実演鑑賞
満足度★★★★★
池袋西口広場、以前はどんな場所だったっけ・・・変ってしまうと中々思い出せないが、かつてここは秋季開催の演劇祭FTトーキョーの会場になる事もあり、忘れもせぬインドネシアのグループが竹で組んだ巨大な「船」で行なった無言のパフォーマンス、その後、広場の奥側に作られた恒常的なステージ(今もある)に組んだ客席から、広場を縁の方まで広く使った豪州だったかの障害者と作るグループ(昼日中飄々としたパフォーマンスが微笑ましかった)、そして今年何年目かの「東京演劇祭」の初年、野外劇「三文オペラ」等等。
野外劇と言えば「夏」、のセオリーに則り、今回は東京演劇アンサンブルの往年のレパートリーが装い新たに出現した。
広場奥の常設ステージには盆に乗った岩場(客が乗る=銀河鉄道を表す)から、後部座席辺の円形の台まで一直線に道が延びる(高さは70cm位か)。広い空の下、会場自体が物語のスケール感に相応しい「装置」となっている。ジョバンニは学校からの帰り道、草の上に寝ていていつしか「銀河鉄道」に乗っている。ジョバンニの日常のこと、すなわち、カムパネルラやザネリ、父のこと、牛乳を取りに行く事などは道中、あるいはラスト、最小限の台詞で説明される。物語の大部分はカムパネルラと銀河の旅程で見る様々な不思議な場面だ。
「歴史の歴史を掘る」博士、鳥を採って押し葉にする鳥獲り、人間界からやって来た船舶事故で溺れた姉弟とその家庭教師のお話、赤く燃えるサソリの話・・。新演出としてはサソリが炎のように踊る踊りは以前見たのと振りが変わっていて、見ると振付に三東瑠璃の名前。そして出色は、スペーシックなイメージの映像が新たに加わって場面転換で流れる。これが何とnibrollの高橋氏によるもの。
一度は長い上演期間を経て終了したアンサンブルの「銀河」、今回はこの会場仕様の誂えという事かも知れないが、一度も洗った事のない寸胴に入ったソースが、新しい素材を加える事で常に新鮮に(作品の本質を変えず)蘇ることを改めて発見できた。