伝説との距離 公演情報 シャチキス(少年社中×ホチキス)「伝説との距離」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    ばかばかしいまでに素朴なテーマの奥に隠された愛!
    宇宙という壮大なイメージで繰り広げられた物語なのだが、テーマはもの凄くシンプルなモノ。

    悪く言えばばかばかしいまでに素朴なテーマに心を許し、無警戒に大笑いしていたはずなのに、いつの間にか頬を涙がつたっているという秀逸なストーリーだった。

    この芝居の魅力は、何と言っても個性が強い俳優達のぶつかり合い。しかも、それぞれの俳優達がホームグランドではあまりやらないキャラクターを演じているところ。

    そしてこの公演では、少年社中から11名、ホチキスから8名の俳優が参加し、総勢19名という大所帯の舞台となっていた。

    そんな個性の強い俳優達の芝居を見事にコントロールし、観る方が気持ちよくなるバランスでまとめた毛利さんの演出は、本当に見事だった。

    個性の強い俳優達の共演は本当に刺激的で、俳優と作家、そして演出家の熱い思いがバンバン客席に伝わってきていた。

    ネタバレBOX

    私のオススメはオープニングで出演者が演奏する生演奏と、ストーリーに重要なイメージを与える歌唱シーン。本当に圧巻だった。ちょっと告白してしまうが、私はもともと人間の声のパワーとか、生の演奏とか、劇空間の空気を実際に揺さぶる演出は大好き。だから、そのシーンはむちゃくちゃ涙腺がゆるんだ。

    そして、この芝居を観て私が強く受け取ったメッセージは、彼らの「愛」だった。

    「食」という誰もが身近なテーマを通して、人と人とのふれあいや、今の世の中で何となく否定されている空気がある「個性」の大切さ、そして本当の協調性の意味など、お客様の誰かが抱えているであろう葛藤に、まっすぐ語りかけくるような台詞と演技の数々。

    誰もが心の隅に抱えている寂しさに、少し遠慮がち優しくに、だけど力強く語りかけてくるメッセージには、観ているお客様の心を暖めようとする彼らの気持ちがあふれていた。

    宇宙船のコンピューターホログラムを演じていた、ホチキスの女優・齊藤美和子さん。脚本が描く彼女の設定や、彼女のかわいらしさには本当にやられてしまった。

    そして、身内びいき承知の上パート1的に言えば(笑)、「ほほえみ」をとある理由で追いかける男を演じていた長谷川太郎さん。

    彼は冒頭のシーンで、彼の容姿と声のトーン、そして、行き過ぎを感じるまでの(笑)大げさな芝居で、一気に観客を「日常」から、虚構のファンタジーに引き込んでくれた。

    彼の情熱的な芝居と声の質は本当に魅力的だと思った。太郎君の声は、以外とアニメでもいけるんじゃないかという錯覚さえ感じさせてくれた(笑)。

    最後に身内びいき承知の上パート2!(笑)

    「ほほえみ」の艦長を演じていた岩田有民の芝居が本当によかった。

    ちょっととぼけた感じで登場する艦長が、次第に物語の中心人物として描かれ、次第に物語のテーマを背負った重要な人物に変わっていく。そんな少し難しい役どころを、岩田有民は本当に丁寧に、そして情熱的に演じていた。本当に格好良かった。

    私はこれまで、彼がちょっと尖ったヒールを演じるのがはまっているし、彼らしい芝居が出来ると考えていた。事実、私がプロデュースした芝居ではそうしたヒールの役で出演して頂いていた。

    そして彼もそうした役が好きで、そうしたヒールみたいな演技を望んでいたように見えた。

    だけど、前作の「ネバーランド」で彼が演じていたトゥートルズを観て以来、もしかしたらその私の考え方が間違っているのではないかと考えていた。

    今回の艦長を演じる彼を観て、その間違いが正しかったことに気がついた。そして、彼の俳優としての才能に改めて驚かされた。

    「伝説との距離」で彼があんな芝居をするとは全然思っていなかったけど、私は、彼の今回の役は後世に残るあたり役なんじゃないかと感じた。

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    2010/09/21 06:49

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