雲間犬彦の観たい!クチコミ一覧

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桂春蝶 独演会 2012

桂春蝶 独演会 2012

シアターネットプロジェクト

エルガーラホール 大ホール(福岡県)

2012/04/28 (土) ~ 2012/04/28 (土)公演終了

期待度♪♪

三代目にはそっと出し
 春蝶、の名前を聞くと、どうしても先代の二代目春蝶を思い出してしまう。『霊感ヤマカン第六感』などのクイズ形式のバラエティ番組にも出演していて、落語家というよりもタレントとしての印象の方が強かった。
 亡くなった時はまだ50代。あのころは昔ながらの無軌道な落語家も少なくなくて、酒や煙草で癌になったり肝臓をやられたりで、若死にする落語家も随分いたような気がする。
 正直、父親の死をきっかけに、落語家を目指したスロースターターな息子に、三代目の名跡を継がせるのは早かったんじゃないかという気もする。そんなにたくさん、この人の落語を聞いたわけではないが、上手か下手かと判断する以前に、“聞き流されてしまう個性の無さ”を感じるのだ。ただ、私が聞いたことがあるのは、この人が二つ目だった頃、春菜と言っていた頃だ。
 それからもう数年が経っている。男子三日会わざれば、の諺もある。関心の一番は「先代の息子さんがどれくらい成長したのかな」ではあるが、ほぼ新作落語しかやらないというのは、それはそれで一つの見識である。何らかの進歩というか、「変化」が見られるなら、それを生のこの目で確認しておきたいと思っている。

SWAN 上映会 at イムズホール

SWAN 上映会 at イムズホール

冨士山アネット

イムズホール(福岡県)

2012/04/16 (月) ~ 2012/04/16 (月)公演終了

期待度♪♪

フェスティバル前哨戦
 冨士山アネットと長谷川寧については詳しくは知らない。
 事前に情報を仕入れずに観劇することが多いので、そうなると馴染みのない劇団や演出家については、「観たい!」しか書くことがなくて、そんなん口コミにも何にもならないのである。
 で、今回は少し長谷川寧について、少しだけ調べてみたのだが、結構、関係した作品で、観ていた舞台や映画があった。NODA MAPの舞台にも立っているのである。私が記憶に留め損なってただけだな。一般的に馴染みがありそうなのは映画『モテキ』でフジファブリックの振り付けを担当したってところか。
 ダンス・パフォーマンスに注目してよさそうな劇団であることは承知したので、『白鳥の湖』をどんな形で再構築してくれるのか、白鳥と黒鳥の相克の物語の基本線は崩さないとしても、もちろんバレエでやるわけではあるまい。そこに期待しよう。
 こういう劇団にこそ、耳寄りな情報が欲しいんだけどね。地元劇団へのお追従はもういいよ。

季節のない街

季節のない街

Co.山田うん

J:COM北九州芸術劇場 小劇場(福岡県)

2012/03/24 (土) ~ 2012/03/25 (日)公演終了

期待度♪♪

どですかでん
 『季節のない街』と聞けば、どうしても黒澤明『どですかでん』を思い出す。
 黒澤作品の中では忘れられることが多いが、山本周五郎らしさが一番よく表れているのは『どですかでん』だと思っている。
 短編ながら、一つ一つのエピソードに、滑稽や哀切、皮肉やナンセンス、深い人情と虚無的な諦観、人間のありとあらゆる面が詰まっている。
 中でも「電車ばか」の六ちゃんの話は特に好きだ。
 いずれの作品もドラマチックで、ストーリーテリングの妙を味わえるのだが、だからこそ、「これがダンスになるの?」と首を傾げたくなる。
 ダンスから、街の人々の声や姿が見えてくるようなら嬉しいが。

ゴーゴリ病棟

ゴーゴリ病棟

柿喰う客

ぽんプラザホール(福岡県)

2012/05/25 (金) ~ 2012/05/27 (日)公演終了

期待度♪♪

これが最後か
 昨年まで行われていた創作コンペティション「一つの戯曲からの創作をとおして語ろう!」は、企画者の意図はどうだか知らないが、一観客としてはフェスティバルの目玉企画だと思っていた。
 「お祭り」ならば、ただ公演をずらっとやるだけではなく、何か観客も巻き込んだイベントが欲しいところである(北九州演劇フェスティバルは逆にイベントばかりで公演が殆どなくなっちゃったが)。その点で、やはり観客参加型の創作コンペは魅力的であったのだ。
 何のアナウンスも無しに今回は「中止」になってしまっているが、これが「廃止」なのかどうか知らない。中止の理由も分からないが、あえて「憶測」するなら、全国から応募と謳いながら、実際には応募総数が極端に少なかったのではないか。昨年だって、予定では「3劇団競演」のはずが、フタを開けてみれば「一定基準に達した劇団がなかった」という理由で、2劇団に減らされていたのだ。
 福岡は演劇を公演する場として、やっぱり魅力がないのかなあ、優勝劇団への助成金とか報奨金とかケチってるんじゃないのかなあ、とか、「憶測」はどんどん広がっていくのだが、現実に企画がポシャッている現在、文句を言うだけ詮ないことである。

 最後の上演劇団が、「柿喰う客」という先鋭的な実力は劇団であったことは幸いである。もっともまた地元からキャストを募る(しかも練習がたった7日)というから、グダグダなものになりはしないかという懸念はものすごくあるのだが。福岡の役者でそんな短期間で使えるようになるのって、1割もいねえぞ。

八(エイト)JAPANTOUR2012

八(エイト)JAPANTOUR2012

冨士山アネット

イムズホール(福岡県)

2012/06/01 (金) ~ 2012/06/01 (金)公演終了

期待度♪♪

富士の向こうに広がる景色は
 昨年、枝光で公演されたという、本作の「試演」は未見。
 地元俳優を使って、というのは、劇団にとっては本公演のための叩き台になるんだろうが、観客にとっては単に下手な芝居を見せられるだけである。それで私はパスしたのだが、実際に『○○eight』を観たって人の話をまるで聞かない。CoRichにも感想が上がってない。福岡演劇大好きなフリークさんたちは去年の夏は何してたのかな。
 ということなので、私には試演と本公演を観比べて何かを述べることはできないが、実質的に今回が、冨士山アネットの福岡御目見得公演と考えてよいだろう。これまで、福岡には馴染みの深い劇団を外して、あえて演フェスの大トリにお初の劇団を持ってきたのは、単に劇団のスケジュールの問題なのだろうか、それとも事務局に何かの「意図」があったのだろうか。
 ダンスは素人眼にも巧拙がはっきり見える、誤魔化しが利かない芸である。観れば、彼らが“どういうところから出てきたのか”“何を志向しているのか”も一発で分かる。それが遙か彼方の地平を目指すものであってほしいと切に願いたい。

INDEPENDENT:FUK

INDEPENDENT:FUK

NPO法人FPAP

ぽんプラザホール(福岡県)

2012/08/11 (土) ~ 2012/08/12 (日)公演終了

期待度♪♪

一人上手と呼ばないで
 「最強の一人芝居フェスティバル」と謳っているが、出演者は公募によるもので、本当に最強メンバーが揃ったのかどうか。結局は観てみなければ分からない。
 実績があるわけでもないのに大口を叩くと、それは得てして大言壮語、誇大広告、羊頭狗肉となるものだ。過剰な期待は禁物だろうと思う。企画意図が見えにくいと言うか、なぜ「一人芝居」に特化させなければならないのか、それがよく分からないのである。
 まして、こちらはディディエ・ガラスにイッセー尾形という世界でもトップレベルの創造性に満ちた一人芝居を観た後だ。それ以上の「最強」とやらを見せてくれるというのだろうか。
 どんなに年季を積もうと、観客の想像力を喚起しない一人芝居は独り善がりなものにしかならない。吉行和子などは何十年も一人芝居を演じたが、下手に周りがおだてるものだから、「観客のいない一人喋り」のままで固まってしまった。贔屓が役者を殺した典型的な例である。今回のフェスティバルもそういうテイタラクにならないか、実は不安の方が大きい。
 ただ、今回は「柿喰う客」の玉置玲央の一人芝居がある。脚本、演出も主宰の中屋敷法仁で、一応、「柿喰う客」の本公演に準じるものと呼んでよかろうと思う。『ゴーゴリ病棟』は福岡の拙い役者に足を引っ張られて「守りに入って」いた感が強かったので、あれを中屋敷氏の演出の限界とは判断しきれない。観客に対して挑戦的になった時にこそ、中屋敷演出は本領を発揮すると思う。そこに期待したい。

アテルイ ―北の燿星

アテルイ ―北の燿星

わらび座

ももちパレス(福岡県)

2012/01/31 (火) ~ 2012/01/31 (火)公演終了

期待度♪♪

まつろわぬ民たちのために
 大和朝廷に一矢報いることができた唯一の勇士、アテルイに興味を惹かれるのは、同じく被征服者であるクマソの地に生まれ育った血が呼応しているからだろうか。単一民族とか、そんな妄言に騙されてはいけない。日本は古代からずっと、多民族国家である。
 被支配者の暗く重い物語を、悲惨な実話を、果たしてミュージカルにできるものだろうか、してもいいのか、という疑問が脳内を経巡るが、だからこそ、わらび座の意図と成果をこの眼と耳とで確かめたい。

わたしたちの町

わたしたちの町

市川森一記念 長崎座

西鉄ホール(福岡県)

2012/05/06 (日) ~ 2012/05/06 (日)公演終了

期待度

期待する以前に
 タイトルは従来のものと違っているが、これはソーントン・ワイルダーの『わが町』と同じものだ。しかし、既に翻訳のある作品をわざわざ翻訳し直して上演するという点に興味がある。もしかしたら全編「長崎弁」の『わが町』が観られるかも知れない。

 福岡演劇フェスティバルのラインナップが出揃い、各公演のチラシも完成、ホームページにも詳細情報が……と言いたいところだが、なぜかこの長崎座だけが未だにチラシも作らず、ホームページの更新もしていない。おかげで、福フェスの本チラシが完成するまで、チケットの発売日や料金すら分からなかった。
 で、ようやく分かった発売日が……4月5日(木)って、あと5日しかないじゃん!? いったい宣伝する気があるのか、それとも劇団にお金がなくてチラシも作れないのか、いやそれじゃあHPまで更新されてない理由が説明できないし……全く、これじゃあやる気がある様子がうかがえないのだ。
 期待していいものなのかなあ。

バンダラコンチャ サードアルバム「HUG!~ステレオサウンズ」

バンダラコンチャ サードアルバム「HUG!~ステレオサウンズ」

バンダ・ラ・コンチャン

佐賀市文化会館(佐賀県)

2012/06/09 (土) ~ 2012/06/09 (土)公演終了

期待度

玉砕しそうな不安もあるが
 劇団ダンダンブエノは初期公演から観てきて、その実験性と大衆性の融合を見事に成功させている好例じゃないかと感服していたのだが、ここ数年は、ちょっと迷走しすぎかなというのが正直な印象である。
 近藤芳正は巧い役者であると同時に、プロデュース能力も演出力もあるとは思うのである。オセロ松嶋尚美の演技力をこの人ほど引き出した演出家もいない。けれども、いくらなんでもこの人と組むのはどうかという大根役者と共演することもしばしばあって、「ともかく意外な人とやってみたい」だけで芝居を作られてもなあと嘆息させられることもないではないのだ。
 今度は南原清隆とだ。役柄によってはいい演技者であると言えなくもないが、正直、旬をとうに過ぎた芸人で、近藤さんがなぜ組んでみたいと思ったのかよく分からない。「笑い」に拘っちゃうと思い切り滑りまくりそうな不安がもの凄くあるんだが、「消えた芸人」が演技者として復活する例は決して少なくはないから、そこに期待するしかないかなあと思っている。

深呼吸する惑星

深呼吸する惑星

サードステージ

キャナルシティ劇場(福岡県)

2012/01/15 (日) ~ 2012/01/15 (日)公演終了

期待度

歴史上の人
第三舞台も鴻上尚史も、とうの昔に演劇史的には役目を終えている。鴻上の位置に今いるのはクドカンで、今さら鴻上が何をやろうと、これまでの作品群の棚ざらえ、二番煎じの拡大再生産にしかならない。復活&解散公演なんて、やる意味があるのか、客を舐めてるのかと腹立たしさすら覚えるが、『朝日のような夕日を連れて』を初めて観た時のショックを忘れられないのもまた事実だ。当時のファンは、死に水を取りに行こう。

走れメロス

走れメロス

福岡市文化芸術振興財団

パピオビールーム・大練習室(福岡県)

2012/03/22 (木) ~ 2012/03/27 (火)公演終了

期待度

メロスは最後にまっぱになるのか
 ちょっとした義理があって観劇することになった(と言っても、制作者に知り合いはいません)。
 正直なことを言えば(正直なことしか言えないが)、「福岡オリジナルの舞台芸術環境・人材の育成」が目的で、なぜ原作が太宰治なのか、脚本が宮崎・こふく劇場の永山智行なのか、そこから既によく分からない。
 『走れメロス』は太宰作品の中では最も人口に膾炙した小説ではあるが、太宰が日銭を稼ぐために、シラーの詩に取材してちゃちゃっと書いた手抜き作である。太宰の個性が最も発揮されたと言ってよいブラックユーモアの傑作『お伽草紙』を脚色したあとに、永山が、太宰らしさの全くない『メロス』に挑戦するという意味がどうにも掴めないのだ。
 言ってみれば、その「謎」の意味を知りたいがために観に行くようなもので、期待値は低い。でも期待が薄い分、プラス方向に裏切られたいなあと思ってはいるのである。そうでなきゃ、いくら義理があったって、観に行ったりするものではないのである。映画『奇巌城の冒険』なみのアレンジ(と言うかほぼ別物)にしてしまうくらいの度胸があれば面白いのだが。
 でも本当にどうして今さら太宰なんだろうね。言っちゃなんだが、岸田國士やら宮澤賢治やら太宰やらがやたら舞台化されているのは、単に著作権が切れていて、何をどう脚色しようがどこからも文句が出ないからなんじゃないかという気がしてくるのである。それならいっそ、地元作家で夢野久作とか火野葦平とか著作権切れてるから舞台化したらどうかと思うんだがやらんのかなあ(久作はやってるとこあるけど)。
 「子どもからおとなまでが楽しめる舞台芸術」というのも、得てして「子供騙し」になりがちだが、そこに何か「演劇としての戦略」はあるのだろうか。

90ミニッツ

90ミニッツ

パルコ・プロデュース

キャナルシティ劇場(福岡県)

2012/01/28 (土) ~ 2012/01/29 (日)公演終了

期待度

評判悪いが
 既に旬を過ぎて久しい三谷幸喜に、『笑の大学』の頃の勢いを期待しても仕方がないとは思うが、それにしても既に東京、北九州などの公演を終えて、「期待はずれ」の声があまりにも大きい。ネットは酷評の嵐だ。チケットを買っちゃった以上は、観に行くしかないのだが、脚本自体がそもそもダメらしいので、多少のテコ入れがあるとしても、物語が大きく変化することはないだろう。面白いところを少しでも見つけられたらというくらいの期待でいれば、案外、楽しめるかもしれない。

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