
オペラ「フィガロの結婚」
豊島区オペラソリストの会
南大塚ホール(東京都)
2021/09/04 (土) ~ 2021/09/05 (日)公演終了
実演鑑賞
ソリストの熱唱!
縁あって久し振りにオペラを鑑賞。以前はオペラやクラシックコンサートにも出かけたが、最近は観劇の方が多いかもしれない。そう言えば、もう数十年前になるが某合唱団で歌っていたことを思い出す(もちろんソリストではない)。今では声量もなく音程も取れないだろう。当時の会場は、東京文化会館や東京(新宿)厚生年金会館(今はもう無い)等といった、音響構造の優れた(クオリティの高い音楽専用)ホールであった。今回は南大塚ホールという音楽系を専門にした会場ではないことから、その点を考慮しなければならない。
なお、コロナ禍における感染防止対策として、客席1~3列目は使用しない。また「ブラボー!」など言わないようにとも…少し寂しいがやむを得ない。
さて、公演では歌唱と演出(むしろ舞台技術といった方が適切)で気になったところが…。
(上演時間4時間 45分休憩含む、15分×3回)
本公演は第33回池袋演劇祭参加作品のため、☆評価は後日付。

タージマハルの衛兵
東京演劇アンサンブル
野火止RAUM(埼玉県)
2021/09/04 (土) ~ 2021/09/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
東京演劇アンサンブルの新拠点・埼玉県新座の野火止RAUMで観劇。新座駅から少し距離(約2㎞か)があるが、事前に予約しておけば送迎車を出してくれるのでありがたい(毎公演かは要確認)。
初日観劇。劇場はひな壇(当日は4段)型で、少しであるが市松模様的にパイプ椅子を配席し観やすく配慮。観た回、それも1列目に小学生と思われる子供が観劇していたが、衝撃的なシーンがありトラウマにならないか心配になった。また同シーンで この劇場では可能な(目測であるが奥行きがある)演出が他の劇場で出来るか気になるところ。
(上演時間1時間55分。前半1時間 後半40分 途中休憩15分含む)【Aチーム】
野火止RAUM劇場は対象外だが、第33回池袋演劇祭参加作品(シアターグリーンBOXinBOX THEATER)になっているため、☆評価は2021.10.10日付。

戒厳令
劇団俳優座
俳優座スタジオ(東京都)
2021/09/03 (金) ~ 2021/09/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2021/09/06 (月) 14:00
座席1階
迫力のある舞台だった。「罵りあい」のような激しいセリフの洪水。そして、様々な角度から現代社会を照らすような複雑なメタファー。基礎の出来た実力のある俳優たちだからこそできる、強烈で見ごたえのある2時間である。
平和な街に入ってきて独裁を遂げていく男と女性秘書。ペストをばらまいて市民を恐怖に陥れるのだが、秘書がデスノートを持っていて、狙いを定めた人物を消していくというのは舞台で見る物語の設定とすればよかったと思う。当然、今の時期だからコロナ禍をオーバーラップさせてみるわけだが、このデスノートの存在が、現実と適度な距離感を出して、「これは現実ではないのだ」というような安堵感を観る者に与える。そうでなければ、自宅療養者がバタバタ倒れている現実をストレートにぶつけられるようで、息苦しくなったかもしれない。
愛とは、正義とは、人生とは。そして、生とは、死とは。舞台からは次々に「考えてみろ!」と矢が飛んでくる。市民を代表するように戦うディエゴが、こうした矢が飛ぶ中で苦悩し続けるわけだが、特に独裁者と対決する最後の方のシーンは秀逸だ。
倒れる婚約者のヴィクトリアが美しい。ロミオとジュリエットのラストシーンを連想させるようでもある。
前作の「インク」も面白かったが、今回はその上を行ったと思う。原作をうまくアレンジした脚本の勝利だと思う。さらに、4つの大型モニターを使い、工事現場の階段のようなセットで立体的に役者を動かした演出もよかった。けいこ場の小さな空間で思い切り役者たちを駆け回らせたが、小さな空間だからこそ一人一人の役者の演技に同時に目が行く感じで、それこそ舞台から目が離せなかった。

デンギョ-!(再演)
小松台東
ザ・スズナリ(東京都)
2021/09/01 (水) ~ 2021/09/07 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
「山笑う」(初演=僕たちが好きだった川村紗也)と、もう一つ同じ頃観た「小松台東を発見!」と喜んだ舞台があったのだが思い出せず随分と探し、電気工事屋の職人が集まる控室が舞台だった気がするし正面奥にプレハブ用サッシの引き戸もあったと記憶するので「デンギョー!」だったか・・?とまで真剣に考えたが、結局「想いはブーン」であった。(記憶の中の印象とは程遠い「ほのぼの」という口コミが付されていた事でハナから除外してしまった。)
改めて「初観劇」の感想。近作に比べて筆に若さを感じるが、間と説明しなさの攻め具合は変わらず、最後まで判らなかった小暮と松本の夫婦役や終盤やっと判った下請職人(新婚という別の職人の相手が小暮だと勘違い)、後出しジャンケンな展開を松本の力技で正当化する部分など、自分の「読み取れなさ」故に見えたようにも思える穴が気になりながらも、左脳の理解度とは裏腹に終演時我に返って足を掬われた気がした。「よくぞ表現した」と言うしかない幾つもの断片の気づきもそうだが、数日経って振り返ると、いつか自分の中に巣食っていた「接触を遠ざける」感覚を、敢えて破る「抱擁」にあったのでは、とも思う。初日であった。

4
ティーファクトリー
あうるすぽっと(東京都)
2021/08/18 (水) ~ 2021/08/24 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
犯罪と死刑制度をめぐる4人によるモノローグ劇。裁判員と、拘置所の看守と、犯人と、死刑執行命令にサインする法務大臣とが、それぞれの立場で、悪夢を、苦しさを、責任を語る。途中、一度、俳優たちが話して役を交代する「メタ演劇」的部分あるが、割とすぐ元に戻る。重いテーマを、真正面から語り続ける、真摯な舞台だった。

Le Fils 息子
東京芸術劇場
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2021/08/30 (月) ~ 2021/09/12 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
一度こじれると簡単に直せない、思春期の子供を持つ困難を、抑制的に、リアルに、しかし切実に描いて、目の離せない2時間だった。高校生の息子が、学校に行くふりをして何ヶ月もサボっていた。元妻から驚きの話を聞かされた、父(元夫)は息子に「なぜだ」と聞くが、息子は「わからない」としかいわない。ここから意思疎通がうまくいかなくなる。
息子は「ぼくは生きることがうまくできない」と訴えるのだが、父も母もまともに受け取れない。一方、父・母が必死に息子のために準備する家や、転校先を、息子は受け入れるように見えるのだが、本心はわからない。息子が母とはダメだというから、父は若い再婚相手と、乳飲み子のいる家に息子を引き取る。父のもとで素直そうに見えるが、しかし…。息子に「どうして母さんと僕を捨てたんだ」「ぼくを傷つけたのは父さんだ」と言われたら、父親はどうすればいいのか
父は成功した弁護士である。パリにも仕事人間はいる。でも日本の父親より、よほど家庭を大事にしているというべきだろう。母親も働いていた気がするが、職業が出てきたか、忘れた。
岡本健一、伊勢佳代、若村麻由美、そして新人で岡本の息子の岡本圭人。4人の俳優もみな素晴らしい。実に生々しい切ない舞台だった。

CHANGE
danke
萬劇場(東京都)
2021/08/11 (水) ~ 2021/08/15 (日)公演終了
映像鑑賞
「古事記」を配信で視聴。4つの勢力、色々な現代人、2つの時代とかなり入り組んだ設定だったので、全ての話を把握するには至らなかったが、色々な要素を詰め込んでいて挑戦的であった

アナと雪の女王
劇団四季
JR東日本四季劇場[春](東京都)
2021/06/26 (土) ~ 2024/10/31 (木)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
アニメーションなら氷も吹雪も自由自在だが、舞台でここまでやるとは。映像と美術、証明、音響とあいまって、氷の世界を目の前に作り出す。もちろん音楽もいい。「ありのままで」は一幕の最後にたっぷり聞かせて、拍手喝采だし、フィナーレも「ありのままに」のリプライズに近く、さらに深く、自分らしさと愛の両立を歌う。俳優の演技、ダンス、パフォーマンスもいい。衣装もいい。エルザの衣装が「雪の女王になってからも、ライトブルーのドレスから、パンツスタイルに変わる。とにかく飽きるところがない。アナとクリストフが吊り橋を渡りながら歌う「愛の何がわかる」は、歌いながら、心が近づく瞬間が見事。
ユーモラスな雪だるまのオラフが出て売ると、寒さも和む(実際、オラフの歌は「夏が好き」)、サウナに入った村人たちの裸(!)ダンス、トナカイノズベンは人間が入っているとは思えない、本物そっくり。
とにかく、おとなからこどもまでたのしめて、生きることを励ます熱いメッセージが伝わる傑作ミュージカル。現実を忘れて別世界に連れて行ってくれる2時間半。そして現実に帰ってきた時、前より心が明るく前向きになっている。エンターテインメントの大道をいく芝居である。

クロスフレンズ
LOGOTyPE
六行会ホール(東京都)
2021/05/27 (木) ~ 2021/05/30 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
持田千妃来さん出演。
全16曲のリストはネタバレに書きます。
90年代の邦楽でのミュージカル。有名な曲が多く、世代のひとにはぴったりのラインナップです。自分はあまり音楽に詳しくないのですが、半分くらいが知ってる曲、残りが聞いたことがある曲、でした。
主役は橋本愛奈さん。演技を拝見するのは初めて。お歌を拝聴したことはあまりなかったですが、とてもいい声でした。主役にふさわしい方だと思いました。
持田さんはエル少年の役。意外にも少年役は初めてだったようですが、子供らしく可愛くも聡明な役、ぴったりだったと思います。この舞台の3か月後の「シーボルト父子伝」でも少年役でした。背が低いことを活かして、幅広い役をこなせそうですね。
デボラ役の仙葉由季さんは魔女と呼ぶににふさわしい、妖艶さを見事に表現されてました。
そのほかの皆さんも良かったです。歌の威力はすごいものだと、再認識しました。

SENSE
早稲田大学舞台美術研究会
早稲田大学学生会館(東京都)
2021/08/14 (土) ~ 2021/09/18 (土)公演終了
映像鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2021/09/05 (日) 18:00
2バージョンをアーカイブ配信で鑑賞しました。申し込んでおきながら初回の配信を見逃してしまっていたので、アーカイブ配信はありがたかったです。物語的にはロック色の強い「楽ステバージョン」のほうが好きでした。配信終了までにもう1回ずつは見たいと思います。
昨今のネット配信だと、マイクで収録した音はパソコンのスピーカーやイヤホンを通すと耳にやさしくない、疲れる音のことが多いのですが、今回の配信ではストレスなく聞ける音質でした。

星の王子さま【発表会中止】
SPAC・静岡県舞台芸術センター
舞台芸術公園 野外劇場「有度」(静岡県)
2021/08/21 (土) ~ 2021/08/22 (日)公演終了
映像鑑賞
満足度★★★★
演じるのは静岡県内の中学校1年生から高校3年生が20名。発表会は中止になったそうだが、野外劇場で行った最終稽古の記録映像配信を拝見。まだ暮れ始めで、後ろの空がうっすらと分るぐらいの時間からの収録。カメラのクオリティも高く、みなマスクをつけていることが途中から気にならなくなってしまうぐらい、瑞々しさに溢れたいい映像だった。

戒厳令
劇団俳優座
俳優座スタジオ(東京都)
2021/09/03 (金) ~ 2021/09/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2021/09/05 (日)
価格5,000円
5日14時開演回(130分)を拝見。
かって欧州社会で猛威を振るったペスト禍を、支配者「ペスト」と、ヒトの死を司る「デスノート」持参の「秘書」とに擬人化し、彼らによって支配されたスペインの港町の人々の沈黙と葛藤を描いた作品。
原作は”ナチスドイツとその協力者に対するレジスタンス”の比喩として書かれたものらしいが、私たちは当然、現代のコロナ禍の世情をオーバラップさせて観る訳であり、権利の抑制や人間性の全否定といった様々な統制のやり方に、上演中、色々と考えさせられた130分だった。

25thSTAGE『千夜一夜物語 ~蒼き精霊の冒険譚~』(再演)【閉幕御礼】
劇団やぶさか
ラゾーナ川崎プラザソル(神奈川県)
2021/09/04 (土) ~ 2021/09/05 (日)公演終了
映像鑑賞
満足度★★★
フェリス女学院大学演劇部を母体とした劇団の20周年記念公演。当初予定していた新作から、2012年上演作の再演になったそうで、無観客公演のYoutube配信。アラビアンナイトをモチーフにしたマンガチックな舞台だが、たまたま公演情報を見つけて、何となく見始めたら、これが意外に(と言っては失礼だが)楽しい舞台。オープニングのクレジットも見やすくてポイント高し。5分休憩を挟んだ二幕構成で約100分。

近松心中物語【愛知公演中止】
KAAT神奈川芸術劇場
KAAT神奈川芸術劇場・ホール(神奈川県)
2021/09/04 (土) ~ 2021/09/20 (月)公演終了
実演鑑賞
#近松心中物語
#初日
二組の男女の心中。#松田龍平 さん演ずる気の弱い婿養子と、#石橋静河 さん演じる箱入り娘ながらヤンチャな嫁の夫婦がチャーミング。心中らしからぬ軽やかさで客席を沸かせる。石橋さんのコメディエンヌっぷりも新鮮。でも、彼女のドロドロした不幸を身に纏ったような役どころも観てみたかったというのが本音。
町の喧騒などは、#長塚圭史 さんらしさのよく出た演出。ただ、冒頭のそれは、鐘を鳴らす男のリズムが悪くモヤッとしたし、声質や滑舌の問題で台詞の聞き取りにくさもあって少し残念だった。
散る雪を含め、照明が美しい作品。

廃墟に乞う
Audio Photo Cinema「廃墟に乞う」製作委員会
シアターX(東京都)
2021/09/03 (金) ~ 2021/09/04 (土)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
加藤雅也氏本人が撮影監督として撮影したモノクロ写真がスクリーンに流れる。今作のプロデューサーも兼ねる寿大聡( じゅだいさとし)氏は出所した殺人者役。未成年の頃と成年後の二度、ホテルに呼んだ風俗嬢を顔が潰れる程、鈍器で殴り殺した。声だけの出演だが木下ほうか氏が記者として寿大氏を質問攻めにして追う。長い長い駅の地下通路での追尾、加藤氏の画角は映画的でフレームには光と影と俳優しか写らない。録音技術が低く、台詞が聴き取れないのが残念。
佐々木譲氏の直木賞受賞作である連作短編集『廃墟に乞う』。 その表題作をAudio Photo Cinema(朗読劇+写真映画)化。(佐々木氏は寿大氏を当て書きして小説を書く程、親密な関係。)
舞台上では加藤氏と寿大氏による台本片手の朗読劇が行われる。
加藤氏はPTSDによる休職中の北海道警の敏腕刑事役。過去に担当した犯罪者から一本の電話が掛かってくる。出所した男はまた似た事件を起こしてしまったようだ。
財政破綻して巨大なゴーストタウンと化した北海道夕張市にある、廃墟と化した炭鉱町。そこで育った幼年時代に目撃した光景。刑事と犯人は廃ダムに二人だけで待ち合わせる。

『砂の女』
キューブ
シアタートラム(東京都)
2021/08/22 (日) ~ 2021/09/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
現代の古典とも言える原作だが、「古典とは有名だがあまり読まれないもの」と言われるように、私は未読(すいません)。勅使河原宏の映画化も見たことない。その目で見て、大変新鮮で、時代を超えた舞台だった。「砂の女」とは実存的(抽象的)で閉鎖的な話と思っていたが、違った。非常に合理的で社会的な話であった。
蟻地獄のような砂の底に、男を閉じ込めるのは、女ではなく、村=部落の男衆。女は同居人。この設定がまず目からウロコであった。しかも、穴の底で男と女が掻き出す砂を、運び出すモッコが上から降りてくるし、水や配給品も上から届けられる。
一緒に見た友人は「非条理じゃないね」といっていたが、そのとおり。非常に合理的な話である(そんな砂に埋れそうな土地になんで住み続けるのか、ということを除けば。実は人は生まれついた土地を、簡単には動かないものなのである。そのこともおしえられる)
友人は「人間の醜い面をクローズアップして、さんざん見せつける。自分本位や、みだらな欲望や。。人間の美しいところがどこにもない。ジェンダー的にも問題。エグい芝居だ。演出は素晴らしいが、好きな芝居ではない」と。これは好き嫌いの問題なので、それだけの嫌悪感を起こさせたのは芝居の訴求力の高さを示している。
(途中、穴の上の村人たちが、二人に交わっているところを見せたら、縄梯子をおろしてやる、と本気で言い出すのは確かにエグい。緒川たまきは、裸で寝ているシーンや、半裸の後ろ姿など、かなり際どいシーンもあった)
男(仲村トオル)がなんとか逃げ出そうと策を繰り出す。女を縛り付けたり、あきらめたふりをして手製のロープを作って実際に逃げ出すしたり(途中で捕まる)。「ミザリー」よりずっと社会的に広い話。江戸(東京)から来た男が、いなかでちやほやされて、村人たちの罠に落ちるというのは、井上ひさし「雨」ににている。まあ、影響関係はないだろうが。
男は、女に「生きるために砂をかくのか、砂をかくために生きるのか、わからないような暮らしが、人間的と言えるか。」「豚と同じだ」と責める。まっとうで合理的だが、労働者・農民をバカにした、上から目線のセリフではないか。多分、そんなふうに考える私が、庶民の味方ヅラをしているだけなのだろうが。
なぜこんなところ出ていかないと聞かれて、女は「ここは私のうちだもの!」と叫ぶ。その気持はわかる気がした。福島の原発事故で故郷を追われた人も、同じ気持ちだろう。
グレーの幕で舞台の上から下まで覆い、中央にあばら家がポツン。人形も使って、男の空虚さを示す。シンプルな砂の映像が、砂の谷を作る。あばら家がくるくる書いて飲して変化をつける。すだれに映る影絵と、出てくる人物のズレ(彼の女かと思うと男の同僚だったり)もうまい。警察や、男の中学の同僚たちの日常的なボケも、砂の中の生活と対比的効果で良かった。4人の黒子=村人や警官のステージングもスムーズ。そして音楽がすごい。私は知らない人だが、上野洋子が舞台の情報にずっといて、シンセ、打楽器、アコーディオンなどをつかいわけ、「ヒョー」「ワオー」といった声で、効果音的音楽をつける。面白かった。

「侠」 君、逃げたもうことなかれ
サンハロンシアター
「劇」小劇場(東京都)
2021/09/02 (木) ~ 2021/09/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
ちょっと意外な展開だったが、昭和の価値観の人間には納得出来るプロット
キャスティングの妙でいい味出ていた
シンプルなセットだが、照明と音響が実に効果的だった

チーチコフ
劇団俳小
萬劇場(東京都)
2021/08/27 (金) ~ 2021/09/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
ゴーゴリの未完の長編、『死せる魂』。完成していた第二部を作者自ら焼き捨て書き直したせいで不統一な作品に。更にその後、文学を棄てる事を決意し書き直した第二部を再び暖炉で焼き捨てる。そして十日後、自ら断食にて没す。後に残された原稿の断片から遺作として不完全な第二部が刊行された。全三部の作品だった為、ゴーゴリがどんな作品を構想していたのかは今や誰にも判らない。
舞台は十九世紀ロシア、当時の地主は次の国勢調査まで死亡した農奴(その土地の領主に保有された農民)の人頭税をも支払わなければならなかった。元小役人チーチコフは死んだ農奴の所有権をただ同然に譲り受け、名義上は大勢の農奴を抱えた地主に成り済ますことを企む。登記したその農奴を担保に銀行から大金を借り入れ、国外逃亡することが目的。面識を得たロシアの方方の地主に交渉に出向くのだが···。
チーチコフ役大川原直太氏が実にいい味。高橋幸宏と泉谷しげるを足したような風貌で知性と茶目っ気が同居している。現実感のある、地に足の付いた悪党が演れる逸材。人が変わったように老婆を非道い剣幕で脅しつけるシーンが印象的。
その敵役となるノズドリョフ役手塚耕一氏も負けてはいない。佐藤二朗とケンドーコバヤシを足したような雰囲気で破天荒型の嫌な毒舌キャラ。それなのにどこかしらユーモラスな存在に創出。出て来ると場が盛り上がる。
演出の意図なのか、後半から徐々に『マクベス』を連想させる断片が。
チーチコフに付き従う御者セリファン役左京翔也氏の獣じみたキャラは異界の荒れ野を馬車で疾走している気分にさせる。
チーチコフの転落の切っ掛けともなる老婆、コローボチカ役吉田恭子さんは欲深い弱者を好演。
コーラス・ガールの三人組、西本さおりさん、覚田すみれさん(美巨乳!)、小池のぞみさんがエロエロで観客を煽り続ける。時には馬車馬になり、チーチコフを乗せてロシアの湿原を駆け巡る。シルエットのみで演じられるセクシーなオープニングは『11PM』的で素晴らしい。この三人の魔女が「チーチコフ!」「チーチコフ?」と呼び掛け続けるのがリズムとなってずっと耳に残る。
ずっと袖で生ピアノを演奏し続ける音楽担当の上田亨氏。曲がキャッチーで活き活きとこの世界の住民を鼓舞し地獄巡りの寓話に鮮やかな色を着ける。

チーチコフ
劇団俳小
萬劇場(東京都)
2021/08/27 (金) ~ 2021/09/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
休憩を挟んでの前半、後半。
前半 チーチコフ、人生どん底からの妙案。
とある田舎町をターゲットに、死亡した農奴の戸籍を訪問買取りにまわるチーチコフ。
彼の胡散臭い話に、手持ちの名義を売ろうとする面々もそれぞれに欲深そうでニヤニヤ。
生ピアノ、キャバレーのママや狂言回しでもあるコーラスガール達の歌声。
もし観客がお酒など嗜みながら舞台を楽しめる“ミュージカルバー”なるものがあったならピッタリの雰囲気。
後半 チーチコフの思惑違い、徐々に、やがて大きく状況が狂い出し・・・これは観ている者が思わず前のめりってヤツですね!
“悪党達”をエンターテイメントで楽しむ『ベガーズ・オペラ』『三文オペラ』と非常に似た感覚のする舞台だと思いました。
ただ女性にモテモテ、イケイケな『三文オペラ』の主人公メッキ―・メッサ―と違ってチーチコフは女性とは縁薄く、人生 尻に火が付いてるって感じ。
泥臭くって危なっかしくて、目が離せないのでした。

【会場が変更になります8.7】A-hoj!2021
プーク人形劇場
プーク人形劇場(東京都)
2021/08/10 (火) ~ 2021/08/14 (土)公演終了
映像鑑賞
満足度★★★★★
「快傑ゾロ」アルファ劇場
操り人形劇だが、ギター、太鼓等のパーカッション、サックスの生演奏が入り、演奏が実に上手い。人形劇は猫の顔を思わせる装置が用意され、ゾロの仮面を付けた部分が跳ね上がるとそこが人形達が活躍する舞台になる。主たる登場人物は、ゾロ、ドン親子、市長、将軍、犬のポポ、セニオリータ、その母、ワキに酒場の客、酒場のホステス、兵隊等。子供達が観て楽しい内容になっている。筋は単純で、市長は人々に重税を掛けて将軍や兵たちに徴収させ贅沢三昧をしているが、弱者は堪ったものではない。この市長や将軍・兵士ら弱者を痛めつけ収奪する者達に鉄槌を食らわすのが、ゾロの役目だ。覆面をしているのでゾロの正体は美しいセニオリ―タにもよく分からないが、ドンの子息には憧れており、子息の方でも美しいセニオリータに気が在るが、だからこそ彼女の前に出ると体が竦んで何もできない。それで彼は見捨てられてしまう。一方、将軍は美しいセニオリータにぞっこんで嫌われれば嫌われる程増々恋しくなり付きまとう。弱い者苛めの先頭に立って行動する将軍は何度かゾロと戦い総て負け、ゾロマークを剣で付けられる。
ラストは、セニオリータの懇請に負け、マスクを取ったゾロの正体を知った彼女と子息のメデタシ、メデタシ!
ところで、ワークショップで本物の人形を使って実習をさせて貰ったが、この人形が結構重い。遣いこなすのにかなりの体力が居ることが分かった。