雲間犬彦の観たい!クチコミ一覧

1-20件 / 72件中
あゆみ TOUR

あゆみ TOUR

ままごと

イムズホール(福岡県)

2012/04/19 (木) ~ 2012/04/20 (金)公演終了

期待度♪♪♪♪♪

『あゆみ』の更なる一歩を信じて
 人によっては、岸田戯曲賞を受賞した『わが星』よりも、この『あゆみ』を評価する声も少なくない。それまでの柴幸男の作品を全て習作と斬って捨てることには異論もあろうが、「柴幸男ここにあり」を世間一般に認知させるに至ったきっかけが、この『あゆみ』であったということなのだろう。
 私の柴幸男体験も『わが星』が最初で、『あゆみ』は戯曲も未読なのだが、再演を繰り返している作品であることは情報として知っていたので、観劇できる機会が訪れることを信じて待っていた。個人の日常と世界を二重写しにしていく柴幸男お得意の手法は、『あゆみ』から始まったものだということである。しかし、『わが星』『テトラポット』を経て後の『あゆみ』は、恐らくは更なる進化を遂げて新たな変貌を見せてくれることであろう。戯曲を読むのはそれから後にしたいと思っている。

ピーター・ブルックの魔笛

ピーター・ブルックの魔笛

彩の国さいたま芸術劇場

J:COM北九州芸術劇場 中劇場(福岡県)

2012/03/31 (土) ~ 2012/04/01 (日)公演終了

期待度♪♪♪♪♪

なにかがある空間
 もちろんそこには何もないのだが、観客は何かがあると感じる、それがピーター・ブルックの「なにもない空間」理論だ。考えてみれば、歴史に残る演劇というものは全てそのようなものではなかったか。
 だからこそ精神病院患者たちによる演劇、などという『マラー/サド』の演出も成立する。彼らは狂っているのではない。彼らを狂っていると見なす我々の心に狂気という名のイマジネーションが生まれているのだ。
 ピーター・ブルックvsアマデウス・モーツァルト。天才対天才の相乗効果で生まれてくる「怪物」は、いったいどんな姿をしているのだろうか。

Knockin' On Heaven's Door

Knockin' On Heaven's Door

コンドルズ

イムズホール(福岡県)

2012/09/15 (土) ~ 2012/09/15 (土)公演終了

期待度♪♪♪♪♪

扉を開けて
 「日本のモンティ・パイソン」(←ロンドン公演で本当にこう呼ばれた)コンドルズの真夏の定例ツアー。『THE BEE』では、"踊らない近藤良平"に驚いたけれども、今度はしっかり踊りまくります!
 タイトルの『天国への扉』(ボブ・ディラン)が流れるかどうかは分からないが(十中八九流れない)、あのアンニュイなメロディーに乗ってグダグダに踊る彼らを観てみたいような怖いような。男同士で絡んだりkissしたりなんて、全然平気なんだから、彼らは!(そのへんがモンティ・パイソン?)
 各公演にサブタイトルが付くのも恒例。「楽園」がキーワードだから、東京はシャングリラ、大阪はアヴァロン、といった具合。福岡は「ニライカナイ」だ! って、それ沖縄じゃん!(笑) 「蓬莱スペシャル」とかでもよかったかな。


 それはさておき、元ギンギラ太陽'sのぎたろーさん、コンドルズに入ってもう四年になるけど、まだ(新人)が取れないね。もしかすると一生このまま?

モンティ・パイソンのSPAMALOT

モンティ・パイソンのSPAMALOT

avex live creative

福岡市民会館(福岡県)

2015/03/14 (土) ~ 2015/03/15 (日)公演終了

期待度♪♪♪♪♪

伝説の聖杯
 コアなモンティ・パイソンのファンは「日本版」と聞いて、鼻白むかもしれない。元になった映画『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』は、カルトと言っては失礼なくらい、イギリス製コメディ映画の金字塔として屹立している。
 もっとも、アーサー王伝説を不謹慎を通り越してデタラメなくらいにパロディしまくったその傍若無人なバカバカしさは、公開当時の日本人には今一つピンと来なかったようで、ヒットしたという記録はない。しかし、その炸裂するエネルギーは、時代を経て、いとうせいこう、松尾貴史、宮沢章夫ら熱烈なパイソンファンを生み出してきた。
 本作の日本版演出を手掛ける福田雄一もその一人だ。そう、あの『勇者ヨシヒコ』シリーズの、『アオイホノオ』の、『HK 変態仮面』の福田雄一だ。演劇畑では本作の初演を経て、『The 39Steps』ではヒッチコックのサスペンスミステリーを軽妙かつ目まぐるしいほどのスピーディーなコメディに仕立てあげてみせた。たとえ日本語版であろうと(いや、日本語版であるからこそ)、ただの「引き写し」はしないに決まっている。
 映画版のグレアム・チャップマン(あるいは舞台版のティム・カリーの)役をユースケ・サンタマリアがやるの? と首を捻る方もいらっしゃるだろうが、何しろあの超大根演技の指原莉乃を起用して『ミューズの鏡』や『薔薇色のブー子』という傑作を作ってしまった福田監督なのだ。不安材料は全て逆転して期待に返還される。脇を固めるマギーやムロツヨシ、皆川猿時、池田成志ら「福田組」の面々も決して期待を裏切らないだろう。スチールであからさまにジョン・クリーズの顔マネをしている池田君が可笑しい。
 初演は福岡までは来なかったので、今回が初見になる。個人的には、初演とキャストが変更されたヒロインの平野綾に注目したい。『レ・ミゼラブル』『モーツァルト』を経て、安心して観られる「ミュージカル女優」に成長している。コメディエンヌとしての技量が更に上乗せされるかどうかが見所だ。

ブランカ・リ「エレクトロキフ」

ブランカ・リ「エレクトロキフ」

九州日仏学館

JR九州ホール(福岡県)

2012/05/09 (水) ~ 2012/05/09 (水)公演終了

期待度♪♪♪♪♪

世界レベルのダンスが福岡のみの公演!
 福岡演劇フェスティバルが、九州日仏学館と提携して、フランスのダンス・カンパニーを招聘したのは、今回が初めてではない。ご記憶の方もいらっしゃるだろうが、昨年、パル・フレナック・カンパニーがやはり福フェスに参加する予定だった。それが東日本大震災の影響で中止になってしまったのは、残念ではあるが、あの震災直後の情報が錯綜している状況では(今でもだが)、仏蘭西側の懸念も致し方なかったと思う。
 だから、今年、ブランカ・リ・カンパニーが来福を決意して頂けたことは、望外の喜びなのである。一度見捨てられた国から来てくれるのだから、正直、レディー・ガガの来日よりも嬉しいぞ(笑)。
 パリ近郊発祥のまだ新しい「エレクトロダンス」とはどんなものなのか、今回が初見だから何の情報もないが、優れたダンスは、言葉の壁を越えて、解説などなくとも楽しめるものである。特に今回は「ユーモア」がキーワードだ。きっと「偏見」の壁をも越えて、世界レベルのダンスを楽しめるに違いない。
 CoRichの情報って、他県には伝わりにくいから、せっかくの「日本唯一の公演」が一部だけの口コミで終わってしまうのは惜しい。フェスティバル関係の公演は、トップページから特設ページにリンクできるようにするとか、工夫ができないものかねえ。

【福岡公演間近!9月末は鳥の演劇祭!】アルルカン(再び)天狗に出会う

【福岡公演間近!9月末は鳥の演劇祭!】アルルカン(再び)天狗に出会う

ディディエ・ガラス×NPO劇研

ぽんプラザホール(福岡県)

2012/07/14 (土) ~ 2012/07/15 (日)公演終了

期待度♪♪♪♪♪

Arlequin meets Japanese Goblin
 タイトルからは有名なアニメ『バンビ、ゴジラに会う』を連想してしまうのだが、コメディだと言われると、あの作品のように、何かとんでもない邂逅の仕方をしてくれるのではないかと胸が躍るのである。

 アルルカン(ハーレクイン)に思い入れのある人は少なくないだろう。もちろん女性向けロマンス小説のシリーズではなく、物語を引っかき回すいたずら者、トリックスターたちの総称であり、そのモチーフは演劇のみならず、小説や映画、漫画などにも頻繁に登場する。
 アガサ・クリスティーが生み出した最もミステリアスなキャラクターがハーリー・クィン氏であるし、『バットマン』の最大の敵・ジョーカーは明らかにアルルカンをモチーフにしていて、その傍らにはまさしくハーレイ・クィンなる愛人が傅いている。
 ただの道化師ではなく、ドラマを予定調和に終わらせないための重要な役どころを担っているのがアルルカンだ。演劇史上で言えば、『リア王』のフールが最も有名なアルルカンの一人だろう(黒澤明『乱』ではピーターが「狂阿弥」の役名で演じた)。

 片や天狗は、そもそもは天狐であり彗星であり、凶事を運ぶ魔である。神格化され、記紀においては天孫降臨の道案内となる「猿田彦」となり、はたまた化性の類とも言われ、隠れ里の主となり、神隠しもまた天狗の仕業とされた。現在では主に山神として修験道の信仰の対象となっている。まるで神と妖怪との間を往復し続けている印象だ。鞍馬山で牛若丸に剣術を教えたのも修験道の流れから。折口信夫が唱えた「マレビト」思想の代表者である。
 これまたフィクションでの登場は、具体例を挙げきれないほどであるが、演劇に登場例を求めれば、これは「癋見(べしみ)」を挙げるに如くはないだろう。天狗の面であると同時に鬼面でもある。普通の天狗の面でも、口をぐっとへの字に曲げているものが圧倒的に多いが、あの表情を「べしみ」と言うのだ。
 漫画では何と言っても、手塚治虫『火の鳥』『鉄腕アトム』シリーズのサルタやお茶の水博士が真っ先に思い浮かぶ。「呪われし一族」としてのサルタたちは、まさに神から妖怪へと落魄した天狗のようである。つげ義春『ゲンセンカン主人』のまがまがしい天狗の面も印象的。

 これだけ「有名」で、種々様々な顔を持っている以上、観客のアルルカンや天狗へのイメージは豊穣すぎるほどである。即ち、そんじょそこらの安っぽいドラマに散見するような貧困なイメージでは、観客の心に届く作品には成り得ない。相当にハードルの高い題材なのである。
 それを一人芝居で? いかに世界的に盛名を博しているディディエ・ガラス氏とは言え、果たして勝算はあるものなのか、外国人が日本の伝統芸能や文化に惹かれる時に生じやすい浅薄なエキゾチズム、即ち「勘違い」に陥ってはいないか、不安は決して少なくはないのだ。
 それが前作では大好評を博したというのだから、期待は大いに膨らんでいる。大きな期待はたいてい裏切られるものだが、これはそうならないことを祈りたい。

イッセー尾形のこれからの生活2012 in 小倉

イッセー尾形のこれからの生活2012 in 小倉

森田オフィス/イッセー尾形・ら(株)

J:COM北九州芸術劇場 中劇場(福岡県)

2012/07/28 (土) ~ 2012/07/29 (日)公演終了

期待度♪♪♪♪♪

イッセー尾形、最後の舞台
 イッセー尾形が、今夏をもって、舞台活動を「休止」する。
 DMによれば、「今後は映像活動に専念する」とあったから、実質、舞台からは「引退」ということだ。イッセー氏の気が変わって、再び舞台に立たれる日が来るのかどうか、それは分からないが、「小倉でお会いできるのは最後です」という文面からは、還暦を機に、やれることは絞っていこうという意志が伺える。
 小倉には年1回、博多には年2回、イッセー氏は必ず公演に来てくれていた。だから毎回チケット完売でうっかり購入し損なう時があっても、「次の機会があるからいいや」という気分でいたこともあった。しかし、物事には必ず終わりが来る。イッセー尾形の真骨頂は、誰も真似のできない一人芝居のスタイルを確立したことだ。スタニスラフスキーもアクターズ・メソッドも否定し、カリカチュアされた表現でありながら、後の現代口語演劇が達成したリアルなスタイル以上のリアルさを客席に届けてくれていた。
 もうそれを生で眼にすることは叶わなくなる。小倉公演の後も、東京公演など、いくつかの舞台が残っているが、九州の私たちが「イッセー尾形とは何だったのか」を考える機会は、これが最後になる。チケットの発売日を忘れないようにしよう。

イッセー尾形のこれからの生活2012 in 真夏の博多

イッセー尾形のこれからの生活2012 in 真夏の博多

森田オフィス/イッセー尾形・ら(株)

イムズホール(福岡県)

2012/08/03 (金) ~ 2012/08/05 (日)公演終了

期待度♪♪♪♪♪

そして船は行く
 九州での舞台公演、小倉が最後になるはずが、急遽、博多公演が決まった。「休眠」に入るイッセー尾形の舞台を観られるのは、これが本当に本当の最後だ。
 先日公開された映画『図書館戦争 革命のつばさ』では、イッセー氏は重要人物である当麻蔵人を演じた。画と声を一致させる「初」声優経験には、さすがのイッセー氏もかなり苦労させられた模様である。しかし、童話を朗読するシーンの出来映えはやはりさすがとしか言いようがない。
 今後はこうした「声優」活動も含めて、映像の仕事の方が増えていくのだろう。それでもイッセー尾形の真骨頂は、舞台にこそあると力説したい。

 小倉と福岡は距離も近いので、ハシゴする観客も少なからずいる。そのため演じられるスケッチは、極力重ならないように、新ネタを持っていくのが常であったが、ポスターを観ると、小倉で演じた「博多のサラリーマン」を再上演するようだ。小倉公演で一番の爆笑を誘った珠玉のスケッチである。
 これはぜひもう一度観てみたいのだが、残念なことにどうしても都合が付かなかった。観に行けない芝居を宣伝するのも気が引けはするのだが、毎回必ず高水準で、観た甲斐があったと感じさせてくれる芝居など、滅多にあるものではない。
 これがおそらくは、九州でイッセー尾形の舞台が観られる最後になる。ぜひ、ご観劇を乞うものである。

ザ・スライドショー12

ザ・スライドショー12

WOWOW

福岡市民会館(福岡県)

2012/10/07 (日) ~ 2012/10/07 (日)公演終了

期待度♪♪♪♪♪

まったりまったりまったりな
 みうらじゅん、いとうせいこう両氏の解説(というよりは突っ込み)で、世の中のおかしなもの、馬鹿馬鹿しいもの、脱力しちゃうもの、何か勘違いしちゃっているもの、常識の斜めを逝っちゃってるもの、看板とか建物とか動物とか野菜とか仏像とか人の顔とか、そんなものをただ見るだけのイベントなのに、これが毎回大盛況。心霊写真よりも面白い!(笑) 
 前回のイベントから、何と5年の歳月を経て、本当に満を持してのお蔵出し公演となるのが今回。世の中の事件とかいじめとか原発とか領土とか、わりとどうでもいいやと考えてる人には、超オススメ。つまり真面目な人は見るものじゃありません。これは、人生の何の役にも立たない「暇つぶし」こそが至高の嗜好だと信じているバカのための祝祭なのです。
 「いやげもの(=貰っても始末に困る土産物のこと。東京タワーの置物とかの類ね)」は今回も全員配布の大盤振る舞いだ!

 もちろん参加したいんだけど、予定が重なっていて、今のところは難しい。これも誰かレポートを書いてくれないかと思っているのだが、真面目くんばかりだと望み薄なんだよな。

現在地

現在地

チェルフィッチュ

イムズホール(福岡県)

2012/05/06 (日) ~ 2012/05/07 (月)公演終了

期待度♪♪♪♪♪

SFみたいな。
 「SFみたいな。」
 この気負いの無さを、果たして言葉通りに受け取っていいものやら、なにしろフツーの演劇を期待して、その期待通りの舞台を見せてくれた試しがないのが岡田利規という劇作家である。
 現代口語演劇を更に一歩押し進めた、しかし決して「静かではない波」をその間断ない言語に内包させている岡田利規には、まさしく「劇作家」という呼称が相応しい。岡田利規が劇作家だなんて、当たり前のことじゃないか、と言われそうだが、現代、この言葉が似合わない演劇人も決して少なくはない。
 岡田利規のオリジナリティは、頭でっかちなだけの劇作家モドキには及びも付かない、まさしくこのセカイの深層を見透す冷徹な知性によって支えられている。岡田利規の知性そのものが「SFみたいな」ものなのだ。

 『三月の5日間』を初めて観た時の衝撃は忘れられない。
 俳優たちは歪つな姿勢で歪つに立っており、歪つな一人語りを続けているが、それは決して過剰でもなく貧弱でもなく、人間のナチュラルさを言葉と体が体現していた。
 「物語」はあるようでない。しかし面白い。設定と背景だけで演劇は構築されうるもので、作・演出の岡田利規は、従来の演劇が拘り続けていた「ドラマツルギー」の効用を信じていないようにも見えた。
 演劇人に対して「演劇とは何か」と問い掛けるくらい、愚問はないが、問い掛けなくとも、岡田利規は「岡田利規の演劇とは何か」を提示し続けている。そしてその世界は、後続の劇作家たちの安易な追従を許さない。『フリータイム』『ゾウガメのソニックライフ』と、岡田利規は進化し続けているからである。
 『現在地』は間違いなく、今回の福岡演劇フェスティバルの目玉作品の一つだ。

主たちの館

主たちの館

E-Pin 企画

西鉄グランドホテル(福岡県)

2012/08/18 (土) ~ 2012/08/20 (月)公演終了

期待度♪♪♪♪♪

あなたも名探偵になれるかもしれない
 『十角館の殺人』に始まる綾辻行人の「館」シリーズのファンは多いだろう。何と言っても、「新本格ミステリー」の旗手として活躍、現在に至るミステリーブームを築いたのは、綾辻行人を初めとする京都大学推理小説研究会出身の面々なのだ。綾辻行人がいなければ、『金田一少年』も『名探偵コナン』も生まれなかったと断言して構うまい。
 「館」シリーズは全十作を予定して、現在九作まで発表されている。今回の舞台は、その番外編とでも言うべきものだ。館シリーズの作者その人が「館」の中で殺される(かもしれない)。ミステリーとしてだけでなく、セルフパロディのコメディとしても楽しめそうな雰囲気だが、やはり心が躍るのは、我々観客がこの事件の「探偵」として推理を競い合うということである。
 そんじょそこらの推理クイズのレベルではない。「犯人」は毎回、その知力を尽くして「レッドヘリング(罠)」を仕掛けてくる。欺かれた我々は地団駄を踏み、ゲームの仕掛人たちはしてやったりと快哉する。これまでのミステリーナイトも決して簡単な謎ではなかったのだが、今回は特に「難しい」とは、企画・構成の城島和加乃氏の弁。参加を決めたものの、正直、真相に辿り着ける自信は全くない。
 しかし、そこに「山」があるならば、登らなければならない。「壁」があるなら破壊しなければならない。ミステリファンにそう思わせるだけの密度の濃さが、ミステリーナイトにはあるのだ。まるまる一泊で25,000円以上の大出費、しかも“本当に眠る時間もない”ハードスケジュールにもかかわらず、リピーターが続出で、チケットもほぼ即日完売という大人気企画なのである。
 あまりの人気の高さに、今回、福岡公演は、追加チケットの販売も決定した。まだ間に合う。ミステリファンを自負するならば、これは絶対に観逃せな……、いや、「参加」しないではいられないはずだ。グランドホテルに集えかし。

ミュージカル「テニスの王子様」 青学vs六角

ミュージカル「テニスの王子様」 青学vs六角

テニミュ製作委員会

TOKYO DOME CITY HALL(東京都)

2012/02/09 (木) ~ 2012/02/12 (日)公演終了

期待度♪♪♪♪

ライブビューイングで
 12日の大千秋楽を、生中継で観る予定。
 私自身は、別に腐女子でも腐男子でもないので、場違いだなと思いはするのだが、テレビ放送で何度か観た「テニミュ」の演出、劇場予告編から感じられるショーアップの見事さ、決して腐な人々にだけ独占させておくのはもったいないと思うのだ。
 CoRichには、どうやら腐な人は少ないようで、「観たい!」の書き込みは今のところないが、本当は「隠れ腐」な人もいると思う。カミングアウトは難しいかな。もうずいぶん偏見は薄くなってるとは思うのだが。

熱海殺人事件 NEXT

熱海殺人事件 NEXT

RUP

キャナルシティ劇場(福岡県)

2012/04/18 (水) ~ 2012/04/18 (水)公演終了

期待度♪♪♪♪

つかこうへい ONLY LIVE TWICE
 つかこうへいの代表作である『熱海殺人事件』が、再演されるたびに(時にはその公演期間中もずっと)改作され、新しいバージョンとなって上演されてきたことは周知の事実。自作のリメイクを常に繰り返し、まさしく「演劇は一期一会」であることを実作で証明してきた感がある。
 つか氏の死によって、つか氏自身による新バージョンの誕生は望めなくなった。しかし『熱海殺人事件』は決して死んではいない。昨年「つかこうへい復活祭」と銘打って、東京・紀伊国屋ホールで上演された「NEXT」。タイトルは「続編」だが、「原点に帰る」意味で、オリジナルバージョンの『熱海殺人事件』を、毎年キャストを変えつつ、上演していくと言う。それが今年は福岡にも御目見得、初演に引き続き木村伝兵衛部長刑事を演じるのは、福岡出身の山崎銀之丞、大山金太郎を演じる新キャストは、これも福岡出身の中村蒼だ。今回は、ちょっとした『熱海殺人事件』福岡バージョンである。
 偶然にも、福岡演劇フェスティバル『売春捜査官』と合わせて、この春は二つのつか芝居が競作されることになった。つかこうへいは死んでいない。そう信じる人たちの情熱が舞台を支えてくれるだろう。期待大である。

ゲキトーク

ゲキトーク

NPO法人FPAP

ぽんプラザホール(福岡県)

2012/03/10 (土) ~ 2012/03/10 (土)公演終了

期待度♪♪♪♪

THREE WISE MEN OF GOTHAM
 出演のお三方には多少失礼な比喩かもしれないが、この三人で鼎談をするとなると、果たして話がどんな方向に行くのやら、見当がつかない。
 新進気鋭の三人、と言えば聞こえはいいが、やってることは演劇の枠組みをいかに破壊し再構築するか、既成概念に囚われない作品を次から次へと発表し続けておられるのである。演劇界のスターと言うよりはむしろ、トリックスター。そう称してもよかろうと思えるほどにその活動の過程はラジカルでアグレッシブだ。
 だから果たしてその鼎談が「仲良く」進行するものなのかどうか、うっかりすると、ジョーカーとペンギンとナゾラーがボウルの船に乗って船出するような結果に終わるんじゃないか、実はそんな支離滅裂な事態に陥ることすら期待したくなるほど、確かにこの三人の顔合わせは刺激的なのです。

飛び加藤 ~幻惑使いの不惑の忍者~

飛び加藤 ~幻惑使いの不惑の忍者~

東宝

福岡市民会館(福岡県)

2012/07/10 (火) ~ 2012/07/10 (火)公演終了

期待度♪♪♪♪

大千秋楽
 福岡が大千秋楽で、題材も魅力的だと思うのだが、チケット、結構余っているらしいのである。かなりギリギリで前売り券を購入したのだが、結構前の席が取れてしまった。平日はやはり集客が難しい。
 忍者・加藤段蔵は実在人物ではあるが、詳しい経歴は詳らかでない。上杉謙信、武田信玄の両武将に仕えたことが伝えられるのみである。言い換えれば脚色はかなり自由。石川五右衛門や呂宋助左衛門のように、大冒険絵巻を展開することも可能だろうと思うが、これまで漫画や小説、映画に脇役として登場することはあっても、主役を張るのはこれが初めてであるように思う。謙信、信玄も登場しないのなら、これは「飛び加藤earlydays」の物語なのだろう。シリーズ化を期待したい。

快楽亭ブラック毒演会

快楽亭ブラック毒演会

HiRoBaプロジェクト

甘棠館show劇場(福岡県)

2012/06/17 (日) ~ 2012/06/17 (日)公演終了

期待度♪♪♪♪

談志が死んだ
 ご存知の方も多かろうが、立川談志の弟子でありながら、ブラック師匠が立川を名乗っていないのは、立川流を除名されているからである。
 原因は借金。一時期は2000万円を超えていたとか。家元制度を採り、師匠への上納金を義務づけていた(現在は廃止)立川流にあっては、示しを付けるためには愛弟子と言えども除名せざるを得なかったようで(破門は免れている)、談志がブラックを疎遠にしたわけではない。
 談志の弟子も数多く、その芸風もバラエティに富むが、ブラック師匠ほどその「毒」を受け継いだ噺家も無い。談志にしてみれば、除名は断腸の思いであったろう。「快楽亭ブラック」の名跡は明治の初代から途絶えていたが、漫画『美味しんぼ』などに取り上げられていて知名度はあった。立川を名乗れずとも、この改名で一本、商売が出来ようという師・談志の恩情であったろう。

 俗に「放送禁止落語」と呼ばれる通り、ブラックの落語をテレビで観ることは殆ど叶わない。差別ネタのオンパレードで、その対象となるのは××であったり××であったり××である(だからヤバ過ぎて書けないんだってば)。ウワサではあるが、話を聞きつけた某抗議団体が寄席に押し寄せたというほどの過激さなのだ。
 もちろん噺家や芸人は放送禁止ネタをいくつかは持っているもので、表と裏を使い分けるのが普通である。表で名を売り、裏で好き勝手やっているようなものだが、それでなくては寄席の存続もままならないのが現実だろうから、このような「二枚舌」も仕方がないことではある。
 師・談志もまた、テレビやビデオなどの表に出回っているものは相当に“毒気を抜かれた”ものであった(だから談志を生で見たことがない者に談志は語れないと言われる)。
 しかし、ブラックには表の顔がほぼ存在しない。映画評論家としての顔はあるが、本業の落語は全て皿まで喰らわされる毒に充ち満ちている。表も裏もあるか、頭のてっぺんから足の裏まで全て毒、これが俺だ、という潔さがブラック落語の真髄なのだ。ブラックの落語会に押し寄せる常連客たちは、まさにその毒気に当てられた「中毒患者」なのだ。
 その過激さに眉を顰める人は確かに大勢いる。しかし、落語の笑いはそもそも差別を基調にしていたものだ、と言うか、今でもそうである。落語の主要人物の一人である与太郎は、子どもではなく明らかに頭がナニである。与太郎がなぜ落語の主人公になりうるか、明らかに与太郎をモデルにしている赤塚不二夫『天才バカボン』を読めば一目瞭然ではないか。馬鹿の価値観こそがお定まりの常識や既成概念をひっくり返し、笑いに転化できるからである。差別を描くことこそが差別から目を背けずに差別を打ち破ることのできる唯一の方法だからである。「これでいいのだ」。
 上っ面だけの正義、キレイゴトばかりが横行する社会では、人間の憎悪、怨恨、侮蔑などの黒い感情は意識されなくなる。ブラック師匠の毒に鼻白む人間は、自分もまた差別者であることを自覚できない。いじめをする人間は、それがいじめだと自覚できていない場合が殆どではないか。結果的に、無意識の差別がこの社会に蔓延することになっているのである。ブラック落語が表で鑑賞できないのは、この日本にとってはどうしようもなく哀しく不幸なことなのである。
 言葉狩りでは差別は絶対に解消できない。差別を笑い飛ばせる感性は、差別ギャグにどっぷり浸ることでしか培われない。それが落語の本道であるし、立川流の本領でもあった。談志の生落語を聞く機会はもうない。しかし快楽亭ブラックはまだここにいる。

 落語会は何を演目とするかは当日にならないと分からないが、今回は『談志の正体』を演ることは告知されている。福岡では当然、初お披露目の新作で、今、ここでしか聞けないものになるだろう。先日、ブラック師匠は『立川談志の正体:愛憎相克的落語家師弟論』(彩流社)も上梓したが、この書籍販売及びサイン会もあるのではないかと踏んでいる。どちらも談志を肴にどんな過激な話が飛び出すのか、ミモノだ。

恒例!! 第32回 新春爆笑寄席

恒例!! 第32回 新春爆笑寄席

福岡音楽文化協会

福岡市民会館(福岡県)

2012/01/25 (水) ~ 2012/01/25 (水)公演終了

期待度♪♪♪♪

最前列で
毎年恒例の、新春爆笑寄席。小三治、歌丸師匠は毎年のレギュラー。
志ん朝、談志亡き後、江戸落語を今に伝えられる名人は、今や小三治師匠しかいない。毎年、福岡に来てくれることが本当にありがたい。もっとも去年はスベって「調子出ねえな」と仰っていたけれど。
端の方だけれども、最前列の席が取れた。堪能してきます。

THE BEE Japanese Version

THE BEE Japanese Version

NODA・MAP

J:COM北九州芸術劇場 中劇場(福岡県)

2012/06/07 (木) ~ 2012/06/10 (日)公演終了

期待度♪♪♪♪

チケット毟りあい
 「夢の遊眠社」時代に野田秀樹に入れ込んだ人々は、NODA MAPになってからの「実験作」には必ずしも満足していなかったのではなかろうか。どの作品も、キャストこそ豪華になってはいても、どこかしら「上滑り」している印象があったからである。
 しかし、この『THE BEE』は、初演時、辛口の批評家からも頗る評判がよかった。筒井康隆のブラックな原作『毟りあい』が、野田秀樹の狂気と毒と、相性がよかったためかもしれない。
 本来なら、今回のキャスト変更(秋山菜津子→宮沢りえ、浅野和之→池田成志)によって何がどう進化したのかを、比較して観てみたいところだが、残念ながら、初演版は東京で観る予定にしていたものを、チケット完売で涙を飲んだ。今回のバージョンを一つの決定版として鑑賞するしかない。
 今回もチケットは既に完売目前だそうだ。行こうかどうしようかお迷いの方は、早急にご決断を。

ゾウガメのソニックライフ

ゾウガメのソニックライフ

チェルフィッチュ

山口情報芸術センター YCAM スタジオB(山口県)

2011/03/13 (日) ~ 2011/03/13 (日)公演終了

期待度♪♪♪♪

チェルフィッチュの新作
 福岡から遠征します。
 チェルフィッチュの舞台は、現代口語演劇の延長線上にあるように評されることが多いのですが、むしろ平行進化の果てに道が交差したのではないかと感じています。岡田利規は、平田オリザよりもはるかに身体表現に重きを置いているのではないでしょうか。
 岡田利規が時代的に暗黒舞踏を知っているはずはないと思うのですが、その動きにはむしろ土方巽を彷彿とさせるような「いびつさ」があります。言葉よりも肉体の方が不安定なんです。
 これまでの舞台でも、脳内をかき回されるような不安と混乱を味わわせてくれました。新作にも当然、期待します。

王女メディア

王女メディア

幹の会+リリック

ももちパレス(福岡県)

2012/06/12 (火) ~ 2012/06/20 (水)公演終了

期待度♪♪♪♪

最後の王女
福岡市民劇場に寄せられた平幹二郎さんのコメント。
「愛着を持って三十四年間演じ続けてきた役に別れを告げる“時”が来ました。ずっと私の中に棲み続けてきた『メディア』が、今度は皆さんの心の中に生き続けてくれますよう願っています。福岡市民劇場五○周年おめでとうございます。 平幹二郎」
34年前の初演の『メディア』には、もちろん度肝を抜かれた。辻村ジュサブローデザインの妖麗とでも言うべき斬新な衣装は、これが演劇の極北かもしれないと心胆を寒からしめるものがあった。
あまりにもその時の印象が強烈だったので、後の『メディア』は、平さん以外の作品も含めて、一本も観ていない。
しかし、これが最後である。見逃すわけにはいかないではないか。

このページのQRコードです。

拡大