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グレーな十人の娘

グレーな十人の娘

劇団競泳水着

新宿シアタートップス(東京都)

2022/04/21 (木) ~ 2022/04/29 (金)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2022/04/23 (土) 13:00

とてもストーリーに引き込まれた。
ワンシチュエーションの舞台構成も面白かった。
登場人物も性格が良く表れていて良かった。

マがあく

マがあく

シラカン

STスポット(神奈川県)

2022/03/30 (水) ~ 2022/04/03 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★

鑑賞日2022/03/30 (水)

部屋をめぐる「ちょっと、変」な不条理劇

 ドミノが四方を囲んだ空間で、黄色いシャツを着た男が横になっている。どこからともなく人の声がする。「風呂が沸きました」。男はやおら起きあがり部屋の奥に姿を消す。客席後方から登場したスーツ姿の男は客席に向かい「ご来店ありがとうございます」と観劇上の注意を呼びかける。こうして『マがあく』は「ちょっと、変」な空気感を醸し出しながら幕を開ける。

ネタバレBOX


 蓑田空(岩田里都)は知り合いの藤家ゆり(村上さくら)を連れて契約したばかりだという部屋を訪れ、ビニールシートを広げてお茶会をはじめる。そこに不動産営業の勝村忠(大橋悠太)が内見を希望する森山奈央(高下七海)を連れて現れる。じつは空はこの部屋を契約しておらず、勝手に鍵を持ち出し入室していたのだ。当然勝村は抗議し藤家と奈央は戸惑うものの、空は「ここは私の部屋だ」とふてぶてしく主張する。騒動が大きくなり隣室から大家の丹野武蔵(神屋セブン)が諌めにくるが、なぜか4人に言いくるめられてしまう。

 しまいには風呂を終えた冒頭の男・太伏大器(干川耕平)が裸で出現、「ここは誰の部屋でもないから所有した」とおかしな主張をしてさらに場が混乱する。最終的にはなんと部屋が「(扉は)開かないよ」などと話しだし、この部屋から誰も出られなくなりーー作・演出の西岳はコロナ禍で外に出られなくなった体験をもとにこの悲喜劇を創作したという。

 私が面白いと感じたのは上述した幕開きを含めた空間設定や俳優たちの醸し出す空気の独特さである。「ガチャ」「ガラガラ」など扉を開ける音響効果に人間の声を当てていたり、客席後方から出入りする役者がまるでアヒルのように体を小さくしながら入退場していたり、部屋から出られない登場人物たちが暇を潰すために円陣を組みゲームをする場面の息のあった具合など、この劇団ならではの雰囲気を徹底させた点が面白いと感じた。

 一方で公権力に頼めばある程度解決しそうな事件を展開させる仕掛けが少ないため(「騒動になるから警察は呼びたくないでしょう」と勝村を諭す台詞はあったが)、設定そのものに違和感を覚えた。結果、私は劇のリアリティに馴染めず、場面が進むごとに台詞が空疎に響いてきた。当日パンフレットのあらすじに「部屋と悪をめぐるハートフルバイオレンスタイム」をあったため、ルイス・ブニュエル 『皆殺しの天使』ばりのものを期待した者としては肩透かしを食らった気持ちになった。

 また、不条理の象徴たる部屋の存在も含め、本作の登場人物たちは決定的な対決行為はせず、なんだかんだで仲がいい。コロナ禍があぶり出した人命にかかわる不穏さ、人間のダークな一面を感じるくだりがほしいと思った。
ひび割れの鼓動-hidden world code-

ひび割れの鼓動-hidden world code-

OrganWorks

シアタートラム(東京都)

2022/03/25 (金) ~ 2022/03/27 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

異なる才能が問う俳優・ダンサー論

ネタバレBOX


 大きな白布で覆われた正方形に近い舞台は客席に向かい角が向き、背景には10本の棒が配置されている。舞台奥から布をかぶった演者たちが現れ、ゆったりと歩き回りどこかへと消えていく。不可思議な空間から女(佐藤真弓)と男(薬丸翔)が出てきて要領を得ない会話を始める。いわく「私たちはいま、こうして歩いている、普通に。いまさらよちよち歩きはできない」「お酒でも飲まない限り」「そう、お酒でも飲まない限り。よちよち歩きだった頃を覚えている?」「シラフで生きていくにはきびしい世の中になってしまった」。

 二人は、立ったまま不規則に手足を動かしては止める動作を繰り返すもの(川合ロン、東海林靖志、高橋真帆、平原慎太郎、町田妙子、渡辺はるか)の回りを歩いている。やがて舞台上にいる全員で円陣を組み、あたかも民族舞踊のように軽やかに舞いながら手を叩いてリズムを刻み始める。これは主神デュオニソスに捧げられた合唱抒情詩「デュドゥランボス」。現代に諦観する言葉と古代への憧憬を表すかのような動きを交えた重層的な幕開けは、古代ギリシャ劇に着想を得たという『ひび割れの鼓動』の作品世界を端的に示した。

 本作は振付・構成・演出の平原慎太郎とテキスト・ドラマターグの前川知大の共同作業によって生まれた。第一の魅力はコンテンポラリーダンス界と現代演劇界の才能が生み出す独特な作品世界である。稽古はまず平原の振付をもとにダンサーたちと動きを決め、それを確認した前川がテキストを書き、それをもとに新たな場面を創作するという流れで進められたという(3月26日夜公演のアフタートークより)。OrganWorksの先鋭的かつ静謐な作品世界と平易な言葉で超現実を描く前川の劇作が、古代ギリシャ劇という要でうまく合わさったものだと感心した。

 先述の通り本作では俳優とダンサーが同じ舞台に上がっている。そのため互いの方法論の差異が浮かびあがってきたところもまた興味深いと感じた。正確だが無機的な印象のするダンサーの身体に対し、運動能力では劣るものの持ち味で優れているのが俳優の身体だということがよく分かった。台詞を伝えるための俳優の発声はダンサーたちが時折発する唸り声とは明らかに異質なものであった。俳優とダンサーがもう少し大胆に絡んだり、ダンサーが積極的に台詞を発したり、俳優が踊ったりしても面白いかもとは思ったが、互いの領域に対する敬意には好感を持った。

 全6章で構成される本作では、冒頭のいずこかを歩き回る男女の対話や、「彼はボクです」とドッペルゲンガーを見た男の告白、死者を感じる女が「この世界は死にあふれているが、死人は口なし」とランプ片手に闇を彷徨する様子などを経て、冒頭のデュドゥランボスへと回帰する。中盤、舞台下で転げ回るようにして回転するダンサーのムーブメントには手に汗握った。

 個々には面白い場面はあったし目論見は興味深いが、観終えたあと「私はいまなにを観たのか、ダンスか、それとも演劇か」とポカンとした気持ちになった。とはいえ平原が『HOMO』で描いた「人類最後の日」のようなスケールの大きさを感じる歴史観に満足を覚えた。
オロイカソング

オロイカソング

理性的な変人たち

アトリエ第Q藝術(東京都)

2022/03/23 (水) ~ 2022/03/27 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2022/03/25 (金)

三世代の女性が男性中心社会につきつけるもの

ネタバレBOX


 「根っこから切り離されているのにしぶとく生き延びて、ゆっくり萎びていく…うちの家の匂いです。祖母にも母にも私にも、染みついている匂い」

 切り花の匂いが苦手であるという理由について斉木結子(滝沢花野)はこのように語る。植物の品質管理の仕事をしている結子は、失踪した双子の姉・倫子(西岡未央)を探し、倫子の元ルームメイトであるライター兼カメラマンのルーシー・マグナム(万里紗)の元へ来ているのだ。気がつくと二人の回りには花瓶に生けられたたくさんの花々が置かれている。祖母が生きていた頃の実家の思い出をルーシーに語る結子が、我々観客にこれまでの来し方を披露していく。

 双子の母の弥生(佐藤千夏)は貿易会社で働きながら、介護施設で働く祖母のオト(梅村綾子)と一緒に子育てをしてきた。弥生は未婚の母であり子どもたちの父親からの認知は得られていない。そして弥生の実母は早逝しているため叔母にあたるオトに女手一人で育てられたという経緯がある。女性だけで支え合ってきた斉木家だが、倫子の失踪の原因たるトラウマティックな出来事が詳らかになるにつれ、ゆっくりとほころびが生じていきーー1970年代から2000年代にかけてたくましく生きる女性たちの姿が、男性中心社会へ鋭い問いをつきつける。

 私がまず感心したのは作劇の巧みさである。母子三世代の歴史劇にはリアリティが感じられた。たとえばカレーや味噌汁にウインナーを入れる家庭の習慣が、祖母にとっての「ごちそう」、母にとっての「憧れ」に由来し、背景に母子家庭の辛さやささやかな喜びが見え隠れするという描き方が秀逸だった。結子が倫子の失踪の原因を追うというミステリ仕立ての展開と、とかくシリアス一辺倒になりがちな題材をコメディ要素を混じえながら描いている点に親しみを覚えた。終盤にかけてやや詰め込み過ぎな感はあったものの、ここまで骨太の作品を編んだ鎌田エリカの手腕に唸った。ただ一点、さぞ切り詰めているだろうと思われるわりに家計の話があまり出てこなかった点は気になった。

 戯曲に応えるかたちで生田みゆきの演出も手が込んでいる。当初は明晰な台詞と音響効果の写術性(蝉の鳴き声や蛇口をひねる音など)が目につく印象だったが、次第に軽やかな身体性や時間軸の大胆な飛躍など、演出のトーンが目まぐるしく変転していった。しかも周到に計算されている。先述したウインナーの世代間比較であるとか、テレビアニメ「サザエさん」を観ながら自分たちの家族について考えを巡らす90年代の双子姉妹と、70年代のオト・弥生母子の家族観の差異を、同時に舞台上に上げながら展開させていた場面はうまいと感じた。極めつけは中盤、倫子がインターネットで性暴力被害支援のNPOに出合い、その思想に共感して胸高ぶる様子をショー仕立てで描いた場面は忘れがたい。性暴力被害者が世間のいわれなき偏見に立ち向かう様を、黒づくめの「怪物」とキラキラしたコスチュームの「戦士たち」の対決として戯画化した点に度肝を抜かれた。

 作劇・演出が設定した高いハードルに対して俳優陣は大健闘したと言えるだろう。袖のないアトリエ第Q藝術の構造上、一杯飾りのなか2時間出ずっぱりで、時間軸が入れ替わるごとに異なる年齢を演じ分ける必要もある。にもかかわらず場面ごとの切り替えが達者でグイグイ物語の世界に引っ張られたのである。ちいさな空間のため大仰に見える動作や台詞の音量をもう少し抑えたほうがいいようにも感じたが、作品にかける強い意気込みは伝わってきた。特に倫子を演じた西岡未央は、快活を装ってはいるものの徐々に精神のバランスを崩していく様子を、表情豊かに高い身体能力で演じきって圧巻であった。七歳のときに受けた傷を結子にだけ打ち明ける様子や、初体験を終えて高ぶる感情をジャンプしながら全身で表現したくだり、真実が明るみになり感情を洗いざらいぶちまける場面など、さまざまな魅力を見せてくれた。

 終盤、オトの故郷である天草の海辺で、ようやく結子は倫子に再会する。倫子は「この場所で/私は歌う/オロイカの歌」(「オロイカ」は天草の方言で「疵物」の意)と謳い上げる。そして倫子が離れオトを亡くした弥生は、花を育てたいと結子に相談する。バラバラになった家族それぞれの再生に向けた取り組みは、映画『ショーシャンクの空に』のラストシーンのような幻の光景なのかもしれない。しかしこの詩情豊かな幕切れが目に焼き付いた。
不思議の国のアリス

不思議の国のアリス

壱劇屋

門真市民文化会館ルミエールホール・小ホール(大阪府)

2022/03/24 (木) ~ 2022/03/25 (金)公演終了

実演鑑賞

満足度★★

アンサンブルの妙が際立つSF版『不思議の国のアリス』

ネタバレBOX


 スズムシの音が鳴り響く夜半、ひとりの女(谷美歩)がウサギ頭の人物と出会う。やがて不可思議な五つの生命体(大熊隆太郎、北脇勇人、半田慈登、湯浅春枝、吉迫綺音)が女を取り囲む。シルバーのコートに宇宙飛行士を想起させるヘルメットをまとった五体は、原色が際立つ照明変化とビート音で激しく上下に体を揺らす。冒頭の静謐な幕開けと対照的なサイケデリックな導入が、私を物語の世界へ心地よく誘ってくれた。さながらSF版『不思議の国のアリス』の幕開けである。

 私が面白いと感じたのは出演者のアンサンブルがよく取れていた点である。冒頭で指摘した踊りもさることながら、中盤で複数名の演者が白紐を使ってあやとりのようにして図形を作り、そこを谷演じるアリスが戸惑いながらも通過していく様子が面白い。あたかも舞台上に別の空間を構築するようにして物語の行く末を示すその鮮やかな動き、脚色・演出・振付の大熊隆太郎を含め演者たちの手際の良さが印象的であった。

 しかしながらこの5人の存在が強すぎたことも事実である。特に前半、タイトなスーツで体の線を強調した衣装は目のやり場に困ってしまった。加えて体のキレの良さではなく表情で演じていた点が気にかかった。この5人が車座でアリスとコミュニケーションをとろうとする場面は、日常動作の身振りや手振りよりも顔の表情が強すぎた。結果体から湧き上がる情感ではなく表情の変化で場面を押し切ろうとしているように感じたのである。動きの面白さで不可思議な世界へ誘ってくれたらよかったのにと感じた。
透き間

透き間

サファリ・P

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2022/03/11 (金) ~ 2022/03/13 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2022/03/13 (日)

強靭な身体が問う血讐の是非

ネタバレBOX

 透き間風が吹く北の山岳地帯で一組の夫婦が陰鬱な空気に満ちた高地をさまよっている。この地域は血族が殺害された場合その一族の男性が復讐をしなければならない血讐(古代国家の形成過程で出現した復讐制度)が生きている。かき分ける草木やすれ違う馬にはまるで生気がない。

 1980年に発表されたアルバニアの作家イスマエル・カルダの小説『砕かれた四月』をもとに、上演台本・演出の山口茜が自身の生い立ちを反映させて劇化、2021年のプロトタイプ公演を経たうえでの上演である。

 外からこの地域に入ってきた夫妻の考え方は対照的である。妻(佐々木ヤス子)は当初この土地に関心を抱いていなかったが、偶然見かけた歩く人(達矢)に強く惹かれる。歩く人は殺人を犯しており、今度は自分が狙われる番になってしまった。妻は高地の住人である老いた人(高杉征司)に歩く人を助けてほしいと懇願するが、血讐の伝統を盾に頑と拒絶されてしまう。復讐の連鎖をなんとかして止めたいと考えた妻は、歩く人を探して村の塔へと向かう。そこには血讐から身を隠す人々が集っているのだ。

 いっぽう夫(大柴拓磨)は作家であり、この地域の血讐に強い関心を抱いている。いなくなった妻を探そうとするが、血讐を止めることはできないという態度である。むしろ「止めようとすることで反動が起き、私の小説が面白くなる可能性はある」と観察者としての立場を貫き通している。やがて妻と夫は別々に、戦争で負傷した寝たきりの人(芦谷康介)と出会い、そこから大きく物語が動いていくーー部外者である夫婦と血讐にとらわれる高地の人々の交流から、復讐の連鎖がなにを引き起こすかが浮かび上がっていく。

 本作第一の魅力は山口の紡ぎ出した言葉と出演者の強靭な身体の調和である。上演台本はもともとかなりの長編だったそうだが、刈り込んで凝縮させたそうだ(3月11日夜公演後に実施されたアフタートークより)。結果台詞から状況説明が省かれ暗喩に満ち噛み砕くことはなかなか困難であったが、その分言葉の密度が詰まっており味読する愉しみがあった。出演者たちは先に記した本役以外にも馬や草木、高地の人間などを複数役兼ね、マイムや激しいダンスシーンをこなすなど、さまざまな役割を演じ分けていかなければならない。ときには客席の前から姿を消して台詞を音読したり、ギリシャ悲劇のコロスのようにして群読するような場面もある。しかし発話しているときと動いているときのつなぎ方や切り替え方に違和感がなく、すっと物語の世界へいざなう手腕は大したものだと感心した。難解な台詞を演じ手たちが肚に落とし込んだうえで発していたのがよく分かった。

 演技スペースは東京芸術劇場シアターイーストの本舞台を取り払い、正方形の小舞台を16個ほぼ等間隔に配置したもので、高地の高低差を表したものと見受けた(舞台美術:夏目雅也)。出演者たちは床を四方八方歩き回り小舞台に上って演じるだけでなく、床を這った状態で客席から見える位置にまで脚や手を挙げたりして、草木や動物、死体(のように見える物体)を表現していて目まぐるしい。民間伝承や地縁といった土俗的な内容を、多彩な音楽やソリッドな照明で造形する、この対照的なアプローチの調和が耽美的と感じた。この感覚は小説『砕かれた四月』にはない視点だと私は思う。

 印象に残る場面は多いが、中盤で舞台上手から下手まで一列に並んで髪の毛をかきむしりながら怒号を上げ死者を嘆く人々の列や、冒頭と終盤で「人を殺した男に会いました」と告げる人と対峙する異形の怪物を4人の演者が重なり合いながら表現した場面が特に忘れがたい。

 いっぽうでこれだけ多彩な内容を1時間に凝縮させるにはあまりに惜しいと感じたことも事実である。観賞に際し極度の集中を要したことに加え、馴染み深いとは言い難い題材に作者個人の体験が反映されたという作品の成立ちに対し、敷居の高さや距離感を抱く観客もいたであろうことは想像できる。『砕かれた四月』の映画化である『ビハインド・ザ・サン』のような翻案をしてほしいとまでは言わないが、状況設定や台詞をもう少し具体的にしたほうがより作品に奥行きが出るのではと感じた。

 そして私が最後までわからなかったことは、血讐を止めたいと奔走する妻の行動である。彼女の選択が歩く人に救いをもたらしたのかは明示されず、彼女自身も血讐の連鎖のなかに飲み込まれてしまったような印象を受けた。ややもすれば近代主義者のエゴのようにも取れる彼女の行動について賛否は分かれることだろう。そして本編の終幕が何を意図しているのか私はまだ考えあぐねている。
 “Na”

“Na”

PANCETTA

「劇」小劇場(東京都)

2022/03/10 (木) ~ 2022/03/13 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2022/03/10 (木)

巧みな身体表現がかもしだす「かわいげのある不条理さ」

 「名前」をテーマにした7本の小編を、ピアノ(加藤亜祐美)とチェロ( 志賀千恵子)を伴い4人の演者(佐藤竜、はぎわら水雨子、山﨑千尋、一宮周平)が次々に演じ分けていく。2020年3月に上演予定だった作品の2年越しのリベンジ上演である。

ネタバレBOX

 本作第一の魅力は作劇の秀逸さである。作中では数や名詞、代名詞が導くミスコミュニケーションが巧みに表現されていた。それが顕著であった「Called "Sensei"」では、医者と弁護士、ダンススクールの講師がそれぞれを「先生」と呼び合うことで誰が誰を呼んでいるのか次第に混乱していく様子がコミカルに描かれていた。別役実の作品に出てくる、品詞の誤解でドラマを転がす手法で、大人から子どもまで楽しめる「かわいげのある不条理さ」とでもいうような作劇が脚本・演出の一宮周平の眼目だろう。

 定評のある身体表現の巧みさも本作の特徴である。「Ko・So・A・Do」では暗闇のなかさまよう二人の人物が電灯を片手にして闇を掻き分けていく。道中に出現する水の流れや焚き火の炎も演者が表現する。その手付きの鮮やかさ、仕草の丁寧さが目に焼き付いた。 

 ピアノとチェロの伴奏は作品に豊かな彩りを与えた。特に劇中音楽の曲名を観客に考えてもらうくだりでは、コロナ禍で絶えて久しい劇場の一体感を味わう貴重なひとときとなった。この場面を収めた一幕「No name」は、終盤で王様が家来に命じ恋文を認め、思いを寄せる他国の女性とやがて結ばれる「Number」と「Named」の連作の間に据えられほどよいブリッジであった。

 他方で芝居のパートと身体表現のパートがうまく融合できておらず、ぶつ切りになってしまっている印象を受けた。観客に台詞をわかりやすく伝えようとする俳優としての身体と、人にも自然にもなれる変幻自在の身体を同じ舞台の上に上げた点が目論見なのかもしれないが、私は観ていて混乱を覚えた。また演者たちの巧みさには感心したが、作品が変わると前作とはまるで別人のようになる変身の驚きを感じるまでには至らなかった点は残念であった。

 また作者の生真面目さゆえなのなかもしれないが、各エピソードをきれいにまとめようとしすぎていると感じた。登場人物たちが皆いいひと過ぎて食傷気味になったのも正直なところである。「Become a King」で必ず王様になる男の図太さ、「Blue Goat」でみんなから疎まれる青ヤギの鬱屈さといった側面をもう少し深く掘り下げたほうがドラマに厚みが出てくると感じた。
電鉄

電鉄

第2劇場

大阪大学(豊中キャンパス)(大阪府)

2022/04/23 (土) ~ 2022/04/24 (日)公演終了

満足度★★★★

引かれたレールをどうするのかは、自分次第。そもそも引かれたレールなんて有るのかも…。気がついた本人はどんな行動をとるのか…😒
予約客が来ないので上演を送らせたが、結局来なかった。時間どおりにお願いしたい。制作も大変だと思うけど…😢

ミュージカル「弥生、三月 -君を愛した30年-」

ミュージカル「弥生、三月 -君を愛した30年-」

エイベックス・エンタテインメント/クオーレ

サンシャイン劇場(東京都)

2022/04/21 (木) ~ 2022/04/24 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

映画は未見ですが、このミュージカル版はシンプルできちんとした出来で、グッときましたね。

無人有人

無人有人

劇団ちゃうかちゃわん

大阪大学(豊中キャンパス)(大阪府)

2022/04/21 (木) ~ 2022/04/23 (土)公演終了

満足度★★★

オムニバス。今回はらしさが出ていなかった気がする。らしさとは、主張したいことがあるなかで、笑いとダンスを融合させる感があるのだが、出しきれていなかったような…。人間は誰しも一人でないのだが…😓 

水の中の狸

水の中の狸

ツツシニウム

バルスタジオ(東京都)

2022/04/20 (水) ~ 2022/04/24 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★


 若い人達の公演なので、脚本の質を高め、また自分達お作品の質を上げる為の勉強の成果が多くの引用となって脚本中に挿入されているが、こういった作業を通して段々本質や普遍性を獲得してゆくものだし、今作の作品創りそのものが普遍性を目指して努力していることも明らかなので好感を持った。役者陣の力演もグー。(追記2022.4.24 )華4つ☆

ネタバレBOX

 お伽噺の「かちかち山」をベースにした作品で兎は思春期の若い♀に、狸は原作通りの畑荒らしの食いしん坊。太宰の解釈を援用しながらワークショップの卒製として上演された。未通女の高慢・傲慢と残酷性を強調した作品となっている。板上はフラット。各壁面天井部から紐を束ねた長短のオブジェがぶら下がっている。板表面には逆三角形の手前側頂点に接する線分が一直線に引かれている。演技で気に入ったのが、他の演劇部から移って来た姉弟役の2人、狸役、そして涼介役。
ムーランルージュ

ムーランルージュ

ことのはbox

萬劇場(東京都)

2022/04/20 (水) ~ 2022/04/24 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

斎藤憐の80年代後半に発表された戯曲。「ムーラン・ルージュ」とはフランス語で「赤い風車」を意味する。19世紀末パリに誕生したキャバレーでフレンチカンカンなど扇情的なショーで大人気となった。今作の「ムーランルージュ」は「ムーラン・ルージュ新宿座」のことで、戦前から戦後まで存在した大衆劇場のこと。

戦後、廃墟と瓦礫の焼跡の中で「ムーランルージュ」は再建される。幕が開けば橋本愛奈さんのレヴュー。流石に歌が上手い。オーナーの青山雅士氏は彼女を口説き続けている。
そこにニューギニアで戦死した筈の彼女の旦那である松浦慎太郎氏が生環。彼は座付きの構成作家であった・・・。長身で端正な顔立ちの松浦慎太郎氏はいずれ映像方面で成功することだろう。

戦時中は内務省や警視庁の検閲で何度も上演不許可を受け、戦後もGHQの検閲で何度も書き直しさせられる台本。レヴュー一座の群像劇でありつつ、敗戦直後の日本人が共有していた気分が見事に醸成されていく。

米兵達にレイプされていたところを救われる石森咲妃さん。
GHQの検閲官である日系人を怪演した如月せいいちろー氏。
必ずねづっちのようななぞかけで事態を比喩するベテラン大道具役佐野眞一氏の名演。
空襲で亡くした赤子の亡霊と共に生きる篠田美沙子さん。
役者陣は皆魅力的で各々見せ場がある。

阿佐田哲也の『麻雀放浪記』なんかを思い出す、捨て鉢でニヒルな魂の抜け殻、アプレゲールの無頼派。生と死、恋と嫉妬、アメリカと日本。アメリカに敗戦し占領された現実から目を逸らし、悪い軍部から解放して貰い救われた善良な民衆の振りをする日本人の変わり身の早さ。大勢に迎合することを美徳とした全体主義。太宰治の懊悩。「愛する者を食べさせてやること以上に価値のあることはない。」との真理。

歌われる楽曲のセンスが良く、1933年のアメリカのヒット曲、『イッツ・オンリー・ア・ペーパームーン』が作品のキーとなる。
「これはただの紙の月
段ボールの海に浮かぶだけ
でも君が信じてくれたなら
それは本物にだってなれる」

ネタバレBOX

第一幕は東宝調、第二幕では一座に拾って貰った石森咲妃さんが見事な歌い手に開花、日活調で堂々と歌い上げる幕開けが見事。
ホンの完成度が高く、これを岡本喜八や深作欣二なんかのジャズのリズムで細かくカットを刻める監督が映画化したら傑作になっただろう。ちょっと今回の演出では力不足の感も。複数の登場人物達のエピソードがうねりを打って、ラストのレヴューに集約されていく。薬で狂い滅び朽ちていく松浦慎太郎氏。皆、袖で彼の苦悶を心配しつつも幕は上がる。ショーは始まり、彼女達は笑顔で踊り出す。
ムーランルージュ

ムーランルージュ

ことのはbox

萬劇場(東京都)

2022/04/20 (水) ~ 2022/04/24 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

歌、ダンスありの華やかな舞台と裏側のそれぞれの事情や、悩みの対比を楽しめた。
個人的にちょうどいい感じでのところで休憩をはさんでの二時間半で助かりました。
休憩なしの場合は、一時間半前後だとありがたい。
日系アメリカ人役の役者さん、かたことの日本語大変でしたね。
本当に日系人ぽくて、インパクトアリで印象に残った。
ひとりひとり、役者さんの個性がよく表現されていて、良いお芝居でした。

秘密

秘密

劇団普通

インディペンデントシアターOji(東京都)

2022/04/20 (水) ~ 2022/04/24 (日)公演終了

実演鑑賞

鑑賞日2022/04/21 (木) 19:00

この劇団は2作目。いたたまれない気分になってしまう115分。
 老いた母が入院したということで東京から戻った娘。父と同居しつつ、母を見舞ったり広い庭を片付けたりするが…、の物語を、淡々と丁寧に描く。冒頭で、同じ言葉が何回も繰り返されるのを観て、あー私はこの展開が苦手だったんだ、と思い出す。老境に達した父と母を用松亮と堤千穂が、実にリアルに描く。作る側は意図していないと思うが、客席から老いることを嘲笑するような笑いが出て、個人的に痛々しくて、生まれて初めて途中で退席しようかと思ったが席の関係でできなかった。隣席の客がマスクを下ろして大声で笑うのもちょっと…。事前に徹底したアナウンスを希望したい。

ムーランルージュ

ムーランルージュ

ことのはbox

萬劇場(東京都)

2022/04/20 (水) ~ 2022/04/24 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

斎藤憐のムーランルージュを初めて観劇。上海バンスキングと同じ匂いが感じられ,とても懐かしく楽しむことができた。ことのはの演技も益々洗練されてきたようで,感心しながら観劇できる。休憩をはさんで2時間半の舞台ではあるが,集中が切れることなく,満足の観劇時間であった。

ムーランルージュ

ムーランルージュ

ことのはbox

萬劇場(東京都)

2022/04/20 (水) ~ 2022/04/24 (日)公演終了

実演鑑賞

良い舞台だったと思います。

板の上の二人と三人そして一人

板の上の二人と三人そして一人

映像劇団テンアンツ

小劇場B1(東京都)

2022/04/22 (金) ~ 2022/05/05 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2022/04/22 (金) 18:00

 かつての人気漫才コンビ「ナマセン・ヤキセン」は相方の悪口を公の場で言った芸人に暴行を加えたことから、そのトラブルから解散。「ナマセン」こと矢澤洸介は家賃滞納・求職中と落ちぶれ,一方の「ヤキセン」こと野島友作はTVで人気爆発……住む世界が対照的に違ってしまった。そんな或る日,友作は洸介の元を訪ね“コンビ復活”の話を持ちかける。
 人気女性漫才コンビ「ナインティワン」のメグミとミカは,かつての“もう一人のメンバー”チーコが交通事故で瀕死の重症である知らせを受ける。
 コンビ別れした、かつての人気漫才師、トリオからコンビになった女性漫才師、ワケありの2組の元に、何故か天使が舞い降りてという、全然性別も含めて違う2組の芸人に焦点を当て、それを主軸に物語が同時進行で進んでいく。かつての相方の野島友作は実は、心臓病を患っており、医師からは、無理をしてはいけないと言われ、そういった事情を知らなかった矢澤洸介は野島を突き放し、やさぐれきった自分を自嘲し、素直になれなかったが、そういった事情を奥さんから知り、野島の最後の晴れ舞台のために人肌脱ぐことを決意するといった劇の展開に涙し、その後野島が心臓病で亡くなり、しかし野島の亡くなる間際に幽体となって矢澤に約束させたことを矢澤は守り、50年間野島が近くにいるつもりで、ピン芸人を続けてきて、50年ライブを演る際に野島が上級天使となって、天から舞い降り、ボケ、ツッコミを演るシーンで終わっていく、その終わり方に感動した。

 劇団主宰者兼演出家、劇作家であり、前説も担当する主役の上西雄大さんの、的確なツッコミ芸や、自虐ネタ、ボヤキ笑い、顔芸、執拗で鋭い客席イジリと、止めども無く終始大笑いさせ、シリアスな場面や、感動場面もありつつ、そういう渦中にさえ、笑える場面が展開したりして、観ていて飽きるどころか、大笑いし、時に感動し、いつの間にか劇世界に没入し、観客の心を鷲掴みにするのが上手いと感じ、これぞプロの俳優だと感じた。

 チャップリンをパロったスベりネタや、加藤茶の笑いを演るスベりネタ、大家さんのお母さんによる、トンチンカンな勘違いネタ、フレディ·マーキュリーをパロったネタや、山口百恵ネタに、仮面ライダーV3ネタなどの特撮ネタ、体型や容姿いじり、しつこいドタバタギャグなど、コアなものから分かりやすいネタまで、俳優たちが役になりきり、それでいて、主役や主役級さえ喰いかねないほど、存在感を発揮していて、常に笑わせられ、さらに3時間弱の長い芝居なのに、役者個人個人が息切れしたり、声が枯れたりすることなく、台詞を喋り、時にまくし立てたり、強弱をつけたりして、落ち込んだり、葛藤する場面さえ見事に演じきり、こちらの心を引きつけ、舞台のそれぞれの役者に釘付けにさせられ、脇役含め、役者一人ひとりに舞台俳優としての才能を感じた。

 
 ドSな女性の上級天使を演じた役者の古川藍さんは、スリッパで、かなり本気で相手の顔や腹を思いっきり引っ叩いたり、そんなに手加減しているようには見えない平手打ちをしたり、強気な関西弁で口汚く相手をボロクソに罵ったり、タンカを切ったりと、肉体全身を使ったアクロバティックで過激な体当たりな熱演に、他の俳優も男女を問わず、かなり演技が上手く、存在感を放っていたが、その中でも古川藍さんは尋常じゃない存在感を放ち、主役をもある意味凌駕した存在感を出していて、演技の極め方が徹底していて、これぞ、俳優の鏡、何千年、いや何万年に一度かも知れない、俳優の中でも優れた逸材だと感じ、自然に備わった古川藍さん自身の天賦の才を感じた。

秘密

秘密

劇団普通

インディペンデントシアターOji(東京都)

2022/04/20 (水) ~ 2022/04/24 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2022/04/22 (金) 19:00

120分。休憩なし。

安心して狂いなさい

安心して狂いなさい

中野坂上デーモンズ

北とぴあ ペガサスホール(東京都)

2022/04/17 (日) ~ 2022/04/24 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2022/04/22 (金) 14:00

100分。休憩なし。

かえりにち

かえりにち

ゴジゲン

ザ・スズナリ(東京都)

2022/04/20 (水) ~ 2022/04/29 (金)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2022/04/21 (木) 14:00

90分。休憩なし。

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