように虚ろで、ただ香り立つしかないのです。
    「贋作」いいじゃないですが、立派なチェーホフ傳ですよ。

    ネタバレBOX

    第一幕のアントンとニーナの軽妙なやりとりから始まり、第二幕に少しだけ影を落とす。その影は、第三幕で確信となり、第四幕で決定的になる。それでも、希望は消えない。アントンが天上の亡き兄ニコライに自分の心情を吐露する部分が素敵だ。目の前には、悲惨な現状(ニーナにとっても、そしてアントンにとっても)が突きつけられているのに、人間は希望と喜びを見いだせるのだなあ。
    チェーホフの30歳、なぞのシベリア訪問に材を取った本作は、ラストまで影を濃く濃くし、彼の苦悩を大きく大きくしながら、一気に駆け抜けるように魅せる爽快感も素敵です。そこか、アントンはそこへ行きたかったのだね。この時点で余命14年か。
    先月、俳優座で観た「彼の町」で、鈴木瑞穂演ずる老演出家がラスト近くで発する、「チェーホフは、もっと生きたかったのだと思うよ」というセリフが浮かんできて、なぜかとても感傷的になってしまった。

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    2017/04/12 14:31

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