つぐない 公演情報 劇団あおきりみかん「つぐない」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    久し振りに…涙をこぼした。涙ぐむことはよくある。ボロボロ泣いた芝居もあった。
    でも、今回は… つーっと一雫落ちた。この意味を考えてみたいと思った。
    とりあえず、あおきりみかんのマイベスト更新。

    以降はネタバレboxへ

    ネタバレBOX

    償わなければならない女が…すがる様に訪れた教会で出会った男。直感に導かれ始まった対話が本作の主軸。
    彼女は…自らを「罪悪感のない女」と悪びれずに称し、生い立ちを語り、ロジカルに罪悪感と償いの必然性を探る…陽気で求道的なサイコパスを思わせた。
    むしろ無理解に「償い」を迫る周囲に嫌悪感を覚えたこともあり、この序盤の展開で「おおおっ、どこへ向かって行くんだ、この話は…」ってワクワクが止まらなかったのを覚えています。(周りの感想を聞く限り、ここがツボにハマった人は少ない様ですが笑)

    ところがどっこい本作は、私がそこまでで感じた期待感とは異なる…意外な方向に舵を切った。

    「サイコミステリー」だと思っています…それもかなり洗練された。
    仕組まれる数多のミスリード…その最たるものが「彼女自身の全ての記憶と発言」という大胆さ。
    事実に反して、彼女の発言・行動の全てに掛かっていた自己否定のバイアス。
    その果てに、逆に周囲に「罪悪感がない」と映る構図が巧妙。

    実際、元彼・貴大は「美和の罪悪感」を最初から主張していたのにも関わらず、私にはそれが思い込みにしか見えない…そのくらいギャップがあったのに、登場人物と起こる事象のピースを必然性を伴ってキッチリ嵌め込んでいくミステリーとしての心地良さがありました。
    「やられた~」という意外性と納得感。

    そして、本作が只のミステリーで終わらなかったところが、…その話のピースたちの接着剤に、…「罪の意識」、自滅に誘う「過剰な献身」等の人間の根源的な命題を使ったところ。

    ミステリーが、とても深淵な人間ドラマになっていった。

    最終的に、同じく深い罪悪感に苛まれていた男の物語を糾合して、…話は「ミステリーの謎解き」から「真に罪を償う方法とは…」という命題に昇華していく。

    安易な免罪符たる「償いへの誘惑」に抗う葛藤を…みっともない人間臭さで体現してみせた男と神父の対峙… あそこの男・松井真人さんの芝居がホント好きです。
    総じて、巨大な罪悪感が「本音のぶつけ合い」を妨げた悪循環の悲劇。その末に「贖罪の献身」ではなく、「徹底的な対話」こそが真の償いであると感じさせました。

    …そこだけ言うと、ごくありきたりのことなんだけど、結局、人の関係はそこに尽きるのね。
    …普通のことこそが難しい。

    至った結論ではなく、そこに至るまでの2人の苦悩と過程こそ、本作の核心なんでしょう。
    凄まじい苦難を伴うことは想像に難くないですが、彼女の…これから始まる「真の償い」を予感させるエンディングが胸を熱くさせました。

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    2018/01/05 23:16

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