よしの観てきた!クチコミ一覧

121-140件 / 217件中
GHOST IN THE BOX!!

GHOST IN THE BOX!!

PEACE

上野ストアハウス(東京都)

2011/08/18 (木) ~ 2011/08/22 (月)公演終了

満足度★★★★★

1ネタで2度おいしい! 秀逸な構成に脱帽
後半のネタバレで紹介しますが、
構成がとても秀逸な作品。

ネタバレBOX

薄気味悪い建物の2階の部屋という設定で、
ここでまさに若い女性が男に刺殺されようというシーンから
始まる。女性の悲鳴が室内に響き渡る…。
ところがこれは、大学の映画サークルの撮影であった…(でもこれも伏線)
そして、他の者の乱入により撮影は中断
…ここに入ってきたのは生物学研究員の男女2名と、
廃墟好きな写真家(?)、それと、あまり売れない小説家。

そして、研究員から、この建物は戦時中、
人体実験が行われていたという噂があることが話される。
「ロケのため」「研究のため」「廃墟の撮影のため(?)」
「小説のネタ探しのため」と、ここに集まった目的は様々だが、
百物語を真似て、「怖い話」を語ろうということになる。
この辺まではホラー作品の様相…。

ところが、時々聞こえるのは、死霊の不気味な声なのか…?
そして、停電が起きて真っ暗になったり、人が姿を消し、
さらには不可解な方法で、次々に殺されていく……。
しかし、殺人犯は誰だか分からない。
犯人は外部の人間なのか、それとも集まったメンバーの誰かなのか?
この辺から、ホラー作品というよりは推理ドラマの様相となる。
最後まで残ったのは、最初の殺人シーンの女性と、
一度は死んだと思われた同じサークルの男性…。
そして、男がナイフを振り上げた所で暗転。ドラマは終わる…。

…と思ったら、どうも終わっていないようで、きちんと暗転もしないまま、
これまでの登場人物プラス別の人物(スタッフかと思った)が
舞台上を片付けている。
あれっ?1時間40分ほどの芝居と聞いていたが、
まだ1時間も経ってないし、2本立てのオムニバスだったかな?
なんて思ったり・・・。

そのうちに、次の芝居(?)が再開。
奥の部屋が無くなっていたり、掃除用具入れも無くなっていたり、若干は変わっているのだが、似たような部屋である。
先程の登場人物も時々出入りするが、しかし違う人物も多い。
この話は何なのだろうと思っていると、次第に分かってきたことは、
先程のホラー兼推理演劇は、「すべて映画の撮影」で、その撮影シーン中に、
大学の映画サークルが出てくるという入れ子作り…だったのである。
そして、今行われている芝居は、前半の出来事を、
今度は3階でのシ-ンとして繰り返しているのだ。
3階はこの映画撮影のスタッフが詰めている部屋で、脚本家、監督、助手、その他助手の友人等訳のわからない人々までなぜかいる。
そして2階で出番でない役者も、ここにやってくるのだ。
そして、前半ではホラー的雰囲気を醸し出していた
唸り声の正体が分かったり、
実は撮影の裏側ではとんでもないアクシデントが頻発していて、
それのフォローにスタッフやキャストが懸命に対処したり…。
つまり、後半は全く喜劇仕立てで、
前半の不可解な出来事のネタが分かったり、
ハプニングに必死に対応する様子に、
お客は大笑いしてしまうという趣向。
(詳しく書くと再演があった場合につまらなくなるので、
これ以上は書きません。)

このように、同じ話を、2階と3階の2つの出来事として示し、
前半はホラー、後半はお笑いと、全く正反対の性格で見せるという趣向で、
こういうやり方は観たことがなく、
とにかく、大変秀逸な構成である、と思った次第。

なお、全く余談ながら、初めての人には会場がやや分かりにくいので、
曲がり角のところでスタッフが立っていて案内してもらうと、
とてもありがたいのだが
(この日の前に観た劇団はしっかりやられていたので余計気になって)。
雨に紅花 (無事終演いたしました!)

雨に紅花 (無事終演いたしました!)

くロひげ

ギャラリーLE DECO(東京都)

2011/08/09 (火) ~ 2011/08/14 (日)公演終了

満足度★★

私には良さが分からなくて・・・
こちらもすでに公演の様子は書かれておりますが・・・

びっくりしたのは、初めは水を張ったプール(?)足を浸していただけ
だったのが、次第に、水の中で寝転がったり、横になったりし始めたこと。

となると、ずぶ濡れのはずなのだが、その割には起き上がっているときには、
さほどずぶ濡れ感はなかった。

ただ、私も、なぜこの演劇を、プール中で、
ずぶ濡れになってやる必要があるのか、正直理解できなかった。

ネタバレBOX

余談ですけど、服が濡れて、女優さんに密着するのは、
かなりセクシーなんですよね。
それを意図したのではないと思いますが・・・。
「熊」 「附子」

「熊」 「附子」

森崎事務所M&Oplays

国立能楽堂(東京都)

2011/08/11 (木) ~ 2011/08/12 (金)公演終了

満足度★★★★

伝統の持つ底力
すでに書かれているとおりで、チェーホフを狂言に翻案した「熊」と、
伝統狂言演目「附子」の2本立て。

それで、チェーホフもそこそこ面白かったのだが、
やはりちょっと語調が違うなとか、多少違和感を持ったのも確か。

それを明確に感じたのは、後半の「附子」が始まってすぐのこと。
やはりピタッと台詞が納まっている感じ。
何が「納まっている」かというと、台詞回し自体ももちろんのこと、
声の能楽堂内での響き、所作、筋の運びのテンポ・・・
まあ「全て」なのですよね。

もちろん、私自身、狂言はそれほど観てはいないわけで
(それでも多少は観ていますが)、
こんなことを言う資格はないのかもしれませんが。

もちろん、「新作」にチャレンジされることもとても結構ですし、
そのことを否定するつもりもありませんが、
ある意味、素晴らしい「伝統」を背負ったものほど、
「新作」作りは大変だなあ、と思った次第でした。

それから、「附子」に似た話では「棒縛り」があって、
こちらの方が視覚的にも面白いかな、と私は思いますし、
また、外国人にも人気のある演目と聞いています。

朗読劇"木を植えた男"~人形劇俳優 平常(たいら・じょう)による

朗読劇"木を植えた男"~人形劇俳優 平常(たいら・じょう)による

平常

東京都現代美術館 B2階講堂 (東京都)

2011/08/10 (水) ~ 2011/08/12 (金)公演終了

満足度★★★★★

素晴らしい人形遣いと朗読劇
説明にもあるとおり、東京都現代美術館の展覧会の特別イベントとして開催。

私は平常(たいらじょう)さんのことは知らなかったのですが、
子供向けのような人形を持って颯爽と登場。
この方は、朗読もやられるし、この日はそれがメインなのだが、
やはり「本業」ということで、初めに人形芝居を披露。

ところが、一人で操っているにもかかわらず、その動きは素晴らしい。

ちなみに、外国では人形劇は子供向け、なんて言うイメージを持たれていると、
何かで聞いたことがありますが、日本では「文楽」があって、
これは大人向けの立派な芸術・・・
でもこちらは基本的に1つの人形を3人で操るのですよね。
(3人で息を合わすのは別の意味で大変かもしれませんが)

ところが、平さんは、1人で操っているのですよね。
足は無いのだけど、両手に顔・頭部は動かせる。
人形の両手を人形遣いの右手1本で操作し、
人形遣いの左手で、頭部を支え、
かつ頭のてっぺんが開くようになっているので、
その操作もするという具合。

人形による寸劇もやられたのだが、
「お客さんの誰かにもやってもらいましょう」と言われ、
なぜか私が捕まってしまい、ステージ上へ…。

まあ「上手い上手い」なんて言ってもらえたけど、
右手1本で人形の両手をきれいに操るのはとても無理。
まあこれはご愛嬌ということで、笑いものになりました・・・。

さて、後半というかメインは、映像を見ながらの朗読劇。
この話も中々感動的で、自分の利害などお構いなしで、
山に木を植えて行った人の話。

お話自体と、平さんの朗読は良かったのだが、
ただ、映像については、特に初めはモノトーンに近いもので、
私的にはイメージが湧きにくかった。
それと、平さんはやっぱり人形を遣っているときの方が面白いかな?

なお、1時間ほどあったので無理すれば展覧会(チケットも頂けました)も、
観られたのですが、平さんのお話で「2~3時間かけてみる人が多い」と聞いたことと、
実はこの後、「チャイムが鳴り終わるとき」に行ったもので、
この日は展覧会は観ておりません。
先に観ていればまた印象が違ったかもしれません。

純真無垢のメカニズム

純真無垢のメカニズム

たすいち

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2011/08/20 (土) ~ 2011/08/22 (月)公演終了

満足度★★★★★

興味深く、しかし少々複雑な構成
12か月連続公演の第8回で、今回も8月にふさわしいテーマの作品だった。

前半は2つのシーンが交互に現れる。
1つは、夏休み最終日、高校で理科部の男子が同じ部員の女子に「告白」する場面。
しかし、あっさり振られる・・・。
ここには、他の2人の部員とのやり取りや、なぜか恋愛を勧めるちょっと変な女教師も登場。

もう1つは、交通事故で入院して、記憶喪失…となった女性と、
その父、妹、そして恋人の話。
父親は娘(妹)に対し、イマイチとんちんかんというかとぼけた返答が多い。
また、担当男性医師も、いつも首をかしげながら機械のようなしゃべり方をする人。

この一見全く関係の無い2つの話が交替して現れる。
ところが、場面転換時は、2つのシーンが一瞬重なり合い、完全に暗転しない、
ある種奇妙な場面転換である。
この意味は芝居が進行するにつれて明らかになって行く。

(以下ネタバレなので、これから観劇される方は、読まないことをお勧めする。
ただし、複雑な話が苦手という方はあるいは読まれても良いかも?)

ネタバレBOX

告白した男子生徒は「夏休みが繰り返しているような気がする」という。
そして、次に何が起こるか、対話の相手方が何を言うかも分かっている・・・という。

そして、女性教師、実は「感情を持つロボット」を研究開発している女性研究員の助手であった。
そして、同じ研究所で「2度同じ誤りを繰り返さないロボット」を作ろうとしているのは、
記憶喪失の少女の担当医師と思われた男性であった。
この男性の秘書役として、イマイチ出来の悪い女性ロボットがいる。
この2人の研究員はいまいち仲が悪い。

ここから別個の話だった2つが結合していく。
実は少女は記憶喪失ではなく、すでに死亡しており、
入院している少女は、父親に頼まれて作られたロボットだったのだ。
この父親と男性研究員も、かつては一緒に勉強をしていた仲間・・・
これで、父親が一見とぼけた返答をしていた理由が(一応)明らかになる。
そして、少女ロボットに感情を与えるため、
不仲の女性研究員の開発データを不正取得してしまう。

一方、告白をした男子生徒は、実は女性研究員の作ったロボットで、
恋愛という「感情」をうまく与えられないか、という研究であった
・・・だから繰り返す・・・
ここから、女性教師の「変な台詞」の理由も(一応)明らかになる。

不正取得が発覚し、2人の研究員が言い争うシーンから、
彼らの悲しい過去・・・実は高校生たちのシーンは研究員自身の過去の投影であり、
実際に合った過去の経験をデータ化したものだった
・・・ただし一部変更がなされている・・・それは悲しい経験から・・・

ということで、これ以上のネタバレは控えるが、
「人間とロボットとどれほど違うの・・・同じでは?」
「誤りを何度も繰り返すのは当たり前。
誤りを繰り返さないということ自体が誤り」
という問いかけは、観る者にも深く迫り、
あらためて人生とは、生きることとは、を考えさせる。

こういう(私には)複雑な構成を持った作品であるが、
内容としては深みを有する素晴らしいものであった。

ただ、気になった点をいくつか?
やはりこれだけ複雑な内容を有する作品であるがゆえの短所かもしれないが、
理屈が浮き出して見えてしまう嫌いは否めないこと。

それと、前述で「(一応)明らかになる」と2度書いたが、
本当にすべて明らかになったであろうか?
おそらく、高校生4人は全員ロボットと思われるが、
後の3人は人間臭さが強いように思われるし、
男性研究員や、女性教師(兼助手)なども、ロボットっぽい雰囲気がある。
(これは「人間とロボット」がどれだけ違うの」を受けたものなかもしれないが・・・)
また、死亡した少女の父親と、娘(妹)との感情の問題や、
2人の娘に対する父親の気持ちについての観客への説得性・・・
などなど、あるいは意図的にぼかしたのかもしれないが、
一方で複雑な構成を有しながら、
もう一方でぼかした部分がある、というのは、
見る側としてはすっきりしない気持ちになってしまう。

アフタートークで「脚本家が考えていた主人公は・・・・・・(これも内緒)」
という話があり、作る側が伝えようとしても伝わらないこと、
逆に観る側は、作る側の前提にある思いを知らずに、
いわば与えられた情報でのみ考え、
そして感じて行ってしまうことなど、
演劇のみならず芸術の有する難しさと面白さについても、
あらためて考えさせられた。

最後に小さい点だが、女性教師の衣装、ちょっと変えた方が良いような気がする。
私は最後列で観ていたが、一見彼女は生徒とも見えるような服装で、
お顔も何となく生徒っぽい。
一方(失礼ながら)告白を受ける生徒役の方が、
ちょっと大人びたお顔なんですよね。
(実年齢はアフタートークで聴きましたが・・・)
他の生徒以外の役は、それぞれの衣装を着けていたので、
教師役だけ紛らわしい衣装にしなくても良いのでは・・・ということ。

それから、音楽はちょっとうるさかったかな?
こういう話なのだが、ロック調で、
小さい会場で大きく音を出すもので・・・。

これまでお陰様で3本連続で観せて頂き、今回は4本目だが、
今回は3年前の再演(改変もかなりあり)で、
以上述べた点は、やはり若書きに起因(アフタートークより)するのかも
・・・という気もした。
で今回は本当は4.5P位ですが、まあ四捨五入で5Pにします。
Nazca -ナスカ-

Nazca -ナスカ-

劇団銀石

吉祥寺シアター(東京都)

2011/08/18 (木) ~ 2011/08/21 (日)公演終了

満足度★★★

沢山の素材を盛り込み過ぎでごった煮の感
すでに多くのユーザーに語られてしまっておりますが・・・

ナスカ、地球儀、宇宙、星座伝説、少年期ならではの空想癖、天文学、過去の天動説と地動説の対立、古き良き日本の家族・風景、セミ、病気の女の子、
赤紙による召集、戦争、特攻・・・、と、ある意味どれもが魅力的な素材だが、
あまりに盛り込み過ぎで、逆にどれもがかすんでしまった感。

特に、ナスカと言えば地上絵だが、たしかに舞台上にそれを思わせる線が
描かれていたり、あとでロープで線を描くシーンも出てくる。
しかしまあ、それだけで、かなりの上空から見ないと絵として見えない
ナスカの地上絵(もっともこの芝居ではそこまで言われていない)は、
宇宙に向けたもの…として、宇宙や星につながることを
否定するわけではないが、逆に宇宙を語るのなら、
ナスカを引き合いに出さなくても良いのでは、と思える。

さらに、この芝居の舞台は日本なの?ナスカなの?…というのも疑問。
(天動説との論争でヨーロッパも出てくるが。)

日本風景やセミ(日本のように美しく鳴くセミは独特らしい)、
まして赤紙・特攻となれば、完全に日本が舞台に感じられてきて、
これなら別にナスカでなくて知覧でもいいんじゃない・・・と思えたり。

それに時代も、戦前戦中かと思えば、宇宙的なシーンは現代風の衣装だし、
現代と過去を行き来していることを思わせるわけでもない。

そういうわけで、魅力的な多種の素材を盛り込み過ぎてしまって、
どれもがぼやけてしまったし、
いつの、どこの話かもよく分からなくなってしまったのは残念。

でもまあ、それぞれのシーンをオムニバスのように思えば、
そこそこ面白いシーンもあった。

それから、ピアノはライブ演奏で、時に風鈴なども鳴らしていた。
ライブ演奏と言えば、同じ会場で観た「チャイムが鳴り終わるとき」も、
ギターの生演奏が大変効果的であったことを思い出してしまうのだが、
この日は、ピアノの他に録音音源も使用していて、
それに合わせてピアノが弾かれていることも多かった。
しかし、これをやると、どうしても録音側に合わせざるを得ず、
結果、ライブの迫力は半減してしまうのですよね…。

なお、私は最前列の席が指定され、
たしかに役者の息遣いや迫力などは、とてもよく感じられるのだが、
冒頭の幕に描かれた絵柄や、舞台中央にある奈落からの階段を使って
人物が現れるシーン、そして照明の効果など、
おそらくもう少し後ろで観た方が効果的に思えるのではないか?
と思えた。

絆

劇団アルファー

座・高円寺2(東京都)

2011/08/08 (月) ~ 2011/08/11 (木)公演終了

満足度★★★

「届け 君の心に!」一度観ていたので
題名を見ても全く覚えていなかったが、始まってすぐ、
「あっ、あれか!」と気が付いた。一度観ていましたね。

HPと手帳を照合したら、2006.2.5に同じ会場で観ていましたので、5年ぶり。
まだ、それほど演劇には通っていなかった頃です。

それで、初めて見たときは結構感動したことも覚えているのですけど、
ベタなお芝居なので、先が分かってしまうとちょっとな、というのもあるし、
そんなわけで今回はそれほど面白くは感じませんでした。

ネタバレBOX

旅行先の不慮の自動車事故で、父・母・祖父の3人はあの世の住人に。
旅行に行かなかった主人公は1人残されることに。
そこに、難病で間もなく耳が聞こえなくなってしまう若い女性が現れる。

主人公は取り残されたこと、さらに父の保証人の問題や、
自分の今後の人生の悩み、さらには難病の女性のことなど、
悩みながら成長していくわけだが、
あの世に行った3人は、何とかコンタクトを取ろうとするが、
幽明境を異にしているため中々上手く行かない。

そこで、「特例的手段」で何度か連絡を取るのだが、
いざとなると緊張して上手く行かない
・・・ここは、本当は笑いを取るためのシーンなのだが、
ただ、このシーンが今回はいささかワザとらしく見えてしまって、
正直、かったるい気がしてしまいました。
というのは、大事なことを伝える気持ちが本当にあるのなら、
事前に何をどう話すかくらいは考えられるように思えてしまって…。
(理屈っぽいかな?)

結局、最後にはメッセージを伝えられるわけだが、
そうなると、それまでの失敗談は、
単に話を延ばす(終わらせない)ためだったのかな、
とも思えたりして・・・。

話は前後するが、彼女はいよいよ耳が聞こえなくなってしまう。
しかし、それらの困難を通り越してきた2人ならではの純愛成就、
と最後はなるわけで、
この部分は、やっぱりジーンときましたね。

今の世の中、物質的には豊かになったし、
男女交際も制約が無くなり(行き過ぎるほどかも)、
でもそれがかえって、こういう純愛を少なくしているというのは、
いささか皮肉なことですよね。
そんなことを思いながら帰りました。
第15回王子落語会

第15回王子落語会

王子落語会

王子小劇場(東京都)

2011/08/09 (火) ~ 2011/08/10 (水)公演終了

満足度★★★★

【爆笑ナイト】上方・米紫の話芸に爆笑
初日の爆笑ナイトの方に行きました。
実は、地元で隔月に行われている地域寄席には結構行っておりますが、
そちらは出囃子は録音なんですよね・・・
まあ、二つ目さんと真打さんだけでそれぞれ2席ずつで、
前座さんがいないせいかもしれませんが、
こちらは前座さんも来ていて、出囃子もライブ(?)。

初めは女流の前座・立川こはる「権助魚」で、
ボーイッシュな風貌で結構人気があるらしい。
前座の中では話の雰囲気も醸し出して、
結構上手いとも思ったが、時々噛んでいたのが残念かな?(2P)

次に二つ目の立川談奈が、割と律儀というか几帳面な語り口で
「だくだく」を披露(3P)。

中入り(休憩)を挟み、上方の桂米紫が登場。
パワフルかつ上方ならではのこてこての語り口で、会場大いに爆笑!
枕の東京で借りた狭いアパートの話から大うけで、
それから「義眼」を披露、もちろん笑いの渦に(5P)。

そしてこの日のトリは立川左談次で、こちらは米紫と全く違って温厚な語り口。
最初に「あんなに汗かいてやらないでいいのに・・・」と皮肉を一発、
それから、語り口は穏やかながら、師匠の性格を受け継いでか(笑)、
皮肉連発・・・ブログ(含CoRichか?)で悪口を書く奴の話も出て、
「そういうのはメモ取ってるんだよね」
(ちなみに私はあまりメモは取りません)。
そして演目は「幇間腹」・・・しかしこれは生々しいところがあって、
私としてはちょっと素直に笑えない話。
だっていくら太鼓持ち相手でも、素人の若旦那が鍼を刺しちゃうんだから(4P)。

さて、年功とか色々あるのかもしれないが、
純粋に効果という点だけ考えれば、
パワフル系の後に穏やか系だとやはり少々気が抜けるので、
米紫をトリにした方が面白かったかな、とは思った次第。

古典落語はクラシックと同様、同じ作品だが、
演(奏)者の個性を楽しめるし、
また巧拙も分かってしまうのが怖いところですね。

君の為にシジョウの円卓

君の為にシジョウの円卓

劇団総合藝術会議

小劇場 楽園(東京都)

2011/08/04 (木) ~ 2011/08/07 (日)公演終了

満足度★★★★

【宴の終わり】3つの劇中劇の個性がもっと際立てば
そこそこ面白くは感じました。

私が座ったのは、舞台に向かって左側で、こちら側はなぜか幕が下りている。
右側は降りていない。
(この劇場をご存知ない方のために…ほぼ正方形の舞台が斜めにあり、
その左右の2辺のみに座席がある)
http://www.honda-geki.com/rakuenheimen.html

幕は始まれば開くだろうと気楽に考えていたら、始まってもしばらくは開かない。
また、時々降りてしまう・・・。

ネタバレBOX

もっとも、幕はぼろく作られていて、所々破れているので、
その隙間から何とか見える作り。
ただ、これでは、どこに座るかで、相当観え方や印象は異なると思われる。

大きな筋としては、若い女性が1人で観劇に訪れる。
ところが、劇団の主宰がダウンしており、3人の意見の合わない演出家たちが、
自分の作こそ素晴らしいと主張・・・そして、この唯一の客が、
3人の作品を観て、誰の作品を観るか決定することに。

で、3作品が上演される間合いの会話などから、
この唯一の観客の秘密も明らかになる・・・という構成。

ということで、この公演の大きな流れの他に、3つの劇中劇があり
(つまり、4つの演劇があるともいえる)、
しかも、3作品の前には、それぞれを担当した個性の強そうな演出家たちの
演劇観も披瀝されたり、
さらには他のスタッフの愚痴なども聞かれたり、
まあこれは、演劇マニアを楽しませようという工夫なのかもしれない(笑)

で、残念なのは、鋭く対立しているはずの3つの劇中劇に、
それほどのコントラストが感じられなかったこと。
ここでもっと極端に違うものを見せた方が、断然面白かったと思うが・・・。
これらの独立3作品の個性が弱い上に、
大きな筋の話が次第に深刻さを帯びてくるわけだが、
こうなってくると、「色んな話の詰め込み過ぎ」と感じられてしまうわけで、
そこが残念と言わざるを得ない。

ただまあ、個人的には、下らないシーンにしろ、
また欠点はあるもののそれなりに頑張っていた3シーンにしろ、
それなりには楽しめた。
若干おまけで4P。
増殖にんげん

増殖にんげん

ぬいぐるみハンター

ギャラリーLE DECO(東京都)

2011/08/16 (火) ~ 2011/08/21 (日)公演終了

満足度★★

実験的試みには敬意を表しますが・・・
大体の様子は既にレビューで書かれておりますが、
どんなものが見られるか、期待と不安(?)の中で、
同時に会場の数か所で「演劇」が始まり、そして進行していく趣向。

ネタバレBOX

それでまあ、演じられていることをすべて把握することは不可能だし、
どちらかしか見聞きできない前提で作られている・・・
ということは、まあはっきり言ってしまえば、
それぞれの現場では「大したことは起きていない」ということ。

なんか、女子校にポッと入り込んでしまった感じで、
女の子ならではのおしゃべりが、ここそこで繰り広げられ、
男性の前では言わないような(最近はそうでもないか?)、
「生理」の話や「おしっこ」の話なども平然とされている・・・
まあそんな感じです。

もちろん、大きな筋の流れとして、アイドル追っかけとその後・・・
はあるものの、
それもまた、大した意味は持っていない・・・。

一応、実験の意味あいをまとめてみれば・・・、
1 ステージと観客席と言った区分をなくし、
 一体的空間の中で(決められた)演じられ、そしてそれを観る、という志向。
2 さらに、役者が観客に対話を仕掛け、いわば、役者と観客の敷居も低くして
 行き、また即興性に掛けようという志向。
3 別事件の同時進行的な志向

ただ、2に重心が傾き過ぎると、まったくのハプニング劇になってしまうから、
何が起きるか分からなくなり、収拾がつかないかも(それもいいけど?!)。
また、3を重視すると、観客はどちらかしか参加できないから、
既述のとおり、観ていない側の進行のことも考慮して結末を考えざるを
得ないし、したがって、あまり重要な出来事を起こしにくい。
かといって1のみでは、刺激が少なすぎる・・・どうしても2・3を試みたくなる・・・。

ということで、今回の実験には、以上のような矛盾をはらんでいるだけに、
前述のとおり「女子校で、他愛無い女の子たちのさまざまなおしゃべりが
聞こえてくる」以上の感想しか持てなかった。
そういうわけで、正直ちょっと物足りなかった・・・です。

とはいえ、実験的手法というのは、やっぱりお客を入れてやってみないと
分からないところもあると思うし、
6月に観た「マゴビキ」(ミミトメ)に比べれば、
このくらいの実験は可愛い方かもね?

私見では、2の視点により重きを置いていくのがいいかなあ?
などと無責任に思っているが、どうだろう?

余談ですが、シャボン玉を持って来たり、飴玉をくれる
某お姉さま(?)がいらっしゃるのですが、
次には「トイレどこですか?」と聞いてきたので、
「じゃあ一緒に行きましょう」と親切に言ってあげたのに、
「あなた男でしょう?!」などとあきれられて、逃げられてしまった・・・。
今思えば、ここで「あたし、女です」とさらに突っ込めれば、
私も大した役者になれたかも?
3年B組地獄学級

3年B組地獄学級

ネコ脱出

Geki地下Liberty(東京都)

2011/08/13 (土) ~ 2011/08/18 (木)公演終了

満足度★★★★

まあまあ、そこそこ面白かった
内容がよく分からないまま会場へ。
構成はコントもののオムニバス形式で、
それぞれ、笑えたもの、イマイチ笑えなかったもの、
ちょっと切ないものなどさまざま。
ちなみに私の観た回はBでした。
(お笑いなので以下のネタバレは読まない方が良いかも)

ネタバレBOX

最初のバンド物など、役者がそのままミュージシャンを演じるわけで、
まあ確かに、鬼マネージャーが認めない・・・のも分かるが(?)、
でもまあ芸達者とも言えるかな?
これの最後のネタは書きませんが、着想は面白いものの、
お笑いとしてはイマイチでした。

もっとも下らなくて印象に残っているのは、
納豆やら靴下やら・・・で拷問(?)するもので、
まあこの部分は全くクダラナイのだが、
多少人情もの要素も取り入れていて、それが別の笑いを生んだりもする。

全ての作品が独立しているわけではなくて、
「死んだ恋人」は、他の作品を挟んで再登場
・・・「連続もの」という予告もないので最初は伏線に???と思うが、
それに気が付くと笑える趣向。

で、話は前後しますが、前半での、
フィアンセのお葬式当日に、他のGカップ女性に目が行くというのは、
さすがにお葬式「当日」はどうかとも思うが、
でも男性心理の一面をついている作品でしたね・・・。

そんなわけで、作品ごとに2P~5Pですが、
個人的にはそこそこ面白かったので4Pにします。
【全ステージ無事終了!ご来場ありがとうございました】みきかせプロジェクトvol.3 「流星群アイスクリン」

【全ステージ無事終了!ご来場ありがとうございました】みきかせプロジェクトvol.3 「流星群アイスクリン」

みきかせworks

ワーサルシアター(東京都)

2011/08/03 (水) ~ 2011/08/07 (日)公演終了

満足度★★★

【あずき組:味わい堂々「君アレルギー」】ちょっと蕁麻疹がリアルで…
こちらも、詳しいレビューが出ているので簡単に。

これから音楽会が始まるような椅子やマイクのセッティング
(アフタートークによるとやはり音楽会を意識したとのこと)。

こちらの方が、基本的にリーディングという形で、
振りはほとんどなく(と言っても派手な動きもあるのだが)、
また、話の構成も、ある意味しっかり作られていると言ってよいだろう。

これもアフタートークで登場された作・演出兼出演者の岸野さんは、
お顔のお奇麗な方なのだが、その清楚な容姿と違って、
台詞は意外と過激なものもあったりして・・・。

ネタバレBOX

で、極めて個人的な感想というか、まさに独断偏見なのだが、
ちょっと蕁麻疹というのがなあ・・・と思ってしまった。
知人でも結構苦しんでいる人もいるし、
私も中学生の時蕁麻疹でないけど水疱瘡やって、
かえって小学生より結構重い病状になって、
体中水疱ができたことがなぜか思い出されたりしてしまった・・・。
それでなんか私も痒くなってきたような気がして・・・。

特に最後に、男の子が脱いでしまって、
膚に蕁麻疹が書いてあるのですよね・・・
ちょっとなあ・・・と思ってしまった。
(繰り返しますが、以上は極めて個人的な体験に基づく感想です。)

以上の話を別にすれば、30分ではちょっと短い気がして、
構成が良くできている分だけ、もう少し長ければより充実したかも、とも思った。
【全ステージ無事終了!ご来場ありがとうございました】みきかせプロジェクトvol.3 「流星群アイスクリン」

【全ステージ無事終了!ご来場ありがとうございました】みきかせプロジェクトvol.3 「流星群アイスクリン」

みきかせworks

ワーサルシアター(東京都)

2011/08/03 (水) ~ 2011/08/07 (日)公演終了

満足度★★★★

【あずき組:蜂寅企画「恋は枯野をかけめぐる」】動物の純粋さに感銘
既に多数のレビューが投稿されていますし、
特にtetorapack様が詳細に筋も紹介されていらっしゃるので、
一応重複は避けます。

初めの部分、ちょっと滑舌が悪かったり
もたつきも若干あったように思いましたが、
ベタな話ながら最後は胸を打たれるものがありました。

文楽など古典芸能でも、「動物の恩返しもの」というのがありますが、
動物が恩を感じて恩返しをする時って、本当に純粋なんですよね。
人間なんかよりよっぽど・・・・・・。

もちろん、それは、そういう純粋さを観客に伝えるだけの技量を
役者がもっていればこその話ですから、
そのことはしっかり申し上げておきます。

ただ、この公演は、アクションも多く、
あまりリーディングという感じはしなかったですね。

さよなら、なつやすみ

さよなら、なつやすみ

劇団EOE

ウッディシアター中目黒(東京都)

2011/08/05 (金) ~ 2011/08/07 (日)公演終了

満足度

私には良さが分からなくて・・・
2日目を観ました。
開演前から寸劇のようなものが始まっているのは意欲的だし、
良いこととは思った。

さて、本番が始まると、とにかく早口の台詞の応酬。
それで、初めの場面のための演出かと思っていたら、
これで最後まで行くのでした。

昔、学生運動というのが華やかなりし頃、「アジ演説」というのがあって、
早口なんだけど、語尾だけ変なイントネーションで延ばす感じの、
まさにそれを思い出しました。

早口自体慌ただしくて嫌いという人もいるかもしれないが、
私は例えば黒柳徹子さんの早口などは、
しっかっり聞き取れるし、1つの立派な話術だと思う。

ただ、少なくともこの日の公演は、早口過ぎて言葉がつぶれてしまっていて、
聞き取れないことも多かったし、
それよりも、聞き取ろうという意欲も次第に減退してしまったのが正直なところ。

ネタバレBOX

大体の筋の流れとしては、韓国が沖縄に攻めてきた
~日本は沖縄の独立を認める(見捨てる)~普天間に原爆がある
~それを敵国ではなく普天間で爆発させる(これも理解不能)
・・・・・・というところまでは理解したのだが、前記のとおり、
聞き取ろうという意欲まで減退してしまったもので・・・。

そして、あらためて、ここの劇団の過去の公演を含め
すべてのレビューを読んでみましたが、
2つ前の公演「LOVEMAIL from Santa」のきゃる様のレビューに、
基本的に同意見です。
http://stage.corich.jp/watch_done_detail.php?watch_id=87413#divulge

ということで、少なくとも私には理解不能で終わりました。
もちろん、こういう作風をお好みという方は行けば良いと思いますが、
予備知識も無く、何となく行ってしまった場合は、
私のように感じてしまう可能性もあるので、
その辺も考慮されて選択されて下さい。
青山君よ、家が明けたら夜に帰ろう

青山君よ、家が明けたら夜に帰ろう

コーヒーカップオーケストラ

シアター711(東京都)

2011/08/10 (水) ~ 2011/08/14 (日)公演終了

満足度★★★

ゆる~い喜劇?
そうですね・・・非常にゆるい感じで、一応筋みたいなものはあるのだけど、
まあそれは大したものではない(と思う)。
脱線も多いし。

ただまあ、ギャグで笑っているのは「お知り合い」という感じで、
関係者がいない人間にとっては、それほど笑えるものでもなかった。
正直、105分というのはちょっと長すぎで、
段々硬い椅子座っているのが、おじさまには苦痛でありました。
一番上の向かって一番左だったもので、
頭のすぐ左に太い電線が通ってましたし。

この日、私は、チケプレで伺いました。
満席でチケット完売は良いことですが、
チケプレ+当日券は開園5分前でないと入れないというメールが、
当日の午後来ました(メールを見られない人もいたのでは)。
それで、5分前で残っていたのは、一番後ろの硬い席か、
一番前の小さいパイプ椅子席だけだったのです。

もちろん、お金を払っている方を優先することはある意味当然ですし、
チケプレで観せて頂けるのはありがたい限りですが、
う~ん、ここまで差をつけられた公演というのも初めてなんでね、
ちょっとなあ、という気もしました。

話は脱線しましたが、まあ暑い中、ゆるーいものを観たい方にはいいかも?
女子大生が可愛かったので、3Pにします。
(そうそう、主人公は青山君ではなく、彼女なんですよね・・・)

プルチネラに乾杯!!

プルチネラに乾杯!!

キジムナーフェスタ

まちなか特設会場①(沖縄県)

2011/07/23 (土) ~ 2011/07/25 (月)公演終了

満足度★★★★

影絵+人形喜劇・・・楽しく笑えたひととき
もちろん、沖縄にわざわざ見に行ったわけではなくて、
東京・市ヶ谷・麹町あたりの「スペイン国営セルバンテス文化センター」
での公演に行ってきた次第。

舞台上に結構大きな布張り箱型のものが置いてあり、
実はここには影絵が移る仕組み。
そして、この上部がいわば人形劇の舞台となる。
ここには、太陽や月を模したと思われる太鼓、それに鉦(かね)が釣ってある。
興味のある方はこの辺もご覧ください。
http://www.puk.jp/natuyasumi/purutinera.html
http://tokio.cervantes.es/FichasCultura/Ficha74676_67_25.htm

最初はトニー・ルンバウ氏が客席に降りてきて、手品で卵を取出し、
その卵を影絵の中で割り、作品が生まれてくる・・・という趣向。
まあ、これは個人的には「ここまでやらないでも」という気も。

で、プルチネラの名のとおり、仮面をつけた人形が主人公で、
これにもう1人の人形が絡んでくるのですが、
内容は、まあドタバタコメディに過ぎません。

ただ、それがとても面白く、怪しげな日本語が登場したり、
また、釣ってある太鼓や鉦が曲者で、
時々ここに、良い間合いで、頭をぶつけて、
「ドン」とか「カ~ン」とか鳴るのが絶妙で、
やはりみんな大笑いしてしまう。
まあそれだけなのだけど、珍しく、また楽しいひとときを味わえました。

チャイムが鳴り終わるとき

チャイムが鳴り終わるとき

オーストラ・マコンドー

吉祥寺シアター(東京都)

2011/08/10 (水) ~ 2011/08/14 (日)公演終了

満足度★★★★★

長くて重いが、充実した見事な内容
すでに多くのレビューが投稿され、意外とそれらの点数は高くないが、
もしかしたら私は「年間ランキング1位かも?」くらいに感じました。
この日は仕事とその他で昼間から外を歩いていましたが、今年一番かも
しれない暑さで、夜吉祥寺に着いたときは、相当疲れていました。
そして、終演21:50の掲示を見て、一層がっくり。
なにしろ横浜まで帰るのは時間もかかるので。
しかし、観終わった後は、満足感で、
そういう気持ちは吹き飛んでおりました。

会場に入ると、ステージ上には学校で使われる椅子が並べられていて、
これだけでも「ああ、今日は学校ものなのだな」と分かる。
そして、ステージの両脇には、やはり学校ものの椅子がいくつも不揃いに吊り下げられている。オブジェを観るようでもあり、また、風によって多少動くのでモビール作品を観るようでもある。

ストーリーは、ここにもすでに書かれている通り、同窓会が開かれる中で過去(小学生時代)が回想され、初めに思い出されえる楽しい思い出のみならず、いじめが残酷な結果を生んだことまで想起させられる。
話の主たる流れとして、先生と子供達の出来事があるのだが、
この部分についても「小学生時代」と「同窓会」とが
交互にあらわれる手法である上に、
さらに副次的な話として、転校生と、
その病気入院中のお母さんの病室内のシーンがある。

こう書くと、複雑な構成の話のように感じられるかもしれないが、場面転換ははっきり分かるように作られているので、
観ている分にはある意味自然に進行していく。
そして、音楽はギター1本の生演奏で、ある時は優しいメロディーを歌い、
またある時には、激しい興奮を掻き立てるなど、大変効果的であった。
もちろん、演奏が素晴らしかったことは言うまでもない。

(以下ネタバレだが、これから観る方はネタを知らないで
鑑賞されることを強くお薦めする。)

ネタバレBOX

(すでに他の方も詳しく書かれていますが、私も合間を見てコツコツ書いてきたので、一応そのまま載せてしまいます。)

小6の教室に、新しい担任が登場する。若い男性教師で、教え方も上手く、
子供達の人気も抜群!
しかし、前任の女性先生が産休にしては交代が早いことや、後任のこの教師も、前任校を教えない……など、話に影が落とされる。

さて、このクラスに、児童の1人に大人びた美少女がいた。
彼女は、はじめこそ、他の子供たちがこの先生をもてはやすのとは一線を画していたが、ある時、遅くまで教室に残っていたところ、先生に「校舎の見回りをするんだけど、一緒に行こう」と言われ、2人で校舎を回り、そして普段は入れない屋上で美しい夕焼けを観る……。
他の女の子同様、この少女もついに淡い恋心を抱く。
そして、自分は先生にとっても特別な存在であるんだ、と思い込む。

ところが、ある時、この少女は、置き忘れてあった先生の日記に気が付き、
それを読んでしまう。
そして、明るく楽しい、そしてある時は親切な人気者先生の言動は、
計算ずくのもので、すべてが事前に「意図され」行われていたことを
知ってしまう。
そして、自分に対して、先生の「特別の想い」も無いことも……。

それを知った少女は、少女なりのショックを受け、
そして、先生に「小さな報復」を始める。
日記が読まれたということを、先生にだけ分かり、しかし、
他の子供には分からないよう、チクチクと刺すようなことをやり始める。
それに対して、先生は一度は自信喪失するが、夏休みを挟むと、
今度は少女への復讐に転じる。
怪我をした少女に、さらに怪我がひどくなるような指図を……。
予想通り、怪我がひどくなった少女は大泣きし、教師は反省……
しかし、これがきっかけで、この二人のわだかまりは一応解消する。

ところが、またしても、別の悪ガキが「先生の手帳」を見つけ、
そして読んでしまう。
しかも今度は、少女のような「先生にだけ分かる」方法でなく、
クラス全員ではやし立て、先生を徹底的にからかう。
その結果、先生は退職に……。

以上が中心の話であるが、
これに、転校生が病室の母を見舞うシーンが交錯する。

この転校生は学年も1~2年低く見られるほどの幼く見える少女で、
はじめは何気ない、彼女と、その母、そして主治医だけのシーン。
母は話もできず、記憶も失っているようだが、母の魂に伝わることを信じ、
母に学校であったこと、そして時々いじめからかばってくれる例の美少女
の体験を、時に、まるで自分の話のように母に語る。

ところが、このシーンは次第に深刻なものになる。
なんと、母の主治医が少女に性的いたずらを始めたのだ。
一方、母も、一度無理やり授業参観日に出席したところ、
他の生徒から幽霊呼ばわりされ、
それが少女のいじめのさらなる原因にもなる。

ある意味、母も、娘も追い詰められ、
ついに、娘は自殺を暗に勧めるような言葉を放ち、
その直後、母は学校の屋上から投身自殺する……。

というような大変重い内容なのだが、
やはり首吊り自殺(未遂)シーンがあった「ヒューマンエラー」に比べると、
私はやや表現が柔らかいというか、生々しさは薄かった気もする。
これは必ずしも悪い意味だけで言っているのではなく、
表現の仕方が微妙に違うのかな?などと思っている。
(ここは自分でももう少し考えてみます。)

最後に、素晴らしい公演であったことを前提に、
若干気になる点を2点だけ申したい。
1 投身自殺のシーン、母の人形が落とされるわけだが、
人間が意を決して、飛び込むというより、裏方さんが放り投げた、
という落ち方だった。これは頂けない。
2 すでに指摘が出ているとおり、性的いたずらを受けていた
少女自身や加害者の医師について、
本当は何らかの結末がほしいと思った。
もちろん、上演時間等の考慮もあったのだろうが、「材料」をこれだけ提示されている以上、物足りなさが残った点は否めない。
ミラクルスーパーマーケット

ミラクルスーパーマーケット

覇天候

萬劇場(東京都)

2011/08/02 (火) ~ 2011/08/09 (火)公演終了

満足度★★★★

演劇ネタでそれなりに楽しく
地元に根付くスーパーマーケットを舞台に、そこで働く人々と、
スーパーの倉庫を借りて稽古場にしている社会人劇団、
そしてそこに乗り込んでくる再開発をもくろむ人々の人情話
…まあベタな話である。

社会人劇団のシーンは、演劇人の内輪話があったりとか、
なぜかこの劇団を嫌っているスーパーの副店長が、
実はかなりの演劇マニア故の辛口であったなど、
いわば演劇ネタでそれなりに楽しく見ることができた。

ネタバレBOX

ただ、ある意味ボケ役である沖縄から転勤で移ってきた金城の台詞が、
いかにも笑いを取るために作ったような台詞であったり、
劇団座長が長野に転勤が決まってしまうが、それを団員に
言おうとしつつ言えないあたりも同じような気がしてしまい、
その辺がもっと自然に流れて行けばもっと良かったなあ、
と感じた次第。
ヒューマンエラー

ヒューマンエラー

643ノゲッツー

OFF OFFシアター(東京都)

2011/07/28 (木) ~ 2011/08/02 (火)公演終了

満足度★★★★

衝撃的なシーンも多い作品
衝撃的なシーンも多い作品
当日パンフに「劇場の照明をほとんど使用せず自前の明かりのみで上演…」
とあるとおり、演者が自分で照明を持って動いたり、舞台の両端で対話や
電話などの通信をし合う際も、手元の照明で「対話中」を現わしたり、
さらには、普通の演出であれば、登場しない間は舞台裏に引っ込む
ところを、舞台中央にある一室の周囲に配置された椅子に
腰掛けるような形で待機させ、場合によっては、あたかもコロスのように
彼らが声を出し、特異な雰囲気を出すなど、独特の工夫がなされている。

正直、初めの頃は、こういう工夫、特に周囲から声を出すようなやり方が、
「うるさいな」と感じた部分もあった。
しかし、話が進行し、内容が深刻になるにつれて、この独特の手法が
非常に効果を上げるものであることが分かってきた。

ネタバレBOX

話は、この部屋に住む一人の青年を、知人や親族が訪れて行き、
対話や出来事を通じて、青年の過去が次第に暴かれていくという構成。
彼は、少年犯罪ではあるが、ふとしたきっかけで殺人未遂を犯して
しまい、少年院にも送られた経験がある。
そのことを隠していくため、仕事を探すこともあきらめ、
部屋の明かりも灯さずに日々暮らしている。

法律的には罪を償っているのだが、過去を調べて公表しようとする
ライターや、たまたま彼と一緒にいるところを写真に撮られたため、
取引先から疎まれ経営苦境に陥る経営者、
さらには家庭が上手くいかなくなった家族等々、
彼の過去の罪を何かあると、ことある毎に、
いつまでも責め続ける周囲の人々…。

こういう人々の心無い批判や自責の念に耐えかね、ついに彼は首を吊る…
このシーンはやはり観る者には強烈である…幸い、自殺は未遂で終わるが。
ただ、ある意味、これがきっかけで、彼も周囲も
ちょっぴりかもしれないが吹っ切れるものがあって、
少し明るくなってこの芝居が終わる。
個人的には前半は少々技巧的に感じた所もあったが、
後半の表現はやはり見事なものであり、
既に述べたような様々な工夫も効果的であった
ブループリントの岬

ブループリントの岬

ナマイキコゾウ

「劇」小劇場(東京都)

2011/08/03 (水) ~ 2011/08/07 (日)公演終了

満足度★★

台詞にびっくりするような言葉が多くて
在日韓国人である作家が中心の物語。
正直、台詞にびっくりするような内容が多くて、
私としては違和感を抱いてしまった…。

ネタバレBOX

この作家の「彼女」は日本人なのだが、その兄に、韓国人との結婚を打ち明けると、韓国人に対するひどい罵りの言葉を激しく浴びせられる。
しかし、戦前でも在日と日本人が結婚することも
決してレアケースではなかったわけだし、
まして現代では韓流がブームになるご時世……
まあそれは、現実には、今でも色々問題となる家庭もあるのかもしれないが
……それでも私などは時代錯誤的に感じてしまった。

また、在日へのいじめがあったとか無かったとか、一方で、
在日の人物が良からぬ生活を送っていたり、
また、(これも一昔前なら良からぬ話に分類される)同性愛の問題も
絡まったりで、まあ、テーマは盛り沢山とも言えるのだが、
結局訴えたいことは何なのか…結局、日本人も在日も
いい人も悪い人もいる、という一般論的な話なのか?…
焦点も定まり切れていない気がした。

そして、初めは激しく在日との結婚を反対していた兄が、
最後には認める方向に心変りしていたが、
これも私には説得性が感じられない気がした。
結局、この芝居全編を通して、台詞や筋が不自然で
作為的に感じられたのが残念。

このページのQRコードです。

拡大