ヨウの観てきた!クチコミ一覧

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エレクトリック:サーカス∴デイズ

エレクトリック:サーカス∴デイズ

エムキチビート

萬劇場(東京都)

2009/12/10 (木) ~ 2009/12/14 (月)公演終了

満足度★★★★★

熱い演劇
会場の入りかけに張られたアイドル的なルックス揃いの写真に一瞬、来る所を間違えたんじゃなかろうかと若干のびびりを覚えつつ初観劇。
結果的には杞憂。
若々しい勢いもあり、かつ、まだ劇団を初めて2、3年ほどというのがとても信じられないほど抜群に安定感のある舞台だった。

ネタバレBOX

チャンバラ(架空だけど)歴史ファンタジーは、聞くだけでげんなりしてしまうほど個人的には苦手な部類のジャンルなのだが、音楽や光、息も着かせぬテンポの場面や演出効果、舞台の隙間を縫って挟まれるおちゃらけた小ネタの数々、勢いだけではない役者達の情熱のこもった演技、どれも観ていて気持ちがよく見入ることができた。
一歩間違えばイヤミっぽく見えてしまいそうなあの強い演出を全く自然に見せてしまうのは、「ありがち」でありながらもオリジナルな言葉で書かれた物語の説得力と、役者達の演劇に対する真剣さが故だろう。
決して明るい物語というわけではなかったが、エンターテイメントかくあるべきと思えるような作品だった。
スポーツ演劇「すこやか息子」

スポーツ演劇「すこやか息子」

柿喰う客

王子小劇場(東京都)

2009/12/25 (金) ~ 2009/12/27 (日)公演終了

満足度★★★★★

短く長い家族史
人が生まれ、育ち、縁を結び、「さようなら」をするまでの、約3世代の家族を廻る大河ドラマ。
エアロビのリズムに乗せられた記号的な言葉の中でふとむき出しになる生き生きとした人間性に、思わずボロボロ涙。
なんとも心地も気持ちもよかった。

ORANGE

ORANGE

劇団PEOPLE PURPLE

PARCO劇場(東京都)

2011/02/16 (水) ~ 2011/02/24 (木)公演終了

満足度★★★★★

真剣
身体も内容も鍛え上げられた実直な芝居。
これだけ舞台上も客席も一同に鼻をすすっている舞台を観たのも珍しい。かくいう自分もしっかりすすっていたわけだが。
そして意外や意外、笑いがいい。関西の笑いが苦手な自分さえ不意に笑ってしまうような、テンポ良く嫌味のないボケツッコミ。題材が題材なだけに重くなりがちな所を、上手くバランスをとり、身構えさせずに観せる。
役者達の演技も含め、観終わって素直に観てよかったなと思える作品。

音尾琢真の上腕二頭筋は惚れる。

増殖おんな

増殖おんな

ぬいぐるみハンター

ギャラリーLE DECO(東京都)

2010/02/19 (金) ~ 2010/02/21 (日)公演終了

満足度★★★★★

歩き見推奨
会話が数カ所で同時進行し、あっちでの会話がいつの間にかこっちの話題とつながって展開していくような手法をとっていたので、初心者に向いてるとか向いてないとかいうよりも、楽しもうとする心で周りに臆することなく歩き見できる人向き。
逆に立ち見や座り見していると面白さ半減するんじゃないだろうか。
当の自分はあっちもこっちも観たい精神でちょこまか移動したり一人ぶつぶつ言っているその内容の面白さに時に後ろを追っかけさせてもらったり、大変図太く楽しく観劇。
テーマと手法と空間の縫い合わせの的確さは前回の「埋没おんな」そのままに、今回「増殖おんな」達のはっちゃけテンションわちゃわちゃ感が丁寧に演出されていて、演劇として観やすく飽きないものになっていた。
内容で特にいいなと思ったのはラスト。短いながらも女という生き物の真実にソツなく迫っていてグッとくる。

『SHIBAHAMA』  遂に本日千秋楽!!!当日券出ます!!ぜひぜひおこしください。

『SHIBAHAMA』  遂に本日千秋楽!!!当日券出ます!!ぜひぜひおこしください。

快快

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2010/06/03 (木) ~ 2010/06/13 (日)公演終了

満足度★★★★★

ポジティブさに恐怖
どうもこれはChim↑Pomに遭遇した時と似た感覚。
今はまだただ、UMAに遭遇した直後のような放心状態。
芸術劇場ってああいう空間になるのか。
おすすめはしないが観ておくべき舞台な気はする。

アンチクロックワイズ・ワンダーランド

アンチクロックワイズ・ワンダーランド

阿佐ヶ谷スパイダース

本多劇場(東京都)

2010/01/21 (木) ~ 2010/02/14 (日)公演終了

満足度★★★★★

スマートな迷宮
ひたすら実存的な言葉(しかも現実虚構の実存入り乱れた言葉)で会話がなされるので、頭を全力で開いていないと置いてかれる。コメントを参考にずいぶんと気合を入れて臨んだのだが、一瞬気がそれたらだいぶ置いてかれかけた。
けれど内容はといえば、虚構と現実についての考察と実践という点からみて、その入り混じり具合も台本上での言葉と演劇の仕組みと組み合わせバランスも非常に上手いことやっており、似た試みをしてきたあまたの作品の中でもかなり成功してると言えるもの。虚構と現実らしきものの境目にあるラビリンス。少なくとも自分はワクワクしっぱなしで2時間みれた。

小説に書かれた言葉は必ず物語とかかわりがある、みたいな言葉(詳細不確か)をどっかで聞いたことがあるが、みていてその言葉を強く想起させられた。物語、特に文字で書かれた物語というものは常に恣意的。それをひっくり返して考えた所にこの舞台の始点があるように思う。

ネタバレBOX

個人的にやられたのはラストのオチ。虚構と現実を主題に据えるとどうしたってそこに帰着せざるを得ないよなという所にやはり落ち着きはするのだが、その見せ方のスマートさに唸る。
あれだけで伝えられるし伝わるというのがやっぱり演劇の強みなんだよなあ。
ジーンズ -gene(s)-

ジーンズ -gene(s)-

劇団銀石

ザムザ阿佐谷(東京都)

2010/09/29 (水) ~ 2010/10/03 (日)公演終了

満足度★★★★★

ハッピーエンドと言うために
ダーウィンの時代と進化論の過程を、恋と音楽の引力で束ねるなかなかアクロバティックなストーリー。物語の展開は歴史を生物史観から再編成することで現在と未来と存在を肯定的に把握し直す時に向かうための道筋であって、観終えると確かに熱くひたむきなメッセージが残る。きちんと「物語、物語る」という劇団理念に正面から取り組む姿勢を感じ取れた。
音楽家と組んでるだけあって、音楽の感性できめるシーンがキレてて最高に気持ちよし。野田秀樹的想像力と派手な身体動作って今どきむしろ新鮮。
言葉遊びにほころびが見える瞬間もあったが、基本的にハッタリ力でどうにかしてて嫌いじゃない。あとは笑い所で笑わせられるだけ全体の演技に余裕が出てくるぐらいになったらエンターテイメントとしては安心して観られようになるだろう。今回はまだ多くの役者がいっぱいいっぱい。

ネコ目 HYPHY!! 鎮魂歌【ご来場ありがとうございました】

ネコ目 HYPHY!! 鎮魂歌【ご来場ありがとうございました】

桃尻犬

参宮橋TRANCE MISSION(東京都)

2010/08/20 (金) ~ 2010/08/22 (日)公演終了

満足度★★★★★

白く高くぶちまけて
予想外に根本的な話で、予想外に笑った。
なんと言ったらいいのか、笑いか失笑かどちらに転ぶかギリギリな平均台上でなぜか三点倒立をして、何ごともなかったように前者に向かってしれっと降り立ったような作品。
下ネタ、というよりシモの話を題材にしている舞台で、しかも歌やアングラといった要素を取り入れた上で笑わようというのは個人的には背水の陣同然なのだけれど、
スピーディな間のセンス、無駄すぎる動作群のあまりの静かで自然すぎる過剰さ、なによりシモの話への真剣な取り組みが、いろんな意味で「イヤラシさ」を感じさせず、むしろ清々しくさえあった。

男優がのびのび演技をしていていいリズムを作ってた印象。特にまめ太?の人の、どう動いても笑わせる抜群の笑いセンスと、ごん太?の人の飛び道具加減は観ているだけで楽しい。

吾妻橋ダンスクロッシング

吾妻橋ダンスクロッシング

吾妻橋ダンスクロッシング実行委員会

アサヒ・アートスクエア(東京都)

2010/07/16 (金) ~ 2010/07/18 (日)公演終了

満足度★★★★★

大満足
出演者ラインアップを見てこれ面白くないわけないだろうと行ったダンスクロッシング。お酒も飲んでいいパフォーマンス観て、お腹いっぱい大満足。3時間だけれど時間の長さなんてちっとも感じない。ジャンル越境に興味のある人全てにお勧め。
飴屋さん達とか皆本当いいパフォーマンスを観せてくれたけど、中でも車ABの「スカイツリー」は、今後ここからもっと展開していって欲しいと思わせるような新しい感覚があった。
ライン京急はオチ役が加えられていたためか「EKKYO-!」で観た時よりも受け取めやすかった。

ネタバレBOX

ラストの方「つるとんたん」の重量感から「元気いっぱいいきましょう」の底抜けのポジティブさへの急勾配はちょっと酷に思えた。ここだけ公演の中で唯一心理的に付いて行けず。
カラフルなペイントなどでのドローイングだったらまだその間を埋めえたのだろうが、撥水力の高い壁に水で字を書くとどこかむなしさがこみ上げる。
色々な状況を含味した上でのことだろうが、なんか勿体ないなーと。
私と踊って

私と踊って

ピナ・バウシュ ヴッパタール舞踊団

新宿文化センター(東京都)

2010/06/08 (火) ~ 2010/06/13 (日)公演終了

満足度★★★★★

タンツテアター
何度も繰り返される「私と踊って」というほとんど金切り声のような叫び。
すさまじい感情とダンスの身体と、白と黒と光と影のビジュアルイメージ。「男達」と「女達」の気持ち悪さと逞しさ。そして思わず吹いてしまような面白さ。
言語の段階での誤読可能性が高いので自分が果たしてどれだけ作品を理解してるのかはわからないけれど、とにかくこんなダンスなのか演劇なのか音楽なのかわからないようなものを、ダンス界が70年代にやってのけてしまっていたということが衝撃。やー、ダンスもっと観よう。

ストロベリー

ストロベリー

国分寺大人倶楽部

王子小劇場(東京都)

2010/09/23 (木) ~ 2010/09/27 (月)公演終了

満足度★★★★★

超正統派直球ラブサマー
18歳以上の人全員が観に行けばいいと思う。むしろ18歳以下が大人の階段登っちゃえばいいと思う。20円だし。『男女7人夏物語』と聞いて鼻で笑ってしまう人にこそすすめたい。
軸はストレートな恋愛劇で手段は変化球というズラし感覚がビビットに異化効果として現れている。イメージとしては『大きく振りかぶって』の主人公三橋の「まっすぐ」みたいな球種かなと。
あと10分は短く出来そう。
日時限定の、30分で書き上げたというおまけ公演のいい加減さといったらなくて爆笑。
ポロリもあるよ。

ネタバレBOX

昨日観た鵺的の『クィアK』よりもかなり健康的な、セクシュアルマイノリティのあたりまえさがほほえましい。舞台を観たほとんどがこれが変化球であるという意識が実感として分らなくなる時があと10年もすれば来そうな気もする日本という脅威。すばらしい。
八百長デスマッチ/いきなりベッドシーン

八百長デスマッチ/いきなりベッドシーン

柿喰う客

タイニイアリス(東京都)

2010/04/15 (木) ~ 2010/04/18 (日)公演終了

満足度★★★★★

人力爆走列車
まだ数回しか行ってはいないが、観に行く度、柿喰う客ってすごいんだなあと思う。そのバイタリティの面においても、コンセプチュアルなものを観客に見世物として提供する段階にまで毎回きちんと建設する意識と実力の面においても。
今回の公演、特に40分を噺だけで引き込んでしまう一人芝居を観ていて、作品自体が持つ強度にまた改めてすごさを実感した。
なんというか、もはやこれは、普遍性に近づくことで生まれている強度なのではなかろうか。
観ている最中、身体の若さや年齢的なあれは置いとくとして、これをもし、落語のようにずっとやり続けて名人芸のようになったら一体どういうものになるんだろうだとか、あるいは他の役者が演じたりしたら、ということを考えていた。
もちろん今回の2作は当て書きであると公言していたし、この3人でしか表現し得ない緊張感を観せつけていたのも確かなのだが、それでももし他の人がこれを演じたら・・・と想像してしまうのは、やはり作品自体にどこか普遍的な強度を感じるためだろう。
見世物としての強さと作品の普遍的な強さ。中屋敷法仁作品がもし時代を越えたらどうなるんだろうとか考えると、ちょっと面白い。

『ハチクロニクル』 (公演終了)

『ハチクロニクル』 (公演終了)

劇団鋼鉄村松

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2010/04/16 (金) ~ 2010/04/18 (日)公演終了

満足度★★★★★

ハチクロとは真理である
☆を3か5かで迷う。
高学年も高学年向け、物理学に哲学に歴史学に文学を、会話がいちいち大学院学術論文レベルで行われているよう。まるで気分は外国語放送、日本語を聞いているはずなのに7割ほど何を言っているのかわからないという奇跡。
その中でほとんど唯一の足がかりはハチクロで、それで3割ほどはちゃんと解読できた気がするのだが、それでもハチクロどころかディープな羽海野チカファンぐらいしか知らないような情報をサラッと入れていたりしたので、単にハチクロ読んだことがあるぐらいの知識じゃついて行けないのではないかと思う。他の要素もおそらくこんな風にうっかりディープだったりするのだろう。
カブタンに反応出来る人が一体どれだけいるんだろう。
ハチクロが絡んでくる部分はわりと少なかった印象。
全体的な演技と演出の柔さが自分の許容範囲ギリギリだったのだけれど、全然読めないトリッキーな挿入や何が進展しているのかいないのか全くわからない展開、知的好奇心のおかしな部分が刺激されて、なんだか一筋縄ではいかない魅力を感じた。
これは怪作だと思う。他人にはおすすめできないけれど。

背馳【公演終了しました!ご来場誠にありがとうございました!】

背馳【公演終了しました!ご来場誠にありがとうございました!】

ヲカシマシン

ギャラリーLE DECO(東京都)

2010/05/19 (水) ~ 2010/05/23 (日)公演終了

満足度★★★★★

フラクタルスピード狂
三次元の布切れを、「かもしれなかった」四次元の糸でパッチワークした、100年弱の時間と神の視点。
言葉の濃度と、演出や構成や場所との関わり合い、それがどう舞台として立ち上がっているのか説明しようとしてもできない、挑戦を見届けたい人必見な舞台。
わざわざパンフの表紙にまで載せている「混乱しよう」の言葉の通りに、観客は言葉と時間空間の混乱に興じるのが吉。しかしそこで付いていくことと考えることをやめてしまってもおもしろくない。おもしろい舞台。

残念だったのは空間環境。ルデコの壁は音を反響させるので、せっかくのスピード(主に言葉)が四方八方に拡散してしまって、展開とは関係ない所に集中力を割かざるをえなかったのは観客としては大変だった。
「舞台上」の概念に挑む演出は全くルデコ向きだったので一概に会場設定を否定はできないのだが。

演技で特に眼に付いたのは作・演の橋口周公。「舞台」への入退場を含めた奇妙な佇まいが興味深かった。

露出狂

露出狂

柿喰う客

王子小劇場(東京都)

2010/05/19 (水) ~ 2010/05/31 (月)公演終了

満足度★★★★★

スポ百合
好き好き大好き楽しいな。
演出に舌を巻くのはいつものことだが、今回は女優達が一心同体となってトルネードのような運動を産んでいた印象。中屋敷さんが「サル山」と表現したセットに相応しい、ジョシコーセー幻想を叩きかち割る野生のメス達ここにありけり。
白百合なんちゃらとか聖なんちゃらとかでなく、高天原って校名がなんとなく、日本全土を産んどきながら最終的に黄泉の国の鬼神になって夫殺そうとしちゃうイザナミとか、天岩戸にひきこもって皆を困らせちゃうアマテラスとか存外パワフルな日本の女神を連想させていいなと思う。
女の顕在的な恐ろしさをあますところなく肥大化すれば、むしろドロドロ泥試合になりそうなものなのに、実際残るのはちょっとしたすがすがしさというのがすごい。
もう一回観たかったなー。

ネタバレBOX

個人的に、なあなあ→革命→濃密→能率→なあなあの高校集団活動の弁証法はすっごく身に覚えのある光景だったので、昔の作文を発見しちゃったような気恥ずかしさ。けれどここまで極端に誇張されると笑える。
視点 vol.1 Re:TRANS(MU×ミナモザ×鵺的) 満員御礼、審査発表をblogにて公開しました!

視点 vol.1 Re:TRANS(MU×ミナモザ×鵺的) 満員御礼、審査発表をblogにて公開しました!

視点

ギャラリーLE DECO(東京都)

2010/09/21 (火) ~ 2010/09/26 (日)公演終了

満足度★★★★★

ある視点
☆は企画自体への評価ということで。公演の位置づけがはっきり自覚的だったので、予め観方を準備できたのがよかった。もちろんただ観るだけでも楽しいけれども、せっかく『トランス』との関係を示してるのだから、なるほどふむふむと考えながら観るのがやっぱり面白い。
今回の公演は「トランス」と「スタンダード」というキィが具体的でかつ解釈の幅が広かったのがいい方向に働いていたように思う。『トランス』のどの面を切りとり返答として提示するのか、三者三様の視点が楽しめた。
逆に三者三様の視点でそれぞれ良さがあっために、多元的な評価基準を採用しないと単純でつまらない気もするので、結果発表ってどういう感じになるんだろ?とか思ったりも。
例えば様々な場所で上演されうるスタンダードなバランス感覚は『無い光』が一番ではなかったかと思うが、2010年の立場からの『トランス』への返答を最も抉って表現していたのは『クィアK』ではないかと。ちなみに自分の一番の好みは『クィアK』。
またあとでネタばれに書く予定なのでとりあえずこれで。

ネタバレBOX

舞台とは関係ないけど体調不良で途中で退室した女の人大丈夫だったのかな・・・
『アタシが一番愛してる』

『アタシが一番愛してる』

バナナ学園純情乙女組

ART THEATER かもめ座(東京都)

2010/06/15 (火) ~ 2010/06/20 (日)公演終了

満足度★★★★★

!!!!!!!!!!!!!!!!!
こりゃすごい。これほど狂乱やカオスという言葉が脳天を突き抜け耳をつんざく舞台もなかなか観られない。実際公演後は軽く難聴。
ほとんど台詞が聞き取れないのもなんのその、キレキレの身体、意味をなさない場面の同時平行パワープッシュ、飛びまくるあれやこれ。ロリから男の娘(女装子?)まで初っ端からランナーズハイ。
統制に向かえば柿喰う客、無秩序に向かえばこれといった感じ。
快快に似た危なっかしさも感じたが、こちらの方が遥かに健康的。
今の時分に身体論を語るなれば、最もプリミティブでアグレッシブなものの例に挙げられるのは、実はオタク的なそれなのかもしれない。
ただ、他の方も書いているように戸口が万人に開いてないので、観劇は各自判断で。
でも80'中〜後半に生まれて90年代からテレビをBGMにゲーム機とパソコンをおもちゃにして育って、00年代にニコニコ動画のMADを(オタク的な意味で)観てきた世代のコンテクストがデフォルトになっていたようだったので、そこらへんに同調できる人は数々の小ネタにときめく事必至。

ロミオの代わりはいくらだっているし、ジュリエットの代わりだって腐るほどいる

ロミオの代わりはいくらだっているし、ジュリエットの代わりだって腐るほどいる

掘出者

ギャラリーLE DECO(東京都)

2009/12/15 (火) ~ 2009/12/20 (日)公演終了

満足度★★★★★

無名性
この舞台への印象の分かれ目は、関係性の気持ちの悪さに気付かず生きる数多くの登場人物と、心理的な距離が取れるか取れないかではないかと思うのだが、
観客という、暴力的に覘き観るられる関係の観る側という、これまた気持ちの悪い関係にひたすら徹し、人物達との距離を持つことができたのでとても面白く観ることが出来た。

ネタバレBOX

この社会のなかで、お互いの対応のとりようを決定しているのは、時間を費やして構築された無二のコンテクストでもなんでもなく、「友達」「恋人」「元恋人」「隣人」「母子」「兄妹」「バイト仲間」ひたすら無名性の言葉でしかないんだなーと思いながら今公演説明を見てたら同じこと書いてあっったのであれまと思った。

そしてやはり結局全ては「母」が包みこんでしまうおそろしさ。
三五大切

三五大切

花ざかりのオレたちです。【公演終了しました!】

桜美林大学・町田キャンパス 徳望館小劇場(東京都)

2010/03/22 (月) ~ 2010/03/24 (水)公演終了

満足度★★★★★

学生プロフェッショナル
学生演劇最強軍団登場。
さてそれでどのように学生演劇の脅威を知らしめるのかと思ってブログをみてみたら、どうやら配役をローテーションでやるということらしい。
ふうん?といまいちピンとこないでいたのだが、その狙いは実際観ればなるほど納得。
なんたることか、配役がローテーションだということを全く感じさせないクオリティ。
毎日配役を替えていてなおこの完成度を維持しているというのならば、演出が描く譜面の精確さと、役者一人一人の技術の高さが苦なく想像できる。これは確かに驚き。学生表現につきものの若い・青い・無鉄砲なんてどこ吹く風、なんてしたたかに力強く脅威を醸し出すのだろう。
内容は原典があるものの、キュキュッとかわいく凝縮&省略する部分とぐっと引き延ばす部分の緩急激しい魅せる脚本と演出で、能・狂言舞台にもリングにも見える小さな四方型舞台の空間を自由自在に切りつなげていく。演出さんパンフに落語の方面もやっていたと書いてあったのが納得の噺っぷり。古くさくなく、かといって全部現代風というわけでもない、「いい感じ」の古典具合。
固定の役にかかりきりでないためか、演技の中にも各々のカラーを見せる余裕のある人は少ないように見えたが、それはまあしょうがないのかな。
革新的というほど強烈なインパクトは感じなかったが、古きものに新しい感覚をグイグイ縫い込む、正攻法真っ向勝負の潔さが成功している舞台。
何より、客に観せるものを作っているという彼らの高いプライドをビシビシ感じることができたのがよかった。
パンフでは思い出作り程度の演劇をしている学生に発破をかけていたが、プロでやっている中途半端な劇団への発破にもなってくれたらいいと思う。
この公演で足場の強固さは充分観せつけてくれたので、次回以降何を観せてくれるのか、非常に期待が持てる。
しかし次回よりも、まず今回二度以上観なければ真に脅威を味わう事ができない気がするので、都合がつけばもう一度観に行きたい。
事前の全日程配役表みたいな情報は出てないのかな。

投げられやすい石

投げられやすい石

ハイバイ

こまばアゴラ劇場(東京都)

2011/01/19 (水) ~ 2011/01/30 (日)公演終了

満足度★★★★★

気まずさの極地
これだから演劇ってやめられない。
訳あって幼少から「ひきこもり」の青年達を数多く見てきた。『ヒッキー…』で岩井秀人の「ひきこもり」の身体を観た時、そのあまりのリアルさに眼が離せなくなった。
言い知れぬ怯え、力の入り、目線、微妙に過剰な自意識。その後他の人が同じ役を演じていたが、圧倒的に岩井秀人の「ひきこもり」は本物だった。
ただ、個人的には物語としての『ヒッキー…』はあまりピンときてなかったのだが。
だが今作はすごい。すさまじい。岩井秀人の実体験から得た特異な身体性の抗い難い魅力が最大限に活用された。
あれは本当に、岩井秀人の身体でしか表現することができない。
また、「友人」関係のぐらつきも、実際交流が深く信頼関係があるのだろう松井周との間でしか表現できないだろう。
物語性に重きを置く人にとっては、この作品はほとんど何も起こらず最後だけ少し盛り上がるものとして映ったかのもしれない。
けれどそうじゃない。身体を通してでしか表現されない微細ななにものかが隙間に見える部分に網を張り、するすると観客をラストに向かって運んでゆく。この濃厚さ。
岩井は自ら「生涯最高傑作かも」と口にしているようだが、それも納得の公演。これは、うん、すごい。演劇ってすごい。

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