満足度★★★★
鑑賞日2020/03/25 (水) 14:00
『歳月』
第一幕が昭和初期、そこから第二幕7年後、第三幕がさらに10年後。
第三幕で、次男の紳二が長男計一と遺産分配の額の均等割りの話をしているところから、その時には戦後を迎えているのだろう。
子供を身ごもり、男に結婚を拒まれて自殺を図った長女・八州子を中心とした、家族の物語。八州子の各幕での男への心持ちの違いが、物語の核となる。それに振り回されつつ、それでも頼りになるのかならないのかわからない兄2人。生後、第三幕では17歳になっている八州子の娘・みどり。八州子との結婚を拒んだ男は、結局籍だけを入れるが別れを申し出る。そしてついには復縁を迫る。家族間を漂う波風、心はそれぞれに少しくざわめくが、何かが起きるということでもない。観客が、家族の歳月の隙間を読み込む舞台である。
八州子役の前東美菜子の、幕ごとに歳を感じさせながらも、内面の成熟が見られない少女的な存在感。凡庸に見える生活の一編一編が、これからも続くであろう生活を予測させ、人には過去と明日があることを感じさせる。秀作。