最新の観てきた!クチコミ一覧

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シアンガーデン

シアンガーデン

少年王者舘

七ツ寺共同スタジオ(愛知県)

2017/08/10 (木) ~ 2017/08/13 (日)公演終了

満足度★★★★★

言葉ばかりか時空まで巧みに連鎖し、舞台に吸い込まれていく感覚が凄まじい。洗練された繰り返しの技で思考を持ってかれる。
やっぱ夕沈さんの存在感は格別だし、プロジェクションにも魂抜かれる感じあったし、個人的には最後のアレの造型が心揺さぶる。

ノゾミの生まれた日

ノゾミの生まれた日

南山大学演劇部「HI-SECO」企画

G/Pit(愛知県)

2017/08/10 (木) ~ 2017/08/13 (日)公演終了

満足度★★★★

過去に未来に…現実に虚構に…目まぐるしくシーンが切り替わり、時にラップする。
シナリオの構図そのものにミスリードを仕込む意欲的な脚本。

主に弟(信彦)パート、姉(頼子)パートに分かれるが、非情に意味深な繋がりを持つように思えた。

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ネタバレBOX

(続く)
まず、弟パート。
1つの芝居の中に「信彦」と「好感をもって信彦を支えようとする人」の関係が虚構も含めて多数現れて、この構図を印象付ける。更にはその存在感も重なりを感じさせ、虚構が何かのモチーフであることを匂わせる…それも多義的。
…気づかぬうちに、あの手この手でこの作品中に多層・多重の空間を作り上げて、観客を色々な解釈の中に吸い込んでいく構成に唸ります。

特に妙手なのが虚構の入り混じり方。
最初は、提示される順に従って、信彦の「今の現実の出会い」を元にして、…本人が今まさに描いている「ネーム」が並行して演じられているのかと思っていた。

つまり、主が「信彦-希」の現実で、従が「少年-少女」の虚構だと思っていた…が、終盤、虚構は実は過去の「処女作」であると暗示され、主従が逆転する構図に…。

更に解釈を多様化させるのが、徐々に疑いを増す「信彦の心神喪失状態」

信彦の発言、信彦の認識に基づく描写"全て"を疑って掛かる必要が生まれ、現実と思っていた部分も虚構との区別が危うくなる。
何処までが現実で、何処からが虚構?妄想?幻?…不確かな境目、すり替わる虚構と現実。どこが現実の基準となるのか曖昧になってきて、何を拠り所に観ていれば良いのか分からなくなってくる感覚が堪らなく面白かった。
ここまではシナリオの面白さ。

次に、作品に込められた想いのヒントとして、…
…本作には「自己否定の言葉」と、それを救済する「他者の価値を認める言葉」が数々現れる。

「私は居ない方が良い」
「生まれない方が良かった」
「認めて貰えない人間は無価値」


これらの発言に対し、更に「存在価値を与える言葉」が並ぶ。
「お前がいてくれて良かった」
「私が(君の作品を)好きなのに、君がそれ(私が好きであること)を否定するのは間違ってるよ」

これを結末にするだけで一作が成り立ちそうな言葉の数々に、観客のほとんどが心地よさを感じたのではと思うのだが、…
…本作はそれを大胆にひっくり返す!

結果として信彦は、これらの善意を殺める。

今宮に対しては事実は曖昧だが、希に対するソレは「本人が死を望んでいる様」には一切見えぬ衝撃的なシーンで、それまで観客の目に映っていた2人の関係を突き崩す。
実際、信彦絡みの描写には全て病的妄想の可能性があって、事実関係には多様な解釈の余地を残すが、「他人の自己否定を否定し、存在価値を与える言葉を贈ることが必ずしも救済にならない」という怖さを感じた。

死にたい人には反ってNGワードで、…
…むしろ追い詰めることになる…この展開は驚きだった。サイコパスとも異なる雰囲気。

この徹底的な自己否定意識の根源は何か。児童虐待とも窺えるが決定的描写はない。編集のダメ出しは大きなショックだが、その後も漫画は描いている… 謎めく。

さて、弟パートの対比となる姉パート。

ここで思い浮かんだ事が2つある。
弟の凶行に対する…観客が思い浮かぶであろう思考への反証と、弟に宛てた一つの回答だ。

信彦の凶行には、まだ「個人の弱さ」を非難できる余地が多分にある。…
…そこまで背景を明示していないだけだろうが、観客に敢えて非難させる隙を残しているのかも。
翻って、姉・頼子の境遇は、徹底的に「個人の強さ」では全くどうにもならない苛烈さがあった。どぎつい家庭内レイプシーンもその極限を理解させるためか。

で、1つ思い浮かんだのは、弟パートで「当人の弱さを責める思考」を呼び込んでおいて、姉パートで、そんなこと言っても「徹底的に個人ではどうにもならない状況」があるでしょ?と突きつけているという解釈。観客の甘い反論をシャットアウトする意図?
…もう1つは、逆に「より過酷な境遇」でも立ち上がった「頼子の意思」を信彦に示すため…という解釈。

ただ、信彦を責めるだけでは本作で積み上げてきたものとは逆な気がする…悩ましい。苦境から逃れるには、何か頼るべきものが必要なのは確か。…
頼子の最後の選択を巡り、リスクと非難を囁く周囲の声の中、それでも頼子が「自分の意思」ですがった危ういノゾミ。人によっては、それは自死であっても良いのかも…自分の意思であるならば。

かなり迷走した…。脚本を改めて読んでみたい作品でした。
サマータイムマシン・ブルース

サマータイムマシン・ブルース

妄烈キネマレコード

ナビロフト(愛知県)

2017/08/10 (木) ~ 2017/08/13 (日)公演終了

満足度★★★★

"面白いこと"が全てに優先するコンパ的集団心理の妙。生産性のカケラもない馬鹿騒ぎっぷりがまさしく大学サークルの在り様を体現していて、本当に楽しくて面白くて…そして懐かしくて、愛おしくさえある。
歳食った人の方が沁みるんじゃないかな。ハイテンションの舞台を眺めつつ、私にもこんな時代があったと…頭の中ではSTMノスタルジーが展開していました。

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ネタバレBOX

(続き)

「研究をしないSF研」という設定が、SF要素をあくまでモチーフと割り切っている本作を象徴。
エンタメ性と意外性を最優先にしたダイナミックな展開に、役者陣が見事な触媒の役目を果たした。

定石の「元の時間に戻る」ことに拘らない大胆さも面白くて、とにかく繋がってればいい!的なパズル感が愉快。人間もリモコンと扱いが同じ!
過去は変わらない、未来は変えられない…説が印象深い形で使われ、照屋が救いの解釈を示すけど、元の説でも「人の努力」抜きで運命が決まるわけじゃないと思う。天は自ら助ける者を助く、かな。甲本の最後の発想は幼いけど、ほんのり安らぐ結末。

AB通すと、Wキャストで性格が結構変わっており、尚且つ微妙に人間関係に違いが生まれている感覚があって、パラレルワールドを思わせた。

年長キャラの照屋は、ABともに集団を見守る役割を果たして、他のハイテンションの動を受け止める…静のアクセントとなり、かっぱ伝説の語りや甲本を諭す等、見せ場多し。この重要キャラがABで一番色が異なる。
Aの松本さんが歳というNGワードに反応する等の人間らしさを残すのに対し、Bの藤さんは何か超然としたところがあった。自分のことはさておき、ただ集団を眺めて楽しみ・慈しむ雰囲気があり…なんというか…この部室の座敷童・守護神の様でした。カッパの頃からここに居て、25年後も実は居るんじゃないか…って気がしますね。童顔とのギャップも効いていました。

柴田も、Bの佐伯さんは「パピコをあげる」くだりで、甲本の今後に期待を抱かせる…なんか異性の心情が醸されていたが、Aの藤崎さんからは「脈無し」って空気が窺える。天真爛漫で同性の友達と話す様な屈託の無さが…良く動く表情から滲んでた。

伊藤は抑え気味の普通の娘なのに、AB共にクセ者役者の印象が強い役者が充てられ、キャスティングの妙を味わう。「カッパの首をかっぱらう」に対し…高木さんがマジウケ感あったのに対し、はらみつさんがジワジワうけてくる反応の違いが印象的。

甲本・タケジュンさんは、頭の血管が心配になるほどキレてましたが、最近各所でも見慣れていて安定のキレぶり。それとは一転して、Bのパピコ握りしめて嘆息する辺りは新鮮かつ良い芝居でした…好み。

新美・吉田さんはバッカスに引き続き…今年2度目の時間旅行。
一番ウケたのはBの「俺が行きたい時代はエロ時代だ」ってトコ(笑)
「君はこの世界の住人になれ」と…何か漫画か映画で聞いた様な台詞をナチュラルに吐いたりする性癖など、漫研出身としてはすごく共感する(笑)

小泉・坂口さんは派手さとダイナミックさが印象深いけど、一推しは…おそらく自分の観た回にだけ出現した…奇跡の「面接のバイト!」発言(笑)

曽我・森さんは、終始弄ばれ身悶えする怒涛の好演が光った。ユニセックス感のある彼ですが、…幾度もお姫様抱っこされる姿が目に焼き付いた(笑)

石松・ぴょんさんは、独特の価値観がその風貌にも相まって際立ちましたが、Bで丸椅子アートを完成させたのが印象深い。千秋楽では4つ積み重ねると豪語してたけど、どうなったのかな。

小暮・後藤さんはSF研の理性という立ち位置を終始クールに好演。一度切れるトコも見たかったが、タケジュンさんが全部持ってったね(笑)

田村・福田さんは、そのSF顔(笑)を活かし、未来感あふれる髪型でで未来人を演じましたが、口調が妙に昭和なのがウケる。色んなトコにギャップを作って楽しませてくれました。

結局、全員分語っちゃった。あ、ケチャ…

ケチャはええやろ(笑)

最後に…タイムマシーンの効果音が好き。古いエレベータを思わせる〆の音が特に。
憫笑姫 -Binshouki-

憫笑姫 -Binshouki-

壱劇屋

HEP HALL(大阪府)

2017/08/25 (金) ~ 2017/08/28 (月)公演終了

満足度★★★★★

お互いを想いやり、互いに成長してゆく姉妹の姿。徐々に仲間との絆が生まれる経過に胸が熱くなりました。五彩の神楽シリーズで、お衣装がダントツで好みでした。ラストシーンの姉の姿は本当にカッコ良くて「ヒーローは男性だけじゃない」と実感。大好きな西分さんのカッコ良い姿が見れて嬉しかったです!

モンクス・デライト

モンクス・デライト

劇団「放電家族」

G/Pit(愛知県)

2017/08/04 (金) ~ 2017/08/07 (月)公演終了

満足度★★★★

出てくる情報の全てを疑って掛かる必要がある…そんな緊張感に浸れる90分間。
ありとあらゆる先入観をミスリードに使い、片っ端から当初の人間関係をひっくり返してくる。シンプルだったはずの登場人物の相関図が…最後にはエライことになっている!
観る方もずっーと集中・緊張を余儀無くされるので大変。でも疲労感に見合う心地よい面白さ。
天野さんの優しさが垣間見えるバランスでしたね。

賊義賊 -Zokugizoku-

賊義賊 -Zokugizoku-

壱劇屋

HEP HALL(大阪府)

2017/09/22 (金) ~ 2017/09/25 (月)公演終了

満足度★★★★★

とにかく楽しい!!主人公がめちゃくちゃ可愛くて正義感が強くて、周りを取り巻くキャラも個性があって。お祭りみたいでカラフルな作品でした(*^^*)観終わった後にスッキリ笑顔になれる!元気を貰える!観劇初心者の方にも是非観ていただきたいです!可愛いは正義!

心踏音 -Shintouon-

心踏音 -Shintouon-

壱劇屋

HEP HALL(大阪府)

2017/10/27 (金) ~ 2017/10/30 (月)公演終了

満足度★★★★★

五彩の神楽シリーズで一番好きな作品で、一番泣いた作品です。台詞が無いからこそ、更に胸に刺さる物語。誰にでも大切な人が居て、誰にでも幸せを望む権利がある。毎回夫婦で観劇させていただいてますが、この作品を主人と観れたことが幸せでした。色んなことを深く深く考えるきっかけになりました。

とおのもののけやしき

とおのもののけやしき

AI・HALL

三重県文化会館(三重県)

2017/08/05 (土) ~ 2017/08/06 (日)公演終了

満足度★★★

ターゲットが子供なので展開はド直球だが、怪談のコンセプトに古道具への興味、両親との関係性、祖母の情愛を窺わせる要素が詰め込まれて盛り沢山。結果、怖いモノという雰囲気は薄まりましたが、その分とても楽しい仕上がりに。
そんな中、序盤の1ピースに過ぎませんでしたが、「死に対する子供の曖昧な理解」なんかはリアリティを感じて、私には印象的でした。
お話以外も…緻密な舞台美術、怪談に合わせた派手な小道具効果、そしてメリハリがあってこなれた役者の演技…と満足感が高い。更に、前列に居並ぶ子供達のリアクションまで含めて楽しかった。観客からツッコミが入るのって、こういう芝居ならではだよなぁ。

演技で一番好きだったのは、2歳しか違わない微妙な力関係を背景とした兄妹2人の会話と表情でした。

戰御史 -Ikusaonsi-

戰御史 -Ikusaonsi-

壱劇屋

HEP HALL(大阪府)

2017/11/24 (金) ~ 2017/11/27 (月)公演終了

満足度★★★★★

五彩の神楽シリーズのなかで一番壱劇屋さん色を感じました。物語を理解しようとするより全身で感じる!自分が好きなように受け止める!観る側に委ねてくれた作品でした。武器もカッコ良くて独特の世界観がたまらなく素敵でした(*^^*)

penalty killing

penalty killing

風琴工房

穂の国とよはし芸術劇場PLAT アートスペース(愛知県)

2017/07/29 (土) ~ 2017/07/30 (日)公演終了

満足度★★★★

アクション演劇を想像していました。いや、実際に颯爽たる偉丈夫たちが舞台にひしめき、アイスホッケーアクションを見せてくれますが、それは芝居後半…シーズン最終戦が始まるまで大胆にもお預けです。
しかし、そこに至るまでに延々と連ねる…氷上以外で見せる選手達の「激しい対話」が非常に濃密。
これこそが本作の核心に他ならない。

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ネタバレBOX

(続く)
プレーの技術論、精神論の壮絶な衝突。いや、精神論では…何か無理難題を精神だけで何とかしようとする暴論に聞こえるかな。鍛えられた肉体があり、スケーティングやスティック操作の物理的な技術があり、…その上でそれを支え、礎となる「精神」の在り方、心構えの技術論…と言うべきか。
猛烈なスピードと肉体の激突に耐える、氷上の格闘技と呼ばれるスポーツならではの深刻さと説得力。
DFトラのメンタルの話が一番グッと来た。苦悩し涙する役者の顔が印象的。

会話劇と評してもいいんじゃないかと思うぐらい、詰め込まれた監督・選手たちが交わす一連の言葉たちは、各々が一つの独立した話の山場…名シーンに匹敵する重みと盛り上がりがあり、…全体としては、一本の芝居というよりは長期連載・連続ドラマの総集編の趣きがありました。

試合への切替りのダンスは、本来は一つの見せ場なんだと思うのだけど、私としては、そこでやっと「ふぅ~」って息をつけた…ぐらいの、それまでの濃密な会話群でした。
試合が始まると、そこからは…各選手のそれまでの積み重ねの総括として、それまでの苦悩と想いをプレーに表す形式となり、これがまた全選手分あるというのが、選手への愛を感じる構成でした。

若干、難を感じたのは、この試合が終盤まで0-3で負けてて、…それを一気にひっくり返す展開になること。

もちろん、その契機となる采配(試合中で異例のセット変更)あっての展開なんだけど、あまりに短時間でアッサリ追いついたかに見えたので…折角のここぞという場面なのに…かえって安っぽさを感じてしまった。…ゲームは点を交互に取る方が盛り上がる気がするし、その度ごとに采配の妙があった方が面白いのに…と、その場では思った。

ただ、0-3からの追い上げは…実話をモデルにしている節があり、アイスホッケーファンには堪えられない展開なんだろう…と後で納得。作意を楽しみ尽くすには、受け手も相応の背景知識が必要なんだねぇ…と改めて思ったよ。

何気ないところに、実はホッケーファンなら唸る細工が、もっとあったかもね。

そういう意味では、特有の基礎知識を、前説でしっかり与えてくれる構成は重要だった。
荒人神 -Arabitokami-【2018年6-7月wordless殺陣芝居シリーズで東名阪ツアー決定!】

荒人神 -Arabitokami-【2018年6-7月wordless殺陣芝居シリーズで東名阪ツアー決定!】

壱劇屋

HEP HALL(大阪府)

2017/12/22 (金) ~ 2017/12/25 (月)公演終了

満足度★★★★★

5ヶ月の集大成でした。
楽しかったー!!
複数回観たのですが、話が分かっていても叫びそうになるし、泣いていました。
殺陣も凄かったです。アクションモブの方達の動きも凄かった。
楽しい5ヶ月を過ごせました。

つぐない

つぐない

劇団あおきりみかん

G/PIT(愛知県)

2017/07/06 (木) ~ 2017/07/17 (月)公演終了

満足度★★★★★

久し振りに…涙をこぼした。涙ぐむことはよくある。ボロボロ泣いた芝居もあった。
でも、今回は… つーっと一雫落ちた。この意味を考えてみたいと思った。
とりあえず、あおきりみかんのマイベスト更新。

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ネタバレBOX

償わなければならない女が…すがる様に訪れた教会で出会った男。直感に導かれ始まった対話が本作の主軸。
彼女は…自らを「罪悪感のない女」と悪びれずに称し、生い立ちを語り、ロジカルに罪悪感と償いの必然性を探る…陽気で求道的なサイコパスを思わせた。
むしろ無理解に「償い」を迫る周囲に嫌悪感を覚えたこともあり、この序盤の展開で「おおおっ、どこへ向かって行くんだ、この話は…」ってワクワクが止まらなかったのを覚えています。(周りの感想を聞く限り、ここがツボにハマった人は少ない様ですが笑)

ところがどっこい本作は、私がそこまでで感じた期待感とは異なる…意外な方向に舵を切った。

「サイコミステリー」だと思っています…それもかなり洗練された。
仕組まれる数多のミスリード…その最たるものが「彼女自身の全ての記憶と発言」という大胆さ。
事実に反して、彼女の発言・行動の全てに掛かっていた自己否定のバイアス。
その果てに、逆に周囲に「罪悪感がない」と映る構図が巧妙。

実際、元彼・貴大は「美和の罪悪感」を最初から主張していたのにも関わらず、私にはそれが思い込みにしか見えない…そのくらいギャップがあったのに、登場人物と起こる事象のピースを必然性を伴ってキッチリ嵌め込んでいくミステリーとしての心地良さがありました。
「やられた~」という意外性と納得感。

そして、本作が只のミステリーで終わらなかったところが、…その話のピースたちの接着剤に、…「罪の意識」、自滅に誘う「過剰な献身」等の人間の根源的な命題を使ったところ。

ミステリーが、とても深淵な人間ドラマになっていった。

最終的に、同じく深い罪悪感に苛まれていた男の物語を糾合して、…話は「ミステリーの謎解き」から「真に罪を償う方法とは…」という命題に昇華していく。

安易な免罪符たる「償いへの誘惑」に抗う葛藤を…みっともない人間臭さで体現してみせた男と神父の対峙… あそこの男・松井真人さんの芝居がホント好きです。
総じて、巨大な罪悪感が「本音のぶつけ合い」を妨げた悪循環の悲劇。その末に「贖罪の献身」ではなく、「徹底的な対話」こそが真の償いであると感じさせました。

…そこだけ言うと、ごくありきたりのことなんだけど、結局、人の関係はそこに尽きるのね。
…普通のことこそが難しい。

至った結論ではなく、そこに至るまでの2人の苦悩と過程こそ、本作の核心なんでしょう。
凄まじい苦難を伴うことは想像に難くないですが、彼女の…これから始まる「真の償い」を予感させるエンディングが胸を熱くさせました。
人形の家

人形の家

第七劇場

三重県文化会館(三重県)

2017/07/16 (日) ~ 2017/07/17 (月)公演終了

満足度★★★★

海外の名作戯曲を今、新たに観せてくれる機会がありがたい。
しかも、現代の空気もほのかに感じさせる演出。

たいへん耳の痛い後味のお話でした。

Table Talk

Table Talk

試験管ベビー

千種文化小劇場(愛知県)

2017/07/07 (金) ~ 2017/07/09 (日)公演終了

満足度★★★★

タイトルから硬派な討論芝居を想像していましたが…ゴメンなさい、嘘付きました…試験管ベビーでそんなことあり得ないですね(笑
でも、円卓会議なんてホンのちょっぴりで、ほぼ井戸端会議ってのは想像できなかったです(笑)
ま、会議は下準備と根回しがあってこそ…という側面もありますがね。

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ネタバレBOX

さて「革命で活躍した英雄達」の後日談的な構成は、ちょっとニヤリ。大学生の頃に銀英伝とかハマったクチなもんで。
パンフに濃密に籠められた設定…促されるまま開演前に…読んで本当に良かった。設定の仕込み無しに芝居だけ見てしまうと、正直、バカばっかだから(笑

過去の活躍の実績に裏打ちされてこそ、このバカぶりが活きるし、微笑ましい。どんなに偉業を成しても、仲間内じゃ、やっぱバカやるものなのよね。…同人誌的な楽しみを味わいました。

笑いとしては、ボッテガ王のなんちゃって言語のあれこれ…、ハイランダー・スミスの炸裂する下ネタの数々が痛快。

そして、情けなさを極めつくしたガリガリ君こと宰相モンクオーレが一推しでした。
これが、後世の歴史家にこそ評価された"偉人"というギャップが素晴らしい、大絶賛​。

そんな風にひたすら政治をコケにしまくったコメディ展開の中、最後の最後に、革命の暗部が首をもたげたのは良い仕込みでしたね。伏線もあったし。
そこで、素人に勢い余って本質を諭されるとこまでは良い…うん。

でも、最後はミッソーニ王の思い付きで大役を若者に丸投げした様にしか見えなくて。実際には、もっと周りがケアするんだろう…と想像はできるんだけど、それをもっと匂わすように描いて欲しかったかな。
そこすら風刺であるなら、それはそれでも良いかもしれないけど、それじゃパンフで積み重ねた設定が台無しなので、それはきっと無いよね、うん。そう信じたい。
画龍点睛を欠いた感が最後の最後に出ちゃったのが惜しかった。
踊る!惑星歌謡ショー

踊る!惑星歌謡ショー

右脳中島オーボラの本妻

七ツ寺共同スタジオ(愛知県)

2017/07/08 (土) ~ 2017/07/09 (日)公演終了

満足度★★★★

これを「歌謡ショー」と表したセンスに脱帽。本劇団の特徴でもある「意味を問わず、音の関連だけで無限に繋がる言葉の連鎖」…この雨の様に降り注ぐ言葉たちには、まずは…まさしく音楽でも聴くかの様に、素直に身を委ねてみるのが良いね。
そして、湧き出てくる無意味なセリフが不意にツボを突いてきたりする。それに出会えたら、ここに相性が良い証拠だ。観てると不思議にニヤニヤしてきちゃうんだ、どうしたことだ(笑

そうして身を委ねつつ、もし何か思い浮かぶ「解釈」が頭に浮かべば、それもまた良し。
無作為の様に降り注ぐ言葉の奔流は、観客の脳内に独自の創作性を呼び起こす。
ゲームの様に意味を構築できるか楽しむのもよし。こんなに鑑賞自由度のある芝居は、東海地方ではココでしか観れないと思う。

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ネタバレBOX

(続き)
今回も言葉遊びの趣向が冴えて、意味不明の命名(メイド探偵メビウス6ミリロング、部屋干し探偵…)や、物理的な行為に転用された「臍で茶を湧かす」とか堪らん。

ネタもふんだん、シベリアン超特急とか、特撮系CMアイキャッチとか、Jリーグカレーとか…体当たり感が強くて好きだなぁ。
犬?からロボットへ変形したものの、次第に負け犬に堕ちていくいばさんとかも愉快。
仕込みなのかトラブルなのか分からないけど、山本さんの「ハガキが読めません」もツボでした。

さて迷走タイムに入ろう(笑

今回「太陽系」と「家族」を掛けてますが…、太陽系は一体の様でいて運行(公転周期は)はバラバラ…、でも引力という絆で繋がってる。太陽(母)には決して近づけず、必要すら実感できないこともあるが、…結局は熱と光で常に恩恵を受けている。

この家族・親子にもなぞらえた感じが、個と全の有機的な関係、半独立・半従属な繋がりを思い起こさせました。皆が互いの部分であり、そして環境でもある… との趣旨のセリフが印象的。…ここら辺は、まだいつものよりイメージ湧きやすい。

でも、正しい終焉、終焉を止める、輪廻、再生、好奇心の弊害(?)辺りになってくると、お?お?お?…ってなもんで、終盤の「かごめかごめ」も元々が多義性の塊みたいなもんだし…
…そして何度となく使われる相川七瀬の「夢見る少女じゃいられない」とのリンクまで考えると、散発的に浮かぶイメージを頭の中で統括しきれず…
今回も降参orz
…ですね、やっぱり(笑)

台本を読み込んでみたい劇団の筆頭だよねぇ。
散歩する侵略者

散歩する侵略者

イキウメ

ABCホール (大阪府)

2017/11/23 (木) ~ 2017/11/26 (日)公演終了

満足度★★★★★

すごかった。
言葉で言い表せない。
少しこわかった。
一度しか見れなかったので、もう一度見たかったです。

荒人神 -Arabitokami-【2018年6-7月wordless殺陣芝居シリーズで東名阪ツアー決定!】

荒人神 -Arabitokami-【2018年6-7月wordless殺陣芝居シリーズで東名阪ツアー決定!】

壱劇屋

HEP HALL(大阪府)

2017/12/22 (金) ~ 2017/12/25 (月)公演終了

満足度★★★★★

過去5ヶ月のノンバーバル公演の集大成

ただただ、凄いと圧倒された
何より演者の情熱が伝わる

音響、証明、動き、衣装
全てに引き込まれました

また過去4作品を見ている人間にわかるサプライズな演出

もうありがとうございますって思わず言いそうになるくらい
驚かされたし感動した

作中頑張って生きた人たちを見て
私も頑張ろうって思えた

そんな作品です

STAR☆JACKS act#011「じんない」

STAR☆JACKS act#011「じんない」

STAR☆JACKS

ABCホール (大阪府)

2017/08/24 (木) ~ 2017/08/28 (月)公演終了

満足度★★★★★

熱くてカッコよくて笑って泣いて、感情が揺さぶられました。大人数だけど、それぞれ見せ場もあってとても楽しめました。
史実のじんないも気になります。

地獄

地獄

江古田のガールズ

小劇場 楽園(東京都)

2017/12/12 (火) ~ 2017/12/17 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2017/12/16 (土) 14:00

価格3,500円

端的に言えば「12人……ではなく11人の○○○○日本人ともう1人」的な。骨太に「生きろ!」というのも好きだけれど、本作のようにやんわりと「死んじゃダメだよ、生きてなくちゃダメだよ」(←ドラマ「わたしたちの教科書(坂元裕二脚本:2007年)」の名台詞)というのはもっと好きかも。
また、先に触れたように12人の怒れる男へのリスペクトが感じられる展開(大多数を占めていた意見が次第に覆ってゆく)や台詞(「話しましょう」とか)があって、アレが大好きな身としてタマらん♪ さらに終盤の「ある種明かし」からのオチも巧みで満足満足。
ステキなクリスマスプレゼントを一足はやく頂いたような。

ネタバレBOX

SNSで自殺志願者を集め……というのは座間の事件を想起させるが、内容的には真逆だしそもそも脚本執筆時にはまだあの事件は公になっていなかったのではないか?
声の温度

声の温度

よこしまブロッコリー

七ツ寺共同スタジオ(愛知県)

2017/06/30 (金) ~ 2017/07/03 (月)公演終了

満足度★★★★★

むちゃくちゃ好みのお話でした。
コミュニケーションの研究者 ツバキの物言いにゾクゾクする。対比的な構成、役者の演技も効果的。

奇しくも1週前に…同じく「声」をタイトルに冠した空宙空地「声にならない」があり、それと合わせて観た身としては、「声」の扱い、視点の違いによる相乗効果で味わいが二乗増し。たくさん観劇すると偶にあるラッキーでした。

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ネタバレBOX

開演前から気になってしょうがなかった舞台美術。ほとんどは具体的な物体がなく、「そのモノが何であるか」を表現する言葉の「紙」が無造作に壁などに貼られている…。これが終盤で重要な意味を持つのだが、それを悟らせずに舞台上に示し続ける粋な趣向。
コミュニケーションの在り方がテーマだが、異彩を放つのはその科学的な切り口。知的好奇心を呼び起こす台詞たち。

その中心が研究者・ツバキ。魅力的な知性でロジカルに話を牽引する。悪く言えば常に上から目線、趣きはツンデレに近いがあくまで論客。切り捨て御免の非情な口調の中…端々に窺える誠意、欠陥を匂わす情感、それを自覚して苦しむ理性… 不思議なアンバランスさが魅力。

コンシェルジュ的AIメールサービス、フレンドロイドに取り組むが、そのフィールドワークは実は人の手による応答。世のビジュアル主体の潮流に逆らい、文字による意思疎通の新機軸を探る。

オペレーターで妹のマコトは失声症。まるでモデムの様にツーツー、ガチャガチャと発語する。当初はAIの擬人化表現も疑った。喋れない代わりに超人的な量の並行処理をこなす。この研究自体、彼女の能力を科学的に吸収・進化し、デバイス化を目指している節を感じる。彼女は道具として利用されているのか?

しかし、マコトにとってもこの活動は自分の存在意義となっており、芳しくない研究成果の中、ツバキも本研究に固執し、…あたかもこの研究自体が「マコトの存在価値を証明する為」にあるかの様だ。この姉妹、お互いが利己的にみえながらも、その実、互いの為に足掻いている空気が漂う。

争点となる文字コミュニケーション。
SNS等、とかく世の中では問題視されがち。意思疎通のための情報伝達に占める割合が、言語はわずか7%、残り93%が声のトーンや表情・態度…との解説がショッキング。

声が無いと意図は…気持ちは伝わらない?、
声が無いと人間性が見えない?、
声がないことが相手にも不安を与える?
声のない…言葉だけの意思疎通の限界を予感させながら、更に他者による人の評価にも話が拡がる。

任意の対象者に対する「形容・評価」とは、実は対象そのものの形質を表現しているのではなく、対象者と観察者の相対的な差異を表現しているに過ぎない。観察者次第で表現は変わる。決して対象者のみに依存しない。

観察者が対象者に貼る「レッテル」は、対象者の絶対を指し示していない。

「お前にはこれはどう見える?」

最終的に冒頭の舞台美術がそれを示唆していき、ゾクゾクしたシーンだった。
発言者が責を問われがちな文字コミュニケーションで、「受け手側の責」を示唆するのは、炎上しがちなSNS等を投影しているのだろうか。

コミュニケーションはあくまで双方向のもの。受け手の適切な姿勢があればこその難しさ…そして可能性か…。そして本作で、文字コミュニケーションに活路を見出そうとする姿勢は、劇作家の姿勢ならではかも。戯曲も、演出や演技次第で…さらに観客の受け取り次第で、演劇は変わっていくものね。

ところで、お話はツバキを初めとする「研究者側」と並行して、舞台のアパート住人…いわば「被験者側」でも進んでいく。

この研究者側と被験者側の対比の意味に悩んだ。

一見すると理論と実践の様な立ち位置だが、被験者側は研究者側のサービスは享受しているものの、特段、意識誘導をされている感じはない。
…一人、住人のミズカワが興味深い心理状態にある。機能的には、頭の中にまるでIF(Imaginary Friend)の様に「元彼」が宿っていて(性質的には全く友好的では無いが)、彼女に一々否定的な言葉を投げ掛け、自分の行動に釘を刺す。自己肯定感が極端に低く、フレンドロイドに「一方的に甘えて、申し訳ない気持ちにならないなんて、なんて贅沢なんだろう。」なんて言っている。

最終的に、研究者側の活動とは全く別のところで彼女はそれを乗り越え、新しい交際を育むのだが…。研究者側で示唆した「他人の貼るレッテル」に対し、被験者側では「自分で自らに貼ってしまったレッテル」を対比してたのかな。

「他人とのコミュニケーション」と対を成す「自分とのコミュニケーション」。後者が成り立ってこそ、前者も活きるのか。
最後に、奇しくも前週に公演のあった「空宙空地」と対比する。
「声にならない」で声とは「言葉」そのもの。​言葉を外に出すのが声だったと思う。「声の温度」では言葉に「感情・真意」を乗せるのが声だ。共に不自由さに喘ぐ人たち。類似のキーワードで良い芝居を立て続けに観れて大満足。

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