
孤という毒
獏天
サンガイノリバティ(東京都)
2022/05/14 (土) ~ 2022/05/22 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
50歳の役者さんがカッコいいいと評判なので、ウキウキして出かけて行った。
本当でした。声を出してはいけないので、心の中で、思いきり、キャー素敵と叫びつつ観ていた。
演技は新人さんだし...と思っていたが、演技もベテランに劣らず素晴らしい!!!
内容も真剣に悩んでいる人の相談にのるという、良いストーリー。
カッコいいのが更にパワーアップ。とても良い。
声の出演もあるので、ひとり芝居には感じられず、個人的には、それがいい。
この劇団さん受付スタッフ三人、とても感じがいい。ひとりひとり席まで案内しニッコリ。スタッフさんのおかげで、お芝居の良さがアップし、大変気分良く観れた。
スタッフさんに感謝。

エレファント・ソング
パルコ・プロデュース
PARCO劇場(東京都)
2022/05/04 (水) ~ 2022/05/22 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
井之脇海の快演が見所である。精神科医(寺脇康文)とその病院の入院患者(井之脇海)が、患者の主治医の突然の失踪の情報をめぐって、追うもの、追われるもの、の関係になる。患者の担当看護婦(ほりすみこ)が俗世間を担ってその中に登場するという三人芝居である。カナダの本で、その地の若いスター、グザビエ・ドランが気に入ってヨーロッパで主演して当たったという芝居で、俳優陣も演出も丁寧だが、いま日本で上演する意味がよく解らない。心理サスペンスとうたってはいるが、内実は主人公の青年患者の家族喪失が主題だろう。そのテーマなら身近な芝居が日本にもたくさんある。
パルコ劇場で私が見た回(この「みてきた」を読むと他の回も同様のようだが)は入りは二割と言う感じ。新国立以外でこういう興行は珍しい。税金で賄える劇場と違って、パルコはそれ以上意欲的で先見性もあり、タレント興行にも背を向けていい芝居をたくさん見せてくれているのに、今回はどこが誤算だったのか。予感があったのか夜興行はほとんどない。値段も安い。劇場側の見解も聞いてみたい芝居だった。

踊らぬサロメ、きみがすき。
あんよはじょうず。
インディペンデントシアターOji(東京都)
2022/05/18 (水) ~ 2022/05/22 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2022/05/19 (木) 19:30
女子高の演劇部の話…、っていうのでは済まない深い作品だった。47分。
セーラー服を着た6人が登場し、高校の演劇部で『サロメ』を上演するような話だが、説明するセリフがほとんどなく、細かいセリフから彼女たちの関係や個々の性格が見えてくるという、戯曲のお手本のような脚本が見事だ。ちょっと不条理に振れてる部分もあり、分かりやすいとは言えないけど、観終わって、ちょっといろいろ考えてみよう、と思わせる。私のテイストには合ってる。
電動夏子『クリキンディの教室』でもヤンキーっぽい役をやってた高橋里帆が今回もヤンキーっぽい役をやってて、これもピッタリ。

民衆が敵
ワンツーワークス
ザ・ポケット(東京都)
2022/05/05 (木) ~ 2022/05/15 (日)公演終了
映像鑑賞
満足度★★★★
映像にて鑑賞。
古城氏の脚本はテーマに対する思考実験の要素が強い印象があるが、本作も例に漏れず、大衆の印象操作、政権批判つぶしが具体的にどのように行われているか、が正面から(政府組織は仮想のものだが)描かれる。
実行部隊は「官邸何とか調査室」、略して官調と言い(間諜に掛けてるのか)、国の政策を批判する運動や言説を監視し、取り締まる汚れ部署(公安がもっと先鋭化したイメージ)だが、ベテラン部隊員(奥村)は男手一つで育てた娘=主人公(北澤)の恋人が実は部隊で現在マークしていた男本人と知る事になる。
部隊はネットを使った世論誘導にまで手を伸ばし、内部でも不満がくすぶるが、主人公が(恋人を通して)関わった改憲に反対するグループ(人権理解を深める会という)の中でも、主戦場をネットに移そうという動きが出て対立したりと、ネット世論にも言及する。
「支配」の存在を意識化させる作品であり、立場を違えてなお人として繋がれるのかというテーマも流れている。
二度目を鑑賞し、一度目は聞き流していた終盤の大事な情報、場面に気づいた。
恋人との悲しくも胸に迫る別れの場面の後、父と娘の静かな長い会話の場面である。その前に、幾つか場面を遡れば、娘と恋人との会話の中で、娘がデモに参加した事を父が知っていた事への疑問が浮かび、恋人は父は「官調」ではないか、と言う。その後の場面では、父を尾行中に気づかれ、父娘が言葉を交わすが、その中でフリーライターでもある恋人が娘に名乗っているのはペンネームであり、本名は別にある事を娘は知る。娘は父がかねて娘に言って来ていたらしい「国のために働いている」実質を問い、父は「自分はそう思って働いている」との回答に、娘は「それなら良い」と答える。ライターの恋人は実名で「官調」の実態を暴く記事を発表する。一般市民にまで介入した諜報活動をスキャンダルとして暴露した。これにより官調内部は動揺、と同時に、彼の運動グループへの参加も潜入が目的であったと判る。そして恋人との決定的な対話となる。既に恋の総括の段階であり、父が官調職員と知って娘に近づいた事(従って名前はペンネームを名乗る事になった)、だが娘のまっすぐな心で周囲と闘う姿に惹かれた事も事実である事・・等。娘は相手の言葉を受け入れ、記事は素晴らしかったと褒め、自分もそれを励みに頑張る、と告げて去る。次の場面で、かねて噂のあった官調から外部への情報リークの本人が「父」であった事が明るみに出る。そして、最後の父娘の対話。父が娘の表情から学校で何か問題を抱えていないかと気づかう言葉掛けが何度かリフレインされるが、この場面では二人の関係の原点(母を失った家族)を観客にも思い起こさせる。正しい事を主張し続ける事は苦しい、と娘はこぼす。でも・・それを抑え込む事はもっと苦しいのだ、と娘は悲痛な宣言をする。父は娘の行動にエールを送る言葉を静かに語り、自分が官調を辞めた事を漏らす。国のために働いているつもりだったがそれが疑わしくなって行った(仕事に誇りを持てなくなった)事を吐露する。本当の顔を表した父と、本音をこぼした娘の対面で終幕となる巧い台本である。
教員の政治活動については昔から議論があるが、例えば三十年前あたりの記憶を手繰ると、活動的だったり革新系と思われる教員も中には居て、色んな個性の一つとして受け入れられ、ことさらに事挙げする問題でも無かった気がする。
もちろん「赤」への偏見は昔から存在するし、差別対象を持ちたいという脆弱な精神風土が日本社会に根強く生きているのも事実。しかし差別意識を心の内に持つことや、井戸端会議でそこに居ない人間の噂をして結束を高めるといったレベルと、公然と唱えるのとではやはり異なる。
デモに参加した教師がバッシングされる・・それは本来奇妙な現象であるはずなのに(以前はもっと違和感を持ったはずなのに)この現象を受け入れてしまっている自分がいる。
だからこの芝居の主人公も、もっと妥協点を見つけ、一旦謝罪して学校の立場を守り、自分も教員を続ける道をなぜとらないのか(あまりにリアリティのない戯曲だぞ)、などと一度目の鑑賞では感じてしまったのである。自分の現在地が露呈するというやつである。作者は「現実にはいない」(だが本来は正しい)人物を登場させ、観客一人一人に自分自身との見比べを促しているように思える。二度目の鑑賞でそう感じた。
様々な事が空気や雰囲気で決められ、一億総風見鶏状態。だが一つ一つを紐解けば、「理が無い」ものに賛同し、または嫌悪の視線を向けている「理のない自分」がいる。
行動や態度を決定する「自分」の責任が問われるのは常態であるのが、往々にして周囲の振る舞いを見てしまう。本来問われるべき「理」はその都度「周囲」や「空気」が決めている。
この「周囲」の大多数が、規範やルールを尊重する人々であれば問題は起きないが、その逆ならどうするか。そもそも、なぜ逆になってしまったのか。
オルテガを引くまでもなく民主主義なんてぇものは何時でも衆愚に陥る。実質的に今の日本は選良にお任せ体制だが、選良の働きを見て「うむ、よしよし」「いやこれはまずい」と、せめて結果を見て判断する目を持ちたいものだが・・それも無いとなれば、人は何をもって生を、行動を肯定するのだろう。快楽か。
事実としてはこの10年の間に安倍政権が倫理も規範も法律をも踏み散らしたという事がある。民主主義を返上しようが軍事独裁に走ろうが究極構わんが、ある状態が「良い」か「悪い」か、くらいは感じ取り、言える自分でありたい。

ロビー・ヒーロー
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2022/05/06 (金) ~ 2022/05/22 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
桑原女史が演出のみを手掛ける舞台、という関心で随分久々となる新国立を訊ねた。正直「外れ」も多い新国立プロデュースの舞台だが、唸った。
私たちは普段様々な問題が複雑に絡み合った時間を生きているが、本作ではその幾本もの糸が脚本の中の台詞という形で再現される。それらは問いを投げ掛けるが、(現実がそうであるように)言葉を与えるまでは本当にそこに何が横たわっているのか判らない、しかしそこに何か言葉を紡ぎ出さなきゃならない状況に個人は追いやられ、言葉が絞り出される。すなわち言葉とはその瞬間、その主体の未来へ向かう意思であり存在証明である、という事を痛切に思わされる。そしてまた言葉にならなかった領域の深さ、不確かさ、可能性は、人物の態度の「変化」の中に見え隠れする。
作者的には最後、「和解」の結末としたかったのだろうか...? だが次の瞬間何が起こり、それが人物の態度をどう「変えて」行くのかは未知である、との余白を残して芝居は一旦終える(人生もそのようなものだろう?)。その感じが自分にはフィットした。
桑原女史が起用された理由を知りたいが、自分的には大当たりである。

CUBE
劇団6番シード
シアターKASSAI【閉館】(東京都)
2022/05/19 (木) ~ 2022/05/29 (日)公演終了
映像鑑賞
満足度★★★★★
初日A公演を配信で見ました。文学的で、心にジーンとくるお話。かと思えば、どたばたな展開で進むお話とか、オ厶ニバスならではの楽しみが詰まった舞台です。
なんといっても、舞台上のキューブの存在。初めて見たのですが、キューブが色々な形に組み合わさるさまは、凄い。ストーリー展開と共に形を変えてゆく演出は、見ものです。
役者さんの凄さ、ひしひしと感じます。
次は、会場へ観に行きます。

舞台【それでも恋する世界線】
WITHYOU
赤坂RED/THEATER(東京都)
2022/05/18 (水) ~ 2022/05/22 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
主人公が選択しなくてはいけない場面で、観たい方を観客が選ぶという演出で、とても面白かったです。
4つのエピソードでしたが、それぞれの会話にリアル感があり、どんどん惹き込まれました。
選択後からラストまでが唐突かな?という印象はありましたが、どのエピソードも面白かったです。
役者さん達は、それぞれのキャラクターを熱演していて表情も良く、皆が魅力的でした。
楽しい時間を過ごせました!

歌劇『天守物語』
呼華歌劇団KOHANA
新宿村LIVE(東京都)
2022/05/18 (水) ~ 2022/05/22 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
そういや天守の妖怪さんらは
獅子頭以外は全て女性だったなぁ=歌劇に合うのも~♪
って思えたさ(^-^)
(実りのある秋に因果のある名を持つ方々なんですよね)
舞台セットは想像したものよりも
派手さは無かったが=出演者さんらが豪勢でした!!
うーむ凄かった=話もポンポンと進んで
理解しやすかったし
楽しさも怖さもあったなぁと大満足の2時間20分
休憩なしの作品です
中途 撮影タイムがあるので
サービスも満点ですねぇ~♪
ただねぇ
高齢な客層でもあり
劇中に私語をされてるのは・・よくないなぁ と
コービット19さんの件もあり
呼気をばら撒く行為は控えて欲しかったデス

絶対に怒ってはいけない!?
劇団チャリT企画
駅前劇場(東京都)
2022/05/18 (水) ~ 2022/05/22 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
絶対に起こってはいけない!
演劇とは人を観るものでありこーあるべきの一言でした
中途半端に見せてたオチの暗転カットが怖かったです
お薦め

SHOWほど素敵なショーバイはない!
劇団娯楽天国
ザ・ポケット(東京都)
2022/05/18 (水) ~ 2022/05/22 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
劇中劇が「シェイクスピア」だったのを「忠臣蔵」に変更。それがまぜこぜ。「ロメオとハムレット、そして忠臣蔵」そして山場では「メモリー」(ミュージカル『キャッツ』より)。ドタバタ喜劇なのですが、それを真面目に取り組んでいる俳優陣の姿勢が良い。若い女性も多く、ここのファンはとても温かい。そんな印象でした。

SHOWほど素敵なショーバイはない!
劇団娯楽天国
ザ・ポケット(東京都)
2022/05/18 (水) ~ 2022/05/22 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
追記は後ほどするが必見作品。観るベシ! 華5つ☆
「The Show Must Go On」を地で行ったような作品。実際にこの2年強というもの、多くの劇団がCovid-19の影響で公演中止、延期を余儀なくされ、資金的にも、インセンティブとしても大きな而も大変な苦労をしてきた。にも拘わらずというよりだからこそ、今作のような素晴らしい作品が生まれたと言えよう。観客を力づけてくれる作品なのだが厭らしさ、わざとらしさが微塵も無い。これは凄いことである。劇団員全員、登場する役者や作・演、無論道具方や制作の方々、照明さん、音響さん総ての方々が総力を結集し多くの苦労・苦悩を乗り越えてきたからこそのこの素晴らしい上演なのである。追記2022.5.20

孤という毒
獏天
サンガイノリバティ(東京都)
2022/05/14 (土) ~ 2022/05/22 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
サンガイノリバティはそんなところにあったのね!!駅前から見えるのに全然気づきませんでした。
劇中部屋のカーテンを開けると下北沢の駅前風景が広がって、ビルの中にある事務所の臨場感が増しました。
「心の窓口」ココロエが部屋に貼ってあるのに、ほとんど守られていない榎戸さんでしたが、電話の向こうの相手に心を寄せて懸命に語っていました。現代社会のいろんな面が見えて考えさせられました。
それにしても離婚して娘に家出されて仕事も辞めた榎戸さん、カッコ良すぎません?(あくまでも見かけのことです)もっとうらぶれているかと思っていました。

こうもり
Vivid Opera Tokyo
座・高円寺2(東京都)
2022/05/18 (水) ~ 2022/05/19 (木)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
こうもりは数多く観ているが、「全編ほぼオリジナル日本語訳詞」でという大胆な試みで完全なるコメディ
抱腹絶倒でキャストの演技力も高く、音楽としてはいろいろ指摘したいところもあるが、それをすっ飛ばして舞台として高く評価できた

Ensemble
amipro
d-倉庫(東京都)
2021/12/08 (水) ~ 2021/12/12 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
5公演鑑賞。
舞台が発表され、あらすじ読んでから絶対好きそうな脚本だと感じていたが、実際観劇してwhy?what?をこれほどまでに考えさせられる舞台は久しぶりの感覚だったので、非常に観劇そのものを楽しむことが出来た舞台。
1回観ただけでは理解が出来ず、複数回観ても正直理解できない部分はあったものの、自分なりに台詞や登場人物について咀嚼し解釈していくことが楽しかった。
願わくばもう一度観劇したい舞台。

グリーン・マーダー・ケース×ビショップ・マーダー・ケース
Mo’xtra Produce
吉祥寺シアター(東京都)
2022/05/13 (金) ~ 2022/05/19 (木)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
「ビショップ・マーダー・ケース」も面白かったのではありますが、鍛治本サイモンに心を奪われてしまったので・・・。2本立てもいいですが、ぜひ鍛治本サイモンで「ビショップ・マーダー・ケース」の再演を。

アマネ†ギムナジウム オンステージ
ネルケプランニング
Mixalive TOKYO・Theater Mixa(東京都)
2022/04/22 (金) ~ 2022/05/15 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2022/05/15 (日) 12:00
チームプレッツェルのみ、7公演鑑賞。
原作の主人公を観客に見立て、話が進んでいく仕掛けが面白く、原作のキーマンであるキャラクターが舞台では登場せず、代わりに今回の舞台でメインとなる人形達がその役割を担っていたりと、原作をなぞるばかりでない演出が良かった。
またリピート客を集客するための取り組みが非常に目立つ舞台で、公演後のレヴューショー(団扇とペンライト持ち込みOK)と日替わりのミニコーナー(公演ごとに登場キャストが異なるショート企画)、来場ランダムグッズ配布、コラボカフェ等。
公演期間が長く、またWキャストということもあり、このロングランの中で劇場に来させる仕組みに乗っかり観劇することで、二重に楽しむことが出来た。
中堅所の俳優が少なく、新人が多いキャストの中、公演を重ねる毎に成長していく姿を見ることも、2.5舞台の醍醐味。
昨今の2.5次元舞台と呼ばれるものは多く溢れており、ただ観劇という消費するばかりの舞台が多い中で、単純に舞台を楽しむというシンプルな経験を体感させてくれた稀有な舞台だった。

グリーン・マーダー・ケース×ビショップ・マーダー・ケース
Mo’xtra Produce
吉祥寺シアター(東京都)
2022/05/13 (金) ~ 2022/05/19 (木)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
いま、ヴァン・ダインを舞台に乗せるとは随分大胆な企画だ。ミステリではすでに古典の名声を得ているが、それは創生期の本格ミステリ時代のことで百年も前。今はミステリも、時代も変わっている。「グリーン家」は再演だが、今回は、もう一つの名作{ビショップ」と合わせて相互公演だという。まるでヴァンダイン祭りだ。その「グリーン家」を見た。
「モクストラ」は初見の劇団なので、主宰の須貝英はどんな仕事を?をキャリアを見ると、早稲田キャラメル系。既に三十歳半ばを超えている。見ていて感心したものでは「オリエント殺人事件」のスタッフがある。
こういう名作を欧米戯曲をもとにしないで新しく作るのはかなり勇気もいるが、逆に思い切ってできるということもあるだろう。しかし、原作は、豪邸を舞台にした連続殺人事件の謎解きに論理をたてる本格ミステリである。
どうなることかと思って見に行ったが、驚いた。こちらの想像とは全く違った舞台だった。感想を列挙すると、
まず、名作・ヴァンダインの本格ミステリと言う原作の評価に物怖じしていない。
本格ミステリを、現代の舞台で面白く見せるにはどうすればいいかということに集中している。原作は、かなり複雑な人間関係の上に連続殺人が起きるのだが、その旧豪族家の大筋の遺産相続と殺人の順番などはほぼ原作を踏襲しているが、細かいトリックにはこだわらず大胆に話を盛っているところもあって後半の大捕り物などはオリジナルである。
いわゆる「ミステリ劇」(「罠」とか「スル―ス」とか)とも、「ゴシックホラー」(「黒衣の女」など)とも違う新しいタッチで、しいて言えば、2・5ディメンションに近い。
テンポが非常に速い。シーンも非常に多い。本格推理のまだるっこさがない。セリフも短い。人間関係の葛藤にはあまり時間を割かずに、犯罪の進行を明快に説明していく。古いグリーン家の豪邸の崩壊は小説でも見せ場の一つだが、そういうところもちゃんと舞台になっている。結構取れるところはちゃんと取っているのである。
舞台は、洋館の大部屋を思わせるプロセニアムで囲んだ部屋だけで、ちょっとした小道具を出したりスライド壁を使ったりすることはあるが、一場ですべてのシーンを処理する。今回の二演目はすべてキャストも変わるので、名探偵フィロヴァンスの役も演目で変わる。ほかの小劇場で見た俳優もいるから全部この劇団員ではないだろうが、演出は一貫している。こんなフィロ・ヴァンスではヴァンダインではないと言いそうな老年の客は始めから捨てているのか、女子大生らしい若い観客が多い。劇場ブッキングの都合だろうが、私が見た最終日の午前11時の回はさすがに七分の入りだったが。
いままでのヴァンダインでは連想できない舞台との出会いで、あれよあれよと見ているうちに2時間ほどの舞台を終わった。ミステリファンからも、ミステリ劇のファンからも異論は出てきそうな舞台(例えば、フィロヴァンスのキャラメル風の演技には古典的なミステリファンが拒絶反応を示しそうだが、そんなことは作った方は計算済みだろう)だったが、大いに刺激的ではあった。俳優は動きの速い舞台についていくのに大変だったろうが、なかでは看護婦役の大澤彩未は、この新しい舞台らしい役柄を巧みに演じていた。
本格ミステリには話は面白いものが多いのだが、トリックの細かさにとらわれていると舞台には載せにくい。とりあえずは2・5ディメンションのジャンルに「フーダニット」の道を切り拓いたことを評価したい。

旅と渓谷
スリーピルバーグス
永福町駅 屋上庭園 「ふくにわ」(東京都)
2022/05/16 (月) ~ 2022/05/22 (日)公演終了

グリーン・マーダー・ケース×ビショップ・マーダー・ケース
Mo’xtra Produce
吉祥寺シアター(東京都)
2022/05/13 (金) ~ 2022/05/19 (木)公演終了

顔晴
劇団ラパン雑貨ゝ
中野スタジオあくとれ(東京都)
2022/05/19 (木) ~ 2022/05/22 (日)公演終了