最新の観てきた!クチコミ一覧

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ジプシー 〜千の輪の切り株の上の物語〜

ジプシー 〜千の輪の切り株の上の物語〜

ことのはbox

シアター風姿花伝(東京都)

2020/04/01 (水) ~ 2020/04/07 (火)公演終了

満足度★★★★

結構な出演人数の割に共通役無しで2チーム。「大事に作る」印象のことのはboxにしては・・制作上の事情か、とすれば稽古回数の圧縮が中身にしわ寄せを・・等と実は勘繰りながら観ていた。が、戯曲の本線がやがて浮上し、堂々たるメッセージ性が倒れた大木を起こすようにもたげ、元来飲み込みづらい超自然的要素をすっかり観客に飲み込ませて終幕した。
バブル時代を思わせる台詞に、若手中心の俳優は時代気分のシフトが出来ない様子、これが序盤のギクシャク感の事情と想像するが、戯曲を古いと感じさせなかった点において上演は成功と言えるかも知れない。貨幣や住居、所有に捉われない生き方・・・思い起こせば当時こういった視点がバブルに踊る自らへのアンチとして)巷間あった(『パパラギ』なんてのもあった)。
しかし今この時代にこの戯曲の言葉を据えると、バブル期からさらに転落した文明そのものの惨めな帰結を、深く深く思わされる。
このご時世に・・は決まり文句になりつつあるが、本舞台、この時世によくこの作品を蘇らせた。そしてよく中止にしなかった。

ゴドーを待ちながら【4/8(水)ー11(土)公演中止】

ゴドーを待ちながら【4/8(水)ー11(土)公演中止】

KARAS

KARAS APPARATUS(東京都)

2020/04/03 (金) ~ 2020/04/11 (土)公演終了

満足度★★★★

「ゴドー」をどう踊るのか・・興味津々で荻窪へ。公演はほぼゼロに等しいこの週末に上演をやっている事については、トークで言及があった。「特に状況に抗っている訳ではない。私たちの表現活動をやっているだけ」。そのKARAS公演も火曜以降は中止となり、6(月)夜を残すのみ。
2015年12月のシアターXでの初演は佐藤利穂子とのデュオで、今回も2人の名前があったが、日々更新されていく「update」、2ステージ目は勅使川原氏のソロとなっていた(1ステージ目は不明)。
上演時間1時間、とあったが終演後時計を見ると1時間半弱、トークが乗って10分程だったか。ダンスは二部構成で前半が長く、音声で流れる「ゴドー」の台詞に合わせて、ぼろをまとった勅使川原が動く。マイムっぽい動きもあるが、台詞を喋る人物を「演じる」ので、確実に演劇的な「演技」が入っている。舞踊では見ない表情が覗く。
何とも味わいがあるのが一人の男の声で吹き込まれた「ゴドー」のエストラゴンとウラジミールのやりとり。聴いてると勅使川原氏の声にも聞こえるが(トークでそうだと判明)、小慣れた噺家風の口調で互いを食い気味に、力みゼロでやってる。猪俣敏郎あたりが聞かせてくれそうなテキトー感横溢な喋りがイイんである。台詞は戯曲通りでないらしいが、ゴゴとディディの会話として聴ける、というか「本日の二人の会話」はこんなかも・・と氏が「再現」したような会話である。
出て来るはずの佐藤利穂子が出ないので、もしやポッツォかラッキー、又は少年で登場か・・と待ったが、その期待はかなわずであった。

ネタバレBOX

トークでは「ゴドー」に対する思い入れの由来を語っていたが、約半世紀前に観て衝撃を受け、演劇ではあれを超えるものを未だ見ないそれが、とある劇団による「ゴドー」であったとの事。当時まだ進路を舞踊と見定めていない頃、絵画も好きだったが、氏を捉えたのはその身体性と言い、現在も根底に流れている・・。そして、落語は好き。
ステージの後半、声は消え、上手奥に街灯のような暖色系のランプに照らされ、遠景のように舞う。心温まるといったBGM(冒頭に同じ)に乗せた踊りは「ゴドー」への解釈という事になるが、ゴゴとディディへの温かな眼差しか、共感か。
ソロにした理由は、台詞が落語風に一人で成立するのだから、踊りの方もこれで行けるのでは、との説明だった。
本当は新型コロナを念頭においた判断では..、と推察しているが。
ジプシー 〜千の輪の切り株の上の物語〜

ジプシー 〜千の輪の切り株の上の物語〜

ことのはbox

シアター風姿花伝(東京都)

2020/04/01 (水) ~ 2020/04/07 (火)公演終了

満足度★★★★★

人の生き方を力強く、そしてハートフルに描いたちょっと不思議な物語。

(上演時間1時間40分) 【Team葉】

ネタバレBOX

芝居は映画と違い、その時、その場だけの新鮮さが最大の魅力であろう。脚本の魅力は、そのテーマというか主張の鋭さ面白さとすれば、演出はそれに息吹を入れることだろうか。

「ジプシー・千の輪の切り株の上の物語」…時代はバブル最盛期、その当時を象徴する土地神話、それを当時の典型的な若夫婦に語らせる。
念願のマイホーム、その建設中のマンションに「流浪の民」であるジプシー一家がやってくる。彼らは梅雨の時期だけ住まわせてほしいと強引に住みついてしまうが──何とか彼らを追い出そうとする夫婦だが、次第に奥さんが彼らの生き方に共感を覚え始め──という物語である。何となく奇天烈のような物語だが、その描くところは鋭く、単に時代(背景)に対する風刺だけではなく、人の生き方を問うている。

バブル当時の物欲への批判的なシーンが印象的であり、今となっては、バブル崩壊後の失われた経済活況を振り返れば含蓄ある台詞の数々。…過ぎたことを悔やめば、無くした物が惜しくなる。先のことを思い煩えば、無い物が欲しくなる。どちらも、ただ物が増えるだけのことだ。物が増えれば、もう旅には出られなくなる……物に縛られて動けなくなるか、何も持たずに自由でいるか、私たちは迷わず自由の方を選ぶ。
とは言え、世代的には夫婦(夫)の感情に近く、自他所有(コンビニ商品含め)関係なく我が物にするところに異論が…。

一見、楽観的な夢物語の戯言に聞こえるが、目先だけではなく、もうほんの少し先を見据えさせることで、観客の思いに訴える。時代背景の現実性とジプシーという夢物語をうまく調和させた脚本。その脚本の面白さを十分引き出す演出が巧みだ。例えば鳥の浮遊感をイメージした衣装、小躍りしたようなパフォーマンスは地に足を着けない、物にこだわらない自由さを表現しているようだ。建築現場のコンクリート=人工、森林=自然というイメージ対比を舞台セットと音響(羽ばたきと風)・照明(夜中=薄暗さが神秘的な自然空間)でうまく表現している。

さて記録(記憶ではない!)という点では、戯曲は映画に劣るかもしれない。また小説のように想像性をかきたてない(直視しているから)。しかし役者の身体を以て、瞬間瞬間で物語を紡ぎ実体化する、そこに芝居の醍醐味を感じる。まさに本公演のようにー。
次回公演を楽しみにしております。
白鳥先生と過ごした2日間

白鳥先生と過ごした2日間

enji

吉祥寺シアター(東京都)

2020/04/02 (木) ~ 2020/04/05 (日)公演終了

満足度★★★★★

く~たまらん。多国籍(?)人情ホームドラマ、グッときましたね。コロナ渦で、疎らな客席が実に残念。世間が落ち着いたら、是非再演して欲しいものです。

時を超えた愛の歌

時を超えた愛の歌

劇団 FISH STORY’S

「劇」小劇場(東京都)

2020/04/01 (水) ~ 2020/04/05 (日)公演終了

ちょっとシュールな笑いをまとったタイムトラベル歌謡史。
自分の“歌”を課題に、過去の日本を彷徨う若い主人公兄妹の初々しさ。

これ以上無いくらいの安全対策もさることながら、
顔で笑って(笑わせて)、心で泣いて・・・自分にはとても真似できそうにない、FISH STORY’Sさんの生き様そのものがグレート。
辛い時こそ笑顔を。しっかり心に刻みました。

白鳥先生と過ごした2日間

白鳥先生と過ごした2日間

enji

吉祥寺シアター(東京都)

2020/04/02 (木) ~ 2020/04/05 (日)公演終了

満足度★★★★★

この大変な時に上演してもらえて嬉しかったです。行く前はどうしようかと悩んだのですが、入り口、トイレでの消毒薬設置、劇場内の換気、席の位置等かなり気を使っていて安心して観劇できました。心温まる話でウルっとしながら満足できました。

白鳥先生と過ごした2日間

白鳥先生と過ごした2日間

enji

吉祥寺シアター(東京都)

2020/04/02 (木) ~ 2020/04/05 (日)公演終了

観られて良かったです。

白鳥先生と過ごした2日間

白鳥先生と過ごした2日間

enji

吉祥寺シアター(東京都)

2020/04/02 (木) ~ 2020/04/05 (日)公演終了

満足度★★★★

人情にあついものを感じました。

ネタバレBOX

味わい深い舞台セットと登場人物の雰囲気でじっくりと見ごたえのある内容でした。いくつかの人生のドラマがあるのですが、誰に焦点が当たっているのかポイントが見えにくかったのが残念に感じました。
白鳥先生と過ごした2日間

白鳥先生と過ごした2日間

enji

吉祥寺シアター(東京都)

2020/04/02 (木) ~ 2020/04/05 (日)公演終了

満足度★★★★★

舞台セットの作り込みが素敵でした
現代社会の歪や闇がとても生々しく心にささりました
ありがとうございました

ジプシー 〜千の輪の切り株の上の物語〜

ジプシー 〜千の輪の切り株の上の物語〜

ことのはbox

シアター風姿花伝(東京都)

2020/04/01 (水) ~ 2020/04/07 (火)公演終了

満足度★★★★

まずは,公演を行ってくれたことに感謝。こういう時世ではあるけれど,自分にとって心の安全のために観劇は必要であり,観劇が出来たことは素直に嬉しくありがたい。ことのはさんの舞台は何度か見ており,この作品にはちょっと違和感が残るが,満足できるもの。検温や除菌,換気などの劇団さんの努力にも感謝。

新雪之丞変化

新雪之丞変化

Project Nyx

ザ・スズナリ(東京都)

2020/03/19 (木) ~ 2020/03/29 (日)公演終了

満足度★★★★

Pro-Nyxを昨年末に続いて観劇。今回は完全femaleで男役を月代かつら被ってでもやる。異形なはずだが普通に観れてしまった。上京した役者・雪之丞が実は素性を隠して亡き父母の仇を討ちに?と危険が匂えば序盤からもう目が離せない。非情そのものの敵(現奉行)、その娘に一目惚れされ・・。裏事情をかぎ取る鼻持つもう一人のやさぐれ女、そこまでの眼力はないが執念を燃やし続ける岡っ引、敵の娘を雪之丞に引き合わせた商人、またその商敵の何某と、役者に事欠かず。
情念を煽るBGMはBUCK-TICKだそう(イカ天世代には懐かしいバンド名..)。
金守珍得意の箱を使った美術では、歌舞伎並みの場面転換(具象を使った省略無しの)がスピーディに行われる。転換中は黒幕が引かれ、その前で芝居や踊りが出し物的に演じられる形だ。ちょうど中入りな時間では、客をいじったりと肩の力の抜けた佐藤梟の喋りがあり、雪之丞の一座が上演する劇中劇のこれも一つとして「やります」、と始めた一人芝居が物凄い。「女のどうしようもなさ」とでも名付けられよう挿話(出典「宇田川心中」)が、この「新雪之丞変化」の劇中人物(女)たちのみならず、これを演じる者(女優)たちの存在を包摂し、主役の女形(=男)の女性性(実際女)といった倒錯をも大づかみに包んでしまう。総員が目一杯演じるエネルギーに打たれる舞台であった。

ネタバレBOX

楽日の客席を埋めた観客を見て主宰が思わず言葉を飲んでいた。
・・コロナ禍は「病気」以上に「空気」という風評被害、さらには人災の側面が大きくなりそうだ。劇から離れるが、思う事を。
経済は自己責任、感染も自己責任、ただし感染数増加と政府の落ち度の明白化に繋がることは許さない、という観点でのみ、「保護的な」政策が打たれている。初動の誤りは「誤り」と認めたくなさに正される事なく、説明もなく、つまりは「判断」の材料となる情報も出さず、ただ「大変だ」の空気だけが作られ、緊急事態体制に「違反する者」を非国民として取り締まる空気にやがて発展すれば、矛先は向けられるべき所には向かなくなる。

政治の私物化の実態の露呈が目前だった安倍も、選挙を控えた小池も、現在それなりの地位にある者全て、「騒ぎが長引くこと」で得る利が大きいという事情がある。そして彼らは利を追求してやまない人たちであり、指弾されればその証拠を平然ともみ消したり改ざんしたり個人情報を理由に黒塗りにしたり他人に罪を押し付ける人たちである事は、もはや周知のはず。
では、叩けば地位を失うだけの埃、否ごみを抱えているのが我が国のリーダーである事のメリットは何か。「それだけの負い目があるのだから肝心の時には国民のために働いてくれるだろう」ってか。根拠ゼロ。「感染の広がり」の長期化は彼らの瑕疵を看過させるメリットがある以上、終息させようと本心から思うわけがないではないか。「頑張ってる」「何かやってる」「悩んでいる」ポーズだけである。官僚は独自の倫理を捨て官邸の下部機関に成り下がり、「人命は地球より重い」と国家のリーダーが言った時代は遠い過去になった。
「あなた方にはトップに座る資格がない」と、常識人なら皆思っていることを、そろそろ伝えなければ・・このままでは演劇界と演劇文化が相当なダメージを被るだろう。

もう一点。再配分の考えを(ケインズすら)否定する新自由主義の本義は「自由」などではなく、富の偏在の体のよい正当化であって、それを言う主語は少なくとも我々ではない(演劇人は皆貧しいとの前提、失礼)。これを進める当人が、逆の立場になって同じ主義を主張する事は、ないだろう・・もしそうなら褒めていい。そしてなぜその主義に固執するのか改めて訊いてみたいものだ。
・・で、コロナによる経済的苦境に陥る者の事情を理解せず、彼らのためにまず動こうという発想がないのは、この2、30年で浸透した自己責任、再配分否定の思想のためだとしか思われない。病気による死も重大だが経済的な死に追いやられる者が「長期化」によって生じる事を憂える。金銭的補償が話題には上るが、根拠が薄く、手法もまずい。世帯ごとの給付の考え方(マスクも同様)は、「個人補償」を嫌う彼らがどうにか許せる単位なのだろう。個人には安倍の嫌いな部類の人間が混じるが、世帯ならまだ「家族主義」を復権させたい彼らの名分が立つ・・以上すべて想像だが憶測とは捨て切れまい。
「自己申告」という方法も手続のハードル。「安倍様お願いします」と頭を下げるなら出してもよい・・という姿勢がうっすら見える。それ以前にそれこそ役所に全世帯が殺到すれば役所崩壊である。封筒が殺到してもそれらを処理して、お金が届くのはいつになるのか。
そもそも掬い上げるという発想、つまりは思いやりが、安倍にはない・・多分そのあたりが根本の原因なのだろう。政府は、安倍の独りよがりの安い思いつきに振り回されていると見て間違いないのではないか。

2月後半から米国帰りの日本人の感染者が出ていたが、米国はまだ楽観姿勢だった。3月後半からは東京からの帰省者に感染者が出始めた。米国は1か月先んじて感染拡大に見舞われ、都市封鎖に乗り出したが、日本はこれからという見方が大きい。これら全て、検査に制限をもうけて実態把握を放棄してきた必然とも言える。
検査制限により無症状感染者や潜伏期間にある者を放置し、実態把握に努めないでいながら、一方で一律の制限を人々に要請し、不便を強い、そうして個人事業主の収入を取り上げている。
問題は、検査がなされない構造悪もさりながら、そうした背景についての情報が出ないこと。判断の誤りを指摘されるような情報は出さない(厚労省のサイトを覗いても数値に関する情報に不備が多い。これが日本の官僚か・・)。「要請」という形で自己判断に委ねるような手法を取りながら、個々に判断するための有用情報が出てこないのはそのためなんだろう。・・としか合点が行かない。
ウイルスは自然の脅威であり「天災」であるのは間違いない。従って人間の力が及ばない事もあるだろう。しかもこれを利用する奴らが人災による被害を生み出している。

こんな時にマトモな神経を保つには何が必要か。今のところ私には演劇以外に考えつかない。
ジプシー 〜千の輪の切り株の上の物語〜

ジプシー 〜千の輪の切り株の上の物語〜

ことのはbox

シアター風姿花伝(東京都)

2020/04/01 (水) ~ 2020/04/07 (火)公演終了

満足度★★★★

受付の隣で係りの方が非接触で検温してくれて、消毒液のスプレーで入場する前にシュッ、トイレから出てきたらシュッしてくれます。場内は窓を開けて換気していました。座席はいつもより間隔が広く、終演後の面会もなかったです。
本作品は何年か前に見たことがありました。応援している役者さんが出演していたと言う理由だけで見に行ったので、ことのはboxさんだったとは自覚していませんでした。その時はジプシーの正体を知らずに見ていたので、やっと家を買ったと言う夫婦に肩入れして「この人たちなんなの?」と言う気持ちが大きくてどうなるのかとハラハラしていました。今回はもう知っているので「そうそう、そうなるよね」とゆとりを持って、また、ジプシーたちにも心を寄せながら見ることができました。ずっと続いていく命の営みに泣けました。
それにしても前回反省したことをすっかり忘れていました。

白鳥先生と過ごした2日間

白鳥先生と過ごした2日間

enji

吉祥寺シアター(東京都)

2020/04/02 (木) ~ 2020/04/05 (日)公演終了

満足度★★★★★

 後1回、4月5日14時開演の回を残すのみであるが、観ることができる方には観て欲しい作品である。(実際に実現可能な希望も描かれ、普遍性を持つ作品、こんな状況だが、大人の判断で観に行ってほしい作品である)

ネタバレBOX

 自分には2歳からの記憶がある。無論、それが余りにショックだったからであり、以降自分は、両親を信ずることの無かったガキであったから、家出常習犯、拒食、先公との喧嘩、授業抜け出し、反抗の他、無論同級生や上級生との喧嘩も日常茶飯だったから可成りの問題児だったのは間違いなかろう。
 今作の主人公とは、また別の屈折をしていた訳である。そんなこんなで、自分には多くの人が語って聞かせてくれるような家族の情愛というものに距離がある。長ずるに及んで、理屈では様々な事情を理解したし、普通に見える程度に親に接する常識も身に付けたは付けたがしっくりこないのは相変わらずだった。それで実母には気の毒なことをしたと思っている。自分が内戦の起こるような場所や紛争地域に関わってきた個人史にも、自分の個人的体験が関わっているであろうことは容易に察しが付く。危険な所で息づいている時、最も生きている実感を持つことができるのである。既にジジイになったから戦わずにやり過ごすことができるようにはなった。肩に、肘に力を入れなくとも自然体が取れるようにもなった。その間に悟ったことは、矢張り様々なアプローチが在り得るということと、ベトナムからの留学生・グエンさんの台詞にあるようにニコンと聞こえた台詞(サンスクリットのサンサーラ即ち輪廻転生のベトナム語)と彼女の実践する所とのコレスポンダンスは当に仏教の核心の一つだし、或いは今を生きることの大切を説く所など、イエスの教えと同じ考え方である。更にアントニオ(鈴木)さんはブラジル出身であるが言葉の上達に伴って、人の心の機微をキチンと理解することの大切さは、ブラジルも日本も変わらないと説き、関わる人との心を過不足なく理解することの大切をしみじみ語るシーンなどは、今作では多少おどけたキャラとして登場するものの銃社会ブラジルでは命の有無に直結するから実際には命懸けの話ではあろう。
 外国人では無いが、何くれとなく実際の息子たちより亀子の面倒を陰になり日向になり常に見守ってくれている佐藤の献身を見ながら、自分は永山 則夫を想起していた。無論、自分の体験如き永山 則夫の体験に比べれば塵の如き体験ではある。広く世間を見渡せるようになればその通りなのだ。然るに2歳で体験したことがずっと影響し克服するまで、それは我が魂に突き刺さった棘であったことも事実である。今作に登場するアユムの娘(実際舞台には登場しない)を含め、引き籠りが3人いるのだが、自分は問題児として登校していたもののメンタリティーはよく分かる。
ところで、佐藤の献身とその献身の意味する所を深く理解し、自らの精神も開放する形で対応する亀子他登場人物たちの他者を認める、命の大切を理解するが故に些末を許し、現在を懸命に生きることを選択する知恵に、嘘ばかり並びたてる為政者、支配層、媚を売る官僚などの下種を下に見て生きてゆく民衆の逞しさと知恵を描いて素晴らしい。
1958〜東京タワーが出来た日〜

1958〜東京タワーが出来た日〜

劇団仮題

HEP HALL(大阪府)

2020/01/18 (土) ~ 2020/01/19 (日)公演終了

満足度★★★★★

感動的なストーリーで演者さんたちも素敵でした^ ^

マクベスの悲劇【3/20(金)~4/3(金)に公演延期】

マクベスの悲劇【3/20(金)~4/3(金)に公演延期】

劇団俳優座

俳優座スタジオ(東京都)

2020/03/15 (日) ~ 2020/04/03 (金)公演終了

迫力のある舞台でした。

ジプシー 〜千の輪の切り株の上の物語〜

ジプシー 〜千の輪の切り株の上の物語〜

ことのはbox

シアター風姿花伝(東京都)

2020/04/01 (水) ~ 2020/04/07 (火)公演終了

満足度★★★★★

カーテンコールの『ありがとうございました』を受けて、観客として『ありがとう』と感謝で涙が止まらない。
早口の台詞が見事に聞き取れる。効果音もよかった。ラストのシルエットがきれい。もうひとつのバージョンも是非みたい!。

【公演延期】四代目鼠小僧次郎吉

【公演延期】四代目鼠小僧次郎吉

橋田ゆういちろうのカンパニー

ACT cafe(大阪府)

2020/04/02 (木) ~ 2020/04/06 (月)公演終了

延期は残念ですが今の状況なら致し方ないと思います☆いつの日かこの作品が安心して観れる日が来る事を願って止みません☆

白鳥先生と過ごした2日間

白鳥先生と過ごした2日間

enji

吉祥寺シアター(東京都)

2020/04/02 (木) ~ 2020/04/05 (日)公演終了

満足度★★★★★

舞台のセットがとてもいい感じで作られていて、舞台美術さんすごいなあと思いました。作品はとても素敵で役者さんの演技力の高さに感動しました。でも、それよりも最後の脚本・演出の方の言葉のほうがなんか胸にジーンときて、役者さんともども涙がウルウルっとしてきました。

歳月/動員挿話【3/28-29公演中止】

歳月/動員挿話【3/28-29公演中止】

文学座

文学座アトリエ(東京都)

2020/03/17 (火) ~ 2020/03/29 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2020/03/25 (水) 14:00

『歳月』
 第一幕が昭和初期、そこから第二幕7年後、第三幕がさらに10年後。
第三幕で、次男の紳二が長男計一と遺産分配の額の均等割りの話をしているところから、その時には戦後を迎えているのだろう。
 子供を身ごもり、男に結婚を拒まれて自殺を図った長女・八州子を中心とした、家族の物語。八州子の各幕での男への心持ちの違いが、物語の核となる。それに振り回されつつ、それでも頼りになるのかならないのかわからない兄2人。生後、第三幕では17歳になっている八州子の娘・みどり。八州子との結婚を拒んだ男は、結局籍だけを入れるが別れを申し出る。そしてついには復縁を迫る。家族間を漂う波風、心はそれぞれに少しくざわめくが、何かが起きるということでもない。観客が、家族の歳月の隙間を読み込む舞台である。
 八州子役の前東美菜子の、幕ごとに歳を感じさせながらも、内面の成熟が見られない少女的な存在感。凡庸に見える生活の一編一編が、これからも続くであろう生活を予測させ、人には過去と明日があることを感じさせる。秀作。

歳月/動員挿話【3/28-29公演中止】

歳月/動員挿話【3/28-29公演中止】

文学座

文学座アトリエ(東京都)

2020/03/17 (火) ~ 2020/03/29 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2020/03/25 (水) 14:00

『動員挿話』
 恐ろしい話。数代という存在が、この話全体に重くのしかかる。一見すると、夫を慕うあまり、主人に従って戦地に赴く夫を懸命に留めようとする健気な妻の愛情物語。
 確かに、妻・数代は夫・友吉と内地に残り、共に生活をすることに、自らの全欲求を向け、そのためにはどのような代償もいとわない。明治の日露戦争期、この時代に夫への深い愛情をもって戦争を忌避し、生涯を共にまっとうしようという構図は、自由で先進的な女性像を描いているかに思われる。しかし、そうだろうか。

 よし「戦争もいゝだらうけれど、死にさへしなけれやね。」
数台「それより、死ぬか生きるかわからないからいやなの。」

数代は、夫を愛しているから戦争に行かせたいのではなく、夫を常に存在として支配したいから、離れるのが嫌なのである。離れるということは、双方どちらの生死に関わらず、数代という自己の喪失に他ならない。数代は1人目の夫と死別し、2人目の夫は女と駆け落ちをしてしまった。彼女は3度目の結婚にして、けして夫と離れまいと決心し、それを全うすることのみが唯一つの善となったのだろう。夫人の口から仄めかされる2人の結婚でのひと悶着。
観客も初めは理解を示し、数代の懸命さに同情を寄せるのだが、彼女の言動を通じて次第に感じ出し始める居心地の悪さ。何かが捻じれているような、あるいはあらぬ方向に進ん営るような気味の悪さ。舞台上から落ちてくる出征のための荷物は、数代の心から漏れ落ちてくる大きな重い暗闇のようだ。
得体のしれない気味の悪い作品。
数代を演じる伊藤安那の、明瞭かつ溌溂とした演技が、周囲の登場人物との断絶や、肥大化する自我、周囲に振りまく狂気を一層際立たせる。突然に迎える異様な終幕が、観客の心理をささくれ立たせる。テンポ良い舞台進行と、キレの良い演技が演出効果を倍増する、驚くくらいに後味の悪い舞台。

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