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几ノ虫、夜ないて、転がる朝

几ノ虫、夜ないて、転がる朝

南山大学演劇部「HI-SECO」企画

G/Pit(愛知県)

2018/04/06 (金) ~ 2018/04/08 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2018/04/07 (土)

昨年の学祭公演短編「午後6時、踏切ニ ニ分後クル君ヲ観ル」で その独特な切り口と演出力を印象付けた荒井さんが、遂に丸々1公演を任され、ハイレベルなキャスト/スタッフの力を借りながら、その感性で彩る…詩的な空間で劇場を埋め尽くした。

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諸々の描写がとても詩的。丹念に紡がれる一つ一つの『言葉』の連なりは、テキストで何度も反芻し… 意味を掬い上げたいと思わせる深み。
その言葉を発する『役者』達の…台詞の無い時の佇まいや仕草が… 後から言葉の肉付けになって、実在感と説得力を増す。
​同時に聞こえる違和感は…一つの時刻の表現に留まらない… 人生と心象を感じさせる『音』の組み合わせを形作る。

白いカーテンを…スクリーンにもレフ板にも透過幕にも使い、横からの照明で操る『光』と『影』、そしてそれを開いて生み出す漆黒の夜と深海。​

そして、それらの要素を巧みに操って…夢と現実…望みと諦め…愛と憎しみ…この世とあの世… あらゆる相反する時空を重ね合わせることで… 単なる「時系列の物語」では感じ取ることができない「深み」と「厚み」が…波が押し寄せてくる様に伝わってくる。

正直、一度観ただけで…全ての物語構造を理解できる様な作りではないが、理屈では ぼやっとした理解であっても…言いようもなくじわっと沁みてくる…感覚的に伝えてくる力強さがありました。


少し具体的な中身にも触れようか。まずは4人の登場人物ごと。

「朝」の親に対する不信感と拒絶の背景には…一家…ともすれば土地ぐるみの犯罪(大麻栽培)が背景にある様だが、寺山修司「書を捨てよ、町へ出よう」が何度も出てくることが示す様に、社会の閉塞感や大人の圧力への不満を体現する人物として彼女は存在した。

ただし、朝がその読破に挫折しているのが皮肉たっぷり。

『私が死んだら、家族が悲しみそうなのが嫌』というくだりが…絶妙な心情表現で、勿論 "親を悲しませたくない"のではない。
愛されることにすら嫌悪し、それでもなお…という複雑な感情を象徴する。

彼女は…明らかにあまり性格の良い娘ではない。だからこその現実感… 自己顕示、反発、攻撃性、友人への依存… 等身大の…真正面からの苦悩が際立ち… だからこそ周りに愛されたのだろう。


​「さわり」は…当初から この世の人ではない佇まいと演出で、本作に漂う一連の空気を象徴していた。もはや触ることのできない故の真逆の名付けか。自殺の理由は語られず、急ブレーキ音に事故死も想像したのだが違った。
「死んだ理由は本人にはどうでも良い。それは周りの人に必要なもの。」という朝の台詞に符合?


「しずか」はいきなりの攻撃性を示して自己中と評されたが… 幼少から大人びていた朝に憧れを抱いていた様で、自分には成し得なかった「故郷からの脱出」を叶えた朝とさわりを…理想化していたのかも。それを裏切る結果となった二人への憤りを窺わせる。


「留守」は一人…客観的な立場で一番冷静に事態を見ていた。事件の渦中から少し外れた存在でありながら、妙にミステリアスな印象も受けた。名前のせいもあると思う。

さわりの死を受け止めきれずに…精神的な生死の境目を彷徨う朝の帰りを待つ留守居役… というイメージも浮かぶ。留守は実際にある珍名字で一番多いのは宮城県という辺り、留守が震災被災者(津波)を思わせるくだりがあったのにも符号する。留守と朝の言葉少なな呑みの雰囲気は良かったな。実は時空がズレていたとも想像すると何とも味がある。


​私は、本作の最たる特徴を「重ね合わせ」だと思っているのだが、印象的だったのは…対峙する朝と留守の時間軸にズレがあった(4月と11月)ことで… 色んなところで時空が重なり合っているような演出を代表して…不意の言葉の不一致でインパクトを与えた。…最後に2人が12月で同調したことは、精神的に取り残されていた「朝」が死の淵から戻ってきたかの様だ。

また、朝と留守の2人の宴が、休憩後のリプレイで朝、留守、さわりの3人の宴に変わっている演出も、留守は幽霊として最初から居たという暗示なのか…それとも、在りし日の3人での楽しい日々の投影なのか。いずれにしても、これもまた多重世界的で、印象的なシーンが目白押しの作品だった。


構成としてもう一つ特徴的なのは「幕間の休憩(5分)」が設けられていたこと。​新入生への配慮かもしれないが、上演時間はトータル100分でさほど長くはない。とすれば、何かの演出意図を伺ってしまうのだが。
暗転するでなく…列を組んで退場し、薄暗闇の中…戸を開けて出ていく光景は印象的だった。​

休憩後、前半と同じキーワードで物語を再構成していく意図は、勿論「前回までのあらすじ」である筈もなし。咀嚼の時間か、別の視点を与えるものか…無限ループすら想起する鬱屈の時間から生み出されるモノとは… 朝の鬱屈と迷いを観客に共有させようとしている?
観客の受けるストレスすら…計算ずくなのかもしれない。
ムーンライト

ムーンライト

劇団星めぐり

ナンジャーレ(愛知県)

2018/03/30 (金) ~ 2018/04/01 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/03/31 (土)

もともと名古屋では稀有な作風をもつオンリーワン的な劇団ですが、本作は…また一段と異色。

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特徴をいくつか書きだしてみると…

①メルヘン漂う雰囲気の中、可愛い少女たちがシックなデザインの衣装を纏って、物語を紡いでいく。


②天体擬人化の不思議設定の中、SF(すこし不思議)風な謎の物理概念が根底に流れる。

③設定も出来事も独特ながら、関係性の根底に歴史・社会への風刺性を醸す。

④波乱万丈でハードな革命・戦記ストーリーがバックボーンにあって、大河ロマン感が漂う。

えっ?て思う。
これらが1作の中に同居しているって不条理を理解できるだろうか。

ふわっと「恒星から生まれた子供たち」、「月から地球まで10年かけて歩く」とか言われると、普通は実現性をすっとばして頭をメルヘン思考に切り替えるしかないんだが、なんかそれで終わらせたくない何かがある。

なんとなく…「伝承される神話」の風味があるのだ。

日本神話やギリシア神話にしても、神は…能力こそは超人で…出てくる数字は破格の超物理なんだが、なんか心情や思考は人間そのものの愚かさがあるでしょ。

実際の出来事を神様クラスに翻訳して伝承化されている節なども、実際の神話にはあるから、「革命物語を後世の民が神話化した物語」って想像してみると楽しい。

風刺性は、侵略民と原住民の関係性や、天然資源(ここでは「石」と表現)や技術の略奪や、弱さゆえ侵略民に帰化した者への差別等、実際の歴史をオマージュした空気が強く、後に繋がる大虐殺等、ストーリーテラーとしての意気込みが設定資料集からも伝わる。

そのハードさをメルヘンチックな空気に乗せるのは…「被差別」側の抵抗の想いを託した「被差別」側の抵抗の想いを託した…後世に伝える「おとぎ話」…なんて見方もできそう。

ホウキの立場は、まるで交通犯罪者の更生プログラムの様であったし、色んな「見立て」が物語の中に組み込まれている感じだ。

これだけ色んな要素を注ぎ込んで…雰囲気を破綻させずに、想像の余白で調和させる。設定資料集も良かったですが、これなら台本も見てみたかった。衣装は舞台の雰囲気の重要な部分を担っていましたが、かなりの部分が私服ってのが、この子たち普段からこういう佇まいなんや…と感心しました。
君を捜索(さが)していいですか?

君を捜索(さが)していいですか?

試験管ベビー

千種文化小劇場(愛知県)

2018/03/16 (金) ~ 2018/03/18 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/03/17 (土)

​一番印象深いのは、大人の若者への接し方。状況に対するロジカルな物の見方を諭した上で、無意味と切り捨てるでもなく、自分で調べてみろと促す。さりとて完全に突き放すでなく、若者の手の届かない所に手を差し伸べておく周到さ。

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かこさん⇒奥村さん⇒若者達…と繋がる関係性は、まるで試験管ベビーでの芝居作りをそのまま映し出した様にも思えました。奥村さんが…かつてかこさんに施されたことを、今度は奥村さんが若者に施している…という感覚が…何とも言えず…じわっとくるね。

そして、逆に晴香の祖父・吉森への接し方もすごく愛情に溢れていたし、若者たちの秘めた気持ちを山田に伝えずにいられなかった吉森の行動など、世代間の繋がりが理想的な世界でした。あったけぇ。

一方、世代内の繋がりにも印象的なのがあった。その代表は、やはり宗平と風歌の繋がりかな。

物語のキッカケは…かつて失踪した山田を旅先で見掛けた「宗平の心に湧いたモヤモヤ」だったが、警察に相手にされなくて折れかけたところで… 物語の展開の原動力となったのは…明らかに風歌の想いだった。彼女は…宗平の気持ちを「そこで終わらせること」に、いったい何の危惧を抱いたのだろうか。

宗平と風歌の組み合わせには、どこか違和感がある。同い年ながら…別に同級生でもなく昔馴染みでもない…高卒の社会人と女子大生の組み合わせだ。…なかなか結び付きを育て難そうな立ち位置の間に…厳然として形作られている「2人の関係性」の裏には、何かとても心地よいドラマがありそう。

​きっと、風歌は宗平の人となりに何か救われたことがある…宗平の行為を無為にさせたくない何かを経験している。ぽややん…としている…一見冴えなさそうな宗平の…人格の奥深さを浮き立たせているのが「風歌の存在… 風歌の執着」だな…と思わせました。

自分にも見えなかった自分の気持ちに…徐々に辿り着いていく宗平の心の変遷が良い描写でした。
 火消哀歌

火消哀歌

片肌☆倶利伽羅紋紋一座「ざ☆くりもん」

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2018/08/15 (水) ~ 2018/08/22 (水)公演終了

満足度★★★★★

イケメン・美女の劇団で、アイドルのお遊び劇団かと思ったら、しっかりした劇団だった。
かなり泣けた。
これは良い。

孤独、あるいはマルキドサドに学ぶ幸せな人生の過ごし方

孤独、あるいはマルキドサドに学ぶ幸せな人生の過ごし方

劇団シアターホリック

G/Pit(愛知県)

2018/03/14 (水) ~ 2018/03/15 (木)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/03/14 (水)

えも言われぬ空気が漂う…何と90分の一人芝居。変哲無さそうな主人公だったんだけど… 何か精神鑑定に掛けたい感じの人となりが味わえるダークポエム。笑っていた自分がちょっと怖くなる後味。

ゴスン

ゴスン

演劇組織KIMYO

G/Pit(愛知県)

2018/03/08 (木) ~ 2018/03/11 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/03/09 (金)

何か不思議に…綺麗やった…って印象が残る。シンプルながらも華々しい効果、普段通りの動に対する静の肉体美の演出、至近の舞台に相まって…ゴテゴテにせずとも伝わってくる強度があった。波乱万丈の後が意外に静謐さに溢れてて、これ本当にKIMYOかって後味が良し。

ヒッキー・ソトニデテミターノ

ヒッキー・ソトニデテミターノ

ハイバイ

三重県文化会館(三重県)

2018/03/03 (土) ~ 2018/03/04 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/03/03 (土)

重なる時間、重なる空間… そして…複数の価値観も交差する。善意の働き掛けも…所詮は刷り込まれて抗えない社会の価値観の元。それ自体否定もしないし、今もその元に生きている。それを揺さぶり、突き崩さないと、この芝居は味わい切れなさそう…

蒼いラフレシアの鼓動〜The beat of blue Rafflesia〜

蒼いラフレシアの鼓動〜The beat of blue Rafflesia〜

東京ジャンクZ

インディペンデントシアターOji(東京都)

2018/08/15 (水) ~ 2018/08/26 (日)公演終了

満足度★★★★

力作で長さは感じなかった。でも2時間45分では敬遠されるし帰宅時刻が気になる時間だ。

はたらくおとこ

はたらくおとこ

愛知教育大学 劇団把゜夢

ナビロフト(愛知県)

2018/03/03 (土) ~ 2018/03/04 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/03/03 (土)

序盤はぬるい感じで始まった舞台だったのだが… 破産した工場に残る行き詰まった人たち… 抗議の手段としてテロリズムに走る土地の人たち。徐々に閉塞感がはっきり見えてくる…この地方の空気。


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リンゴ園からパッキン工場と事業失敗を重ねていた茅ヶ崎。
潰れた工場で意味もなく就業時間が過ぎていくのを待つだけの夏目・前田望ら従業員。
人手も金もなく広大な農地を管理しきれずに違法な強い農薬に手を出した佐藤蜜雄。
農薬の影響で片目の視力を失っている佐藤涼。
兄に反発して家を飛び出し、工場で泊まり込みバイトをする佐藤豊蜜。
組合の工作員として涼に手を出していた川口満寿夫。
工場を逃げ出して怪しい仕事に手を染めた前田愛。
そして不法投棄の運び屋 真田三平。

いずれも…どこにあってもおかしくない暗雲たるリアリティで迫ってきた。

…ただ一つ

…序盤から明らかな違和感を放つキーワードが…

茅ヶ崎が追い求める
「舌が痺れるような、渋い… しっぶ~いリンゴ」

前田望が… 苗木に罵声を浴びせながら…
わざわざ渋く育てるリンゴ…

ゲンコツ。

​明らかに売れるとは思えない異質な「渋いリンゴ」の暗喩するところは何だったのだろうか。

「人生における激しい苦難・辛酸」を背景に置いているのは感じられるが、茅ヶ崎の人生において、それが求めるべき輝きであるはずもない。
かと言って、その辛酸を世間の者たちに味合わせてやろう…なんて悪意であるとも思えない。

茅ヶ崎が最悪の事態の中で味わった「渋いリンゴ」… それが与えた衝撃は… 彼女の中の何かを「壊してしまったのではないか」とすら思える。

…​その上で…あの壮絶な「放射性廃棄物を喰らうシーン」である。

その行いに合理性は一切皆無だが、そんな理屈を蹴散らして呑み込む「壮絶さ」と…「茅ヶ崎が求めていた渋さ」を感じさせた演出は、巨大なリスクを背負ってしまった現代科学と巨大産業…そして、それに狂う人間たちを皮肉った…とも感じられるが、果たして…。

​そして、そこまでの盛り上がりに水を差すような…暗転後の半「夢落ち」の様な展開。

茅ヶ崎が許したものは… この作品が許したものは… 決して夏目の過去だけではあるまい。決して暗転前までの世界が… 夏目の妄想のみとは言い切れない… 非現実とは言い切れない世相の中… それすら呑み込む神の目線なのか。

正直言って容易には呑み込めないが、観客に… 一切の爽快感や安易な感動を許さない…でも目を離すことのできない…心に…もやもやっと… あの「廃棄物」の様なものを沈殿させる芝居でした。

嘘と本当と(     )。

嘘と本当と( )。

膿月

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2018/08/17 (金) ~ 2018/08/19 (日)公演終了

満足度

観客の肖像権を軽視している。

かえりみちの木

かえりみちの木

空の驛舎

ナビロフト(愛知県)

2018/02/24 (土) ~ 2018/02/25 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/02/25 (日)

見事な大樹の存在感…その下で織り成される人間模様の味わいの深さ。関係性の説明が希薄なのに…必要十分の空気が伝わってきて、返ってリアリティを増す。ソーシャルワーカー山本の吐き出す言葉の説得力、入所者 白井の演技のリアリティは見事と言う他はない。

秘密公表機関

秘密公表機関

劇団あおきりみかん

昭和文化小劇場(愛知県)

2018/02/23 (金) ~ 2018/02/25 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/02/25 (日)

ネオオムニバスストーリーとの謳い文句に違わず、見事な構成。状況と立場が複雑に絡み合う関係性はさすがの一言。登場人物全てに多くのスポットライトが当たる仕組みは、あおきり役者の誰推しが観ても大満足の仕掛けですね。なるほど中身にもマッチする笑

リング!リング!リング!

リング!リング!リング!

ゆとり一揆

七ツ寺共同スタジオ(愛知県)

2018/02/24 (土) ~ 2018/02/25 (日)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2018/02/24 (土)

​舞台美術が主宰という稀有な劇団。中二階、無知な六人と六人で周りを驚かせた とぅぎーさんの最新舞台美術を目の当たりにする。もはや彼なら七ツ寺に2階を作るのはデフォって感じですが、今回は派手さより…緻密さで攻めてくる印象の方が強い。

その根源は…地面から立ち昇る様に拡がり、入り乱れ…混沌すら垣間見える”無数の枝"。

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話を振り返れば…それは可能性の"分岐"にも映る。
諦めて途絶える線… 諦めずに延びていく線… あの時…もし… の人生の選択の連なり、その都度の人の繋がりも思わせる。敢えて直線で表現し…小道具とも連携する機能性も細かい工夫。最初は鳥居の印象も強かったですが、どんなシーンにも意外に溶け込みました。意外なほど印象を変え… 極めつけは…空気を一瞬で変える…内部照明の仕込み。元が地味目な美術に…対照的に輝く。

さて、お話の方ですが… 全般的には戦国エンタメのよそおい。ダンス、アクション満載で伝奇物の空気もある。しかしながら、単純な娯楽作品と言い切るには…複雑な何かがある。

表に明示しない「背景設定」がかなり濃密にある感じ。意図的に色々削ぎ落して、今のエンタメ系に集約させた印象もあるのだが、「設定の名残」がそこかしこに顔を覗かせる。

もうその辺りは「観客の妄想に任せた!」と言われているような気もする。

最もミステリアスなのが…結局一度もおもてに現れることのなかった「フミノ」の存在。

そしてタイムスリップに関与する"物の怪"の様相を呈した「氷見」の存在。
そして…フミノと氷見の間に暗示されている気がする…二人の同一性。

眞子の…見えないフミノへの語り掛けに…集団芝居のどさくさの中…「氷見が応えている様に見える」のが謎めく。眞子は過去にフミノへのイジメ(?)に関与したと窺わせるくだりがあり… 眞子は明らかにフミノに負い目がある。

フミノが…「眞子がかつて埋めたフミノの携帯電話」を…旧友に掘り起こさせようしている状況は、ミステリーを超えてホラーの流れであり、破滅の予感しかない… 眞子が怖れるのも当然。

ここに…フミノ=氷見の関係を重ねてみると…、序盤は不幸へ誘っている様でありながら… 結果的にフミノが眞子に与えたのは「負い目に対する救済の機会」であり、求めていたのは復讐ではなく、祝福の言葉だ。​勝手な妄想が前提の言になって恐縮だが… フミノが…何故…どの様にして、その救済の境地に至ったのか、…そして如何にしてこの力を得るに至ったのか?…

ミステリーとしてなら核心の謎だが、本作ではこの事態に対して… 一切の明示的な説明はない。だから観る人によって… 何に引っ掛かったかによって…想起する「背景」は様々だろう。

どこまでが計算の内かは知るべくもないが、多分に「スピンオフ」の可能性を秘めた作品でした。

フミノは…実は先に死んでいて「物の怪・氷見」となっているとか、フミノは先にタイムトラベルに関わる体験を経て、眞子がイジメに関与した…止むに止まれぬ隠された理由を知る機会を得て…、眞子を救う決意をしたとか… そんな話が本作の前にあるんじゃないかと妄想できる…そんなドデカイ余白が良い(笑

そもそもね、​…何でこの戦国時代にピンポイントに繋がったのか… ​しかも設定的には…過去と言うよりはパラレルワールドの趣き… この縁を繋いだ…フミノ=氷見のお話が…この前に絶対あるよね???
同一人物でなくとも、氷見がフミノを支えた話としても成立しそうだ。
猫の耳は折れていたか。

猫の耳は折れていたか。

南山大学演劇部「HI-SECO」企画

ナビロフト(愛知県)

2018/02/15 (木) ~ 2018/02/18 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/02/18 (日)

ドラマへの効果としては協調するのが難しそうな…理屈面と精神面をうまく掛け合わせた良作でした。SFテイストをベースにしつつ…マニアックな展開をさせながらも、「想いで自分の将来を変える」という…普遍の命題をど真ん中に置き、その動機として兄弟愛を持ってくるあたり、SF面の理解が及ばなくても気持ちを乗せられる構成が上手い。

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理屈面においても…
・因果律に関わるSF的なロジック、
・物事の善悪と…簡単には割り切れない人情とのせめぎあい、
・人格は多面・多様で構成されいて…一意には切り捨てられない関係の難しさ…等、

…多方面に切り込んでいて、マニアックに見える割りにオールラウンダーな仕上り。

また、SF面一つにとっても工夫が大きい。タイムリープによるループものを全体のプロットに置いているのに、敢えて「最後のループ」に絞った話にして、「ループ自体を一つのオチ」に据えているのも良い。如何せん、今となっては世にループものが溢れているため、日記の正体も観客の想像の域を越えなかったと思うが、その正体の見せ方はインパクトあって、映像含めてとても上手い演出でした。

クライマックス関連でも… 過去は変えられない「決定論」的な挙動を示していた因果律に対し、量子論的な発想から「2つの状態が重なりあった状況」を作り出すことで… いわば「因果律を騙そう」という挑戦的な仕掛けに見えたのは興味深かった。

本来、「シュレディンガーの猫」の思考実験自体が、ミクロ現象をマクロ現象に置き換えて、その異常さを批判するためのものらしいが、そうであれば本作の仕掛けは…それを逆手に取る試みということになる。

結果的に事を成して「パラレルワールド」で生きているであろう結末も踏まえ、この手の話の異種混合・合わせ技となっていて、色々意欲的だ。

きっと論理的な穴はいくらでもありそうな気もするが、フィクションの楽しみ・意外性としては充分な仕掛けだったし、ハードSFではなく…最終的に人間ドラマに集約されているため、味付けとして効果的な盛り上がりを与えることができていると思う。


ところで、作中で…西川以外も、何故みんな制服がバラバラなのか?…がずっと気になっていて、単に制服フリーの学校とか、衣裳の都合じゃつまんないなぁ…ともやもや考えていたのだが…ふと閃いた。

実は…何かしらの作用で、ループの中でメンバーが少しずつ増えていったりしてないか?

西川が最後のピースだったのでは?

Wキャスト版も…解決のための平行世界の1つだったのでは?

…って妄想しだしたら、むっちゃ楽しくなってきた(笑)
夕-ゆう-

夕-ゆう-

愛知淑徳大学演劇研究会「月とカニ」

七ツ寺共同スタジオ(愛知県)

2018/02/16 (金) ~ 2018/02/18 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2018/02/17 (土)

古き良きコミュニティのふれあい。血縁のみならず… ご近所、幼馴染、学校の友達に至るまで…多くの人々が"家族"然として振る舞う…人の結びつきが暖かい。

以降、ネタバレBOXに続く。

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それを長崎弁が彩る。

先日、長崎の劇団F's Companyの「けしてきえないひ」で長崎弁芝居を味わって、長崎づいている私ですが、方言は…土地に根ざした現実味を無条件で会話に与えて味わい深いです。私に細部は分かりませんが、長崎ネイティブの西園寺さん(演劇集団こちら側)が「一切の違和感なし」と絶賛していたので、月カニの長崎弁は相当なレベルの様です。

そして、これだけ多くのキャストが並びながら… 誰一人霞むことのない各々の個性の強さ。
序盤から…ひたすらハイテンポで入れ替わり立ち替わりする…まるでオムニバス・コントの様なネタの奔流は見事でしたが、この流れのテンションを終始維持し続けられる「コマ」が揃った…集団としての総合力は流石です。月カニの外でも個々のユニット活動が目白押しだったタレント集団「月カニ15期生」の集大成でした。

そんな…家族ドラマの暖かさ、青春ドラマの甘酸っぱさ、突拍子もないキャラクターによるコメディの笑いと…色んなドラマの王道を嵌め込んで、安定した面白味に「穏やかに納まっていく」かと思われた終盤… 周到に用意された布石の連鎖によって、一気にクライマックスに駆け上る仕掛けには脱帽でした。

私、モトヤが置かれていた状況は全く予見できておらず、…思えば冒頭のモトヤとユウの何気ない会話シーンは…こんなにも切ないシチュエーションで交わされたものであったのか…と驚きました。

この時、モトヤがこっそりユウとだけ会っている意味…、

好意的なサカタが何故か他の面々から幾度も邪険にされて…モトヤが誰と結婚するのかすら教えてもらえなかった意味…、

モトヤが結婚式前夜に激しく腹を壊していた意味…、

全てがラストに結実して… 一瞬で花開く。

言葉通りに…一面に姿を現した夕顔たちは…観客たちの涙腺をことごとく壊していきました。互いが互いを…何よりも誰よりも大切にしたが故のすれ違い。ユウの…子供の様に天を仰いだ号泣が沁みわたるエンディング。中盤までのオーソドックスさに紛れて周到に仕掛け…、気持ちよく騙してくれた展開…演出には本当にありがとうと言いたい…気持ちよく泣けた。
OMOIDE IN MY DEAD

OMOIDE IN MY DEAD

タツノオトシドコロ

円頓寺Les Piliers(えんどうじ・レピリエ)(愛知県)

2018/01/24 (水) ~ 2018/01/28 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/01/28 (日)

ひたすら映画のレンタルDVDを見続ける男。そして、その行為にダメ出しをし続けるもう一人の男… 彼は…何故か「鎖」に繋がれていた…。

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湧き立つ「異常」感を押し殺すかの様に…ひたすら繰り広げられる「日常」的な映画オタクの営み。​鎖のみならず、会話の端々に「異常」のキーワードが出てくるのに、愉快な「B級映画オタクトーク」で空間が埋め尽くされ、観る側の感覚が麻痺していく。

映画トークには…リアリティの構築と異常の感覚を麻痺させるカモフラージュの役割があったのではないかと思う。
…ゾンビが…フィクションの世界から…徐々に現実の世に忍び寄り… 遂には登場人物の全てにその魔の手が及んだかに見えた刹那… 本作における「ゾンビ」に対する…私の認識が覆った…見え方が変わった。

​当初は社会からドロップアウトした若者…という「特定」のケースをモチーフにしているのかと思っていた。

しかしいつの間にか、それは「一般化」してしまった。舞台には…そういうヤツしかいなくなった。

…その瞬間、本作は社会一般の…今、この社会にある普遍的な暗部を描き出していると思えてしまった。

色んなものを社会に吸い取られて…先の見えない人生を前に…死屍累々と積み重なる若者の姿がみえる。冗談交じりに「ゾンビは労働者の鑑」と評する台詞が、とても効いていた。
けしてきえないひ

けしてきえないひ

F's Company

四天王寺スクエア(三重県)

2018/01/27 (土) ~ 2018/01/28 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/01/27 (土)

人の心情や合理的な発想では…一切太刀打ちが出来ない…歴史と村社会の…人の心の暗部。心地よい長崎弁に彩られながら、徐々に活性化する会話・心の叫びに引き込まれる。終盤、長女が叔父を諭す一言がとても沁みた。最後は結局、海の神の差配なのかも…。

詳細な感想はネタバレBOXへ。

ネタバレBOX

人の心は…集団になると何故ああも歪んでしまうのか… 時の積み重ねの前に…何故ああも柔軟さを失うのか。

漁業を生業とする島で…800年の歴史を持つ「火照(ほてり)」という職業…いわば「神事の担い手の後継者問題」を核に…変えたいもの、変えられないものを巡って会話が紡がれる。

殻を破るように徐々に活性化される会話…飛び出る本音たち… 長崎弁による会話劇は私には新鮮であるとともに、なんとなく無条件で「土地に根ざした現実味」を感じさせてくれました。

思い出話としてしか現れない「父(先代火照)」の存在感は見事でした。
その人となりは、町と歴史と…責任と自負と…娘たち・隣人たちへの想いとの… 板挟みの苦悩を感じさせつつ… 何となく慈愛に溢れていた。

特に次女ミサキとの関係性は印象深く、情愛と厳しさと彼なりの現代的な合理性が窺えた。

今、問題になっていることの全てを「父は一人で背負っていたんだ…」と思うと切ないし、娘たちへの愛がいや増して感じられる。

一方で、主に現代っ子的な振る舞いだった次女・三女の身体の中に否が応にも幼少から擦り込まれた「伝統」を感じさせるシーンもあったのが印象的。

そのシーンに至る前まで…正直、神事的にはグダグダ感を醸していたのに…2人が伝承を語り出したところで…突如浮かび上がった「神秘性・伝統感」には息を呑んだ。​色んな物が…絶妙なバランスを成して、本作の空気を作っている。

そして終盤の核心。

方向性にズレはあれど、最も継承に前向きだった三女ナミに…伝承に纏わる「理不尽な制約」が降りかかる。…思わす唖然となった…この町の「暗部」の最たるもの。とかくままならない自然との対峙。その現象への合理的な判断の拠り所となる技術が無かった古の時代… 集団の合意形成を…神という曖昧なものに頼るしかなかった時代の悲しい遺物。

本質を掴めていないから、ただ畏怖するが故に何も変えられない…それどころか…そもそも、変える議論からしてタブーだ。この社会の未成熟性が重く圧し掛かって感じられる空気だった。

…手に負えない事の原因を…責任を…何でも良いから何かに覆いかぶせて当座を凌ごうとする…いわば「生贄」文化を見た思い。その象徴として描かれた叔父を… 長女が振り絞る様に諭した一言…「少しずつ変えていこう」がとても沁みました。

最後の結末は…結局、「海の神」の思し召しだったのかも…とも思わせる空気があって、ある意味で皮肉感もありましたね。結局、人だけでは何も変えられなかったのか… それとも三姉妹を後押ししてくれたと思えば良いのか。色んな後味を感じさせる作品でした。

昨年・今年と拝見できましたが、また来年も三重に来てくれると嬉しいです。

余談。

叔父の役者さんのキャラクター性は、小劇場としてはかなり稀有に思えました… 大変得難い。良い芝居が観れました。

音響が絶妙で、遠くで微かに聞こえる「船の音」が…とても良い空気を作ってました。(…許すまじは選挙カー笑。)
中原中也まつり2018

中原中也まつり2018

G/PIT

G/Pit(愛知県)

2018/08/11 (土) ~ 2018/08/12 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/08/12 (日) 15:00

今回は1部、2部とわかれていました。
1部は講演会で興味深く、学生時代の講義を思い出しました。
2部は朗読劇でした。中原中也役が女性でビックリしましたが中原中也自体が繊細で中性的な方だったらしく女性がキャスティングされたそうです。
見終わった後、中原中也の作品にもう一度触れてみたくなりました。

バンブーオブビッグ

バンブーオブビッグ

劇団マリーシア兄弟

Geki地下Liberty(東京都)

2018/08/16 (木) ~ 2018/08/19 (日)公演終了

満足度★★★★★

お笑いライブの舞台裏、楽屋には、期待通り観てみたかったモノが沢山詰まっていました。
私にとって芸人さんをつくづく「スゴイな~」と感じるのはネタを披露しているスポットな部分よりも全体の空気を操る人間力にあります。

たまたまこの前日にヨシモトのイベントを観てきたのですが(ここから先ちょっと長くなりますが申し訳ありません)
大勢の芸人さん達が自身の面白エピソードを競い合うイベント、最終戦まで勝ち残った、ある芸人さんが、まさかここまで勝ち進むとは思っていなかったらしく用意したネタが尽きてしまいました。
これはかなりヤバい状況。
先攻、対戦相手の芸人さんは前回の優勝者でもあり、そつなく面白エピソードを披露して、ますます彼にプレッシャーがかかります。
結局、その芸人さんは心が折れてしまい途中で逃げ出してしまいました(笑)
まさかの「えぇぇぇぇ」です。
そして審査発表。発表前にその芸人さんは、くやしさに泣き出してしまいました(笑)
これらの(笑)は決して馬鹿にした笑いではなく、なんかもう一生懸命に足掻く姿に対して、切なく感情に訴えてくる笑いです。
しかし当然、優勝は前優勝者。
涙が止まらない芸人さんに、周りから「その賞金譲ってやれよ~」といったヤジが飛び交い、優勝者は「え~っ、泣けば賞金もらえるのかよ~」と舞台は大混乱。
ネタを用意していなかったとか、途中で逃げ出すとかいった事はプロとしてどうなのかという見方もあるかもしれませんが、もし接戦レベルのエピソード対決が出来たとしても、決してこんなカオスな笑いは生まれなかったと思います。
何が凄いって、ヘタレた姿をライブに披露してしまう芸人さんの人間味もありますが、それをいじる司会者芸人さん、囃し立てる周りの芸人さん、悪態をつきながらも賞金を彼に差し出す優勝芸人さん(受け取りませんでしたが)
普通なら「失敗」に対して盛り下がるであろう事態を大爆笑に変換してしまう全員の機転が利きまくった見事なチームプレイです。

(本作に戻ります)
楽しく笑えるからといって仲良しこよしの仕事仲間とはまた違った芸人さん達の関係性。
何より自分が目立ちたいでしょうし、ひがみや焦りの感情も常に隣り合わせでしょう。
どうすればこんな関係が生まれるのか、そのヒントがいくつも散らばった作品だったと思います。
本作はヨシモトに比べてずっと小さな事務所のお話しで、舞台ではスベリを笑いに転換できなかったくせに何故か楽屋で笑いをとっちゃったりの、まだこれからの芸人さん達でしたが、この日ライブや楽屋で繰り広げられた出来事を通して確実に何かが変わっていく姿を見る事ができました。
「笑い」に肥料が与えられた瞬間とでもいうのでしょうか。
毎日がプロとしての成長過程。
更に明日からの一日一日が彼等にどう繋がっていくのか楽しみでもあり怖くもあります。
サラリーマンには全く不向きな人ばかりでしたが、こうした日々を送り、「笑い」にハングリーでありつつ低収入や挫折を乗り越え、いずれ成功を掴んでいくような芸人さんには、そりゃもうかなわないと改めて実感する公演でした。

俺の骨をあげる(8/17(金)19:00開演 当日券ございます!)

俺の骨をあげる(8/17(金)19:00開演 当日券ございます!)

劇団鹿殺し

サンシャイン劇場(東京都)

2018/08/15 (水) ~ 2018/08/19 (日)公演終了

満足度★★★★★

初観劇の鹿殺しさん
始めはついていけるのかと不安もありましたが、めちゃくちゃ楽しかったです
なんでもありの詰め込み具合にいっぱい笑って、最後はぐぅっっと沁みました
音楽劇というだけあって、歌も生バンドも良かったです
今後の公演も気になる劇団さんになりました

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