マナナン・マクリルの羅針盤 2018
劇団ショウダウン
シアター風姿花伝(東京都)
2018/08/11 (土) ~ 2018/08/16 (木)公演終了
満足度★★★★★
4年前にマナナン・マクリルの羅針盤の東京初公演がありその時拝見し、3年前の池袋演劇祭凱旋公演も拝見、そして今回も拝見したが、毎回精度が上がりまたボリュームもアップしているのが眼にとって分かる進化と思いました。
役者が身を削って板に立つとはこの事と感じました。
この回は日本語字幕も用いた回でしたが、
??となったときに役立ちました。字幕があることで新たな楽しみ方が増えたと思います。
難しいといわれるナツメさんの本を遊眠さんが演じる姿を一人芝居でもう一度観たいと思います。
パイレーツ・オブ・トレビアン2
ノーコンタクツ
萬劇場(東京都)
2018/08/16 (木) ~ 2018/08/19 (日)公演終了
満足度★★★
とってもおもしろかった。アイデアと工夫の宝箱でした。
ロリコンのすべて
NICE STALKER
ザ・スズナリ(東京都)
2018/08/15 (水) ~ 2018/08/19 (日)公演終了
満足度★★★★
初観劇の劇団さん。小ネタを多く仕込んだ会話が面白く、そもそもの脚本が独特でした。
終盤は切なくなるシーンもあり、意外と(笑)良い話でもありました。
役者さんは、幅広い年齢を演じる方や何役もこなされる方もいて、9人以上に感じ、また魅力的な役者さんも多かったです。
「ムイカ」再び
コンブリ団
津あけぼの座(三重県)
2018/06/30 (土) ~ 2018/07/01 (日)公演終了
満足度★★★★
序盤から独特な進行で、目の前にいる人たちの「立場」がなかなか掴めない展開に…非常に興味を惹かれた。メタ的にも、不条理劇的にも、ファンタジーにも映るが、ふと…まるで「思考セミナー」の様な…社会一般の常識・定説・思い込みを疑わせるよう導いてくる展開が特異でした。
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ネタバレBOX
しかも、それを入念に何度も繰り返す… ここが肝なんだろうな。いわば…言い訳を追及してくる… しかも冷めた…シラケた感じで…というのがポイントで、何かを主張する時に…熱く真正面から伝えてくるのではなく、内からじわっと自問自答させる感じなんだよね。だから原爆をモチーフにしながらも、割と緩い感じで迫ってくる感覚で… 外圧的な悲劇や恐怖を突きつけてくるのではなく、それは元々…観客が持っている知識や経験に委ねている気がする。そんなものは他所からいくらでも得られる… むしろ、知っていながら目を背ける… 別の大義を優先する…そんな人たちに向けて、閉じた心に囁きかける感じがしました。
想像すれば世界は変容する…か。想像しなければ…できなければ何も変わらない…カミサマは何もしてくれない。…その空気とは真逆に、けっこう辛辣なものを携えていますよ。祈りとは対極だ。
各論ですが…意味深に多義を想起させる舞台美術…、急所に打った碁石の様に色んなところに効いてくる小道具のスリッパ…立場が分からなかった人たちが複数の方向に効いてくるもの同じ感じかな…とっても良かった。
全てが「自ずと考えさせる」… そんな誘導に繋がっている様で、面白かったです。…なんてヒトゴトな感想を吐かれるのは不本意かもしれないですが(;^_^A
ラストシーン、むっちゃ好きですね。未明に展開する穏やかな… 言葉なきドラマ。視線で想像させる演技…とっても良かった。これが悲劇の直前というのを観客は知っているから… 尚更この時間が尊い。
三人姉妹
双身機関
七ツ寺共同スタジオ(愛知県)
2018/06/30 (土) ~ 2018/07/01 (日)公演終了
満足度★★★★
驚いた… 板付きから劇団イメージ通りの白塗りアングラ… かと思いきや、そこらから更にぶっ飛んでいった…これは良いよ。
楽曲の選曲などの演出の妙に留まらず、時代と土地を超えた硬派な翻訳・潤色と構成の味わいが深い。数年見損ねている間に進化してた気がする。
ランチタイムセミナー
劇団ジャブジャブサーキット
岐阜市文化センター(岐阜県)
2018/06/23 (土) ~ 2018/06/24 (日)公演終了
満足度★★★★
観客が事件の大筋を知っている前提なのか、説明的台詞があまりない。知らなければ、会話の中の断片的なピースを…パズルを解く様に繋ぎ合わせていく感じになるが、むしろそれも一興。…逆にそれが本来の楽しみ方かも…。
逆に史実を知っていると、あまり謎が拡がらなくて想像の余地がないきらいもあるのだが、さて、この事件をまったく知らない若い世代には…この作品はどう映ったのだろうか…というのは素朴な興味です。
既知・未知いずれにしても、公私に広く及ぶ思惑を想像させる「不明瞭な会話」が交わされる中、非日常の緊張感と日常ののどかさが交錯する空間が拡がる…非日常の中の日常… 日常の中の非日常が…相互に際立つ。 …そこに暗躍する…「思わせぶりな態度/行為」の数々が想像を掻き立ててくれた。
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ネタバレBOX
(続き)
史実はあっても、誰が何を知っているはフィクションだ。青木大使や近藤がやけに意味ありげな存在感を示すのに、結局事件の進行に関与していなかった結果には楽しく騙された。
最も大きな後味として「行為と…それを行う人物の人柄が必ずしも一意にはならない社会・政治の難しさ。人柄そのままでは生きられない… 抗えぬ社会背景」というものがじんわり伝わってくる。
その最たるものがMRTAのリーダー・セルパのチュー事件と…ひた隠しにされていたコッテコテの大阪弁。おそらく本作一番のフィクションと思われるが、後藤さんの…怖さと温かさが同居する演技が本当に好み。(笑いとシリアスのバランスに苦心されたと伺いましたが、さもありなん。)
勿論テロが許される筈もないが、それを成すまで追い詰められた社会背景は察して余りある。しかし、志を同じゅうせずとも共存できる… 石嶺に対する「ドウシではないが、ダチだな」というセリフが、彼の本来のメンタリティを窺わせる。それが転じて…セルパの共存を許さなかったペルー国家の何かを暗喩する。
終盤の山場、長い「暗転」の中での救出作戦(史実でのチャビン・デ・ワンタル作戦)は、1ヶ月前のフラジャイル・ジャパンを思い起こさせましたが、救出後、半年経ってから山崎書記官が漏らす「喪失感」は、まさしく地震や津波によるソレであり、「一瞬で消えた日常」という観点で同様に括れる印象を持てるのが意外だったし、非日常が日常になっていた人間の皮肉な慣れにも想いが及ぶ。
そして石嶺の「無力感」からの脱出も印象的なポイント。公邸跡に脱出後も数度来ていた石嶺が…何故このタイミングで初めてセルパ達の亡霊を見るのか…時間の経過が石嶺にもたらすもの…セルパ達を救えなかった無力感に苛まれていた石嶺が…この経験を時間を掛けて消化して…次のステップに進んだ今だからこそ…亡霊(現実)を見ることができたのではないか。
その意味でも被災後のメンタルの克服に類似する空気があった。
作劇で1つ疑問に思ったのは「リマ症候群」の扱いです。
リマ症候群…「監禁者が人質の教養や優しさに触れて、人質に親しみと敬意を持ち始める現象」は、この事件を代表する現象としてよく取り沙汰されるが、本作でのその描写はあくまで「監禁者と人質の親交の表現」に留まる。岸とサキの話…(絵の才能を褒めた話)やランチタイムセミナー等への相互参加は記録に残る実話相当だが、一番センセーショナルに語り継がれる… 救出作戦に対する応戦で「MRTA隊員が人質を撃てなかったエピソード」は描かれない。安直かもしれないが、…一番感動を誘いそうなところに敢えて触れない。
「支配者層への批判」という観点でも、救出作戦部隊が「投降したMRTAメンバーも殺害した」という話は出てくるが、あまりフォーカスされない。セルパと石嶺の言葉の中で語られるだけで、それに共感を誘うような根拠を伴う描き方はしない。
それを見せ得る時間帯は、全て「暗転」の闇の中… 銃声の中… だ。
そのいずれよりも「日常の喪失(本当は非日常なはずだったのだが…)」を描くことを重視したということなのかな。…終わり際の心象は「震災テーマ」の芝居の味わいに近かったとも思える。
初演からどの程度変わっていたのかには興味津々なのだが、当時でも阪神淡路大震災は経験しているのだから、そういう重ね合わせあってもおかしくないのかな…。
みえているせかい
劇団アルデンテ
御浪町ホール(岐阜県)
2018/06/22 (金) ~ 2018/06/24 (日)公演終了
満足度★★★★
ぱっと見で舞台に流れる空気はコメディなのだが、微笑んでやり過ごす登場人物たちが「裏で湛えている心理」に想像の翼を広げると…とても切ない感情が湧いてくる。何とも両極端な二面性を持った作品だと思う。
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ネタバレBOX
(続く)
先にコメディ面の面白さを挙げる。
一つ屋根の下に集う「心優しき奇人変人たち」のてんわやんわ…漫画なら定番のオーソドックスさだが、それでもなお万人に愛されるシチュエーションの楽しさ。
一見 巻き込まれ系主人公の絵本作家・洋介。
その前に現れた押しかけJK弟子の永遠(トワ)は…オツムが弱そうで笑える受け答えの中に妙に本質を突く知性を感じたり、ビジネストークの様なエセ英語を口調に散りばめる等、愛らしさと笑いに知性を添えた好人物でした。
大家ちゃんは いわば幼馴染キャラと妹キャラを足して2で割り、有り得ない立ち位置(大家)にぶち込んで、ツッコミとボケを兼ねるユーティリティプレーヤー。
そして、オタク、オカマは笑わせる(笑われる)ツボを押さえて嵐の様に舞台で暴れまわるが、後々、「異質を温かく受け入れられる資質」を秘めている点で…納得の役どころですね。(虐げられる人達だから優しくなれる感じ。)
何にしても、話に深く潜ろうとせずとも、とても楽しめる作りになっていました。
しかしやはり、その反面として迫る「切なさ」について多くを語りたい。
… そのカギは…主人公 永遠(トワ)が心酔する…洋介作の「ある絵本」が握っている。
この絵本の中身がどんな物語なのかは作中では多くは語られない。その絵本に投影された洋介の心情、永遠が感動した背景、元カノ・亜里沙の反発も…深く掘り下げられることはない。
本作の この「裏」の部分に…何らかの気配を感じ取った人には、この曖昧さは物足りなく感じるかもしれない。ただ、これだけ布石を打っておいて、その先を観客の想像に委ねるのも大胆だし…現実世界のコミュニケーションとしてリアルだとも思える。
一見、朗らかに生きる人達の裏にも切ない何かが必ずあるのだ… そのことだけ感じさせ、そこから観客が想像を巡らす…気配を窺う…「他人の身になって考えること」を促しているのかもしれない。結果、察したモノが何であっても、きっと良いのだろう。
しかし、作演の近藤文拓さんは一つ大きなヒントを作品の外(Twitter)に公開している。
それが…作中でその存在だけが触れられている絵本「みんなのせかい」のラフ画像だ。
主人公の「ハリネズミ」が…彼のテリトリー外から現れ仲良くなった友人「小鳥」との仲違いから話は始まる。
そこを起点に… ハリネズミは小鳥の足跡を追い、小鳥の心情を想像し、自分の存在の小ささと取り返しのつかない行為に苛まれ、…もはや「小鳥と交われぬ…住む世界の違いに絶望する」…そんな空気を想起させる内容なのだが…
これは明らかにハリネズミが洋介であり、小鳥が亜里沙と思える。
ただこの絵本… 本当に洋介と亜里沙の別れの原因になる作品だったのかは曖昧だ。この絵本に関する永遠からの振りに対し、亜里沙のタイトルの記憶が曖昧だったからだ。
この解釈次第でこの絵本の位置づけと洋介たちの心情は大きく変わる。
私には、この絵本に、洋介の作品に口出しをした亜里沙との揉め事、亜里沙との別離、…洋介の後悔… 事の顛末がすべて映し出されているように見えた。空と海は…どこまでいっても交わらない…という描写は、打ちひしがれる洋介そのものに見えた。
だからこの絵本、亜里沙との別離の後に手を加えられて今の形になっている気がしている。洋介の苦い経験を元に… 亜里沙への詫びと反省と亜里沙への募る想いを反映して作り直されたもので、…でも未だに亜里沙には届いていない(読まれていない)んじゃないだろうか… (読んだけど反応してもらえなかったと洋介は誤解している?)
亜里沙には…洋介の「自分にみえる世界」への不満、その世界から出ていこうとする行為…、それを悲しんでいるととれるセリフがあった。公開されている「みんなのせかい」とは齟齬があるように思えたので、亜里沙が知っている「みんなのせかい」は、手直し前のプロトタイプだったって想像してる。
しかし、もし本当に…この「みんなのせかい」が亜里沙と揉めた作品だと解釈するなら、当時の2人の事態はより深刻だ。亜里沙が身近にいたのに… 洋介は亜里沙に心を開いていなかったってことだ。
確かに、これは亜里沙にとって受け容れられぬことかもしれない。
…だが、少なからずこれは作家の業だよね。作家はうつろう精神を作品に反映するもので、必ずしも一貫したロジックを連ねるものではない。これを受け容れられる広い懐が…作家のパートナーには必要に思えるが、亜里沙が改めて現れたということに…この3年の間に…そういう成長があったことを窺えるのかもしれない。
さて、もう一つの関心が… 永遠がこの絵本にいったい何を見出していたのか…ということ。…切ないながらも…ネガティブな心情が表に出ているこの絵本に… 何か共感できるような境遇に…永遠は居たのだろうか…
彼女の境遇もセンセーショナルな取り沙汰がされる割に、曖昧なまま話は進む。親友との楽し気なコミュニケーションを交わす反面…「両親が共に自殺」は思わず息を呑む。何となく「近くて遠い人たち」的な人間関係を想起するので、その辺りに共感したのかもしれない。
…ただ、何となく洋介の込めた意図とは別の価値を、この絵本に見出している可能性も感じていて面白い。(永遠のキャラクターならあり得る。)
洋介も、そこに何か新たな気付きを得たのかもしれませんね。良い関係だなぁ…実は作中で多く語られる「大人と子供」の話は… 私にはあまり刺さっていない。大人と子供で差がある話に思えなかったからかな… 作中、子供だからと変な線引きをする人も、大人だからと理不尽な責を求める人もいなかった。なんか優しい世界だったよね。
Re:take ( reload )
fuzzy m. Arts
シアターココ(愛知県)
2018/06/08 (金) ~ 2018/06/09 (土)公演終了
満足度★★★★
のっけからICUで臨死を窺わせる深刻な状況設定…されどそれを真っ向から突き崩すようなコミカルな登場人物(?)たちによる出だしで…不思議な雰囲気でした。
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ネタバレBOX
(続き)
主人公レレの記憶を次々と遡る旅路…それに付き合わされる母ヨウコ。様々なエピソードを交えつつ…再生される記憶は…どうしたって何かしらの事件の真相を明るみにし…何かの解決を…さもなくばオチを与えてくれるものと思われた…が!…「あの子の意識に入って助けるんじゃないの?」というヨウコのツッコミが、まさしく観客の気持ちを代弁する。
しかし、そこにあったのモノは… ただ丁寧に… 愚直に… ひたすら積み重ねられたレレの人生だけだった。(一部、ネタとして捏造があったけども笑)
もちろん… 「何もなかった普通の人生」… とはとても言えない…コミカルで波乱万丈とも言える…賑やかな人生だったが、何かを成したか?… といえば、胸を張って威張れるほどのものは何もない…
…しかし… しかしである。
確かに彼女は… 彼女の、彼女だけの人生をちゃんと生きていた。その早逝を他人に憐れまれる筋合いなどなく…。
正直… 悔いが残らないはずないと思えるその死に方に際して尚、それをあるがままに受け入れるレレの心情は非常に印象深い。
そして、その遺志を胸の内に昇華する母の姿もまた味わい深いものでした。
最後の数分に想いが凝縮されている感じがしたなぁ。でも…ではこの最後だけがあれば良いのか?…というと、そういうわけでもなくてねぇ。アレを味わうのに… 実感するのに… あのなが~い時間が必要なんだよなぁ。面白い後味でした。
タイトルに使われる Retake(=撮り直す)のイメージ通り、記憶が次々再生されていく作品だけど、密かに : が入って、Re: (=Reply?)となっているのが「レレの自問自答の対話」や「母娘の対話」を象徴しているのかな…って感じもしましたね。
…で、これだけ感想にすると何か湿っぽいんで言うけど、…芝居の大部分を占める… レレの人生の…その周辺の人たちも含めたハチャメチャさの「笑い」は、かな~り秀逸で… なんかしっかりしたコントをたくさん前座に仕込んでいるかの様でした。
好きなトコ触れると…烏丸兄や小暮父のフリーダムさ、それでいて憎めない感じの滑稽さは良かったね。
ヨウコ&レレの… ダメ男趣味の超似た者母娘っぷり… 母娘双方が自分でもそう思っている悟り感、それでありながら…共に抗えない感じも面白い。
Wストーカーのレレ&チャコ18の…オタク的結束感のあるコミカルな愛らしさはハマる。妙な言葉遣いも良い。すっくと立った河合さんの股の間から顔を覗かせるダミさんという…一種キメラの様な姿でストーキングする楽しげな様子はベストショットでした。そして、ここで出てくるネッシーは、ちょっと想像を絶するクリーチャーだよね。喋り口の陶酔感が何とも言えない(笑)
レレ&チャコ14の腐女子トーク。あのリレー創作でBLを一文ずつを繋いでいく妙技は、まるで将棋や囲碁で…一手一手つむいで… 作品(好勝負)を形作るかの様で、内容のバカバカしさとは対照的な軽妙さで良かった。
そういや、河合さんが18でリタイヤするのに、イーダさんが14まで引っ張るのも印象的。被り物しかり、こういうのを容赦なく…徹底的にやるのはファジィの特質だよね。
嗤うファントム
空宙空地
津あけぼの座(三重県)
2018/06/09 (土) ~ 2018/06/10 (日)公演終了
満足度★★★★★
まず関戸さんに最初に伝えた感想は…「空宙空地、遂に芸術作品を作っちゃったって解釈でおk?」でした(笑)(判る人には判る)
ヒリヒリする空気と緊張感。背景を想像しつつ駆け引きを楽しむ芝居…とはいえ、観ている最中はどこが駆け引きか本音か分からない…というのがキモで、敢えて言えば、だんだんと誰の言うことも信じられなくなるというミステリー・サスペンスの優れた融合でした。
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ネタバレBOX
(続き)
到底そんな時間は無いのだが、ネタを理解した上…2回目で各登場人物の思惑の芝居を楽しみたかった良質の芝居でしたね。とりあえず空宙空地は必ず円盤が出ると信じてるし、作り手は再演できる質と反応の手ごたえも感じているみたい。善き哉。
さて、ちょっとツッコんだ感想を連ねたいけど、言うまでもなくミステリー・サスペンスで「犯人はヤス」みたいなことは言えないので…極力ぼやかすけど、空気も感じ取りたくないという未見でDVDを楽しみにしている方は回避してくだされ。
とても複雑な人間関係と背後関係なんだけど、かなり明瞭に某氏が謎解きをするので、複雑な割には表面的なことはしっかり頭に入る構成です。ミステリーが苦手な人も十分に楽しめるはず。そのくせ、カマかけが盛んに行われて、状況も二転三転するので好きな人でも追っかけるのは結構大変。
そして、核心の人の背後関係は…やはりしっかり謎なのです。そこに深読みしたい人の楽しみが残されている。
ミステリー・サスペンスなんて、かなり好みに左右されるジャンルだから客を選びそうだし、ともすれば空宙空地が定評を築いてきたジャンルと一線を隔しそうなんだけど、広く楽しめる工夫とチューニングがされてたな…という印象。こうやって、作品の幅と客層を拡げていってくれるといいな… と、ストーキング・ブルース以来の緊迫感が大好きな私は思います。
さて、改めて冷静に台本を読んでいくと…、後で明かされる背後関係も踏まえると…この反応はコレでいいの?って思う個所は結構ある。でも、よくよく考えると、コレは 各人の事情の理解と思惑にバラツキがあるってことなのかな。仕掛け側の黒幕にとって、実は各人は思い通りに動いていないんだろうな…とか思える。
つか、黒幕ですら「いまそれ言うか(笑)」って発言が出てきて、「動揺」っていうのが上手く表現された芝居だったなって思う。
一方で、やはり核心の…黒幕の更に裏…HKなんですが。彼の立ち位置と思惑がミステリー好きに残された 深読みの楽しみ。
作中、彼は他者の反応を窺いながら真相を探っていきますが…あの数々の準備は、真相を予め知らずしてできることなのか…って話ですよ。つまり、最初の仕掛けの時点では受動的立場だったとしても、少なくともこの芝居が始まった時点では、彼は分かっていながら相手を手玉に取れる立場で楽しんでいたってことですよね。
そもそもやはり一人ではできないことだし、KTとの共闘は合理的。そしてKTが絡むなら、HKはそもそも首謀者的立場にいた可能性もあるわけで。対するYHの主謀的動きにどこまで独自性があったかは分からないですが、KTの誘導がすべてという空気は十分にある。江戸川乱歩の世界なら、HKとKTは同一人物の可能性すらありますよね~。
そして、ここでの収益が…この入念な準備と細工と時間に見合うか?という話もあって… とてもキャッシュでは見合わない気がする。
やはり、ここは芸術作品ですか? 立場は違えど、趣旨は全く同じかもしれない。それともサディスト的な楽しみでしょうか? あ~想像するの楽し。
ロンギヌスの槍
風雷紡
d-倉庫(東京都)
2018/08/15 (水) ~ 2018/08/19 (日)公演終了
満足度★★★★
「ロンギヌスの槍」は知らなかった。その宗教的な意味はまた学習するとして、彼女は何故刺殺したのか?は観劇を終えた今になっても分かっていない。私の責なのか?これが演出なのか?ヒロインはリアルに17歳らしい。シャープな演技が印象的。リアルな彼女と芝居の中の彼女が交錯してしまうほど、入っていたように思う。それはそれで汗が出る。
鏡の星
劇団あおきりみかん
G/PIT(愛知県)
2018/05/30 (水) ~ 2018/06/04 (月)公演終了
満足度★★★★
役者が2倍おいしい仕組み。役者専念の鹿目さんや2016年観劇マイベスト「棘」の不思議少年からの客演も観れて美味しすぎる。お話もあおきりとしては異色の切り口で観客に挑戦状を突きつけた感。
ナイゲン(2018年版)
feblaboプロデュース
新宿シアター・ミラクル(東京都)
2018/08/10 (金) ~ 2018/08/20 (月)公演終了
満足度★★★★★
噂には聞いていましたが「ナイゲン」って本当に笑える話ですね。脚本がいいのはもちろんなのでしょうが、高校生を演じる役者さん、演出によってまた面白さが違うと思うので御本家はもちろん、来年のシアターミラクルでの公演も観てみたいです。
劇友さんにDVDなら観たことがあると言ったら「生で観なくちゃ!」と言われたことにも納得しました。
開演時間が遅いのはちょっと気になるところです。
ネタバレBOX
どさまわりさんがかっこつけ過ぎな気はしたんですけど・・・
この道はいつか来た道
広田二口企画
津あけぼの座(三重県)
2018/06/02 (土) ~ 2018/06/03 (日)公演終了
満足度★★★★
各所でお名前伺ったり、引用されるけど、そのものが上演されるのは初めて拝見の別役実戯曲。不条理感のある会話から…ふっとした契機に切ない現実が繋がっていく構造には震えがくる。仄かに幸せも感じさせる味わいでしたが、それは別役作品としては…珍しい…取っつきやすい名作だそうで、初めてが本作で良かった。
しかも広田さんは『好きに上演して良い』と別役さんに許可を得た超マニアだそうな。二口大学さんも好きな役者なので美味しいトコづくめの50分でした。
フラジャイル・ジャパン
刈馬演劇設計社
ナビロフト(愛知県)
2018/05/17 (木) ~ 2018/05/27 (日)公演終了
満足度★★★★
非常にたくさんのモチーフが詰め込まれている。宣伝時・作中含めてダークツーリズムを前面に出してはいるが、どうもそれ以外の要素の印象の方が強く残る。
街に住む人々の…自分の想いに周りを引き込もうとする「業」の方が強く迫ってくるのだ。…DV、不倫、出世欲、心理誘導、利権誘導、村八分、憶測による勝手な噂… 災害絡み"以外"のトラブルの方が非常に目につき、災害よりも「人間怖え…」の印象も少なくない。
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ネタバレBOX
(続く)
役者の個々の演技の見事さや、各シーンの演出が好みである故か、観後の満足感は極めて高いものの、さて作品として消化しようと思うと…なかなか噛み切れない。
「76をめぐる暴言」以降、刈馬作品にかなり心酔している私ですが、これまでの「表出する緻密さ」とはまた一風変わった印象に戸惑いも生まれました。いつも人間を凄い彫り込む感じが刈馬作品にはあるんだけど、今回のどの登場人物にも感情移入を許さない感じは何なのだろう… そこに何か狙いがあるのではと窺ってしまう。
ぎゅうぎゅうに詰め込まれた要素と、発散気味に見えるバランスと、…相反する印象がある掛け合わせのぶつかりあい。そのくせ…かなり観客に委ねたテーマの掘り下げ。
だから観る人により…もっと言うと観る人の「バックボーン」により、心に残る「印象」と「感じる想い」がかなり違うのではと思いました。
結局、最終的に私がコレだ…と思って汲み取ったポイントは…
「無責任に…他人に過剰な責任を課す社会の怖ろしさ。それが日本社会に蔓延していることへの警鐘。」です。
草平が記憶を取り戻すことで明かされる…災害当時の意思決定の過程。
「無理な避難をして(それで怪我人が出て)、もし何も(災害が)起こらなかったら…責任がとれるんですか?」
そういう言葉が出るほど…普段から追い詰められている「教師のシビアな苦境」が慮れる。報酬を大幅に超えた過剰な責任の負荷、社会圧力。
「過剰な責任を…さも当然の様に負わせる空気」が、危機において「勇気ある決断と行動」を阻んでいたという事実が、深刻な負のスパイラルを感じさせます。
9年前というと実は自分の子もちょうど中学生で、その先生たちが自分が中学生の頃の先生たちと比べると…萎縮した感じ、学校自体が社会に対してガードを固めた感じがあったのを思い出します。モンスターペアレントって言葉も既にありました。何となく符合する気がします。
そして災害後においても…コトに決着をつけるために…「人身御供」あるいは「みせしめ」を要する社会圧力の空気も非常に重い。
健三を中心とした訴訟は、おそらくは個人対個人の衝突のキッカケを大きく超えて、便乗した勢力により膨らんだ暴走を感じさせます。
防災機能として自らを律し、改善を施していくべき「社会」は…結局何も責任を負わず…人身御供として教師とその遺族のみが割を食った。
ひいては「どこにでもある街の話」というラストが、如何にも「これが日本社会に蔓延る闇である」と言っているように思えました。
タイトル「フラジャイル・ジャパン」=「脆い日本」…とも密接に結びつく様に思えるこの暗喩。
実体が見通せぬ日本人社会の圧力による負のスパイラルを強く揶揄しているのだろうか。
唯一の救いは、イノシシ事件における…
「私が責任を取ります… だから皆さんも責任をとってください」の流れ…皆で知恵を出そうとするメンタリティですが、これも目の前にいる仲間内の決断だからできたとも思える。
問題は姿を見せぬ… 責任のない所から正論めいた私見を…さも社会の代表の意見であるかの様に唱えるマジョリティ。
ただ、そんなことに耳を貸すな、目の前の人のために決断せよ… ということかもしれない。
今になって考えれば、それを果たせなかった父(遊作)を… 超えて一歩を踏み出したのが、…その娘(環)であるというのは素敵な構図ですね。
あと、もう一つ扱いが印象的だったのは「被害者の加害者化」です。
強い被害者意識… 世間も後押しする絶対的正義… それがいつしか…被害者を加害者たらしめる構図もひどく印象的でした。
訴訟が加害者遺族をこの街から追い出したという事実に対して… 健三がそれを受け容れたのも相手が環だったからこそ…とは思えますが。
ただ、おそらく健三も遊作を責めたかった訳ではなく、市の危機管理の問題を問うただけだったかもしれず、でもそういう核心の描写は一切なく、その前後の関係性の描写から想像しなければならない… 社会状況を過多なくらいに説明するのに、ここら辺に関する観客への突き放しっぷりは何だったんだろう。
伊達家と太刀守家の確執の解決(?)が…最後に持って来られるあたり、ここにも核心があるはず。
だだ健三と海は、言ってみれば「手締め」として心に踏ん切りを付けたが、エンディングに両家が揃う図式は、実は凄まじい相関関係にあるわけで、何か凄い皮肉にしか見えない。…この後味が誘発させるモヤモヤとした感情!
刈馬作品でよく扱われる「善意のぶつかり合いによる止むを得ない悲劇」は…観客の感情移入をすごく誘引するのですが、本作でそれを敢えて阻む感じになっている意図はなかなか掴めないでいます。
…ただ先述の通り、観る側のバックボーンにより異なる「引っ掛かり場所」を無数に作ってあるのだとしたら、観客数と同じぐらい…壊れつつある「脆い日本」が映るのかも。
さてここまで長々語って、もう各論には入れないですが笑、ちょっとだけ…飛び道具的な存在感の佐野かおるさんの「街子」とTERUさんの「草平」の関係性は素敵でした。
思えば、この「街」の話で「街子」という名はすごく意味深。
この街に一切しがらみのない彼女の振る舞いに、何か作品としての意志があるのかも。…あの…自分が空気を読めないのを理解した上で、周りに必死に誠実であろうとする態度は… もしかしてあるべき態度の指針なのかも。
あと、やっぱり まといさん演ずる「梨南子」は、解釈を悩ませる存在としてとても素敵でした。あの空気は堪らん。
そして怒濤の伏線回収
劇団バッカスの水族館
G/Pit(愛知県)
2018/05/25 (金) ~ 2018/05/27 (日)公演終了
満足度★★★★
バッカスが演ったアガリスクエンターテイメント作品というと「ナイゲン」や「時をかける稽古場」がまだ記憶に新しいが、笑いへ巻き込む勢いと畳み掛ける感じ、そして笑い続けて観終わった後に魂が抜けちゃう観後感は、まさしくその時の再現です。
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ネタバレBOX
(続き)
前半は、面白いながらも「ああ、このパターンね」との既視感はあるんだけど、やっぱりテンポの良い議論と熱いパワーに捻じ伏せられて笑わずにはいられない。分かってるけど笑っちゃうモードに巻き込まれると、もはや観客はまな板の上の鯉だね。
そして終盤 やれやれ終わった…と思った暗転からの「怒涛」のおかわりは、同じ舞台をメタフィクションに置き換えた展開になって、「君たち何目線で喋ってんの?笑」ってツッコまずにはいられない。総キャスト総演助状態? いやぁ、楽しかった。もうこうなると、伏線はもとより…見立てとか解釈とか背景とか考えるのが無意味になってくるから、私にとっては久し振りにリラックスして笑ってられたわ。
まぁ、でも一つマジメなことを言うと、…自分たちの提案が通りそうになったのに、議論が尽くされないとみるや反対勢力に転じた飯田の姿勢は…単に幼馴染に同情したとみるよりも、別の観点で眺めると非常に印象的でした。
それは…彼の目的が自分の提案を通すことではなく、「しっかり議論を尽くさせて、自分たちの手による町興し案を考えさせること」にあるのだとも思えて、コンサルタントというよりはファシリテーターの趣き。
採り得るべき解決手段はいくらでもあるのであって、彼らの提案の目的はあくまで「タブー無き発想と議論をするための起爆剤」であること。
自分たちで議論を尽くしたプランであったればこそ、その後にそこに全員が総力をつぎ込む気になれる… そんな思惑にも見えるかなぁとも思ったのでした…ずっと後になってからだけどな(笑)
この作品を観てる最中に、そんなこと考えられるわけがないわ(笑)
ふたりは街を逃げ出して
ゲボゲボ
七ツ寺共同スタジオ(愛知県)
2018/05/24 (木) ~ 2018/05/27 (日)公演終了
満足度★★★★
前作「わたピピ」からエンタメとしての基本構造を踏襲。ポップな演出と集団パフォーマンスはそのままに、ゲーム調の演出を主軸に…ラップ感もまとったハイテンポな展開。よりシンプルに…ストレートに盛り上げる方向に磨きがかかった。
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(続く)
特に常滑ケンジ氏の音楽による寄与は絶大… というか芝居の空気を支配したと言っても過言ではない。もともと常滑さんにはゲーム音楽の様な音作りの傾向を感じていたので、「ゲーム」がモチーフの本作への親和性は非常に高かったと思う。
本作のために全オリジナル33曲をあつらえたとのことだが、単にオリジナルなだけでなく、テーマ曲以外は…むしろ何かのゲームで聴いた気がする…ぐらいの「微かな聞き覚え」の要素が観客を盛り上げてくれるので、そこら辺も踏まえて絶妙なバランスとノリだった。サントラを聴いて、作品の空気がしっかり蘇るのは素敵。
話的には…楽しんだ事実を踏まえた上で、ちょっと思うところもある。
わたピピの「ムーピィ」に類似のモチーフ「ケモノ病」を立てながら、伝わってくる悲壮さにだいぶん温度差を感じたこと。わたピピにあったダークな要素(例えば主人公の未熟で歪んだ倫理観から脱していく精神の変遷、主人公と敵の黒幕との類似性と対照性など)は…少なくとも表向きは影を潜め、かなりぶっとんだ楽観さで纏めている。わたピピの「ダークさの中に潜む意味深さ」は…好みだったので、個人的にはやや残念に思うところ。
脚本的に…ヤドリジマはもっと善悪の二面性を磨ける素材だったのに悪役だけの扱いだったなぁ…とか、本来もっとシビアに感じれるはずのケモノ病差別も…設定相応の悲壮さが伝わってこないなぁ…とか。…思うに…ほとんど支援者ばかりが出てくる感じや…最後にユイが受けた仕打ちについても、コレオにほぼ責任がなくて彼の悔恨が薄まって感じたりしたせいかなぁ。
ただ、要素自体があったことを踏まえれば、これはきっと作り手のチューニングによる選択だ。潔く…シンプルなノリに注力したことによる「破天荒さ」が大きな盛り上げを生んだことも確か。
ここはやはり…エンタメとして心地よく喜怒哀楽に浸る楽しみ方が王道だったね。
風に揺れて
劇団シアター・ウィークエンド
スタジオ・座・ウィークエンド(愛知県)
2018/05/25 (金) ~ 2018/05/27 (日)公演終了
満足度★★★★
なんて言うかね、終わってみれば…やり手の「囲碁」を体験したかの様な話の進め方だったと思う。
1つ…また1つと…施術士や客の「雑談」が積み重ねられる時間… これがまた結構長いんだよね。
…最初は「この芝居、一体どこに向かっていくんだろう…」って印象だったんですよ。反禁煙トークとか、治安の悪い地域の話とかね。もちろん雑談には笑いの要素もあったので、単なる日常の描写の積み重ねなのだろうか…とも思っていました。
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ネタバレBOX
(続き)
しかし、話が核心の「装具技師・蜂谷」と「社会復帰したい元暴力団員・将太」にフォーカスされ始めると… ふと気づく。あの他愛の無い数々の雑談… いつの間にか…取り囲まれていたんだ… 何でもないごく普通の市民の 「無自覚な差別」に。
アレはまさしく積み重ねた「布石」だったんだな…と後で思った。
最初から…置かれた身の上が想像し易い将太に対し、謎めいていた蜂谷の素性が徐々に明らかになっていくが…彼女の行為の印象は…「背景」が想像できるか否かで全く異なる。
父に見捨てられ… 母子2人きりで育った身の上ながら、なぜ自ら母を見捨てたのか… なぜ世帯分離までし…なぜ母の死に際しても故郷に戻ることがなかったのか。
蜂谷は…結局、憎んだ父と同類じゃないか…とも思ったんだ、その時は。
この理由は…舞台上ではハッキリとは明示されないが(観た人間がポンコツだから汲み取れなかっただけ…ってことは否定しない笑)、この一見不条理な行いの「背景」のヒントは…「広島」と「竹細工の村」というキーワードにあった様だ。正直、その場では ぼんやりとした空気しか掴んでいなかったのだけれど、…後で調べてみると「竹細工」は… 被差別部落では割と一般的な生業なんですね。
いわゆる同和問題だったのだ。
そして広島は福岡に次いで多くの同和地区を抱える県。
これが分かると…途端に…そうまでして故郷を切り離したかった蜂谷の「切迫した事情」が明確になってくる。
「こっちも必死だったんだ」というセリフの意味が分かってくる。
頑なに父と会おうとせず…明確に父を憎んでいた蜂谷が、将太との絡みの中で「最後に父と話す」ところは予定調和として納得できたのですが、「お父さん…」って涙声になっちゃうことが、観た当初はしっくりこなかった。
融和していくにしても最初から涙声はないでしょ… という印象でした、最初は。でも、娘も…父も… 母(妻)を犠牲にしてでも… 必死にアノ故郷から脱出しようとしていたのかと思うと… 娘にとって父は、実は憎悪の対象では無くて、自分の許し得ない行いの「鏡」であり…「直視したくないもの」であったと思える。
そして一方で…「同じ苦境を必死に生きた同志」なのかなと思うと、「最後の涙声」がやっと腑に落ちた気がしました。
幸か不幸か自分が公団住宅育ちで、古くからのしがらみがある土地に住んだことがなく、知識も浅かったので実感できないけど、2つの差別(ヤクザと部落)を重ねて話が進むことで、知らずとも解釈を助けてくれる部分や…、蜂谷 父娘の非人道的な行いを重ね合わせることで… そうさせるほどに「厳しい世界」なのだろうと…想像をさせてくれる感じがあるのは確かですね。
シーンとしては、将太と蜂谷がガンをくれあう対峙が圧倒的にヒリヒリする感じで好き。背景を汲み取り切れずとも…アソコは痺れた。あの時、将太もまだ迷いの中にあったはずで、2人の迷いが衝突することで、最後の各々の決断が生まれたと思う。
施術土おばちゃん・木村の自由奔放な活躍も目が離せませんでしたね。特に蜂谷・将太の対決への介入は凄かった(笑)
作演・岩田さんの味なのか、劇団シアター・ウィークエンドの味なのか分からないけど、笑いの部分が独特な芝居でもありましたね。
名古屋 初登場 舞台『メビウス』
リンクスプロデュース
ナンジャーレ(愛知県)
2018/05/15 (火) ~ 2018/05/20 (日)公演終了
満足度★★★★
立て続けに3キャストを観れましたが、ネタや演出そのものの変化もさることながら、キャストが変わって…発する空気の色が違ってくるのが本当に美味しかった。キャスティングも含めた演出の妙を感じさせてくれましたね。
[C]:為房大輔×山岡美穂
何て多彩なんだ。これだけの物語が無理なく詰め込まれて、夢のような時間。そして自由の風(謎)をたくさん浴びました(笑)
[N]岡田ゆう太 × 未彩紀(ドラマトゥルク:紺野ぶどう)
こちらとしては、むしろお馴染みの安定キャスト、ドラマトゥクル陣。そうきたかぁ な感じ。
期せずして未彩紀さんの過去作を連想しちゃったりして、また別の味わいがありました。
[A] 三浦求×岡田怜奈
ミスターメビウスの呼び声高き三浦さんのパフォーマンスはさすが!マイムのレベル半端ない。岡田さんの多様な役柄の根底に共通する温かみも素敵。岡田さん曰く「本気で笑わせに来られてビックリ」というネタのセッションも美味しい!
ヌマンシア
劇団クセックACT
愛知県芸術劇場 小ホール(愛知県)
2018/05/01 (火) ~ 2018/05/04 (金)公演終了
満足度★★★★
壮絶の一語に尽きる。史実である紀元前ローマ侵略におけるヌマンシア包囲戦を舞台に…民族が選択した決断に対して…原作戯曲制作時の社会背景と、現代人の価値観を重ね合わせる演出が意味深。観る人にアンチテーゼを醸させる凄まじい迫力と寓話性がある。
そんな堅いこといわんでも、純粋に間近で観る迫力の語りと、委細を放つ迫力の演出を楽しむだけでも相当の意義がある。
これは確かに理屈は二の次で「まずは、最前列で有形無形の色んなモノを浴びて感じろ!」
…という芝居でもありました(=゚ω゚)ノ
宮川サキのキャラクター大図鑑2018
宮川サキ
津あけぼの座(三重県)
2018/04/21 (土) ~ 2018/04/22 (日)公演終了
満足度★★★★
もはや職人芸と呼ぶに相応しい形態描写。演技や口調に留まらず…口元に宿る人の歴史と人となりが素敵。基本は笑いの筋立てにすっと挿し込む切なさもあり…日常にある悲喜こもごもへの愛おしさを感じる。思いがけず東海地方に来て頂けて嬉しい。