小野寺の観てきた!クチコミ一覧

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軋み

軋み

ブラジル

新宿シアタートップス(東京都)

2008/12/10 (水) ~ 2008/12/14 (日)公演終了

満足度★★★★

結末はきっと賛否両論!しかし私は…
俳優皆さんの個性的で魅力あふれる演技が、「軋み」という作品をブラジルならではのアンサンブルをかもし出し、より深く、魅力あふれる作品へと導いていた。

本当に面白く、ある意味ブラジリィー・アン・山田氏でなければ書けない、彼自身の愛がこもった素晴らしい芝居だった。

ネタバレBOX

ある種、ブラジルらしくない物語の結末。その結末を選んだブラジリィー・アン・山田氏は、とても勇気のいる決断をしたとも思えたが、私にとってはとても心地よい結末だった。

私は、この「軋み」で描かれた夫婦の形にとても共感し、感動した。特に櫻井さんが演じたダメ夫ぶりは、本当に良かった。

そんなことを、回りの女性に話したら、あんな男性は絶対に許さない。という方が多く、自分のダメ男ぶりを再確認することになった。

私はこの作品が、ブラジリィー・アン・山田氏の将来を方向付けるような作品になるのではないかと思う。

「別に『エロ・グロ』じゃないきれいな作品だって、俺らしく面白く書けるんだぜ」っていっている感じがした(笑)。

今後の彼の作品がとても楽しみ。
CLASSICS vol.2

CLASSICS vol.2

AND ENDLESS

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2008/12/12 (金) ~ 2008/12/25 (木)公演終了

満足度★★★★

私が見たのは、『Cornelia』
ファンタジーの世界観をうまく作れるかは、芝居全体のクオリティーを維持する意味で重要な要素。そのために、舞台美術と衣装は、本当に重要になってくる。

そこに力を入れている劇団ということだけあって、舞台美術と衣装は質が高く、安心して物語の世界観に浸ることが出来た。

明らかに劇団のファンだけを対象に作られたシーンが、多くちりばめられていた事は、千秋楽スペシャルだったことを差し引いたとしても、新たなファンや純粋な演劇ファンを遠ざけてしまうのではないかと、思ってしまった。

しかしながら、全体としては脚本や俳優のレベルも含め、とてもクオリティーの高い作品だったと思う。

ネタバレBOX

オープニングにコラージュされたシーンが、物語が進むごとに繋がっていくという構成で、ちりばめられた複線が徐々に繋がっていく。

過去へと飛ばされた主人公達の素性が少しずつ明らかになるにつれ、「薔薇戦争」のあらましが解き明かされるという脚本は、とても面白かった。

照明や映像が、舞台装置をより奥深いものにしていて、とても美しい舞台だったし、派手な音楽にあわせたダンスや、殺陣シーンはよく計算されていて、とても見ごたえがあった。

主宰・作・演出・主演までこなす西田大輔という人のパワーに、とても感動し、とても興味を持った。是非一度、酒でも飲みながら、演劇論を語ってみたいと思った。

クリスマスと言うことで、来場者全員にプレゼントをわたしてくれていた。

お客様を楽しませる事に徹底していて、とても素敵なことだと思った。だってとってもうれしかった(笑)。

私にプレゼントをわたしてくれたのは、嘉陽愛子さん。素敵な女性にプレゼントをいただくと、掛け値なしでうれしくなる(笑)。

単純…
伝説との距離

伝説との距離

シャチキス(少年社中×ホチキス)

シアタートラム(東京都)

2010/09/16 (木) ~ 2010/09/19 (日)公演終了

満足度★★★★

ばかばかしいまでに素朴なテーマの奥に隠された愛!
宇宙という壮大なイメージで繰り広げられた物語なのだが、テーマはもの凄くシンプルなモノ。

悪く言えばばかばかしいまでに素朴なテーマに心を許し、無警戒に大笑いしていたはずなのに、いつの間にか頬を涙がつたっているという秀逸なストーリーだった。

この芝居の魅力は、何と言っても個性が強い俳優達のぶつかり合い。しかも、それぞれの俳優達がホームグランドではあまりやらないキャラクターを演じているところ。

そしてこの公演では、少年社中から11名、ホチキスから8名の俳優が参加し、総勢19名という大所帯の舞台となっていた。

そんな個性の強い俳優達の芝居を見事にコントロールし、観る方が気持ちよくなるバランスでまとめた毛利さんの演出は、本当に見事だった。

個性の強い俳優達の共演は本当に刺激的で、俳優と作家、そして演出家の熱い思いがバンバン客席に伝わってきていた。

ネタバレBOX

私のオススメはオープニングで出演者が演奏する生演奏と、ストーリーに重要なイメージを与える歌唱シーン。本当に圧巻だった。ちょっと告白してしまうが、私はもともと人間の声のパワーとか、生の演奏とか、劇空間の空気を実際に揺さぶる演出は大好き。だから、そのシーンはむちゃくちゃ涙腺がゆるんだ。

そして、この芝居を観て私が強く受け取ったメッセージは、彼らの「愛」だった。

「食」という誰もが身近なテーマを通して、人と人とのふれあいや、今の世の中で何となく否定されている空気がある「個性」の大切さ、そして本当の協調性の意味など、お客様の誰かが抱えているであろう葛藤に、まっすぐ語りかけくるような台詞と演技の数々。

誰もが心の隅に抱えている寂しさに、少し遠慮がち優しくに、だけど力強く語りかけてくるメッセージには、観ているお客様の心を暖めようとする彼らの気持ちがあふれていた。

宇宙船のコンピューターホログラムを演じていた、ホチキスの女優・齊藤美和子さん。脚本が描く彼女の設定や、彼女のかわいらしさには本当にやられてしまった。

そして、身内びいき承知の上パート1的に言えば(笑)、「ほほえみ」をとある理由で追いかける男を演じていた長谷川太郎さん。

彼は冒頭のシーンで、彼の容姿と声のトーン、そして、行き過ぎを感じるまでの(笑)大げさな芝居で、一気に観客を「日常」から、虚構のファンタジーに引き込んでくれた。

彼の情熱的な芝居と声の質は本当に魅力的だと思った。太郎君の声は、以外とアニメでもいけるんじゃないかという錯覚さえ感じさせてくれた(笑)。

最後に身内びいき承知の上パート2!(笑)

「ほほえみ」の艦長を演じていた岩田有民の芝居が本当によかった。

ちょっととぼけた感じで登場する艦長が、次第に物語の中心人物として描かれ、次第に物語のテーマを背負った重要な人物に変わっていく。そんな少し難しい役どころを、岩田有民は本当に丁寧に、そして情熱的に演じていた。本当に格好良かった。

私はこれまで、彼がちょっと尖ったヒールを演じるのがはまっているし、彼らしい芝居が出来ると考えていた。事実、私がプロデュースした芝居ではそうしたヒールの役で出演して頂いていた。

そして彼もそうした役が好きで、そうしたヒールみたいな演技を望んでいたように見えた。

だけど、前作の「ネバーランド」で彼が演じていたトゥートルズを観て以来、もしかしたらその私の考え方が間違っているのではないかと考えていた。

今回の艦長を演じる彼を観て、その間違いが正しかったことに気がついた。そして、彼の俳優としての才能に改めて驚かされた。

「伝説との距離」で彼があんな芝居をするとは全然思っていなかったけど、私は、彼の今回の役は後世に残るあたり役なんじゃないかと感じた。
まなこ の おく の ちいさな おんな

まなこ の おく の ちいさな おんな

しずくまち♭[フラット]

d-倉庫(東京都)

2010/10/08 (金) ~ 2010/10/11 (月)公演終了

満足度★★★★

女性のはかなさと強さを感じた
しずくまち♭の最大の特徴で、最大の魅力は、音楽の生演奏。今回の公演「まなこ の おく の ちいさな おんな」では、ピアノとピアニカによる生演奏だった。

電子回路が一切介在しない、人間の声と、楽器が振るわせる空気の波動だけで構成された作品は、ライブ感と魂を直に揺さぶってくれるパワーにあふれていた。

ナカヤマカズコさんの作品を観るのは、久し振りだったのだが、何だか作品が持っている空気感が、少し変わったような気がした。なんというか、少し丸くなったというか、よりソフトになった印象。

以前のナカヤマさんの作品は、ふわりとした空気感の中に、少し尖ったメッセージがちりばめられていた気がした。しかしこの作品では、尖ったメッセージは作品のテーマの奥底にうまく封じ込められ、彼女がこの作品に託したかったであろう、女性のはかなさと強さを、とてもシンプルに柔らかく表現していた。

ナカヤマさんのなかで、様々な変化が起こり、この作品にたどり着いたことがすごく素敵に表れていた。

「まなこ の おく の ちいさな おんな」は、とても良い作品だったと思う。

作・演出のナカヤマカズコさんの世界観は、ライブならではの魅力を最大限に生かしたとても魅力あふれる物だった。

生の楽器演奏と芝居のコラボレーションは本当に素敵だった。

ネタバレBOX

◎恒例!気になる俳優さん!
主演の諏訪友紀さんは、とてもよかった。「見つめられる」宿命を背負った「女」の葛藤や情念、そして次第に変化していく感情をとても丁寧に演じていた。

今後の彼女の活動には注目したい。

そして、岡田桂子。物語の重要なキーマンとなる難しい役を、彼女らしいアプローチでとても素敵に演じていた。特に後半の感情が大きく揺れ動き変化したあとの演技は、良かったと思う。再び彼女と芝居を作るのが楽しみになった。
ある日の出来事

ある日の出来事

リブレセン 劇団離風霊船

ザ・ポケット(東京都)

2011/11/09 (水) ~ 2011/11/13 (日)公演終了

満足度★★★★

伊東演出冴え渡る!
離風霊船らしい不条理劇で、観る者をじわじわと追い詰めてくるような作品だった。

俳優の皆さんの演技もすばらしく、濃密な時間を過ごさせていただいた。

最近観た芝居を否定するわけではないのだが、久しぶりに「演劇」らしい「演劇」を観た感じ。

人が人を演じると言うことを極限まで追求し、俳優をがんがん追い込んだであろう伊東さんの演出は、本当におもしろかった。

残念ながら、今日(13日)の15時からの回が千秋楽となるが、すごくおすすめな作品。

離風霊船おなじみの、楽日スペシャルは見逃せないと思う(笑)。神出鬼没な演出家・伊東由美子さんが、俳優たちにも内緒で、登場するとかしないとか。

VOICE ACTOR

VOICE ACTOR

劇団6番シード

萬劇場(東京都)

2008/07/16 (水) ~ 2008/07/21 (月)公演終了

満足度★★★★

中年俳優がんばれ!(笑)
ワンシチュエーションという舞台の特徴を、非常にうまく使ってコミカルに物語をつづるのが得意な劇団、「6番シード」。

今回も非常におもしろいシチュエーション・コメディに仕上がっていた。

「Voice Actor」の舞台は、架空のアニメーションのアフレコ現場。40歳を目前に控えた中年俳優が、人生初めての「声優」に挑むという、業界バックステージの物語。

私が、6番シードを前回拝見した時も、業界バックステージ物だった。ラジオの生放送中というシチュエーションを物語にした芝居で、緻密な取材により、綿密にラジオの現場が表現されていた。

現場を知っている私が観ていても、全く違和感を感じずに、物語を楽しむ事が出来た作品だったので、今回もとても楽しみに劇場に足を運んだ。

この「劇団6番シード」との出会いを作ってくれたのは、私の劇団、WHATCOLORの女優、山岸里江だった。

彼女は以前、劇団6番シードに出演した事があって、その後も作品を見続けていた。また、6番シードの方々もWHATCOLORの作品に足を運んで頂いていた。

山岸里江に誘われるまま、6番シードの舞台に足を運んだのだが、脚本・演出の松本陽一氏が描く、スピード感あふれるストーリーと世界観にすっかり惹かれ、その後も拝見し続けている。

コメディを取り入れたポップなスタイルや、テンポの良い台詞の掛け合いなどがこの劇団の魅力なのだが、私は何より緻密な脚本と個性豊かな俳優陣のパワフルな演技に惹かれている。

さて、今回の「Voice Actor」。セットといい、台詞といい、演出といい、とてもリアルにアフレコの現場を再現していたのには、とても驚かされた。

出演者も、全員のキャラが際立っていて、とても魅力的な舞台だったし、アフレコの現場を経験している私にとっては、「いるいるこんな人!」というキャラクターが何よりもおかしかった。

観ているうちに、主人公の行動に本気ではらはらしたり、イライラしたり(笑)。とてもお馬鹿な中年俳優のがんばりは、とても強く印象に残った。

脚本的には、シンプルでわかりやすいストーリーだった。

売れない40間近の中年俳優が初めてのアフレコの現場で、人気声優やベテラン声優達の中、孤軍奮闘していくストーリー。

主人公に感情移入しやすくて、無警戒に芝居を観ていられた感じ。

ただ、主人公以外のキャラクター、例えば人気若手声優やベテラン声優とかのバックボーンとか、葛藤とかを、もう少し脚本的に描いてもおもしろかったのではないかと思った。

まあ、芝居の上演時間を考えてみると、バランスとしては良かったんではないかとも思ってみたり(笑)。

さて恒例の気になった俳優シリーズだが、今回は主人公を演じていた小沢和之さん。

全編ハイテンションな芝居を続けていた小沢さん、本当に素敵だった。彼が演じていた「前田」という俳優のお馬鹿さとか、懸命さとかに、とても素直に感情移入する事が出来た。

小沢さんの演技テンションで、この作品全体のテンションが決まるといった、とても難しい役どころだったと思う。彼が演じた「前田」というキャラクターを、本当に素直におもしろいキャラクターとして拝見できたのは、小沢さんのパワーだと感じた。

本当に楽しい時間を過ごさせて頂いたと思う。

実はこの6番シードの次回作に、私の劇団、WHATCOLORの山岸里江が出演させていただくことになっている。

どんな作品になるのかが楽しみな事はもちろん、機会があれば、是非プロデューサーとして絡んでみたい、脚本・演出家の一人である松本陽一氏が、山岸里江をどのように描いてくれるのか、とても興味がある。

今後とも注目の劇団。

お台場SHOW-GEKI城「センチメンタル☆草津」

お台場SHOW-GEKI城「センチメンタル☆草津」

ブラジル

フジテレビメディアタワー マルチシアター(東京都)

2007/12/15 (土) ~ 2007/12/19 (水)公演終了

満足度★★★

エログロだよ山田さん!
賛否がはっきり分かれる作品になったと思う。ちなみに私は好き(笑)。

演劇祭、しかも特殊な観客が想定される今回のような企画に、あえてこの作品で挑んだブラジリィー・アン・山田さんは、すごいと思った。

セットの無い舞台上。観客は、演じる俳優に注目するしかない状況。俳優を徹底的に追い込んだ脚本や演出は、ホント観客に対する挑戦だった。

そして、初期のブラジルの作品だけあって、たしかにエログロだった(笑)。それにしても「○盛り」って(笑)。

「センチメンタル☆草津」と言う物語には、ブラジリィー・アン・山田さんの脚本らしい、魅力あふれる人物がたくさん描かれていた。

劇団員の辰巳さんの役なんかは、とても「ブラジル」らしいなと思った。また、辰巳さんもちょっと不思議な役を魅力的に演じられていたと思った。

また、中川さんの芝居は、いつも安定しててすごく印象に残る。良い俳優だと改めて感じた。

少し気になったのは、70分という時間の中には、収まりきれないほどの人間模様だった気がしてしまったことと、俳優のテンションがもっとあっても良かったのではと感じてしまったこと。

いろいろ良かっただけに、もったいないなーと思ってしまった。

幕末純情伝

幕末純情伝

松竹

新橋演舞場(東京都)

2008/08/13 (水) ~ 2008/08/27 (水)公演終了

満足度★★★

つかワールド満載!
戯曲のベースは残しつつ、出演する俳優や時代によって、台詞や物語が変化していくのは、つかさんの芝居の魅力の一つ。

政治や社会が弱いものに対し、圧迫を強いる構造がまかり通るこの時代に、あえて「幕末純情伝」をつかさんが自ら演出する事の意味を勘ぐってしまう。

石原さとみさん、真琴つばささんを主演に据えた、今回の公演がどうなるのか、本当に楽しみに劇場に足を運んだ。

幕が上がる直前まで、ワクワクして、血がかゆくなるような感触。

いざ幕が上がった瞬間、私はあっという間につかワールドへと引き込まれた。

歌有り、ダンス有り、殺陣有りと、俳優達を徹底的に魅せようという演出は、私にとってはとても心地よかった。

石原さとみさんのエロいシーンばかり、マスコミで取り上げられているが、そうしたシーンは確かに良かったのだが(笑)、それ以外にも彼女がよい演技をしているシーンは結構あった。

そしてこの芝居には、つかさんのメッセージが至る所にあふれていた。幕末という時代から、明治維新、そして現代と、俳優達の台詞は次から次へと時間軸を飛び越えている。

単なる幕末モノだと思って、ゆらり劇場に足を運んだら大変な事になる(笑)。

しかし、そこに一本の線として描かれているメッセージは明確だと思った。

そのメッセージとは…

ネタバレBOX

今回上演された「幕末純情伝」は、良くも悪くも、つかさんらしい作品だった。なんだか80年代の小劇場な感じ(笑)。



つかさんの芝居は、過激で過剰な人情劇だと思う。ひどく攻撃的な台詞を機関銃のように浴びせられる事を、必ずしも良しとしない人は多いのかも知れない。

今回の公演では、様々な演劇レビューのサイトで、批判的な意見が多く投稿されている。

だけど私は、この芝居がとても温かく、優しく、心に響いてきた。

もちろん一部の俳優の滑舌の悪さだとか、ダンスのつたなさとか、私だって「うーん、どうだろう」と思う点はままあった。

だけど分からないなら、それでいいのだと思う。この芝居の良さを感じられたのが、万が一私一人であったとしても(笑)、それはそれで良いと思った。

私にとってこの作「幕末純情伝」は珠玉のエンターテイメントな作品だった。

ラスト近く、なぜ子どもが欲しいかと、真琴つばささん演じる坂本龍馬に問われて、石原さとみさん演じる沖田が答えるシーンがある。

私はそのシーンがたまらなく好きだ。

お年寄りが信号渡るまで手を引いてあげられる子どもに育てたいと思ったんだよ。立派な人間にならなくていいんだよ。ただそういうことが出来る子どもがいなきゃ日本がだめになると思ったんだよ。
(戯曲&小説「幕末純情伝」つかこうへい/著 販売:トレンドシェアより)

私は間違いなくこの芝居を観て、勇気や元気を貰った。

さて最後に、この私が感じた「幕末純情伝」で、一本の線として描かれているメッセージとは…。

それは、男と女の愛情のすばらしさだ。
悪役志願

悪役志願

黒色綺譚カナリア派

座・高円寺1(東京都)

2010/08/20 (金) ~ 2010/08/26 (木)公演終了

満足度★★★

劇空間が「ムック」ワールドに染まっていた!
この公演に、私が主宰いているWHATCOLORに出演したことがある、大原研二さんが出演していたことがきっかけで、劇場に足を運んだ。

この劇団は、少し自分の好みとは違う感じがしていたので、興味を持ちながらもなかなか観る機会がなかった劇団の一つだったので、彼がこの公演に参加してくれたことを喜んだ(笑)。

高さがある「座・高円寺1」の舞台をうまく生かした多層構造のセットをはじめ、照明や音響、俳優の台詞や舞台上の空気感が、一つの世界観にまとめ上げられていて、とても面白い作品だった。

ネタバレBOX

娼館で渦巻く陰謀と、時代に翻弄される人々の群像劇。描かれている世界観が、リアルすぎないのがとても心地良い感じ。

女性陣の素敵な衣装と、意味ありすぎる男性陣の衣装にも注目。女性演出家らしいこだわりと遊び心に、思わずほくそ笑んでしまった。

印象に残ったのは、ダメ男に翻弄される女の愚かしさと愛おしさ。

他にもその事に触れている方がいたが、ダメ男に惚れたことがある女性は、かなり感情移入してしまい、そしてその時の傷を思い出して、ちくっとするくらい、リアルに描かれていたような気がする。

そして私が印象に残った俳優は、牛水里美さん。

オープニングとエンディングでは別人のようになるテコと言う人物を見事に演じていて、容姿とは裏腹な演技と、実力の高さに驚かされた。

私の中で是非一度、一緒に芝居を作ってみたい女優さんとなった。
黒船だあ!

黒船だあ!

リブレセン 劇団離風霊船

みなとみらいテント劇場(神奈川県)

2008/10/15 (水) ~ 2008/10/21 (火)公演終了

満足度★★★

なんちゃって時代劇!
私がプロデュースしている劇団WHATCOLORが、いろいろとお世話になっている劇団、離風霊船のテント公演を観に行った。

離風霊船といえば、屋台崩しといわれる派手なセット転換で有名!

今回は、テントの公演と言うことで、どんなに派手なセット転換になるんだろうかと、とても楽しみに足を運んだ。

和楽器による生演奏、歌あり、踊りあり、殺陣ありで、これぞ「芝居!」って感じ。

テントならではの派手な仕掛けも盛りだくさん!はちゃめちゃな感じがとても楽しかった。

ネタバレBOX

50人近いキャストが繰り広げるなんちゃって時代劇(笑)。

テントの舞台には、見事に長屋が再現されていた。二階に部屋があってそこで芝居をしていたり、出演者の皆さんの着物が素敵だったり、観ているだけでワクワクしてきた。

歴史の教科書で知っているような人物と、名前は同じだけど全く関係が無いという登場人物達が、生き生きと生活している姿に、どんどん物語に引き込まれていく。

発明を志す「源内先生」や、裕福な商家から盗みをはたらき市中にその金をばらまく盗人の「ねみ」、尊皇攘夷で対立する「勝」や「西郷」、そして「坂本」と坂本の命をねらう新選組の「沖田」と「土方」など、史実とは関係ないと分かりつつも(笑)、そのキャラクターの言葉や行動に史実を重ねて、とても楽しく観ることが出来た。

作・演出の大橋さんの脚本や演出が、現代の世相をとてもうまく幕末に重ねていて、大笑いしたり、考えさせられたり。

印象に残ったシーンは、源内先生が、大きな武器を作ること承諾してしまい、その恋人「おすま」がある決意をして、長屋を離れるシーン。

舞台後ろの扉が開き、インターコンチネンタルと大観覧車のネオンと横浜の夜景が見え、冷たい風が客席に流れ込んできた。

舞台中央にたたずむ「おすま」役の大矢敦子さんの姿とが一体化して、とても素敵なシーンとなっていた。

また、テントならではの爆発シーンは、とても迫力があった。

私は前から2列目にいたのだが、爆発で起きた熱風がしっかりと感じることが出来た。しばらくはテントの中に、火薬の臭いが充満していた。

そしてラストには、大きな黒船がステージに登場する。船に乗っているJoanna.マッカーシーと、日本の女性達が語り合うシーンでの台詞は、とても胸に響いた。

「私達は、子どもを産み、育てるんです」
「私達のような女性が、世界を動かせるようになったら、また来てください。」

台詞は、この通りではなかったかもしれないけど(笑)、なぜかとても印象的だった。

恒例の気になる俳優シリーズだが、西郷の弟子甚太を演じていた小澤浩明さん。地味なお笑い役だったけど、とても印象に残った。特に卵焼きの食いっぷり(笑)。

今後どんな演技をする俳優になるのか、とても楽しみな感じ。

テント芝居って、その場所の空気を一緒に楽しめるのが魅力。

離風霊船の友人の俳優さんから、テントの設営は本当に大変だったと聞いた。けが人が出たりして、精神的にも肉体的にも、本当につらかったらしい。

そんな話を聞いたにもかかわらず、無謀な私はテント芝居をプロデュースしてみたいと思った(笑)。

そんなわけで、そうして苦労したテントに是非皆様、足を運んでいただけたらと思った。とにかくすごく単純に「芝居」が楽しめた作品だったので、初めてお芝居を観る方でも、安心してご覧頂けると思う。
旧歌

旧歌

熱帯倶楽部

新宿シアターモリエール(東京都)

2008/07/30 (水) ~ 2008/08/03 (日)公演終了

満足度★★★

線香花火のような芝居
観終わったあと、ほっこりとやさしい気分になれた。それぞれの俳優が描いた人物達が、ふんわりと胸に残る感じ。

家族だったり、大人同士だったり、お互い照れて口に出せないような思いや言葉。そうした大人の情感を、とても丁寧に描いた脚本、演出だった。

また、ベテランから、中堅、若手としっかりと世代を意識したキャスティングはとても素晴らしく、すんなり世界観の中に入り込む事が出来た。

母親を演じていた劇団民藝の別府康子さんを観ながら、田舎にいる年老いた自分の母を、思い浮かべてみたり…。

打ち上げ花火のような派手さはないけど、線香花火を静かに家族で楽しむような、しっとりとした大人の芝居だったと思う。

さて恒例の気になった俳優シリーズだが、まずは今村有希。主人公の妹で、要所要所でストーリー展開のキーマンとなっている役どころを丁寧に演じていた。

台本上の設定は分からないのだが、彼女の年齢そのままの役っぽくて、新鮮な感じだった。

彼女のお姉さんの主人公を演じていた、ふるたこうこさんとのバランスもとても良くて、安心してみられた感じ(笑)。

彼女の演技の幅が、また一つ広がったなと思う。

そしてもうひとかたは、モダンスイマーズの古山憲太郎さん。とてもカッコ良かった。なんというか重ねた年齢をきちんと演技に載せられている感じ。大人が抱えるめんどくさい複雑な感情を、うまく殺しながらも、その感情をちゃんと観ている人が感じられるような芝居をされていた。

今後の活動をチェックしていきたいと思った。

そしてもう一人、笹峯あいさん。彼女が演じた独特のキャラクターはとても魅力的で、大笑いさせられた。

彼女の今後の活動もチェックさせて頂こうと思った。

私の劇団も作家がいない劇団。この「熱帯倶楽部」の芝居の作り方には、かなり興味が湧いた。

特に今回のキャスティング。役どころとして年齢的にかなり幅があるキャスティングを、説得力のある俳優さんでまとめている事に、とても感心させられた。当たり前といえば当たり前の事だが、様々な条件の中で、様々な年齢のキャストをキャスティングするのは、実はかなり大変な事。

このユニットの、今後の活動に注目したいと思う。

傷心館の幽霊(浅野泰徳演出)

傷心館の幽霊(浅野泰徳演出)

(株)喝采企画

シアターKASSAI(東京都)

2010/08/25 (水) ~ 2010/08/29 (日)公演終了

満足度★★★

浅野さんの演出力にうなった!
脚本がとても面白く、そこに浅野さんならではの演出が乗っているのが、とても心地よかった。

久間さんが、この脚本を浅野さんに演出させたセンスは、本当に素晴らしいと思った。

ネタバレBOX

俳優の中に何人か、感情を旨く身体表現できてない方がいて、それは少し残念だった。

松宮かんなさんが、これだけしっかり「人間」の役を演じているのは、初めて観た気がする(笑)。なかなか素敵でした。

そして、
それにしても、
福津屋兼蔵さんの「おかま」役は、
ずるい。(笑)

福津屋さんの実力の高さを、改めて感じさせて頂いた。


新宿番外地

新宿番外地

椿組

花園神社(東京都)

2008/07/12 (土) ~ 2008/07/22 (火)公演終了

満足度★★★

外波山文明さんみたいになりたい
今回の椿組は、私が好きな劇団、毛皮族とのコラボレーションという事で、むちゃくちゃ楽しみだった。

物語の舞台は、30年後の歌舞伎町。隔離された無法地帯に集められた人々がおりなす泥臭い物語。主題歌に、山崎ハコさんの曲が使用されたりしていて、未来という設定なのに、むしろ「昭和」の臭いを感じてしまった。

芝居全体に流れていた俳優達のエネルギーは、とても心地よく胸に届いてきた。

この公演のプロデューサーでもあり、椿組の主宰でもあり、俳優でもある外波山文明氏が、30年後の外波山文明という90歳の役で登場していたのが、とてもおもしろかった。彼の芝居にかける情熱が、そのまま役として演出されていたのがとても良かった。

彼が1960年代のアングラ芝居の事を語るシーンとかは、なぜかじーんとしてしまった(笑)。

挿入劇として演じられた「混乱出血鬼」のワンシーンでは、客席からアングラ演劇さながらのかけ声がかかり、まるでその時代にタイムスリップしたかのようだった。

また、毛皮族の江本純子さんが手がけた、劇中劇のショウの場面は、とても華やかで楽しいモノだった。まあ、いってしまえば毛皮族そのものみたいな(笑)。

江本純子さんの天才ぶりが、見事に発揮されていて、そのクオリティーの高いパフォーマンスに私は大満足だった。

特にフラッシュダンスのラストのダンスを完全コピーしていた場面や、荻野目洋子の六本木純情派やダンシングヒーローを歌うシーンは、本当にすごかった!(笑)

恒例の気になった俳優シリーズは、おおかたの皆さんの予想通り(笑)、毛皮族の町田マリーさん。そのかわいらしい姿に、釘付けになってしまった。

もちろんかわいらしいだけではなく、存在感のある演技、華麗なダンスなど、改めて魅力あふれる女優だと思った。

物語が終了して、カーテンコール。

主題歌のイントロが流れ始め、幕が再び開いた時、舞台上にはなんと山崎ハコさんがいて、生で主題歌を歌ってくれた。

パワフルな声量と表現力を誇る歌い方は健在で、もの凄く感動した。

そして最後は、その歌にあわせて、出演者全員が踊るという、素敵なエンディングだった。

脚本や演出は、賛否いろいろ別れそうな作品だったが、空気感と共に、夏ならではの娯楽として、私は単純に楽しむ事が出来た。

賊

劇団6番シード

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2008/11/14 (金) ~ 2008/11/24 (月)公演終了

満足度★★★

コーフンしました!里江も良い役で良かった
総勢40人が、舞台のみならず、客席の脇や、真ん中の通路など、会場中を走り回る様子は、本当に迫力があった。そのすべての登場人物たちが、どの人物も丁寧に描かれていて、すべてのキャラクターが生き生きと演出されていた。

そして、それぞれのキャラクターを彩る衣装や、ヘアスタイルもとても素敵だった。特に女優陣が着ていた着物は、本当にきれいだった。

音楽もとても印象に残った。特に生での歌唱シーンがあった、挿入歌はとてもよかったし、彼らが鬼だという設定は素敵だった。

また、脚本もとても面白く、東・西・南に分けられた海賊達や、その争いに巻き込まれた北の公家達の思いが、徐々につむぎあってエンディングへと向かっていくストーリーは見事だった。

休憩を挟んだ3時間の芝居だったが、まったく長さは感じなかった。

ただ、要素を盛り込みすぎていて、少しだけストーリーが散漫になり、エンディングのダイナミックさが少し、物足りなく感じてしまった点や、細かい点だが、滑舌悪く台詞が聞き取りづらい方がいたのは、大きいステージだけにもったいないなーと感じた。

脚本をもう一息練れたり、俳優個々の細かい稽古をもう少し追及したら、さらに良くなると感じてみた。

しかし全体的には素晴らしい作品だったと思うし、15周年の[総力]公演と題打っているだけあって、見ごたえたっぷりな公演だった。

ネタバレBOX

うちの劇団の女優、山岸里江が演じていた嶺森(ねむり)という役は、他の女海賊達と少しテンポが違った役で、印象に残る役だった。少し色気のある感じに演出され、これまでに観た事がない感じの役で、とてもよかった。

これまで劇団では、しっかりと色気を要求されるような役を演じていなかった気がするのだが、何かとても彼女らしいキャラクターのように見えて、それでいてまったくこれまでこんな演技をした山岸を見たことがないと感じられるような、とても魅力ある配役だったと思う。

女海賊達の冒頭のシーンで、踊りを舞う三人の海賊が登場するのだが、そのシーンは彼女が振り付けを行っていた。

そこに踊りが入ってくるという演出も素敵だったし、彼女の振り付けや踊りも素敵だった。

この役を演じたことで、彼女もいろいろなことを感じ、新たな欲も出てきたようだ。

私は彼女がこの役に出会ったことは、大きな財産だと思った。女優として思い切って幅を広げられるチャンスだと思う。

彼女の成長がますます楽しみになってきたし、次に彼女が演じる役を、どうするか考えるのが楽しみだ。本当にいい役を頂いたと思う。

今回の作品を作・演出をされた松本陽一さんには、改めて感謝の気持をお伝えしたい。そして、一緒に作品を作ってみたいという気持ちを、いっそう強く持った。
バック・トゥ・ザ 三億円事件!

バック・トゥ・ザ 三億円事件!

THE東京ピチピチBOYS

北沢タウンホール(北沢区民会館)(東京都)

2011/08/27 (土) ~ 2011/08/28 (日)公演終了

満足度★★★

俳優の皆様が素敵でした!
私の劇団、WHATCOLORの笑門福が出演させていただいたので、拝見しました。

すごく素敵な作品でした。シンプルでわかりやすいストーリーの中に、物語の細かい伏線が丁寧に張られ、とても魅力的な作品に仕上がっていたと思いました。

私は特に出演の皆様の演技に、強く魅きつけられました。

WHATCCOLORと縁がある、大高雄一郎さんと、仲沢景さんの演技はとても素敵でした。私たちの劇団に参加していただいたときは、いわば弟分的な役で出演していた彼らが、「バック・トゥ・ザ 三億円事件!」では、兄貴分の役で出演していました。時の流れを感じるとともに、彼らの成長を感じ、なんだかすごくうれしくなりました。

そして、主演をつとめた久永輝明さんの熱い演技には、すっかりやれてしまいました。芝居に対する情熱がまっすぐ現れた演技に心を引かれ、是非一度一緒に芝居を作らせていただきたいと思いました。

また、笑門 福と絡みが多かった、平川舞弥さんのかわいらしい演技もとても印象に残りました。もし興味があるなら、WHATCOLORの舞台でも、笑門 福と共演してほしいと思いました。

こども かける たそがれ ぶん の いち

こども かける たそがれ ぶん の いち

しずくまち♭[フラット]

d-倉庫(東京都)

2010/10/09 (土) ~ 2010/10/12 (火)公演終了

満足度★★★

エネルギーが満ちあふれていた!
実は私は2004年の初演を観ていたので、今回どのような作品に仕上がっているのかが、とても楽しみだった。

ちいさな王国に流れ着いた一人の自称「こども」。彼がやってきたことで、王国の人間関係のバランスが少しずつ崩れていく。

こどもとおとなの境界線を、不老不死であるひととそうでないひとの間に引いた、ナカヤマカズコさんらしい不思議な世界観のお話だった。

出演者のほとんどが、演劇を始めて間もない俳優とのこと。彼らが演じた「こども」は、演じることへの思いにあふれ、彼らの目にはパワーがみなぎっていて、私はすっかり物語の世界に引き込まれてしまった。

少し変わった難しい世界観の中で、どの俳優もみずみずしいエネルギーにあふれた演技をしていて、すごく素敵な公演に仕上がっていたと思う。

◎恒例!気になる俳優さん!
この公演で私が注目したのは、野澤恵梨さん。難しい役どころをのびのびと、楽しそうに演じていたのが印象に残った。

おそらく彼女は、細かくつけられた演出に答えるために、もの凄く沢山の努力を積み重ね公演に望んでいたように見えた。今後の活動に注目したい。

そして身内の倉地裕衣。慣れない環境の中で、沢山の苦労をしたんだと思う。彼女が演じた役は、すごく難しい役だったが、彼女の今のベストが出せていたんじゃないかと思った。今後の彼女の活躍に期待したい!

ネタバレBOX

物語の中で、手作りの星形の飾りに願いを書いて、舞台に飾られたロープにつるすというシーンがあった。やがてそれが、物語の重要な複線となっていくこのシーンは、この作品で私が最も好きなシーン。

このシーンを観ながら私自身の、おとなとこどもの境界線を考えさせられた。

そして、ワークショップ公演の素敵さにちょっと心を動かされた。

私も、演劇を始めて間もない、みずみずしいエネルギーに満ちた俳優たちと作品を作ってみたいなと思った。

「こども かける たそがれ ぶん の いち」は本当に素敵な公演だった。
深情さびつく回転儀

深情さびつく回転儀

電動夏子安置システム

サンモールスタジオ(東京都)

2009/10/16 (金) ~ 2009/10/25 (日)公演終了

満足度★★★

他の結末が気になる!
YouTubeには予告編や出演者による内容解説などが上がっていた。

私も自分の劇団やプロデュース公演で、映像による宣伝活動を行っているので、「電動夏子安置システム」のこうした映像によるアプローチにとてもリスペクトな感じ。

とても楽しみに劇場に足を運んだ。

ネタバレBOX

良くも悪くもとてもざっくりとした脚本(笑)だったが、台詞の勢いや、キャストのキャラクターのおもしろさで、物語を楽しむことが出来た。

ある種ミステリー的な展開の中で、印象的なキャラクターやうまくいかない会話のやりとりで、おおいに笑わせてもらった。

6つのエンディングがあるということだったが、物語の分岐点がどこにあるのかは全く分からない脚本となっていて、他のエンディングがとても気になった。

◎印象に残った俳優さん
この公演をご案内くださった七味まゆ味さんの存在感はさすが。心に響く声と立ち姿は印象に残った。

そして、菊地未来さん。はかない感じの女性を印象的に演じていて、心に残った女優さん。

それから、道井良樹さん。彼が演じていたKYなキャラクターは、きっとこの劇団のお約束なキャラクターなのでしょう。とても面白かった。その存在感が、物語をぐいぐい引っ張っている感じ。良い俳優だと思った。

◎ちょっぴり気になった点
細かい設定や、仕組みの説明を脚本から省いてあったことで、純粋に舞台上で巻き起こる出来事や台詞などを楽しめた。

しかし私は設定や仕組みの説明がなかったため、なかなか物語の世界観に入り込めなかった。

「電動夏子安置システム」という劇団を何度か観ているお客様にとっては違和感がないのかもしれないのだが、初見だった私は、物語の展開の途中で、頭に何度もクエスチョンマークが浮かんでしまった。

劇団の主宰で脚本を担当した竹田氏が、「不親切」な物語構成であると当日パンフレットにコメントしていたが、私はおそらくご本人が思っていないであろう点で、「不親切」だと感じてしまった。

また、段取りに追われ、演じている人物の動きと気持ちがバラバラな俳優が何人かいた。

丁寧に感情をつなげている俳優もいたし、全体的なキャストのバランスもよく、キャラクターづくりも面白かったので、すごく残念だった。

とはいえ、とても面白い企画だと思うし、物語としても楽しめたので、オススメな公演であることは確か!
遥かなる山でヤッホッホ

遥かなる山でヤッホッホ

Theatre劇団子

紀伊國屋ホール(東京都)

2007/11/15 (木) ~ 2007/11/18 (日)公演終了

満足度★★★

さすが石山氏
私たちの劇団と一緒に作品づくりを行ってくれた石山氏の自らの劇団公演。

紀伊國屋ホールというバリューのある小屋での公演に、どのような作品で彼が挑むかはとても興味がありました。

ロビーには、私たちの劇団公演で出演していた方が数名、受付のお手伝いをされていて、なんだかとてもくすぐったい感じ(笑)。

作品としては、石山さんらしいテイストの作品で、とても安心してみることが出来ました。脚本としても、演出面でも、とても関し度が高い作品だったと思います。派手ではないけれど、「安心してみられる芝居」に仕上がっていました。

紀伊國屋という小屋で、あえてこの作品を選んだということで、石山さんが、「シアトル劇団子」という集団を、どのように導こうとしているのかが、少しだけ伝わってきたように思いました。

特に印象的だったのは、「斉藤範子」という女優のすばらしさ。彼女の魅力的で、存在感ある演技を楽しめたことで、改めて良い女優だと言うことを認識しました。

この劇団の次回作、そして今後の活動が、とても楽しみになりました。

ネタバレBOX

登山と人生、そして人間の誕生をシンクロさせた台本は、とても素晴らしいものでした。

途中の15秒の休憩とその直後に流れる映像は、もうひとひねりあっても良かったかなと思いました(笑)。
ツチノコ村 〜深き欲望の果て〜

ツチノコ村 〜深き欲望の果て〜

神保町花月

神保町花月(東京都)

2008/08/05 (火) ~ 2008/08/10 (日)公演終了

満足度★★★

夏らしいブラックユーモア
WHATCOLORの第10回記念公演の総合演出を担当してくれた、ブラジリィー・アン・山田(ブラジル)さんが、神保町花月で脚本・演出を担当すると聞いて足を運んだ。

ブラジリィー・アン・山田さんが神保町花月の芝居に関わるのはこれで2度目。前回は、演出だけだったのだが、今回は脚本も担当するという事もあり、とても楽しみに劇場に足を運んだ。

ブラジリィー・アン・山田さんらしい、ブラックな物語になっていた。

平和そうに見える家族の裏に潜む様々な感情を、ストーリー展開の中で丁寧に織り上げて行く構成は見事で、単なるお笑い芝居にとどまらない、とても良い作品になっていた。

ブラックユーモアという世界観が、この劇場のお客様に受け入れられるのかという事も含め、アン山田氏の果敢に責める心意気が伝わってきた。

実際お客様は見事に物語に引き込まれていたように思うし、その中で良く笑っていた。

驚いたのは、このシュールな脚本の中で、芸人さん達が役を演じながら、ちゃんと自分達らしい笑いをとろうとしていたこと。その芸人根性に感動した。

しかし本当におもしろい脚本だった。

これを私の周りの俳優達でやったら、それはそれでずいぶんおもしろくなりそうだなと思い、勝手なキャスティングを妄想して楽しませて頂いた(笑)。

今回は、ブラジリィー・アン・山田氏の底力を感じた作品だった。

山田さん、うちの作品もヨロシクです。

ネタバレBOX

父親を失い、兄に逃げられ、懸命に畑を守ろうとする次男の葛藤を中心に、三男の嫁が心に秘めた長男への思いや、ツチノコを使って一儲けしようと企む長男のしたたかさなど、アン山田氏らしい人間の描き方はさすがだった。

恒例の気になった俳優シリーズだが、今回はほとんどのキャストが芸人さんだったので、女優の二人、岡田亜矢さんと鈴木亜季さんをあげたい。

客席の9割以上が女性、しかも芸人さん達のファンというアウェイの中、その彼女たちにも嫌われず、かつ、物語を素敵に見せていくというのは、本当に大変だと思う。

もちろん、脚本や演出にもよると思うのだが、彼女たちはとても素直にそれをやれている感じがとても良かった。

岡田亜矢さんの魔性の女ぶりは、とてもかわいらしかった(笑)し、鈴木亜季さんの老け役のお母さんぶりは素敵だった。
ロマンシングガーデン

ロマンシングガーデン

東京凡人座

明石スタジオ(東京都)

2008/09/12 (金) ~ 2008/09/15 (月)公演終了

満足度★★★

ちゃんとばかばかしい…
先日行った、WHATCOLORの企画公演で、クールな(笑)刑事役を演じ、その笑いの間と相方の吉井由紀さんとの掛け合いが、各方面から多くの評価を得ていた、瀬戸宏一さん。

その彼が主宰している劇団、東京凡人座を観に行った。

彼らは本公演以外にも、環境をテーマとして、子供達が親しみやすいヒーローショー形式で行う芝居、「環境戦隊 エコレンジャー」の活動も行っている。

ちなみに今回の公演では、チケット料金のうち200円を「緑の東京募金~海の森への植樹~」へと募金するとの事だった。

フライヤーのあらすじを読んで、あまりのばかばかしさに笑ってしまった。

蜂に誘拐されて、ハエとバッタを従えてって一体どんな話しなんだよと、期待を込めて劇場に足を運んだ。

シンプルでわかりやすいストーリーで、安心して物語の世界観に引き込まれ、めいっぱい笑わせて貰った。

ネタバレBOX

ファンタジーのかなめは、なんと言っても衣装。その衣装によって物語にすんなり入れるかどうかが決まってしまう。

「ロマンシング・ガーデン ~飛んで火に入る夏の虫~」の衣装はとてもおしゃれで素敵だった。特に蜂チームとキリギリス。

そして出演していた俳優の皆さんが、とても個性的で、衣装によってその印象がよけいに強く見えた。

人間のカップル二人が、見事に浮いて見えたのは、衣装だけではなく、俳優の皆さんの個性の強さだと感じた。

さて、恒例の気になった俳優さんは、ハエを演じていた小林達明さん。間をはずした芝居とか、空気読めない感の芝居とか、結構ツボだった。

役として怠惰な感じなのか、本人が怠惰なのか(笑)、そのぎりぎり感がとてもよかった。

なんか一緒に飲んでみたい感じ(爆)。

瀬戸さんの描く世界観や、演出も私的にははまって、とても楽しい時間を過ごした。

難しい事を考えず、ただ芝居を楽しみたい方は是非。

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