満足度★★★
下町
チケットプレゼントにて鑑賞。なかなか楽しめた。
ネタバレBOX
下町に生まれ育った慶一(斉藤コータ)は、子供の頃より通った思い出の駄菓子屋が地上げの危機に瀕していることに憤り、署名活動など反対運動の中心になる。駄菓子屋の息子・トシユキ(矢嶋友也)が折れることになり、友人からも賛成派に回るものが出てきて混乱するも、家族を守るため、慶一は地上げのボス・ぼったん(小林涼太)の事務所へ殴り込み、酒飲み対決で賛成派の友人・アキラ(中山貴裕)と死闘を演じる…。
中盤の家族愛とかの部分で結構面白くなった。妻のさなえ(真寿美)との回想シーンもベタだけど好き。終盤の酒飲み対決は、動きとか照明とか、パワフルな舞台になってて良かった。特に、斉藤と中山は他の演技も良かったし。
駄菓子屋のおばちゃんを演じた平山せいも安定した演技。中年女性も老女も。
笑える箇所もあって、ライトなコメディ作品。ラスト、駄菓子屋を守っているアキラのもとへ、成長したねねが来て…ってのもシンプルながら好印象。
ちなみに、ちょっと登場人物が多い気。あと、慶一の酒に強いってのは印象が弱いかな。子役の子はけっこうしっかりしてた。慶一とさなえが抱き合うシーンの笑顔とか。
満足度★★★★★
いつもあなたのそばに
天使の衣装が素敵。かわいいというかね。その「天使たち」がみな魅力的だった。
舞台を布で包んだり、上部の装置に転換中目が行くようにさせる工夫も良かった。
ネタバレBOX
バツイチの作家(中田顕史郎)が、海外留学目前の娘に是非読んでほしいと書いた小説の内容、という構成。天使たちの後日談はあったけど、作家とその編集・清水(奥田ワレタ)の恋の行方は…?。
志のある人間のそばにいるという「天使」。元天使の西澤(境宏子)は、天使のつく人間(宿主)を共同住宅に住まわせ、相談にのっている。
最近入居した鴻坂(池田ヒロユキ)は、障害を持った妹への罪悪感を持ち、書きたいものが書けなく自信を失っている。その天使(こいけけいこ)は、西澤を励ますも上手くいかずこちらも思い悩み、人間となって鴻坂と絵本を制作する。
アマチュアレーサーの速水(小寺悠介)は、レーサーの寿命と両親のことで悩んでいる中、レースー中に事故り、引退を決める。天使(倉田大輔)は、宿主が志をなくしたことでその存在がなくなる。
写真家を目指すアオイ(サキヒナタ)とその宿主になるのか決めかねる天使(増戸香織)。速水の事故で写真への想いを再確認したアオイをみて、増戸は宿主になってとお願いする。
鴻坂の天使が妹の生まれ変わりという示唆を含んで、おぼつかない手つきで絵を書き、鴻坂が妹への懺悔を語るシーンが涙を誘う。速水の天使も、速水への愛情に似た想いで天使を始めたが、速水を思うあまり事故に対して罪悪感を持ち、速水の引退に対して何もできない無力感に苦悩する。終始冷静な物腰の中に、熱い想いを垣間見ることができる。アオイの天使は、アオイのことが気になる素振りを見せつつも、つかず離れず。西澤からは傍観者と言われ、他の天使(佐藤祐香)のキラキラした話を聞き、アオイの心にふれ、動揺する。サバサバしたような性格なのに「この人だ!」って踏み切れない心を持った天使像に惹かれた。天使・こいけけいこのようなバックグラウンドがあるのだろうかと想像できる。
甘くない内容を、柔らかい作家の話で包んだ良作品。仕事とか人への悩みを人も天使も抱え、不安ながらも一歩一歩歩き始め、次のストーリーが始まる。甘くはないけど、優しい話がとても気に入った。
満足度★★★
生きてても死んでも
いい感じの舞台。ちょっと安心する。パンフの相関図の手書き感とへちまイラストがほほえましい。
ネタバレBOX
三人の妻と死別、離婚をして3人の腹違いの娘を残して逝った父の七回忌後が舞台。
真面目で思慮深い長女・たまき(三谷智子)は、懐妊して死産(堕ろした?)という過去をもち、その彼・圭佑(実近順次)と別れることになる。男を見る目がない次女・みのり(久富麻季)は、浮気相手と決別する。バツイチ子持ちの大学講師・中川(白州本樹)と年の差25の結婚を願う三女・いずみ(辻沢綾香)は、母・元子(辻川幸代)と中川の熱意の後押しでたまきの理解を得る。
江ノ島水族館へペアルックで出かけるいずみら。残ったたまきとみのりは半分喧嘩しつつも、過去の思い出も手伝って、二人で江ノ島の縁結び神社へ行くことに…。
基本あたたかい雰囲気の作風で、なんやかやあっても「家族でいる」三姉妹らが眩しい。たまきは、長女らしくみのりの結婚(や恋愛)が心配で、いずみの結婚でもいろいろ考えた上で厳しい意見をぶつける苦労人。恋人の圭佑は、確かに男らしくなく、40位のたまきはこっちでも苦労をしたろうと。それでも誰にも苦痛な顔や涙を見せない「鉄の女」のたまき。隣人のぼけたおじいちゃんのぎっちゃん(名取幸政)に、たまきの祖母・ツル子と間違われ、キスと抱擁で思わず感情が吹き出してしまう…。
ありそうな家族内の軋轢から、日差しが差し込むような展開へつなげるスタイルは好み。ハッピーエンドってわけでなく、上向きで終わるみたいなね。実際上がって下がっての繰り返しなんだろうけど。
生きてても死んでても…へちまのような家族ってよいね。
満足度★★
ベランダの一年
微妙。
開場時間の変更についての告知が足りない。張り紙だけの告知という姿勢は単純に横着と感じる。
ネタバレBOX
12匹の選考委員と司会が、猫世界に貢献したアワードを決定する会議を描く。
「12人の~」のスタイルの会話劇だけども、このスタイルである必要がどこまであったのか。
話し合いの内容の説得力に疑問。猫社会への貢献度っていう尺度ではないのかしら。猫7のジャーナリストに票が集まる流れが馴染めなかった。(会議の不思議を表したのかもしれんないけど)
そもそも猫社会ってのを(自分が)理解してなかったせいか、猫社会の「ほんとうらしさ」が掴めなかった。飼い猫と地域猫とノラ猫のかかえるシリアスなテーマを汲み取れなかったというか。単純に飼い猫・地域猫・ノラ猫の格差を人間社会の縮図と理解すべきなのかとも思うけど惹かれる舞台でなかった。
人間に寄り添うのか猫の自立に依るのか、みたいなくだりは面白かった。
満足度★★★★
Fuck!!
チケットプレゼントにて鑑賞。原作は知らない。とても面白かった。
ネタバレBOX
年の離れた夫・武大(西田幸雄)にぞんざいに扱われる、饅頭を売る金蓮(木村はるか)は、武大を殺し、街の富豪、権力者で色魔の西門慶(藤波瞬平)の第五夫人となり、寵愛を受ける。しかし、西門慶の友人・子虚(三原一太)を殺し、第六夫人に収まった李瓶児が身ごもると、金蓮は瓶児を殺し、西門慶も刺殺。主人が死んだ家から皆離れていき、残った金蓮の前に、武大の弟・武松(武藤啓太)が現れ、金蓮は雪の降る中、殺される。
夫人らだけでなく、友人やその妻、女中にいたるまで、呪われてんじゃないかってくらいに、愛憎による悲劇が吹きすさぶ異様なストーリーなんだけども、異様な魅力が溢れてた。金蓮の子供じみた愛への依存、第一夫人・月娘(松崎亜希子)の破壊衝動、西門慶の下衆な性質、まともそうな雰囲気の瓶児も善良そうな子虚を毒殺しちゃうし、西門慶の友人・伯爵(関智一)は月娘への想いが暴走するし、第四夫人・セツガ(酒井香奈子)は嘘ついて彼の目を潰しちゃうし…人間の魑魅魍魎な部分が絵巻物のように次々展開するのが楽しい。せっかくだからもっとドス黒い雰囲気でも良いけど。
舞台は街の権力者=富裕層の家なのに、満たされない心がそこかしこで悲鳴をあげ、さらなる悲鳴を呼ぶ。西門慶がいっていた、月娘と自分の関係がすべての発端だろうか。落ち続ける人間たちの狂気を、上手く見せた舞台だった。てかこの家、風水的に悪いんじゃないかと思う。
西門慶から追い出される前に、色町に戻ると決めた嬌児(内田晴子)や元彼とヨリを戻したセツガ、第二夫人の玉楼(あきやまかおる)らは、命もあって、「次」に進める気持ちにさせるのが皮肉でもある。
舞台セットも力が入っていて、個室や簾、階段、フルに機能してていい具合。照明もいい感じだった。良舞台。
役者は、三原一太と関智一が良かった。女優はあきやまかおると酒井香奈子の声と容貌に惹かれた。ちなみに、ラストの金蓮と武松のシーン、二人とも目に「狂ったような黒いモノ」がもっとあれば、もっとシビレたと思う。
満足度★★★★★
10年後に
初ナイロン100℃。観に行って良かった。
ネタバレBOX
ティルダ(犬山)と友人・コナ(峯村)を中心に、100年にわたるベイカー家周辺の愛憎をユーモアとシリアスを混ぜて描く。
休憩有りの3時間半。ベイカー家の女中・メアリー(長田)が、語り手となってシーンの年代や役者をさらっと教えてくれるのがありがたい。なかったら混乱してた。
前半は、ティルダ12歳から死亡後までを描く。この前半でティルダらが、平穏でない人生を歩んだことを示唆して、後半への期待を高める。後半で、真相を知った上での単純でない人間模様をじっくり展開。ラスト、ちょっとだけ前向きであたたかなテイストと、ティルダとコナの(無邪気な?)黒い心を提示して幕がおりる。
笑いもあるけど、重い空気がじわじわ客席まで迫ってくる舞台。ボケて殺人を依頼しティルダ(とコナ)の人生の幕もおりる。なんともいえぬ気持ちになるが、これも人生かと。良い悪いってものじゃない。
コナと結婚したが、学校のアンナ先生を想い心に鬼を飼い続けたカレル(萩原聖人)が良い。犬山イヌコも、少女演技から老女演技まで上手かった。ティルダの兄・エース(大倉孝二)も、明るいキャラでありながら、父の愛情不在からの非行・犯罪・自殺という落ちっぷりと悲哀感が好み。父・ウィリアム(廣川三憲)とかプライドの高い同級生・リーザロッテ(村岡希美)も、いかにも感が溢れててうまかった。
登場人物がこんな多くて、こんがらがりそうな話をすっきりまとめてかつ関係性をしっかりさせて100年を描くってすごい。ちなみに、役者紹介のOPとか、舞台演出で使用された映像の出来も素晴らしかった。舞台中央の木のからませ具合のさじ加減もちょうど良い。
てか、住宅の下見にきてHすんな。
満足度★★★
心の麻薬
ストレートにまとまってたと思います。
ネタバレBOX
マッチ型麻薬「firelight」が大量に燃やされる大火事があってから数年後の話。「firelight」を販売する記憶喪失の少女(佐山花織)は、火事で失明した美緒(朝日望)や母を亡くしたイサコ(安田友加)らと暮らしている。そこに、ワケあり風なジャーナリスト・一ノ瀬(後藤祐哉)や少女を追う警官・駿河(鳥谷部讓)らやスラム街の住人たちが入り乱れるにつれ、火事の真相が明らかになる…。
スラムの住人・里奈(丸塚香奈)も少女も記憶喪失という設定で、過去に注意をひくのはベタでもあるけど、キャラクターとストーリーがしっかり噛み合ってたと感じた。警官の駿河が母親への愛情を満たすため(半分は妹の少女のため?)に「firelight」を作り出し、それが規制対象となり、凶行に走るとか、イイ感じ。駿河役の鳥谷部讓は演技も良かったし。
「firelight」が、みたい願望を(幻として)叶える麻薬で、主要な登場人物らは、それぞれに願望(心の傷)をもっているという、悲しいトーンの話。でも、テンポ良くて、脚本がスリムになっているためか、お涙頂戴な雰囲気でなくて好み。惜しいのは、ちょっと青臭いとこと、まっとう過ぎること、舞台の雰囲気にメリハリが少ないことかな。
マッチの演出は良かった。もっと色が変わってもよいけど。一ノ瀬の死んだ彼女(椎谷万里江)の、儚い感じも合ってた。
演技はもっと良くなる気がした。また、キャラの年齢が全員同じに見える(実年齢自体近いんだろうけども)。
満足度★★★
Z
クセとパワーのある舞台。
ネタバレBOX
延増静美が美しい。柿丸美智恵が面白い。刀をもった町田マリーが可愛くてカッコイイ。
満足度★★★
ちゃんぽん協会
演出のカラーが良い。
ネタバレBOX
カラサワ(森田祐吏)が主宰するカジノクルーズに潜り込んだアンコ(帯金ゆかり)は、ギャンブルに熱をあげるダメ彼氏・トピオ(堀越涼)を探し出そうとする。(主宰の策略で)ギャンブルで身を崩す、横領社員のダイコク(岡本篤)やカジノ反対派の長崎県議・マダラメ(ザンヨウコ)らを尻目に勝ち続ける中国人起業家・ヤン(鬼頭真也)。カラサワを直接対決で下し、日本のパチンコ業界を潰し、(ひいては世界を)カジノで牛耳ろうとするヤンに、自分とアンコの命をかけて野望を阻止しようと対決を挑むトピオだったが…。
カジノやパチンコという偏見で見られがちな「ギャンブル」という要素に、地方の振興とか打算や愛といった人間模様を注入した作品で、総じて楽しめた。ちょっと散慢な気もしたけど。
アンコとトピオの話でラストを締めくくるのは、そのシーンだけみるとよいけど、話全体でみると惹かれるような感じがあんまりない。ヤンとの勝負時の、トピオの表情とかは良かった。でも、ブラフでした→警官のキリハラ(提千穂)という収束は拍子抜けだった。また、ダイコクとかマダラメの出資とか唐突な気がしなくもない。
帯金ゆかりはなんか細い。岡本は、小心者演技がウマい。コンパニオンらは舞台の華でもあったけど、キャラ付けが薄いと感じた。パチンコ業界の刺客・ノビル(中村早香)のポジションは良い。キリハラへの一言「出世しないよ」とかアンコへの「パチンコ潰しても意味ない」とか。鬼頭は爬虫類的な恐ろしさをまとってて良い。バックグラウンド(貧しい中成り上がり、世の金持ちへの敵意を抱く)もあって良いキャラだった。演技も安定してたし。
照明や動きとか、ポップで華やかな雰囲気でまとまってたので、見やすかった。ただストーリーに吸引力がほしかった。
満足度★★★★
そらのいろ
以前観た、さんさき坂公演が気に入ったので鑑賞。70分、静かな舞台に魅入った。
ネタバレBOX
大地(桜井昭子)がオーナーを務める「KINGYO」で水野(笠井里美)の個展が開かれている。そこに、器好きの夫婦(山森信太郎・中島美紀)や亡くなった恋人の祖国(日本)を見に来たというリタ(スラ・バーデ)、芸大生(池内風)、通りすがりの人(川田歩)、予備校時代の友人・木月(日下部そう)らが訪れる。
リタと木月のシーン、水野の表情が引き締まったり緩んだりする。
壁の「かけら」から空の色を感じたリタに、連絡待ってますと笑顔で応える水野。送り出したあとの水野は何を思ったろうか。
10年くらい会わなかった木月の来訪を素直に喜ぶ水野。二人の10年前がどんなだったか、その後どんな人生を送ったのか。初?の個展を開き、これからという水野と、水野への想いを伝えた木月の2人が、ギャラリーの外で茶を飲み、何をみたのだろうか。
変哲もない舞台とも言えるけども、若き陶芸作家を中心にした話の中に、綺麗な空白を作り出すセンスがとても良い。
ちなみに、小西さんの「器」は愛嬌があるように見える。水野の服装も好み。
満足度★★★★
エロ
面白かった。
ネタバレBOX
「極私的エロス」
ナカトモミの結婚から離婚までを描くリーディング。客観的にみてると確かに良く結婚できんなという気がするし、子供生んじゃダメだろって気もする。男のほうも冴えないし。どっちも浮気相手と結婚するくらいだし、お似合いともいえるけど…。
ナカトモミと夫が、互いの不貞を責め合うクライマックス、言葉を吐き捨てるように、台本を一枚一枚投げ捨てる演出が面白い。相手に届いてんだか届いてないんだかみたいに、床に散乱する台本(言葉)。最後、服を脱ぎ、離婚を認め合う二人。こんな状況にあって、相手の気持ちをほぼ理解し合えているように見えなくもない不思議がある。
「性的人間」
小説家とその妻と小説家の運転手の愛憎劇。「いただきます」という言葉がなくなったとして、運転手との不倫に走る妻と愛を描いているはずなのに、愛がわからなくなる小説家のやりとりが面白い。「愛=いただきます」というイメージを体現する舞台に、異様性が混在した作品だった。
満足度★★★
こわい話
前半の方が面白く感じた。「銀河鉄道の夜」は未読。
ネタバレBOX
学生のりく(多田直人)の友人・けんじ(篤海)が溺死し、りくはショックで精神異常をきたし、けんじからもらった小説「銀河鉄道の夜」の世界へ、自身やけんじの存在を妄想するようになる。りくの妄想は、現実の記憶とは離れ、けんじの存在も見失いかけるが、先生・宮沢賢治(中田顕史郎)の話などから、記憶のけんじを呼び戻し、その死の悲しみを乗り越える。
序盤から、不穏な空気がつきまとう感覚。徐々に、りくの異常な精神状態や過去の友人関係などが明らかになるほど、空気がさらに濃く深くなる。ひみか(川田希)の姉としての心配とか、みかげ(渡邊とかげ)の告白とか、たくみ(二瓶拓也)との決別とかのからみも、話を引き立てまくる。特に、いじめっ子の柴実(石黒圭一郎)は、その嫌な感じがウマい。けんじ死亡の原因というからませ方と、ひみかに土下座されてりくに会いにくる(本人も本当は来たかったのか)ってのも、物語にいい感じに作用してた。
基本暗い話の中で、魚心先生ほかを演じた(小玉久仁子)のパンチの利いたキャラがほっとさせる。しかも、ただ笑わせるだけでなく、スーパーのパートのおばちゃんとして、アドバイスし、りくの固くなった心を緩める。ひとのことはわからないとかね。まあ、単純に、魚座の女王は面白かった。
終盤、けんじの死を受け入れたりくの心が開かれるように、舞台の可動セットも動き、開放感のある舞台面に。そこで交わされる、在りし日の友情。りくとけんじはそれぞれの世界へ足を進めてエンド。ただ、前半の(個人的な)盛り上がりに比して、グッとこなかったなと感じた。決して悪くないんだけど。
こわい話。理不尽な悲劇を受け止めざるを得ない時、どうそれを乗り越えるのか。その時そばに誰かいることの大切さ。そばに何人もいてくれたりくは、「上等」なんだと思った。
「死に意味をもたせる自分」ってセリフが気に入った。
満足度★★★
メガネが似合う
以前、どっかのマクベスを観た(まっとうな)イメージがあったせいかな、舞台が掴めなかった。
ネタバレBOX
上司を暗殺するマクベス、殺した罪に怯えるマクベス、突っ走って結局殺されるマクベス…パンフにある、一労働者が権力を持った人間に牙をむくという構図がぼんやりとしてしまった感。90分の中で15人の女優を料理した手腕はよいが、物語における主演二人の魅力がぼやけたような気がして、期待した充実感がなかった。
夫人に引っ張られる小心者のマクベスを深谷が好演してた。ATで触れてた「おぼん(トレイ)」を使った殺陣?は確かにサマになってた。かっこいい。ラストの、舞台奥へ消えるような演出も○。
夫人を演じた内田亜希子も良かった。クールな顔立ちでコミカルで残忍(というか冷酷)かつセクシーという幅広い演技が素敵。もっといろいろできそうな気がしないでもない。
マルカム役の我妻三輪子も、とろんとした顔立ちと相まって、魅力的だった。
岡田あがさと渡邊安里は、舞台で埋没せず、いい主張ができてた。特に岡田の医者とマクダフのワイフは笑えた。
女優に焦点にピントが合ってて、その意味で楽しめた。
満足度★★★
甘口カレー
あたたかな作品とおかしなテイストの60分。山崎雅志良い。
ネタバレBOX
とあるバーで、漫画家志望の南(菊池美里)が進研ゼミの漫画の原稿を、編集の沖田(伊丹孝和)にみせているが、カイジテイストの長編漫画でなく、青春とか恋愛とかを書いてと諭される。青春がなかったという南に、沖田は2chのとあるスレを見せる。そこでモッチーという人間が自分の青春を綴っていた…。
書き込みする望月(山崎)と望月が想いを寄せる少女・ひまわり(根本)が、中学の図書館で出会い、高校で再会し、社会人となって告白してHEとなる。という話(書き込み)とそれをスマホで見ている南ら、という2つの話が終盤でクロスする。
オタクな望月とその友人のブンチン(伊丹)らのオタクな思考が笑える。望月の動きとか最高。そんな望月の甘酸っぱい一喜一憂する様がほほえましいというか応援したくなるというか。いいポイントポイントを選んで舞台にのせたとう感じ。「幸せにする!」とぎこちないような笑顔で告白する望月に、応えるひまわり。笑顔の約束は必ず守られるとかドラマティックだろ、現実とは違うだろ…なんて思うけど、いいものはいい。
劇中劇の、ひまわりが本に書き込みしたのが原因で殺されたバレー部一同が不憫。笑ったけど。
座席の配置が狭いので、ちょっとリラックスしにくい。
満足度★★★★
総合力のある企画
初めてゆうどに行った。奇麗な日本家屋。リーディングの雰囲気を盛り立てる。
雨降りの日だったけど、お茶とアメ、吉田小夏の弾き語りでリラックスして開演をまった。
ネタバレBOX
A「青ずきんちゃん」
吉田小夏の一人芝居。なんか楽しかった。当時の原稿のレンタルサービスといい、中一?の頃の作品の蔵出しまでする姿勢がなんかあたたか。
A「夕焼けの名前」
2人の老女(福寿奈央と高橋智子)の話。老いと友情が情緒で包まれる。
A「幸福の王子」
ワイルドの原作に吉田小夏の味付け。主にツバメ役の大西玲子がうまくて悲しかった。でもやさしい話なのか。
B「さよならドラえもん」
徴兵されるジャイアンに涙する一同。でも餞別の品を食べちゃおうと腹黒なしずか(大西)。ドラミちゃん(井上みなみ)は慰安婦ロボに改造され、ドラえもん(小栗剛)は原爆として、(皆を巻き込み)その生を閉じる…。ドラミの件はドラえもん以上にショッキングだろ!
B「磯野家の夜」
主人が浮気してんじゃないかと、イクラをあずけるタイコ(小夏)。「日本で一番幸せな家庭」と自負する磯野家の押入れから、マスオ(荒井志郎)の描いたラヴレターが見つかる。サザエ(福寿)は怒るも、それはマスオがサザエに初めて宛てた手紙だった…。いろいろ面白かった。サザエの毎週やってるというしゃっくりだか、喉のつまりだかの表現がうまい。とてもうまい。
B「恋女房」
保険のセールスマン・斉藤(荒井)が前任から引き継いだ田中家へ仕事に来ている。一夫多妻な田中の妻は3人(木下・福寿・井上)。前任も食べてたと一緒にひやむぎ?を食べる。そこに前任・芹沢の妻(大西)が乱入。芹沢と3人の妻の関係を怪しむ…。ラスト、前任も一緒でした、といって布団に促す妻(木下祐子)が色っぽくて、舞台を不穏な空気で満たす。
B「燈籠」
太宰っぽい気はした。咲子役の福寿奈央がうまいのか。ハマってるのか。
Aは「幸福の王子」、Bは「恋女房」が好み。役者は、福寿奈央がピカイチに感じた。声も表情も素敵だった。
チケットやチラシ、ロゴ、という細かなところから、舞台の開場から終演まで、いろいろ考えられた空気を感じる、総合的にレベルの高い企画に満足できた。企画名称もいい。
満足度★★★
王妃の器
面白かった。
ネタバレBOX
マッチ売りの少女(神戸アキコ)の前に7人の小人が現れ、この世で一番美しい貴女の願いを叶えてあげると。おとぎの国にいった少女は、さらに王妃になりたいと願うと、小人は王妃・シンデレラ(白井珠希)を刺殺し、少女が王妃に。魔法の鏡(日高愛美)への、この世で一番美しいのは誰?という問いを日々繰り返し、安心を得る少女。しかし、シンデレラの実子・白雪姫(黒木絵美花)こそ一番美しいとなってから、少女はさらに狂いだし、白雪姫を殺そうと毒林檎をプレゼント。死亡した姫に王子(永島敬三)がキスして復活。姫の策略で孤立した少女は火あぶりの刑になるも、これが王妃の「器」だと、周りの嘲りと怒号を意に介さず、死の瞬間まで踊り続ける…。
見所は少女の変貌とうちに抱える愛情を欲する寂寞感だろうか。かなりテンポが良いのでストレスは少ないが足早すぎる気も若干。少女の背景が見えにくく感じるし、小人・後藤剛範の少女への想いの軌跡が読みにくいく感じる。また、小人は善悪を判断するきっかけってなんだろうかと。王妃は殺すが少女が白雪姫を殺すことへの抵抗感の違いがわからんかった。それもひっくるめての残酷な話ということか。
白雪姫の無邪気から残酷な女への変貌が素敵。てか毒見するなら食べるな。王様役の島岡はスタンハンセン。いやいい迫力だったし良かったけど。大森茉利子のメガネな侍女も見た目的に良かった。神戸アキコの中盤の寂しさが伝わればもっと良かった舞台だったかなと。
満足度★★★
作家の脳ミソ
面白い構成と見せ方。
ネタバレBOX
江戸川乱歩・横溝正史・夢野久作ら3名の作家とその創造物らの、実と虚が入り混じった空中戦。
創作者をその創作人物が食い尽くす様、逆に押さえつける様、互いを想う様など、創作ならではの関係性というのだろうか。わかるようなわからんような。
終盤の、小野ゆたかの「俺は読者だ、カネ払ってんだ、楽しませろ」ってのが印象的。その際の、読者はこちら(創作側)には入ってこれない?ってところに、クリエイターの宣言を感じた。
乱歩役の西原誠吾が良かった。幕の使用方法やその奥のドアとかのセットの組み込み方がうまい。
満足度★★★
もしも~し
面白かった。
ネタバレBOX
阪神・淡路大震災が下敷きのファンタジー作品。
フルサト(工藤理穂)とタカラ(芦沢統人)は幼馴染みだけど、タカラは地元は何も自分に残してくれないと、上京し、フルサトは寂しく帰りを待つ。そんな中、ちょっと変わったハジメという人間(中島庸介)と出会うも、震災で死亡する。その15年後の東京、テレマーケティング事業の主任になったタカラは、バイト?のハジメに監禁され、フルサトのことを思い出せと迫られる…。
15年後のハジメの前に現れた少年(工藤理穂)や抽象的な存在のエイエン(西川)とソウル(森脇洋平)らをからませ、15年前と現在が舞台上で混じり合うような感覚。フルサトをなくした二人の男の哀しみが胸をえぐり、エイエンという名の少年(フルサトの生まれ変わり)に人の希望をみた。
リズミカルな言葉、発声の間は良い。タカラとハジメに感情移入しきれない感がある。占いのトクシゲさんに触れた時の「デキシ!」は面白い。工藤理穂の口周りというか輪郭に変な魅力がある。声も好き。
満足度★★★
青テント
なかなか面白い。チラシの伊藤えみの衣装と表情が素敵。
ネタバレBOX
動物園と美術館近くのホームレス村が舞台。本名を隠した人々らの中に、俳優を目指して上京した哲夫(きだともかず)の姿を見た、哲夫の幼馴染で陶芸家を目指す美和(伊藤えみ)は、村の一員となる。哲夫と美和の関係に、美和に片思いする動物園職員の桜庭(高木俊)と桜庭に想いを寄せる美術館職員の春子(高野亜沙美)らの思惑が入り混じり、紆余曲折の末、美和はイタリア陶芸の巨匠のアシスタント(弟子)になるべく、日本を離れる…。
主軸は、哲夫と美和の想いだと思うけども、ちょっと印象が薄い。周りのキャラがよいせいかしらないけど、ちょっと感情移入しにくい。哲夫上京時(OP)の陶芸作品を渡すのとか、美和の衰弱→ゴリラ襲撃とか、二人の見せ場としていいシーンなんだけど…。
全体的に笑えるとこもあったのは良かったかな。ホームレス集団とかのキャラとか。特に、ロストさん(宮吉康夫)は演技もエピソードも○。
哲夫の上京後を描く際の影絵(美和の作品表現含む)も見てて面白い。春子役の高野亜沙美の、ダークでコメディな演技が一番良かった。
ただ、ロストさんの首吊りとか春子の弟・太郎(沼田大輔)への暴行とか、物語上の位置づけがよくわからない。舞台的にぼやけてみえた。マリオ(ちゃんてじょん)と女子高生の女の子は、存在が?だった。
満足度★★★
ちょっと元気になれました。
なかなか味のある脚本群。根本宗子の甘え演技(声)はストレートに魅力的。
ネタバレBOX
「男 根本宗子」
ソフトバンクの社長に殺された(と思ってた)父の敵打ちのため、男になろうと空手着を着込んで四苦八苦する根本…というよくわからん話。1発目から全力で動きまくる。
「ボーイフレンド」
彼氏とのベッドシーン後、姉がしつこく訪ねてきて、彼氏はすでに死んでいたことがわかる。半ば狂気の根本はそのことを嘆き、姉を殺害するという話。骨子がしっかりして観やすい情事サスペンス。国分寺大人倶楽部のテーマ「愛、青春、死」が短時間に詰まってて面白い。ラストのキスシーンで哀しさが溢れる。一人芝居を逆手にとった手法が粋。
「顔」
男を見下すNo.1キャバ嬢。ある日、男の顔が全部同じに見えるようになって…という話。コメディ風な舞台かなと思ったら死んだ父の話に切り返して、女(娘)の純粋な視点になるところがミソ。見た目No.1キャバ嬢っぽくないけど。
「寝る前に」
茶漬けを食べて歯を磨いて…という寝る前のなんということない描写から、歌謡曲の熱唱へ。歌の良さはわからなかった。その前の茶漬けシーンとかの方が見入っていた。
「僕の彼女は、根本宗子」
ゲストは今村圭祐。今村の浮気が発覚して、路上まで包丁持って根本が追いかけてくる話。世の中のカップルのほとんどはこんなもんだというメッセージにちょっと納得。