新雪之丞変化 公演情報 Project Nyx「新雪之丞変化」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    Pro-Nyxを昨年末に続いて観劇。今回は完全femaleで男役を月代かつら被ってでもやる。異形なはずだが普通に観れてしまった。上京した役者・雪之丞が実は素性を隠して亡き父母の仇を討ちに?と危険が匂えば序盤からもう目が離せない。非情そのものの敵(現奉行)、その娘に一目惚れされ・・。裏事情をかぎ取る鼻持つもう一人のやさぐれ女、そこまでの眼力はないが執念を燃やし続ける岡っ引、敵の娘を雪之丞に引き合わせた商人、またその商敵の何某と、役者に事欠かず。
    情念を煽るBGMはBUCK-TICKだそう(イカ天世代には懐かしいバンド名..)。
    金守珍得意の箱を使った美術では、歌舞伎並みの場面転換(具象を使った省略無しの)がスピーディに行われる。転換中は黒幕が引かれ、その前で芝居や踊りが出し物的に演じられる形だ。ちょうど中入りな時間では、客をいじったりと肩の力の抜けた佐藤梟の喋りがあり、雪之丞の一座が上演する劇中劇のこれも一つとして「やります」、と始めた一人芝居が物凄い。「女のどうしようもなさ」とでも名付けられよう挿話(出典「宇田川心中」)が、この「新雪之丞変化」の劇中人物(女)たちのみならず、これを演じる者(女優)たちの存在を包摂し、主役の女形(=男)の女性性(実際女)といった倒錯をも大づかみに包んでしまう。総員が目一杯演じるエネルギーに打たれる舞台であった。

    ネタバレBOX

    楽日の客席を埋めた観客を見て主宰が思わず言葉を飲んでいた。
    ・・コロナ禍は「病気」以上に「空気」という風評被害、さらには人災の側面が大きくなりそうだ。劇から離れるが、思う事を。
    経済は自己責任、感染も自己責任、ただし感染数増加と政府の落ち度の明白化に繋がることは許さない、という観点でのみ、「保護的な」政策が打たれている。初動の誤りは「誤り」と認めたくなさに正される事なく、説明もなく、つまりは「判断」の材料となる情報も出さず、ただ「大変だ」の空気だけが作られ、緊急事態体制に「違反する者」を非国民として取り締まる空気にやがて発展すれば、矛先は向けられるべき所には向かなくなる。

    政治の私物化の実態の露呈が目前だった安倍も、選挙を控えた小池も、現在それなりの地位にある者全て、「騒ぎが長引くこと」で得る利が大きいという事情がある。そして彼らは利を追求してやまない人たちであり、指弾されればその証拠を平然ともみ消したり改ざんしたり個人情報を理由に黒塗りにしたり他人に罪を押し付ける人たちである事は、もはや周知のはず。
    では、叩けば地位を失うだけの埃、否ごみを抱えているのが我が国のリーダーである事のメリットは何か。「それだけの負い目があるのだから肝心の時には国民のために働いてくれるだろう」ってか。根拠ゼロ。「感染の広がり」の長期化は彼らの瑕疵を看過させるメリットがある以上、終息させようと本心から思うわけがないではないか。「頑張ってる」「何かやってる」「悩んでいる」ポーズだけである。官僚は独自の倫理を捨て官邸の下部機関に成り下がり、「人命は地球より重い」と国家のリーダーが言った時代は遠い過去になった。
    「あなた方にはトップに座る資格がない」と、常識人なら皆思っていることを、そろそろ伝えなければ・・このままでは演劇界と演劇文化が相当なダメージを被るだろう。

    もう一点。再配分の考えを(ケインズすら)否定する新自由主義の本義は「自由」などではなく、富の偏在の体のよい正当化であって、それを言う主語は少なくとも我々ではない(演劇人は皆貧しいとの前提、失礼)。これを進める当人が、逆の立場になって同じ主義を主張する事は、ないだろう・・もしそうなら褒めていい。そしてなぜその主義に固執するのか改めて訊いてみたいものだ。
    ・・で、コロナによる経済的苦境に陥る者の事情を理解せず、彼らのためにまず動こうという発想がないのは、この2、30年で浸透した自己責任、再配分否定の思想のためだとしか思われない。病気による死も重大だが経済的な死に追いやられる者が「長期化」によって生じる事を憂える。金銭的補償が話題には上るが、根拠が薄く、手法もまずい。世帯ごとの給付の考え方(マスクも同様)は、「個人補償」を嫌う彼らがどうにか許せる単位なのだろう。個人には安倍の嫌いな部類の人間が混じるが、世帯ならまだ「家族主義」を復権させたい彼らの名分が立つ・・以上すべて想像だが憶測とは捨て切れまい。
    「自己申告」という方法も手続のハードル。「安倍様お願いします」と頭を下げるなら出してもよい・・という姿勢がうっすら見える。それ以前にそれこそ役所に全世帯が殺到すれば役所崩壊である。封筒が殺到してもそれらを処理して、お金が届くのはいつになるのか。
    そもそも掬い上げるという発想、つまりは思いやりが、安倍にはない・・多分そのあたりが根本の原因なのだろう。政府は、安倍の独りよがりの安い思いつきに振り回されていると見て間違いないのではないか。

    2月後半から米国帰りの日本人の感染者が出ていたが、米国はまだ楽観姿勢だった。3月後半からは東京からの帰省者に感染者が出始めた。米国は1か月先んじて感染拡大に見舞われ、都市封鎖に乗り出したが、日本はこれからという見方が大きい。これら全て、検査に制限をもうけて実態把握を放棄してきた必然とも言える。
    検査制限により無症状感染者や潜伏期間にある者を放置し、実態把握に努めないでいながら、一方で一律の制限を人々に要請し、不便を強い、そうして個人事業主の収入を取り上げている。
    問題は、検査がなされない構造悪もさりながら、そうした背景についての情報が出ないこと。判断の誤りを指摘されるような情報は出さない(厚労省のサイトを覗いても数値に関する情報に不備が多い。これが日本の官僚か・・)。「要請」という形で自己判断に委ねるような手法を取りながら、個々に判断するための有用情報が出てこないのはそのためなんだろう。・・としか合点が行かない。
    ウイルスは自然の脅威であり「天災」であるのは間違いない。従って人間の力が及ばない事もあるだろう。しかもこれを利用する奴らが人災による被害を生み出している。

    こんな時にマトモな神経を保つには何が必要か。今のところ私には演劇以外に考えつかない。

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    2020/04/05 05:16

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