KAEの観てきた!クチコミ一覧

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スイングバイ

スイングバイ

ままごと

こまばアゴラ劇場(東京都)

2010/03/15 (月) ~ 2010/03/28 (日)公演終了

満足度★★★★★

柴幸男さんの才気に一目惚れしました
今まで、こういう風にしたくてそうできない芝居は数々観た記憶はありますが、こういう風にしたくて、こういう風に見事に具現化できた芝居は、たぶん初めて目にしました。
まさに、大袈裟に言えば、演劇の果てしない可能性を実証した公演。こんんなに、才能ある演劇人がこの世に存在したんだと、興奮冷めやらない思いで、恍惚感に胸溢るる思いで、帰路につきました。
それに、柴さんの佇まいがとにかく素敵!!普通な感じが。(笑)
今まで、せっかく後味良い芝居に感動しても、そのすぐ後に、これ俺様の仕事だぜ的な、したり顔の主宰のアフタートークなどに、げんなりした経験が数多いので、最初、柴さんが舞台に登場された時は、一瞬その嫌な経験がフラッシュバックして、心配になりましたが、良い意味で、存在感のない方で、ほっとしました。客に不快感を与える主宰だと、どうも100%その劇団のファンにはなれないのですが、ままごと、初見にして、大お気に入り劇団になりました。
今年の☆5つでは足りない舞台3作目。
この作品の素晴らしさを言葉で伝えるのは、非情に困難です。まさに、奇跡的実験劇の秀作。実際、体感して頂くのが、一番だと思います。

今日の、柴幸男さんとの出会いは、私の長い観劇人生の中でも、きっと生涯忘れられない思い出になりそうです。

ネタバレBOX

お客さんが、座り終わった頃を見計らい、タイムカードを押して、出社してくる社員達。もう、そこから、既に、この大人版おままごとが見事に幕を明け、客席の気持ちを、まんまと、舞台に参加させてしまいます。
手渡される社内報、一緒に歌える、元気な社歌。そういう、お膳立てが、まさにまま事遊びそのものなんです。
会社に見立てた人生には、だから、戦争や貧困は一切登場しないのは、想定内のことでしょう。だって、これは、おまま事なんだから。
裸舞台で、セットや小道具は一切ないのにも係わらず、説明的な台詞も前振りもなく、瞬時に、その場面の舞台を客に理解させてしまう、柴さんの手腕に心底舌を巻く驚きをもらいました。
オペラのように、登場人物が全員舞台上にいるのに、瞬時に、その場面の登場人物だけに照明を当てるかのような、演出の才には、度肝を抜かれました。
まるで、それだけでも十分美しい緻密な設計図によって、類稀ない職人達の技巧によって、建築が成った、世界遺産的な美術建築を目の当たりにしたような、スゴイ体験でした。
役者の個性で見せる演劇とは異質の、綿密に計算された、作劇の妙に、感嘆させられっぱなしの90分でした。
全てに、破綻がなくて、もう見事なまでの職人芸!!
堪能させて頂きました。

これと言ったストーリーがないかのように見せて、実は、登場人物の人生模様も、見事に活写されていて、秀逸でした。
小梁さんと奥さんの会話シーンでは、涙がこぼれました。そこに射す夕日の美しさに、胸がいっぱいになりました。
最後に、エレベーター係の鬼頭さんと、新人社員の大石のカップルが、実際またタイムカードを押して、実際のエレベーターに乗り込み、退社するシーンが、また何とも言えない余韻で、胸に沁みました。
これから、ままごとは絶対見逃しません。
瑠璃の壺

瑠璃の壺

木山事務所

「劇」小劇場(東京都)

2010/03/17 (水) ~ 2010/03/21 (日)公演終了

絵に描いた餅のような芝居
堤春恵さんが、独自の想念をめぐらせて書き下ろした作品…まさに、その通り、それに尽きる作品でした。
つまり、絵に描いた餅。作者が頭の中だけで原稿用紙に表出したまことしやかな嘘芝居でしかなかったということです。そんな、芝居モドキの舞台に1時間40分も付き合わされ、心底辟易しました。
まるで、出来損ないの新派芝居、または三島の近代能楽集もどき。
日舞の「隅田川」に材を取り、和装で、名女優の一柳みるさんが、舞ったりすれば、そこそこ、実しやかに見えてしまいそうですが、一皮向けば、まさに作家の勝手な想念を頭の中で取り繕っただけの、スカスカな内容の拵え芝居で、げんなりしました。
ほとんどが、私より悠にご高齢の客層なのに、慣れない小劇場の椅子で、あんな中身のない芝居を見せられるなんて、あまりにもお気の毒でした。

それに、木山さん、小劇場の演出の術を心得ていらっしゃらない気がしました。劇場空間の把握が為されていない演出でした。劇場入り口に、無愛想に立っていらして、とてもお客様を迎える風情とはお見受けしないことも残念でした。それも、合わせて、木山事務所の小劇場公演は再考の余地があると思いました。
あー、そうして、またもや!!こういう、古ぼけたかび臭い、何の面白みも真実味もない芝居に限って、何故か助成事業の対象になっている、情けない現実!!この現実が、演劇界の不条理そのものだと強く思いました。

ネタバレBOX

もう、全てが、笑っちゃうレベルの作品でしたが、一柳さん、森尾さん、金尾さんは、この作品を少しでも、実のあるものにしようと、努力されていました。広瀬さんは、日本でのお芝居が久しぶりのせいか、何となく、役が掴みきれない迷いが出てしまっていました。
吉野さんの、呉服屋さんが、所作からして、まるで、その職業人らしく、秀逸な演技をされていました。

何となく、詰まらないながら、ありがちな展開で、まあ、そんな芝居は五万とあるので、驚きませんでしたが、いくらなんでも、いきなり伏線も何もなく、森尾さん扮する水無と、広瀬さん扮する綾香が、女性同士で、結婚したいと言い出して、抱き合った時には、椅子から転げ落ちそうになりました。先日観たMCRの芝居みたい!ワケわかりません。
堤春恵さん、想像を絶しています。
フジヤマタイガーブリーカー

フジヤマタイガーブリーカー

MCR

駅前劇場(東京都)

2010/03/17 (水) ~ 2010/03/22 (月)公演終了

がっかりの極致で、激後悔!!
今週観たい舞台が目白押しだったのに、評判の良さに惑わされ、行ってしまって、大後悔!!これからは、自分の直感勝負で、観る芝居を決めようと、固く決心しました。
始まりは、なかなか面白そうでしたが、いろいろレンジャーのショーが始まったら、途端にベクトルが下降線。終いには、アンケートも書く気になれず、いつも立ち寄る行きつけの店にも顔出す元気も失せ、スゴスゴ帰宅しました。
脚本に、面白くなる要素はあるけれど、面白くなる見込みは感じない団体でした。
櫻井さんは、役者さんとして、自転車キンクリの「29時」で拝見したことがあり、良い味わいの役者さんだと思ったのですが、やはり、作演か出演か、どちらかにした方が良い気がします。
まだ、面白さを感じた始まりのシーンでも、コメディに必須の間の悪さが顕著でした。笑いを取れる台詞の後の間、暗転前の間が、どうしようもなく、中途半端な印象でした。コメディの演出が、自分でも出演していては、その大切な間の取り方を客観視できる者がいなくて、非常に、コメディの完成度を下げると思います。
そして、この芝居の笑いの種になる、重要なポストを、実に、それに不向きな女優さんにキャスティングしていて、櫻井さんのプロデュース感覚に、かなり疑問を持ちました。
数年前、まだ私が、小劇場にも名コメディを上演する団体の存在を知らなかった頃に、小劇場のコメディに抱いていたイメージ通りの劇団レベルでした。
おいしいご馳走の味を知ったら、すいとんが苦手になる如く、最近小劇場の名コメディの味わいを知ってしまった私には、実に味わいの悪いコメディでした。

グリーン役の江見さん、ピンク役の上田さん、手下役の小野さん、青龍怪人役の渡辺さんは、なかなか良い味わいの役者さんでしたが、一番注目したのは、司会のお姉さん役の伊達さん。彼女だけは、きっちり、嘘を感じさせないプロの仕事ぶりを見せて下さいました。

ディートリッヒ

ディートリッヒ

Quaras

青山劇場(東京都)

2010/03/12 (金) ~ 2010/03/28 (日)公演終了

満足度★★★★

見事な宙組黄金コンビ復活公演でした
以前見た仮チラシでは、脚本が作詞家の竜真知子さんと記載されていて、幾分不安に思いながら、劇場に行きましたが、観ている内に、これ、絶対竜さんじゃないでしょと確信して、今、解説を見たら、何と、私のお知り合いの作家のお名前になっていました。

で、観てきた感想ですが、本当に、こんなに出来の良い芝居を想像していませんでしたから、私にしてみたら、棚から牡丹餅のような嬉しい、ステージでした。
見事なまでに、宝塚スタイルの劇構成で、宙組黄金コンビの復活公演のようなテイストのファンには堪らない舞台でした。
私は、和央さんより、むしろ花總さんのファンでしたから、彼女が、コンサートの時のような和央さんの引き立て役ではなく、きちんとピアフとして舞台上に存在してくれていたことが何より嬉しく思いました。

宙組黄金コンビファン、迷わず青山劇場へ急げ!!
と言いたい、ファンなら、小躍りするような嬉しい舞台でしたよ。

脇で固める、綜馬さん、今さん、宮川さんの好演も光ります。お三人とも、演技良し、歌良しの、貴重なミュージカル役者さんですから。それに、横内さんの歌がなかなかなのにもビックリでした。
そして、何よりビックプレゼントなのは、あの吉田都さんのバレエを生で拝見できたこと!!バレエには造詣のない私にも、その美しさは充分過ぎる程、わかりました。

ネタバレBOX

二人とも女性同士の役ですが、宙組のお二人の再現かと見紛うような、堪らない仕掛けが施されたシーンがありました。まさに、夢よ再びの舞台です。
本当に、宝塚の舞台のようでした。
ただ、ナチスの将校のダンスシーンは、振りと言い、メロディと言い、「ミス・サイゴン」のシーンに瓜二つな場面があり、何だかパクリっぽく感じました。
招かれた客

招かれた客

シルバーライニング

三越劇場(東京都)

2010/03/16 (火) ~ 2010/03/21 (日)公演終了

名舞台の予感大ハズレに泣く
何だろう???
とにかく、劇場全体が緊張感のなさで充満していました。
終わってますね、三越劇場!!
子供の頃は、数少ない劇場のひとつで、三越で芝居を観た後、デパートのレストランで、お子様ランチを食べるのが、あんなに楽しみだった、馴染み深い劇場でしたが、もう愛想もクソも尽き果てました。
カンフェティで購入した引換券を
シルバーライニングの受付に出すと、「チケットお持ちの方はお入り下さい」と言われ、「これ引換券で」と言うと、「ではあちらへ」。で、今度は劇場受付で、またそっくりそのままのパラレルワールドを経験し、また「いえ、引換券で」と言うと、「ではあちらへ」とまたさっきの受付を促され、「いえ、さっき、あちらで、こちらへと言われて…」と言うと、何とその受付のおば様、私には何も言わす、めんどくさそうに立ち上がり、私をその場に置いてけぼりにしたまま、製作受け付けに…。言われた向こうの受付と責任のなすり合いをしばらくしていたら、横で、他のお客さんと他愛ない話に興じていたおじさんが、「え、あーカンフェティのね?さっきから、そうじゃないかと思ってたんだ」とか、信じられない台詞を吐いて、私に、一言の詫びもせぬまま、にこやかに指定券を渡して下さいました。(怒りを通り越し、苦笑する私)
何だか、コメディを観に来た筈なのに、別役さんの不条理劇「受付」の主人公にでもなった気分。その間、だいたい5分は超過。もし、私がギリギリに劇場に付いたなら、きっと開演前に、自分の席に着くのは無理でした。
で、やっと席に着いたら、案内嬢が、気のない様子で、携帯電話などの注意をして、無気力な感じで、空席だらけの客席を一巡。
すっかり、舞台観る前に、気持ちが萎えてしまいました。

で、肝心の舞台ですが、これがもう、あの鵜山演出とは信じ難い絞まりのない舞台進行(涙)
コメディに不可欠なテンポの良さが微塵もなく、何だかひたすら、名優4人がお気の毒な感じでした。
きっと、制作サイドがあんなだから、お客さんにいい芝居を…なんて、気概は皆が失ってしまうのですね。「一事が万事」、この言葉、台詞にも出て来ましたが、まさに「一事が万事」を痛感した舞台でした。あー、それにそれに、テンポの良さが命のコメディなのに、何と、休憩が25分もあるんです。食事休憩でもないのに、帝劇や歌舞伎座じゃあるまいに、何故に25分も休憩??
昔ながら、デパートの営業時刻に合わせて、夜の部が16時始まりというのも、今のご時勢に合いません。これじゃ、客席が埋まる筈ないと思うことだらけ。
こういう、諸々の思いを、アンケートの「本編のご感想を」と記載された、ひどく狭いスペースに書き込み、帰りに、ボーっと立ってる案内嬢に、「アンケートはどちらに?」と、三回もよく通る声で聞き続けた末、ようやく「あ、こちらでお預かりします」と、ありがたいお返事を頂いて、ようやく昔懐かしい劇場をスゴスゴと後にした、何とも哀しくなる観劇でした。全てにおいて、間が抜けた舞台!!

ネタバレBOX

風間さん、久野さん、綾田さん、川端さんんと、ベテラン役者揃いなのに、何とも、間の悪い芝居展開でした。
話は、まああまあよくできている部類のコメディですが、向こうの政治家などの台詞ではわからないと見て、かなり、台詞が日本バージョンになっているのですが、まあ、ムッシュ小泉の政治戦略の例えまではよしとしても、鳩山さんまで出てきては、ちょっと本筋を壊してしまい過ぎ。そんなことをするなら、いっその事、舞台を日本の話に置き換えればよかったんじゃないのと思ってしまいました。その方が、三越劇場の、この誰も楽しみに芝居を観に来た感のまるでない客席の雰囲気にも合っていたんじゃないかしら…(と、ちょっと嫌味言いたくなりました)

とにかく、制作、劇場、客席全部に、やる気なさ、観る気なさが立ち込めていて、その中で、一生懸命演じている役者さんを見ていたら、無性に切なくなってしまいました。
『学生・生徒または未成年者は勝馬投票券を購入できません(再)』

『学生・生徒または未成年者は勝馬投票券を購入できません(再)』

8割世界【19日20日、愛媛公演!!】

劇場MOMO(東京都)

2010/03/16 (火) ~ 2010/03/22 (月)公演終了

満足度★★★★★

これはかなり面白い!!
8割世界を観るのは、これが4作目ですが、今回が一番面白い、よくできたコメディ作品だったと思いました。
やはり再演だけのことはあります。よく練られていて、いつも感じた終わり方のイマイチ感がなく、大変秀逸な気持ちのよいコメディに仕上がっていました。
それに、今回のキャストは皆芸達者揃いで、バランスの悪さもなく、皆が適材適所の役で、魅力的でした。
もしかしたら、先日テレビで観た、東京サンシャインボーイズの「ショー・マスト・ゴー・オン」より面白い気さえします。
役者さん、皆好演の中、特に、岡本さん、鈴木啓司さん、嶋木さん、倉田さん、川久保さん、橘さん等の客演陣が大活躍で、常連神原さんのいない穴を見事に埋めていました。本多さんも、いつもとは違った、腹に一物ある役、なかなかお見事でした。巧い役者さんだなと再認識しました。本多さん以外の8割メンバーが脇に回っていたのも、今回はむしろ新鮮な印象でした。
初めて8割世界に☆5つ付けられる舞台でした。
コメディ好きな方には満足の行く舞台ではと思います。

ネタバレBOX

いつも終わり方が何となくスッキリせず、一瞬今回もまた?と思ったら、見事な着地で、秀逸でした。
「ユーリンタウン」の博士役で美声を聴かせてくれた、鈴木啓司さんの歌声、思う存分堪能させて頂きました。(笑)大西ライオンよりずっと面白い!看板俳優小林さんはいつ登場するのかと思ったら、最後に、なかなか味わいのある役で再登場。冒頭シーンで、話の導入を請け負った川久保さんは、最後の場面でも、人間性を感じさせる先生を好演され、癒しの先生役がはまっていました。
笑いのネタを一つに絞ったところが、構成としても、緻密なコメディを成功させた起因ではと思います。職員室がまさかの地下3階の設定も絶妙でした。
それにしても、川久保さんが、三谷幸喜さんに激似でした。何だか、好きな役者さんが、今日だけで、何人も増えてしまいました。

鈴木雄太さん、作劇の才もあるけれど、キャスト選びの才がずば抜けていますね。
兵器のある風景

兵器のある風景

俳優座劇場

俳優座劇場(東京都)

2010/03/14 (日) ~ 2010/03/22 (月)公演終了

満足度★★★★★

本当にすごい演劇!!!
久しぶりに胸にじわじわ迫る本当にすごい演劇を拝見しました。これで、2800円なんて申し訳ないくらい。
今年の、☆5つでは足りない2作目舞台でした。
まやかしや小手先でない、迫真の会話劇。こういうプロ中のプロが書いた骨太の会話劇には、なかなかお目に掛かれるものではありません。
その上、常田さんの翻訳が素晴らしくて、翻訳劇にありがちな、よその国のお芝居感が皆無でした。
役者さんも演出も美術も、全てプロの力が結集した、類稀な本物の演劇世界が構築されていて、この舞台に関わった全ての人の力業に脱帽しました。

ネタバレBOX

私の周りに、最新兵器に関わるような人物はいる筈もないのですが、常田さんの見事な翻訳と、坂手さんの綿密な演出と、役者陣の嘘に思わせない演技と、島さんの脚本世界を寸分違わずに表出した美術によって、あっという間に、この自分の周囲にはいない筈の人物ネッドの葛藤が我が事のように身近に感じられ、その兄ダンと同じように、彼の今後の人生を見守る目で、終始感情を揺すられっ放しの3時間弱の観劇でした。

一幕はネッドの新居の部屋。整然としているけれど、絵の位置が何となく不均衡で、彼の心を表出するような、上辺だけ落ち着いた部屋。一般市民の命も奪いかねない兵器を創り出した弟と、その使用を必死に阻止しようとする兄の二人芝居の部分が特に秀逸。でも、そんな大それた話題をしていても、二人は腹が減ったと食事をし、トイレをもようす、普通の生活者なのです。だから、余計、繰り広げられる会話が、人事でなく、胸に刺さります。
二幕は、一転、無機質な尋問部屋的様相の部屋。ブルックスが、投げるゴムボールが精巧な拷問道具のように見えて、不気味でした。
暗転後の三幕は、元のネッドの部屋ですが、彼の心の憔悴を物語るような、散らかり放題の部屋。でも、一幕の変に整頓された部屋より、ひどく人間味のある部屋に思え、これからのネッドの人生が、兄一家の情愛に支えられて、人間的な生活が戻って来そうな、静かな情感を感じました。

役者さんは、誰もが、役として、説得力ある好演。最近、坂手さんの繰る腹話術の人形的な台詞ばかりでお気の毒な感じだった大西さんが、もう、ネッドの苦悩を見事に体現され、久しぶりに役者冥利に尽きる役だったのではと、嬉しい名優ぶり。大してできの良くない本でも、書かれている以上の役を生きられる数少ない名優、中嶋しゅうさんは、本が素晴らしいから、これはもう実際そこにいる人物のよう。荻野目さんの舞台は、久しぶりでしたが、西欧のキャリアウーマンの所作を見事に演じて、日本人とは違う女性像を活写。浅野さんは、任務に忠実な男の不気味な自信を表出した不敵な演技が、秀逸でした。

大変重いテーマなのに、こんなに卑近な感情を持って、観劇できるとは予期していなかっただけに、本当に宝くじに当たったような、充実感を感じた傑出舞台でした。

この作家、ジョー・ペンホールの作品「ブルー/オレンジ」買ってあるので、益々楽しみが加速しました。
富士見町アパートメント

富士見町アパートメント

自転車キンクリーツカンパニー

座・高円寺1(東京都)

2010/02/27 (土) ~ 2010/03/14 (日)公演終了

満足度★★★★★

Bプログラムには文句なし!
今日も、セット券で、先日と同じ席で、またアパートの壁が正面でした。(笑)
それに、観る前は、Bプログラムの方が、個人的不安が大きかったのです。「モスラを待って」で、途中退席したい程だった作家さんの作品やら、テレビで観てあまり好きでない若い俳優さんがご出演だったりで…。
ところが、どっこい!観てビックリ!どちらも、文句ない上出来作品でした。
Aプログラムしかご覧でない方には、是非、こちらもご覧頂きたかったと、人事ながら、とても残念無念です。
4作の好きな順を書くと、「リバウンド」→「ポン助先生」→「魔女の夜」→「海へ」となります。今回の鄭作劇には心酔しました。

そして、4作観て思うのは、やはり、鈴木裕美さんは、日本でも屈指の名演出家だということ!
今後は、食わず嫌いはやめて、裕美さんの演出舞台は、欠かさずに行こうと決めました。

ネタバレBOX

「リバウンド」…もう、幕開けから、心を鷲づかみされました。シュープリームスさながらの、かなりふくよかな女性3人のコーラスグループが、コンサート会場に出向く直前の衣装姿の部屋。そこで、稽古がてら歌い踊る三人の姿の楽しげな様子に、歌い終わると、客席から満場の拍手が沸き起こり、あー、ホントに彼女達のコンサートに行ってみたい気分に。それが、暗転後は、一転、数年後の、引越し荷造りに余念のない、ジャージ姿の場面に変わり、その転換の鮮やかさに、心の中で喝采を叫びました。何と言っても、3人の太めコーラスガールを演じた、平田さん、池谷さん、星野さんの、チームワークの良さと、体を張った演技表現の見事さに、感服!
秀逸な人間模様を活写した脚本、心得た才気溢れる演出力、体に反比例するような細かい心象表現の見事な3人の女優陣と、3拍子揃った素敵な舞台作品に、本当に、心打たれました。最後のシーンが、これまた素敵!弥生の携帯着信メロデイが、嵐なのも、とっても受けました。そのことに、誰も突っ込まないのが、実に気が利いていました。

ポン助先生」…マキノさんの作劇は、やはり終始安心して、観ていられます。
山路さんは、こういうお芝居の時の見慣れた演技パターンではありますが、巧いから、いいんです。山路風味のポン助先生、大好演!会場から度々心地良い笑い声が生まれるのは、山路さんの遊び心溢れた好演のお陰。この方がいれば、どんな芝居でも、一定基準をクリアされる、なくてはならない名役者さんだと、改めて惚れ直しました。西尾まりさんは期待通りの、素敵な演技。そして、心配だった、黄川田さんも、田舎出の若手漫画家を、なかなかに体現されていて、ほっとしました。きっと、前回の舞台で、裕美さんのお陰で、演技開眼されたのでしょう。これからは、彼のご出演舞台も、安心して観に行けます。
月並みなはなし[2010]

月並みなはなし[2010]

時間堂

座・高円寺2(東京都)

2010/03/11 (木) ~ 2010/03/14 (日)公演終了

満足度★★

月並みな芝居?
これも、静かな演劇の範疇でしょうか?
観劇が人生の喜びの重要素になっている私には、演劇というのは、どんな形にせよ、感情を揺さぶってくれるインパクトが必須条件なので、その意味で、この芝居は、私の気持ちをほとんど揺さぶるところがなくて、期待度が高かった分、ちょっと残念でした。
役者さん達、皆さん、好演されているし、脚本や演出も、決して、レベルが低いとは思いません。でも、始まりから終わりまで、ずっと同じテンポで、ストーリーに起伏もなく、進んで行くので、時折睡魔に襲われました。
丁寧に作られたお芝居で、この作品が大好きと思う方がたくさんいらっしゃるのも、納得できますが、ただ、私としては、この芝居に、3300円は高過ぎました。、3300円を投資してこの芝居を観る人間に、脚本と演出と演技者の力で、この登場人物達が本当に月に是が非でも行きたいのだという思いを信じさせてほしかったというのが、一番感じたことでした。解説や、粗筋でではなく、目の前の舞台上で、そのことを信じさせてもらえていたら、もっとこの芝居に好感が持てた気がするのです。月に行くという設定に難があるのではなく、客に掛けるマジック力が足りない気がしました。                 役者さんでは、キリン役の高島玲さん、ススム役の園田裕樹さんが、特に印象に残りました。このお二人のご出演舞台には、また行ってみたい気がします。

ネタバレBOX

私は観ていませんが、以前テレビで放送していたという「サバイバルゲーム」的内容で、また「コーラス・ライン」も思い出しましたが、「コーラス・ライン」程の、ドラマチックな人生が各人にあるわけではなく、月に行きたいという各人の思いが希薄な感じで、たたでさえ、月に行くなどと、感情移入しにくいストーリーに、より、別に、誰が選ばれようが、私には無関係感が増幅され、何だか、舞台の中の世界感に全く浸れませんでした。設定が近未来だという解説ですが、少なくても、舞台から受けた印象では、とても近未来感は感じられず、今の郊外レストランとしか観受けられませんでした。

だいたい、あんなにしょっちゅうタバコを吸わずにいられない人間は、もっと早くに皆に落とされるのではないでしょうか?
それに、ラストのコウドウとモリの無言シーンの長いこと!アフタートークでの、黒澤さんのお話によれば、あのシーンは殊更演出を付けず、お二人に演技を任せたのだとか。だったら、あんなに長い必要性を感じませんでした。無言でも、二人の思いがきちんと表出されているなら構いませんが、あれでは、一体いつ終わってくれるの?とさえ思う程で、ちょっと冗長過ぎて、せっかくの終幕シーンが、逆効果だった気がします。最後に地球に残ることになる二人は、私の観る限り、一番役を生きてない感じのするお二人でした。まず二人が恋人同士には全然見えません。かなりの名優でも、無言劇で、思いを客席に届けられる力量のある役者はそうはいないと思います。それなのに、この大切なシーンを役者任せにできるなんて、この演出家の腹のうちが私には理解できませんでした。
このお芝居、確かに、佳品と言える味わいはあると思うのです。次にこの芝居を観るなら、黒澤さんご自身の演出ではない、他の演出家による上演で、観てみたいと思いました。
赤い薬

赤い薬

MONO

赤坂RED/THEATER(東京都)

2010/03/06 (土) ~ 2010/03/16 (火)公演終了

満足度★★★★

面白くて、ちょっと切ない
土田英生さんの作劇は基本的に好みなので、行ける限り行っていますが、何だか久々、文句つけるところのない上出来作品でした。
見た目は喜劇ですが、やんわりと社会批判的な部分もあり、最後はちょっと身に詰まされました。
客演の紅一点、山本麻貴さんの好演のお陰で、ただの喜劇でない奥の深さがありました。
やっぱり、土田さんの作劇、大好きです。空席がかなりあって、ファンとしてとても残念でした。

ネタバレBOX

「大脱走」は観ていないので、私は、何となく「カッコーの巣の上で」を思い出してしまいました。
土田さんの、円の公演「初夜と蓮根」にも、城好きの男が登場しましたが、今回も、城山という、城オタクが登場。彼の城談義が、かなり、笑いのネタとして使われていました。土田さんご自身が城マニアなんでしょうか?
5人の男優陣と好演客演の山本さん。皆さんの演技レベルが均一なので、安心して、舞台を楽しむことができました。
だだ、4人の被験者の実社会での生き辛さがもう少し滲み出た方が、作品により深みを与えたのではないかとちょっとばかり思いました。
富士見町アパートメント

富士見町アパートメント

自転車キンクリーツカンパニー

座・高円寺1(東京都)

2010/02/27 (土) ~ 2010/03/14 (日)公演終了

満足度★★★★

Aプロは、私は蓬莱作品派です
まず、客席に座って、何となく違和感が。
舞台の面と客席が平行でないので、素直に正面向いて座ると、何と、富士見町アパートの壁面しか見えないのです。(笑)
舞台が始まってしまえば、あまり感じなくなったものの、生理的な座り心地の悪さが、何となく不快でした。

「魔女の夜」…核心部分に入るまでが、やや間延びした感じですが、二人の女性の人間関係は秀逸に描かれていた作品でした。最近、蓬莱さんの作品は、頼まれ仕事の出来栄えの方が優れている気がしました。

「海へ」…赤堀作品、何度か拝見していますが、どうやら、私の性には合わないようです。男性目線の作劇だからでしょうか?ピース、ピースは面白いのですが、人間工学的リアルさが欠けているように思いました。

両作品で、一番の好演は、私としては、井之上隆志さんだと思います。

ネタバレBOX

「魔女の夜」…女優の友紀が核心部分を話し出すまで、マネージャーのさゆりが、何度も、「どうして?」「何でなの?」など、同じ言葉を繰り返すため、しばらくは、世界に入れず、蚊帳の外で観ていました。友紀が起こした事故の顛末が語られるに連れ、二人の人間関係が秀逸に露呈され始め、俄然話が面白く展開し始めました。最後に、お互いの本音を吐露した時、部屋が明るくなり、二人の今後の人生の方向を示唆したように感じました。最近、よく目にする事件での、芸能マネージャーや、代議士の秘書等の職業人の立場の哀しさが、胸に迫りました。

「海へ」…自殺した男と、部屋にいる3人の男の関係性があまり見えて来ない作品でした。だから、自殺した男の存在感がとても希薄な感じがして、彼が散らかしたゴミがどうも生活感がない気がしました。休憩中に、スタッフがせっせとゴミを仕込んでいる様子も見えますから、余計に、あー芝居観てるんだという気分が強くなったのかもしれませんが。弟は部屋を片付けるため、後の友人二人は、貸したお金の所在を探すために、この部屋にいる筈なのに、無闇に脈略なく脱線してばかりで、ちっとも、当初の目的を果たそうとする様子がないのが、不自然な気がしました。その目的を果たそうとしながら、思いが交錯して、脱線するのなら、そういう心の軌跡が描かれていれば、感情移入できたかもしれないのですが、どうも、3人の行動の意味づけが曖昧な印象がありました。でも、それぞれのショート不条理コント的場面は、実に面白くはあったのですが。その中で、同じアパートの住人の土井には、一番人生が滲み出ていた気がしました。きっと、自殺した男の部屋に、人恋しくて、何だかんだ理由を託けては訪れていたのでしょう。彼の語る夢の話に、一人暮らしの老人の悲哀を感じました。1時間ちょっとの芝居で、暗転が3回程あるのも、落ち着かない気がしました。長い時間が経過しているという設定でしょうが、それなら、最初に時刻を表示していた電子時計が、暗転後に、時刻を示してくれたらよかったのに。何故、最初だけの表示だったのでしょう?
ストーリーのあるAVの方が好みと言う弟の心情は理解できましたが、陰毛をトイレに保管する男達の気持ちはさっぱりわからず、意味不明でした。赤堀作品の世界感は、男性客の方が理解しやすいのではないでしょうか?
昆虫大戦争

昆虫大戦争

こゆび侍

RAFT(東京都)

2010/03/05 (金) ~ 2010/03/08 (月)公演終了

満足度★★★

正直言えば…
やっぱり、できたら、登場人物は人間の方がよかったです。たとえ、異星人であったとしても…。
小学生の頃、「ファーブル昆虫記」が愛読書だったので、別に、昆虫の話に異存はないのですが、何だか、やっぱり、フンころがしにはあんまり感情移入できなくて、最後まで、傍観者でしかいられなかったのが、ちょっと残念。ただ、これがもし、フンころがしを傍観者然として観てしまう観客を想定した作演の成島さんの最初からの意図するところだとしたら、私は、すっかり作者の思惑通りの見方をしていたことになるのですが…。
小巻役の佐藤みゆきさんはさすがでした。開幕直後から、彼女の演じた、フンころがし嬢にだけは、とっても感情移入できて、涙腺が緩みそうになりましたから。
またまた、みゆき嬢の新たな魅力に出会い、益々ファンになりました。

ネタバレBOX

成島さんの演じたFは、フンころがしにとっては、悪意のない加害者なので、もっと、ストーカー的な、自分本位の狂気じみた愛情が滲み出ていた方が効果的な芝居になったのではと思います。
妻が最期に丸めたフンで作られたという仏像は、何だかリアルで、あれを見ているだけで、胸を打つものがありました。
佐藤みゆきさんが、最後に必死にその仏像のフンをもぎ取り、食らい付く演技が秀逸で、改めて、スゴイ女優さんだと感嘆!
最後に、Fの手の影が、みゆき嬢の頭に覆いかぶさる演出は、気が効いていました。彼女のフンころがし人生が切なくなりました。
棄憶~kioku~

棄憶~kioku~

G-up

青山円形劇場(東京都)

2010/03/05 (金) ~ 2010/03/11 (木)公演終了

満足度★★★★★

全てがハイクオリティながら…
野木さんの脚本、やはり高レベル。ノゾエさんの演出、まるで、図案を見るような計算された人物配置が、作品の重さを生えさせて、秀逸。先日のハエギワ公演でも思いましたが、ノゾエさん、椅子と無地の親友かと思う程、椅子の使い方が絶妙でした。役者さんも、それぞれの役どころをしっかり理解し、体に落とした演技で、文句なし。特に、衛星兵を演じた清水優さんの名演には、心が震える思いでした。扉座の有馬自由さんも、扉座の舞台とは全く異質なキャラクターを見事に演じられて、感服。佐藤誓さんの存在感もさすがで、本当に、私個人には、完璧な舞台を堪能させて頂きました。
ただ、全く予備知識のない若い世代の観客には、この芝居、どんな風に見えるのだろうという幾分の心配はありました。
帝銀事件や、中野陸軍仕官学校や、731部隊とかに関して、何の知識もない人がこの芝居を観て、内容をしっかり理解できるだろうかと。
「丸太」の真の意味も、台詞だけで、想像できるだろうかとか。
ましてや、後年の非加熱製剤による事件とか、予備知識を補う、語句の説明文などが、当パンに記載されていた方が親切なのではとちょっと、思いました。

ネタバレBOX

皆さん、好演でしたが、当時の服装とは若干の違いが気になるところがありました。
靴とか、大内さんの髪型とか…。
きっちり、日時と場所が提示される舞台なので、そういった時代考証は必要な気がしました。
あれから

あれから

キューブ

世田谷パブリックシアター(東京都)

2008/12/13 (土) ~ 2008/12/28 (日)公演終了

満足度★★★★★

高橋克実さんに惚れ直しました
ケラさんが、稽古までに書けないとおっしゃっていた作品!どうなることかと思っていたら、まあ!すごい名作じゃないですか!
ケーキ屋のシーンから、どのシーンも秀逸で、キャストも、贅沢と言って良い程、適材適所で、何だか、ケラさんの才能に打ちのめされて観てしまいました。
若い頃、敬愛していた山田太一さんの「不揃いの林檎たち」の時から大好きだった高橋さんと余さんの友達関係や、一人二役を好演された萩原さんや、「学校」で好演した金井さんや、俳優として異才を放った赤堀さんや、こだわりの職人の性をそれぞれ好演されたいっけいさんと高橋克実さん…。
もう、誰もかれも良すぎて、あれよあれよと感嘆するうちに舞台が終わっていました。
ケラさんの舞台で、初めて長さが気にならない舞台でした。

ネタバレBOX

職人として、ずっと拘りを持ち続けていた高橋克実さんの電話での台詞が胸を打ちました。
高橋さんの名優ぶりを実感して、テレビでしか高橋さんを知らない方に是非観て頂きたくなる、素敵な舞台作品でした。
余さんと高橋ひとみさんと、先生役の萩原さんんとの思い出の学生時代の描き方があまりにも秀逸で、まるで、自分の学生時代を見ているように実感させられました。やっぱり、ケラさんはすごい劇作家で、演出家です。
たぶん犯人は父

たぶん犯人は父

ゴジゲン

こまばアゴラ劇場(東京都)

2009/02/18 (水) ~ 2009/02/22 (日)公演終了

満足度★★★★★

まさに初体験づくし
ゴジゲン初見舞台でした。
全く劇団名さえ知らなかったのですが、青木さんから、チラシを頂き、これは面白そうと直感が働き、観に行きました。
ゴジゲンも初体験なら、アゴラも初めて。
結果は、やはり、直感の勝利!
慈善団体を話の種に、まあ、よくもこんな話が思いつくものだと、松居さんの才能と潔さに驚きました。
お父さん役の方が、年齢的にも無理があり、ちょっと高校演劇的で、残念でしたが、青木拓也さんが、こんないい味の出せる役者さんとは露知らず、驚きました。イケメン役者さんもいれば、性格俳優さんもいて、人材にも恵まれていそうなゴジゲン!!一度で、ファンになりました。
ヨーロッパ企画の上田さんをストーカーのように慕っていたという松居さんとのアフタートークも楽しく、劇場を出る頃には、昔からゴジゲンファンだったような錯覚さえ覚えました。

犬顔家の一族の陰謀

犬顔家の一族の陰謀

劇団☆新感線

サンシャイン劇場(東京都)

2007/08/11 (土) ~ 2007/09/09 (日)公演終了

満足度★★★★

下らないけど、面白い!
「花の紅天狗」のように、あちこちに、映画や漫画やミュージカル等のパロデイ場面がワンサカしていて、ここまで徹底的に下らない芝居が書けるクドカンさんには、敬服してしまいました。
ドラマ「サトウキビの唄」で、特攻に志願する少年を演じた時から、注目していた勝地涼さんが、新感線に初参加した公演。これを機にちょくちょく参加してほしいなと思ったら、思い通りになり、嬉しく思います。
橋本じゅんさんに最高に笑わせられました。

シャンハイムーン

シャンハイムーン

こまつ座

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2010/02/22 (月) ~ 2010/03/07 (日)公演終了

満足度★★★★

長いけれど、冗長ではなかった
私よりも、また悠に年長の方ばかりの客席の様子に、これで3時間の観劇は、皆さんしんどいだろうと心配でしたが、始まってみると、それなりに面白く、時間の長さはあまり感じませんでした。
魯迅のことは、名前ぐらいしか知りませんでしたが、私のように無知な人間にも充分楽しめる内容でした。
あんな、世間的有名人を主役にした舞台なのに、相変わらず、井上さんの切り口が斬新で、彼の人生のダイジェスト紹介はしっかりなされつつ、臨終に立ち会った周囲の人間の人生もきっちり描かれ、改めて、井上さんの脚本家としての才を見せつけられた思いです。
たぶん初舞台の頃から拝見している梨本謙次郎さんが、中年の味のある素敵な役者さんになられていて、感無量でした。若い頃の、北村和夫さんみたいな雰囲気で、人情味のあるお医者さん役が、任に合っていました。
派手な面白さには欠けるけれど、キャストが皆さん芸達者だし、なかなか見応えある作品でした。

ネタバレBOX

魯迅の健康を心配した、周囲の人間が、入れ替わり立ち代り、日本での養生生活を勧める台詞は、現在御闘病中の井上さんご自身に言いたいような台詞ばかりでした。
魯迅の村井さんが、失語症になって、わざと言い間違えるシーンがややしつこい気はしましたが、わざと言い間違える演技を難なくこなす村井さんは、やはり相当の演技者だなと感心しました。
魯迅の長い人生を語るのに、たった1場面だけで創作できる井上ひさしさんは、やはり傑出した劇作家だと感服しています。
どうか、ご健康を回復されて、また新たな劇作をして頂きたいと祈念するばかりです。
ロマンス

ロマンス

こまつ座

世田谷パブリックシアター(東京都)

2007/08/03 (金) ~ 2007/09/30 (日)公演終了

満足度★★★★

段田さんと生瀬さんが最高!
今まで、チェーホフって、あまり面白さがわからなかったのですが、これを観て、俄然興味が湧きました。
大竹さんの演技はどうも肌に合わない私ですが、この役は彼女でよかったかも。
終盤の、段田さんと生瀬さんの演技に、大笑いさせられました。
それにしても、井上さんの戯曲は、本当に、いつも切り口が斬新で、感心させられます。

29時

29時

自転車キンクリーツカンパニー

新宿シアタートップス(東京都)

2009/01/28 (水) ~ 2009/02/04 (水)公演終了

満足度★★★★

出演者が皆好演でした
ファーストシーンからは、予想もつかない話の展開に、ちょっと戸惑いつつも、まんまと作者の術中にはまった感じで、楽しく拝見しました。
歌川さん、こういう役をなさると、天下一品!!
久しぶりの自転車キンクリートでしたが、やっぱり、この劇団は好きだなあと再認識しました。

喪服の時間

喪服の時間

弾丸MAMAER

なかのZERO(東京都)

2010/03/03 (水) ~ 2010/03/07 (日)公演終了

満足度★★★★

昔懐かしい香りのコメディ
子供の頃観た松竹新喜劇なんかをちらっと思い出しつつ、だいたいは笑って観ていました。役者さんも、芸達者揃いで、感心しました。
ただ、残念だったのは、終盤になって、ちょっとストーリーが、突然、欧米コメディテイストの灰汁が強くなってしまった点。ストーリー的に、ちょっと飛躍しすぎた感があり、それからは、あまり面白くなくなりました。
こういう喜劇は、デフォルメであっても、どこかに真実味があってこそ笑いを誘うのに、終盤の展開は、そう行くだろうなと予測も容易くできただけに、あー、やっぱりそういう方向に行っちゃうのねと、良い意味での期待ハズレがなく、内心ややがっかりしました。
予想外の展開による、更なる笑いを期待していましたから。
ただ、コメディの極意は一応遵守した展開でしたから、また次の公演にも期待してみたい劇団でした。

ネタバレBOX

終盤、創とエレンヌに起こる出来事、寛と光太郎の関係、松潤の正体が、全て読めてしまったので、その予測をもうひとつ外してもらえたらなと思いました。前二つの関係は、欧米コメデイにはよくある展開ですが、せっかく日本ならではの通夜が舞台になっているので、あくまでも、日本的なコメデイテイストで貫いた方が、もっと面白くなった気がします。
千代乃と秋子の関係描写は、なかなか秀逸だっただけに、終盤の展開がわざとらしく感じてしまい、残念でした。
最後の、千代乃の大英断は予測はついたものの、結構好きなラストシーンでした。
如何にも端役の、葬儀屋役の、小多田直樹さんが、実はかなり自然体の演技で、要になっていた気がします。キャラメルボックスの男優さんは、客演でも光る方がたくさんいるなと改めて思いました。

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