評決 The Verdict 公演情報 劇団昴「評決 The Verdict」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2022/09/01 (木) 14:00

    座席1階

    米国のベストセラー小説。映画化もされた名作だ。今回、劇団昴がなぜこの作品に取り組んだのかはパンフレットにも書いてなく不明だが、2幕物の長編でも飽きることなく舞台を楽しめる。

    特に、演出がよかった。主役の弁護士ギャルビンの事務所、彼が通うバー、裁判が起こされることになった原因である医療事故の場面(病院)、そして法廷。これらの場面転換が舞台の各所で切れることなくつながっていくのはテンポがよくて舞台が引き締まった。
    ただ、法廷には陪審員の姿はなく、最後の評決はどういう形で描かれるのだろうと思っていたら…。これはネタバレになるので書かないが、ちょっと意外なスタイルだった。

    大病院、実績のある著名な医師たち、病院お抱えの敏腕弁護士。医療事故裁判は日本でも多いが、患者・家族がこうしたヒエラルヒーの権化に立ち向かうのは容易ではない。証拠になる医療情報はこれまで、ほとんどが患者側に開示されなかった。現在は法整備も進んではきたものの、患者側が「いったい何が起きたのか。どうして最愛の家族は死ななければならなかったのか」という真実を知りたいという思いに応えられるシステムは整っていないし、ましてや裁判になれば病院側は都合の悪い事実や証拠は隠してしまうのが通例だ。

    主人公のギャルビンは、簡単に示談金を引っ張ってそのご相伴にあずかることができる事件を選んで糊口をしのいでいるようなダメダメ弁護士だった。だが、彼が一転して患者のために真実を追求する姿勢に変わり、圧倒的に不利な状況を跳ね返していく物語はある意味で勧善懲悪でもあり、分かりやすいと言える。

    面白かったのは、裁判長の訴訟指揮が訴えられた病院側べったりだということだ。日本ではここまであからさまな訴訟指揮はないだろうと思っていたら、最近でも訴訟指揮が国側とべったりだとして裁判官忌避を申し立てられた国賠訴訟もあった。被告が国だと、国側と裁判所が同一視されるような裁判は、安保法制や辺野古の訴訟など考えてみれば多い。権威にすり寄る司法というのは、どこの国でも同じだというのはこの舞台が示した教訓だと思う。

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