二月大歌舞伎
松竹
歌舞伎座(東京都)
2007/02/01 (木) ~ 2007/02/25 (日)公演終了
満足度★★★★
様式美に酔う
壮大さと矮小さを交錯させる劇作術の大らかさ、模範的な様式美の数々に酔いしれました。
シリアスな段のペースの遅さには沈没したこともありますが、疲労に値する大きな観劇の満足を得ることのできる演目です。
奥州安達原
ク・ナウカ
文化学園 体育館(東京都)
2007/02/19 (月) ~ 2007/02/27 (火)公演終了
満足度★★★★★
古典の世界をさらに拡大する
鬼婆伝承をとりあげた「一の家」の世界を、独自の解釈と演出でさらに押し広げ、劇的に展開させた優れた舞台だと思いました。原作にある「小さな物語」と「大きな物語」の対比と関連が、ク・ナウカ版では鮮やかに示されています。古典作品の再解釈の意義を改めて認識しました。
芝居の始まる前の「日常」から「舞台」、「舞台内世界」への移行を意識させる仕掛けもとても洗煉されていて、楽しいものでした。
ク・ナウカの完成された様式を存分に堪能することの舞台です。
これで少なくとも当分のあいだは、この極めて高い水準に達した独創的舞台を観ることができません。必見だと思います
ヒステリア
まつもと市民芸術館
シアタートラム(東京都)
2007/02/13 (火) ~ 2007/03/03 (土)公演終了
満足度★★★
凡庸なイメージ
ロンドンにあった最晩年のフロイトの書斎に、見知らぬ若い女性が突然訪問してきて、奇矯な言動でフロイトを苦しめる。さらにシュールリアリズムの画家ダリがやってきて、混乱に拍車がかる。
前半はドタバタ風の笑いもあり。後半はフロイト自身の悪夢、オプセッションが展開される。
凡庸でありふれた精神分析もの。展開にひねりなく、台詞のやりとりもさえがない。なぜこんなつまらない戯曲をわざわざ翻訳して日本で上演したいのか理解に苦しむ。
個性的で達者な役者をそろえたわりには、さらっと戯曲の文字面を追っかけただけのように思える平板な舞台は期待はずれだった。
ひばり
Bunkamura
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2007/02/07 (水) ~ 2007/02/28 (水)公演終了
満足度★★★
歴史劇は遠くにあった
松たか子の大熱演、山崎一のユーモラスな人物解釈が印象に残る。
3時間を超える長い芝居で、後半集中力がとぎれてしまう。
ジャンヌ・ダルクものといえば、キリスト教信仰とフランス民族精神の高揚という主題がつきものだが、物語の世界は僕にははるかに遠く感じられ、こちら側に引き寄せて味わうだけの普遍的魅力を見つけ出すことができなかった。
正しい街
飛ぶ劇場
にしすがも創造舎 【閉館】(東京都)
2007/02/10 (土) ~ 2007/02/11 (日)公演終了
満足度★★
設定の陳腐さから抜け出せず
閉鎖的コミュニティで進行する頽廃を、外部からそのコミュニティを訪れたものが目にしていく、という構造の物語。
ちらし裏にあった劇評の転載にあるように、RPG的展開で、そういったゲームを連想させる仕掛けの演劇への導入(ト書き朗読の文体など)は面白い。
しかしこの異常コミュニティが「宗教カルト」とした時点で、観客の脳味噌内の想像力を開くのが一気に難しくなってしまうのだ。われわれが想像する現実よりはるかに突出した異常性をもったオウム事件をわれわれは知っているからである。フィクションのレベルでもすでにオウムの呪縛から逃れるのは難しいのだ。
この設定の陳腐さから、「正しい街」も逃れ得なかったというのが私の印象である。予定調和の中の驚きのない物語。個々の人物造形の精密さ、役者の表現力もいまひとつ。
ハムレットマシーン
OM-2
日暮里サニーホール(東京都)
2007/02/08 (木) ~ 2007/02/10 (土)公演終了
満足度★★★★★
圧倒的な強度のイメージ
「正統的」な前衛スタイルのスペクタクルの醍醐味を堪能する。
上演時間1時間10分程度。
意表をつくkれんに満ちた演劇的仕掛けの数々、徹底した意味のなさに魅了される。
極めて独創的な暗喩的表現は、とにかく圧倒的なインパクトがある。アヴァンギャルドの見世物の極上品。唖然とし、哄笑し、驚嘆する。
そうまさにミュラーのテクスト、「ハムレットマシーン」の衝撃はこういった破壊力を持っているのだと実感する。
コリオレイナス
彩の国さいたま芸術劇場
彩の国さいたま芸術劇場 大ホール(埼玉県)
2007/01/28 (日) ~ 2007/02/08 (木)公演終了
満足度★★★★
外連と役者の充実
美術,衣裳,照明の視覚的スペクタクルの充実のみならず,核となる役柄を演じた唐沢寿明,吉田鋼太郎,白石加代子などの実力ある俳優の充実した演技で,重厚な味わいの歴史劇の提示に成功している.
シフト
サンプル
アトリエ春風舎(東京都)
2007/01/26 (金) ~ 2007/02/04 (日)公演終了
満足度★★★★
抑制された悪意
田舎に対する時代錯誤なステレオタイプを悪意とともに拡大し提示した,作者の性格の悪さを感じさせる作品だった.そのあきらかに差別的な笑いの黒さは相当なレベル.
しかし戯曲の腹黒さに比して,表現は「青年団」らしい節度の枠組みにあることに若干の物足りなさを覚える.もっと徹底的に後味の悪い作品にしてほしかった.
スウィーニー・トッド
ホリプロ
日生劇場(東京都)
2007/01/05 (金) ~ 2007/01/29 (月)公演終了
満足度★★★
脚本は面白そうだが…
極端な方向に転換していく脚本は面白そうなのだけれど,音楽に対するのりが全般に悪い.日本語訳の歌詞がオケの演奏にうまく乗っからず,展開が唄にひきずられてもたつく感じだった.
演出面でも特に新味に乏しい.舞台空間の使い方がせせこましい.暗めの照明が話をさらに重苦しい雰囲気にしてしまった.
大竹しのぶ一人が役作りに工夫をみせていたが,彼女一人ではどうしようもない.
朧の森に棲む鬼
松竹
新橋演舞場(東京都)
2006/12/29 (金) ~ 2007/01/27 (土)公演終了
満足度★★★★★
スペクタクルの醍醐味を堪能
新感線の舞台としては『髑髏城』に匹敵する,あるいはそれ以上の完成度の舞台ではないだろうか.物語展開のスケールの大きさ,個性的な役者たちの存在感あふれる演技,豪華な衣裳と美術が結びつき,高度な娯楽性に満ちた充実した舞台となっている.
ひかりごけ
三条会
ザ・スズナリ(東京都)
2007/01/18 (木) ~ 2007/01/21 (日)公演終了
満足度★★★★
濃密な舞台
三条会の公演を見るのは今回が初めてだった.1時間強の公演時間だが,登場人物も少なく,物語の展開も単純なのに,舞台から発せられるメッセージは濃厚.展開のリズムの緩急の変化の付け方がとても上手だと思った.
一見奇をてらったように思える仕掛けを使っているが,実はかなり忠実に原作のテクストを再現している.
初春歌舞伎公演「通し狂言 梅初春五十三驛(うめのはるごじゅうさんつぎ)」
国立劇場
国立劇場 大劇場(東京都)
2007/01/03 (水) ~ 2007/01/27 (土)公演終了
歌舞伎らしい荒唐無稽さ
菊五郎劇団による復活狂言.宝の行方をおって五十三次を京都から上っていき,行く先々で奇天烈なエピソードが展開される.茶利場の多い娯楽性豊かなナンセンス劇.
歌舞伎特有の趣向満載のごちゃごちゃとした活力に満ちた芝居だった.
カルテット
KIRA'S CABARET
麻布DIE PRATZE(ディ・プラッツ)(東京都)
2007/01/10 (水) ~ 2007/01/14 (日)公演終了
満足度★★★
台詞が頭を通り過ぎていく
日本語の訳が舞台用としては厳しいように思った.長台詞がいくつかあるのだが,単調になってしまい,聴覚理解の際の集中力がとぎれてしまう.いろんな工夫はあったのだけど,1時間半が長く感じられる舞台だった.
出雲の阿国
劇団前進座
前進座劇場(東京都)
2007/01/03 (水) ~ 2007/01/10 (水)公演終了
寿初春大歌舞伎
松竹
歌舞伎座(東京都)
2007/01/02 (火) ~ 2007/01/26 (金)公演終了
満足度★★★★
盛りだくさんで
夜の部を観ました.
盛りだくさんで充実感のあるプログラムです.一番印象に残ったのは勘三郎の『春興鏡獅子』.また福助のお富は,ねちねちとしたいかにも根性の悪そうな台詞回しで,黒い頽廃の香りを発散させつつ,ユーモラスな雰囲気もあり,よかったです.
金壺親父恋達引
人形劇団プーク
紀伊國屋ホール(東京都)
2007/01/05 (金) ~ 2007/01/05 (金)公演終了
12の月のたき火
人形劇団プーク
プーク人形劇場(東京都)
2009/12/12 (土) ~ 2009/12/27 (日)公演終了
満足度★★★★
民話的世界の素朴さと美しさ
こども向き公演ですが,レベルの高い人形劇の表現の叙情性が,いかに観客の想像力を刺激するものか,できるだけ多くの人に味わってもらいたいものです.
青い鳥ことりなぜなぜ青い
演劇集団円
シアターX(東京都)
2006/12/19 (火) ~ 2006/12/28 (木)公演終了
満足度★★
期待はずれ
新作初演とはいえ,昨年の円・子供ステージの谷川俊太郎翻案,ヤノーシュ原作『おばけリンゴ』の完成度にははるかに及ばない,低調な舞台だった.人物造型が弱く,各人物の関係性がしっかりと描かれていない,展開のテンポが冗長,演技演出に工夫が乏しい,そして何よりも舞台に活気がない.暗い照明が続くのも作品の印象を暗くしている要因だろう.個々の役者の即興的な藝でなんとかもたせた一時間半だったが長く感じられあ.
ナイス・エイジ
ナイロン100℃
世田谷パブリックシアター(東京都)
2006/12/09 (土) ~ 2006/12/24 (日)公演終了
満足度★★★★
娯楽性豊かだが長さは・・・
娯楽性豊富な舞台で,特に前半の密度とスピーディな展開は圧巻.ナンセンスなギャグの切れ味もよく大いに笑う.
休憩を挟んで後半が間延びして,前半にくらべると明らかにだれた展開になってしまった.3時間30分を超える公演時間は僕にはやはり長すぎるように感じられた.
ソウル市民1919
青年団
吉祥寺シアター(東京都)
2006/12/07 (木) ~ 2006/12/17 (日)公演終了
満足度★★★★★
植民地人の孤独
出戻りのお姉さんが切れたときの演技のリアリティが非常に印象的だ.
オリザの芝居の幕切れは美しい余韻を残すものが多いけれど,この作品の幕切れも絶品だった.
あの一族の鈍感さ,天然ボケぶりは,観ているこちらの倫理意識をちくちくといやな感じで刺激する.