
毛皮のヴィーナス
世田谷パブリックシアター
シアタートラム(東京都)
2022/08/20 (土) ~ 2022/09/04 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
二人芝居。内容にも拠るが全編ダイアローグで成立する二人芝居を泳ぎ切るだけでアスリートに送る声援と同じ種類の拍手を送りたくなる。一人芝居にも感服するが、二人の方が不確定要素が混じり(いや厳密には一人芝居もそうなのかも知れぬが)、正しくライブ。取り組み甲斐のある題材を剛腕という印象の溝端淳平、ミューズの高岡早紀がポテンシャルぎりぎりを出し切る激しさで好演。戯曲はマゾッホ作品を脚本化した青年が(他に演出できる者がいないという理由で)演出をするオーディションに、遅れて入ってきた女優とのやり取りである。
劇中の戯曲の場面を演じる役者としての二人、素に戻ったときの二人、を行き来するが、「役を変わって」と言われて逆の役をやる場面もあって、人格としては一つなのだが、憑依する演技によって、素の自分(たち)にその影響を及ぼし、二人の関係性をも侵食して行く事で「今誰なのか」が必ずしも判別できなくなる様相。他者を演じることはそこに自分を見出す事でもあるが、この戯曲は眠れるマゾッホ性を見出していく二人という「変化」により、この戯曲総体としてマゾッホ文学=常識の解体(の危険性?)が図られている。ある性嗜好の発見・理解から人間の本質に迫るアプローチと言えるか。対等でなく主従の関係を求め、服従する事に快感を覚える背徳性(「服従するに値する」相手が現われなければ実現しないが)は、人権思想の否定に繋がりそうなタブーな世界観だが、どの時代にもタブー領域は先見性とも言える。(これと似た物として思い出すのは、「人間とは忘却によって辛うじて救われている」、と述べた思想家が居たが、これは「歴史を忘れてはならない」という正論に土砂を掛ける手強い論理である。)
この視点に即して、今舞台では戯曲が何を狙ったのか、というあたりが必ずしも見えて来なかったが、スリリングで楽しく、演技としては指定されている動き(例えば帰ろうとして帰らずに戻る等)を十二分に正当化し、臨場感ある流れを作る様は見ていて気持ちよく、ノリで行くタイプが高岡、計算しているのが溝端、という印象ではあった。
「貴婦人の来訪」で実力を見た五戸演出の、こちらも成功作となった。

銀河鉄道の夜
東京演劇アンサンブル
池袋西口公園野外劇場 グローバルリング シアター(東京都)
2022/08/26 (金) ~ 2022/08/28 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
池袋西口広場、以前はどんな場所だったっけ・・・変ってしまうと中々思い出せないが、かつてここは秋季開催の演劇祭FTトーキョーの会場になる事もあり、忘れもせぬインドネシアのグループが竹で組んだ巨大な「船」で行なった無言のパフォーマンス、その後、広場の奥側に作られた恒常的なステージ(今もある)に組んだ客席から、広場を縁の方まで広く使った豪州だったかの障害者と作るグループ(昼日中飄々としたパフォーマンスが微笑ましかった)、そして今年何年目かの「東京演劇祭」の初年、野外劇「三文オペラ」等等。
野外劇と言えば「夏」、のセオリーに則り、今回は東京演劇アンサンブルの往年のレパートリーが装い新たに出現した。
広場奥の常設ステージには盆に乗った岩場(客が乗る=銀河鉄道を表す)から、後部座席辺の円形の台まで一直線に道が延びる(高さは70cm位か)。広い空の下、会場自体が物語のスケール感に相応しい「装置」となっている。ジョバンニは学校からの帰り道、草の上に寝ていていつしか「銀河鉄道」に乗っている。ジョバンニの日常のこと、すなわち、カムパネルラやザネリ、父のこと、牛乳を取りに行く事などは道中、あるいはラスト、最小限の台詞で説明される。物語の大部分はカムパネルラと銀河の旅程で見る様々な不思議な場面だ。
「歴史の歴史を掘る」博士、鳥を採って押し葉にする鳥獲り、人間界からやって来た船舶事故で溺れた姉弟とその家庭教師のお話、赤く燃えるサソリの話・・。新演出としてはサソリが炎のように踊る踊りは以前見たのと振りが変わっていて、見ると振付に三東瑠璃の名前。そして出色は、スペーシックなイメージの映像が新たに加わって場面転換で流れる。これが何とnibrollの高橋氏によるもの。
一度は長い上演期間を経て終了したアンサンブルの「銀河」、今回はこの会場仕様の誂えという事かも知れないが、一度も洗った事のない寸胴に入ったソースが、新しい素材を加える事で常に新鮮に(作品の本質を変えず)蘇ることを改めて発見できた。

帰還不能点(8/17~8/21)、短編連続上演(8/25・26)、ガマ(8/29~9/4)
劇団チョコレートケーキ
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2022/08/17 (水) ~ 2022/09/04 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
「ガマ」
戦争六篇の大千穐楽観劇(5篇観た、残る「帰還不能点」は昨年観劇)
本作に拍手、そしてこのような厳しい状況下、他の公演が軒並み中止に追い込まれる中、細心の注意を払って8月18日からの長丁場で六篇上演しきったことに大拍手
日本にとって沖縄とは何なのか?
いまだに続くこの重たい問いに正面から取り組みつつ、生きることがいかに困難で貴いものなのかを訴える
照明はランプだけでステージはずっと薄暗い
ガマの暗闇が表現される
キャストはみな表情が凄い
ランプの灯りがそれを増幅する
キャスティングも素晴らしいが、前半は相変わらず先生役の西尾さん上手いなと感じる
苦悶する表情が素晴らしい
後半圧倒されたのは大和田獏
うちなんちゅの老人役だが、うちなーぐち(良くは分からないものの感じとして)が完璧で、老人らしいある意味達観した飄々とした雰囲気を醸し出していた
そしてラストの白旗を掲げた清水さんを先頭に皆で歩き始めるシーン
大和田さんの挙げた両手の先は微妙に震えている!
最後尾の青木さんのまだ意を決しきれない表情も素晴らしい
紅一点の清水さんは皇民教育に染まった少女の決然とした態度を良く表していた
「帝国臣民」「聖戦貫徹」といった言葉が飛び出す
「私たち沖縄県民はどうやったら日本人になれるんですか」
「友達は皆日本人として立派に死んでいった」
などという台詞は心臓をえぐる
そんな彼女を(あるいは兵士たちも)生かそうとする先生と老人
それを後押しする少尉(岡本)
場内2時間余り物音ひとつしない
最後の老人の「命は宝だから」という言葉の重み
いつになったら「沖縄県民かく戦えり」は報われるのだろうか
いつも思うのだが、劇チョコの舞台の転換に用いられる重たい音楽は効果的だ
セットもシンプルだが効果的
トリプルコールになった
当然だろう
最後に退きかけたあとの二人の団員の肩を抱いて連れ戻して挨拶した西尾さんの顔は晴れ晴れとしていた

舞台「ドロシー」
ドロシー
草月ホール(東京都)
2022/08/31 (水) ~ 2022/09/09 (金)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
開演前、スポットライトでほんのり照らされた立派な舞台セットはセピア調に染まり「これからオズの魔法使いの大アドベンチャーが始まるよー」と言っているみたいだった。
いざ開演、ライトアップされると、目の前には全く異なる印象の光景が
え、騙されたっ!
いやいや、事前にあらすじに書いてあるし・・・そう、ここは廃墟となった遊園地の機械室
どうやら この「え、騙されたっ!」感が全体に張り巡らされた胆なのではないかと
素性を全く知らない者同士、呼び名は「オズの魔法使い」の登場人物、問題をクリアーする毎に垣間見えてくる素顔、案外良い奴かも、いや おかしいでしょ、やっぱり裏切り者が・・・
無邪気な笑いとブラックユーモアを交錯させながら謎解きを進めて行く銀行強盗犯たち。
あぁ、これは完全に「決して、結末は外で話さないでください」のやつ

『Q』:A Night At The Kabuki【7月29日~31日公演中止】
NODA・MAP
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2022/07/29 (金) ~ 2022/09/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
初演で2度見たので、3度目の観劇。それからのロミオ(上川隆也)が言う「戦争が終わった日に、戦争は終わらない」の科白が、今回は響いた。Queenの曲に三味線ヴァージョンがあったり、ラストにはボヘミアン・ラプソディのインスツルメンツ版が流れたり、相当この芝居のためにアレンジしてある。たいしたものである。

憫笑姫 -Binshouki-
壱劇屋
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2022/08/17 (水) ~ 2022/08/23 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2022/08/20 (土) 15:30
壱劇屋さんの作品を生で観たのはまだ三作品目ですが、こちらが1番好きです。
殺陣の迫力と俳優陣の感情表現、そして見る側への余白のバランス全てが見事でした。
あらすじはHPやTwitterアカウントで発表されているのでそこを踏まえた上で、細かな気持ちの流れ生い立ちなどを想像する楽しさと綿密に組まれた殺陣アクションの素晴らしく見応えありました。
私的には王と側近の関係性を想像して楽しんでいました。誰を軸に観るか!これも楽しみのひとつです♪(側近の熊倉さんの殺陣と色気がたまりませんでした!)

無名劇団第31回公演「プラズマ」
無名劇団
SPACE9(あべのハルカス近鉄本店ウイング館9階)(大阪府)
2019/07/12 (金) ~ 2019/07/15 (月)公演終了
映像鑑賞
満足度★★★★★
『プラズマ再臨』に際して、限定映像配信頂いた、前回の再演公演の映像を拝見!
実演(千秋楽)も拝見しましたが、映像で改めて拝見しても、やっぱり良かった!
今回の再臨とは一味違うテイストの、少しファンタジックな『プラズマ』を久しぶりに拝見できて、超~幸せ!
あ~、DVD買おうかな?(ずっと買おうと思ってましたが…)
あっ、でも今回の拝見できていない、正規版の東京公演のDVDを買おうかな?
超絶、悩ましい!
東京の皆様、私たち関西の人間もまだ未見の、来週の『プラズマ再臨』の正規版公演を是非、ご堪能ください。
おすすめです。

加担者
オフィスコットーネ
駅前劇場(東京都)
2022/08/26 (金) ~ 2022/09/05 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
デュレンマットの戯曲は政治的寓話劇である。硬派で政治的なドイツ演劇の系譜に位置すると言っていいだろう。本作で面白かったのは、ボス(外山誠二)の「インテリは自分も現実を生きているくせに、理想の国から批判する。罪を感じているのに、自分は無罪だと主張する」という、手厳しいインテリ批判。しかしそれは作者自身の姿でもある。絶世の美女アン(月船さらら)が、なぜ何の魅力も感じられないドク(小須田康人)を好きになるのか、それが説得力がないのが残念。
寓意や作者の世界観が前面に出て、すべてはそうあるように展開し、驚きや謎がない。ドラマより思想優先の作劇は、やたら独白(観客に直接語る独白。傍白ではない)が多いことにも表れている。そういえば、冒頭からドクの長い独白だった。独白、独白、独白。
主要登場人物の3人の名がドク、ボス、コップと役割から来たニックネームでしかないところにも、この作品の抽象的性格が表れている。「大統領は殺しても遺体は残す、「国葬」の楽しみを国民から奪わないため」というセリフはあるが、それが安倍元首相の国葬とリンクするから現代的というわけではないだろう。

SHINE SHOW!
アガリスクエンターテイメント
シアター・アルファ東京(東京都)
2022/08/31 (水) ~ 2022/09/04 (日)公演終了

みず色の空、そら色の水
Rising Generation’s Act
in→dependent theatre 2nd(大阪府)
2022/08/11 (木) ~ 2022/08/14 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
初回観劇。
別荘借りて夏合宿、「三人姉妹」の練習に励む高校演劇部。部内の不協和音が…
若手俳優が挑む、青春群像劇。
登場人物がアオハルなら、キャストもアオハル!
青春ですね。
とても眩しく爽やか(&チョビどろ)な公演、愉しかった。

『世別レ心中』『片生ひ百年』
ハコボレ
ウイングフィールド(大阪府)
2022/08/11 (木) ~ 2022/08/14 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
「片生ひ百年」初回観劇。
古典落語「紺屋高尾」を1席実演の後、この演目に取り憑かれた線香職人と○○のお話。
こちらも「鰍沢」に続き、吉原舞台に太夫·花魁が…
前田隆成さんの太夫は艶っぽくて好き。
一人芝居70分、堪能した。
次回は是非、大人数芝居が観たい!
ps.古典落語の方は焼酎亭さん含め、何度か拝見したことのある作品でしたが、色っぽい感じで楽しく拝見出来た。

『OH!Myゴ-スト』
東京ハイビーム
あうるすぽっと(東京都)
2022/08/31 (水) ~ 2022/09/04 (日)公演終了

『世別レ心中』『片生ひ百年』
ハコボレ
ウイングフィールド(大阪府)
2022/08/11 (木) ~ 2022/08/14 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
「世別レ心中」初回観劇。
古典落語「鰍沢」を1席実演の後、その前後、知られざる鰍沢の真実の物語を、一人芝居で展開。
前田隆成1人、喋りっぱなしの70分。
切ないお話だが、楽しかった。
旗揚も1人喋りっぱでしたね。
大阪にお帰りなさい!
「片生ひ百年」の紹介公演も観るよ!

迷帰路
劇団んけつ
ピッコロシアター 中ホール(兵庫県)
2022/08/10 (水) ~ 2022/08/10 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
1回こっきり、初演で千秋楽な、旗揚げ公演拝見!
JFK国際空港から、卒業旅行の帰途に着く筈の学生達は…
大ボケ、天然な、友たちに翻弄されるしっかり者·ガッチャンと、それを見て手を貸さないトミーの塩梅が、とても愉しかった。
これで無料(カンパ有)は有難い!
とても楽しく面白い公演、良かった。

異邦人の庭
O企画
小劇場 楽園(東京都)
2022/08/31 (水) ~ 2022/09/04 (日)公演終了

大豆生田家の庭に咲く花は薔薇かスミレか!
ライオン・パーマ
赤坂RED/THEATER(東京都)
2022/08/31 (水) ~ 2022/09/04 (日)公演終了

SHINE SHOW!
アガリスクエンターテイメント
シアター・アルファ東京(東京都)
2022/08/31 (水) ~ 2022/09/04 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2022/09/04 (日)
価格4,500円
4日17時開演の千穐楽の舞台を拝見(途中休憩5分込み152分)。
個人的には、過去作ほどには、自分の笑いのツボとのチューニングは上手くいかなかったが、ストーリー自体は、幾重にも張り巡らせた伏線を鮮やかに回収。そして、主演・熊谷有芳さんの予期せぬ見せ場をラストに用意するなど、実に綿密な構成の作品だった。

大豆生田家の庭に咲く花は薔薇かスミレか!
ライオン・パーマ
赤坂RED/THEATER(東京都)
2022/08/31 (水) ~ 2022/09/04 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
大豆生田一族。どの芝居かは忘れたけど,確かに観たことはある。そして今回,頭にしっかりと記憶されてしまった。なんて個性的でドラマチックで厄介な家族。この家族の「次」が気になるじゃないですか!すぐには出てこないでしょう。でも,絶対忘れない。こんなインパクトのある5人姉妹と両親と執事。楽しみにして待っています。金子優子さん,バッコス解散後は観ていなかったのですが,久々に観れて嬉しいです。また,赤坂レッドシアター,久しぶりでした。赤坂レッドシアターでライパを観ることが出来たなんて,とてもとても嬉しく楽しい観劇時間でした。

青春の会 父と暮せば 【東京公演】
ゴツプロ!
シアター711(東京都)
2022/08/31 (水) ~ 2022/09/04 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
原爆により今までの暮らしや人間関係が壊れていのが苦しい位伝わってきました。父と娘の強い結びつきガ良かったです。

『OH!Myゴ-スト』
東京ハイビーム
あうるすぽっと(東京都)
2022/08/31 (水) ~ 2022/09/04 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
ダンス部千秋楽を観劇。ストーリーも演者も舞台美術も衣装もいい!カーテンコールの演者の涙。ほんとーに大変だったんだなーって、もらいそうになった。上演してくれてほんとーに感謝しかない。