KAEの観てきた!クチコミ一覧

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テーブルに十三人

テーブルに十三人

劇団NLT

博品館劇場(東京都)

2010/10/27 (水) ~ 2010/10/31 (日)公演終了

満足度★★

演出が稚拙で、よりつまらなくしている
最近のNLTは残念ながら、不発が多いとまた感じてしまいました。
せっかく、キャスト陣はベテランが揃っているのに、このつまらなさはどうしたことでしょう??

シチュエーションが単純過ぎて、人物造型に深みも工夫も足りない作品なのに、その上、演出がお粗末で、これでは、コメデイとしての要素が欠落し過ぎでした。

いつまでも、木村さん達ベテラン俳優さんの演技力にのみ頼っていては、良い舞台は生まれ得ない気がするのですが…。

ネタバレBOX

要は、クリスマスパーティのテーブルが、縁起の悪い13人にならないようにと、ホストである、女主人がひたすら苦心サンタンするお話。

人物は類型的だし、シチュエーションも込み入っていないので、こういうコメディは、テンポが大事だと思うのに、何と休憩が2回も入る。

客の人数が変わる度に、舞台上のスクリーンめいた鏡的な壁に、今現在の人数が表示される演出には、正直、開いた口が塞がりませんでした。
「最後の晩餐」が話題に出れば、そこにあの有名な絵が映るし…。
小学生の授業じゃあるまいし、そんなにわかりやすく説明する必要がどこにあるのでしょう??

人数が一番の興味を惹く題材なら、そこは、観客自身に「今は何人になった」と考えさせるべきでしょうに…。
クイズ出した途端に答えを言っちゃうみたいな、実に頭の悪い演出だとしか思えませんでした。

更に、呆れたのは、劇中、加納さん扮するアントニオに木村さん扮する、裏切られた愛人が延々と告発状を読み上げるシーン。48状もあり、読み上げるのに7分も掛かり、この間、観客は休憩しても構わないと言うのですが、これが、しゃれた演出のつもりでしょうか?
わざわざその告発状は、開幕前に観客に渡されているのですから、途中で割愛、省略する方が、よっぽど気が利いていると思うのですが…。

本当に、老舗のコメディ劇団が、こんなことでいいのかしら??と、大変、危惧し、また不思議に思う芝居でした。

主役の剣さん始め、役者さんの演技には、ほとんど不満はないのですが、とにかく、全然面白くありませんでした。
激流としるし

激流としるし

play unit-fullfull

調布市せんがわ劇場(東京都)

2010/10/21 (木) ~ 2010/10/24 (日)公演終了

満足度★★★★★

観る度進化する劇団で、益々ファンに
これはもう、恐れ入りました。

まるで、ニールサイモン的、海外秀作舞台の味わいがありました。

ストーリーの構成がしっかりしていて、どの登場人物のキャラクターにも、作者の愛情の行き渡った平等性を感じます。
どんな脇役にも、その人の日常がきちんと表出されていて、この脚本なら、役者さんも、自分の役に愛を持って、演じることができるだろうと感じました。

コメディ色もありつつ、こんなに嘘のない人間表現ができる作家はあまりいないのではないかと思います。

以前から大ファンの大西さんのはっちゃけた演技は、思わず手を叩きたくなるほどの名演技で、大いに笑わせられました。
初めて拝見した、小山待子さんも、綺麗な美少女のオーラに満ちて、一目でファンに…。劇団員の遠藤さん、加瀬役の堀さんも、味のある演技で、素晴らしかった!!

この戯曲、他の劇団の番外とかでも是非取り上げて上演してほしくなりました。

ネタバレBOX

追っかけのいる、人気俳優の役の方が、いわゆるイケメンでないところが、逆に意表をついて、愉快な配役で、成功していました。

先生に嘘をつかれながら、そのことに気付いても尚、心の中で納得しようと振舞う、いたいけな少女の気持ちを見事に表現された、桂花役の小山さん、本当に魅力的な若手女優さんで、同性ながら、気持ちがドキドキするほど素敵でした。

主人公の父の弟子で、主人公を密かに慕う加瀬役の堀さん、スターの熱狂的ファン役の、遠藤さん、大西さん、白石さん、共に、役のキャラクターを、ご自身の演技力で、更に色付けして、巧みに表現され、感嘆しつつ、しっかり笑わせて頂きました。

これだけ、役者も、脚本も揃った舞台も滅多にない気がします。
セットも、相変わらずとても素敵でした。

フルフル、益々目が離せなくなりました。
ワンダフルタウン

ワンダフルタウン

梅田芸術劇場

青山劇場(東京都)

2010/10/23 (土) ~ 2010/11/04 (木)公演終了

満足度★★★

ショーとしては楽しいけれど
やはり、どうしても内容が、良くも悪くも、古き良きブロードウェイ・ミュージカルそのものなので、この料金に見合う公演かと聞かれたら、否という答えの方が近いかもしれません。

でも、歌唱力のある出演者ばかりで、キャストにご贔屓がいるのなら、きっと文句なく楽しめるステージだと思います。

大和田美帆さんが、またしても、ミュージカル女優として、更なる進化を遂げていて、本当に驚愕してしまいました。

大和田さんファンには必見舞台間違いなしです。

ネタバレBOX

主役3人の歌唱力が安定していて、本当に、安心して、舞台を楽しむことができました。

以前も書きましたが、大和田さんは、初舞台から拝見しているので、一体いつこんなに実力を蓄えられたのかと、心底感嘆します。
美しく透き通る伸びのある歌声、コケティッシュで愛らしい演技とダンス。どれを取っても、ミュージカルスターの実力と貫禄が備わっていて、彼女がこの役でなかったら、もっとつまらない舞台になっていたのではと思いました。

安蘭さんは、「スイング」の歌とダンスシーンが最高!!
安蘭さんと大和田さんの姉妹デュエットも、歌も振りも息がピッタリ合って、観ていて大変心地良いものがありました。

2階のA席でさえ1万円なので、もう少し低価格だったらと惜しまれてなりませんでした。
2階席はガラガラな上に、キャストのお身内の方が多かったのか、私語も飛び交い、客席環境がとても残念に感じました。
Diana

Diana

TSミュージカルファンデーション

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2010/10/08 (金) ~ 2010/10/31 (日)公演終了

満足度★★★★

観客席が皆ウルウルしていました
TSのオリジナル・ミュージカル、最近やや不調だし、姿月さん出演の過去のオリジナル舞台にも、あまり佳作が見当たらなかったので、実は、大変恐る恐る足を運びましたが…。

結果的には、かなり満足できる、素敵なストーリーと楽曲で、客席の、湖月、姿月両ファンの方々と、同じく、目をウルウルさせてしまう自分がいました。

ロビーに、作者の篠原さんがいらしたので、「良かったですよー!」と、成功を祝して、握手して来ました。
あまり良作でなかったら、作者には声を掛けずに立ち去ろうと思っていたので、そういう台詞が言える作品で、本当に安堵しました。

ネタバレBOX

冒頭の、男性陣の、ダンスの振り付けは、TSにしては何だかダサい感じだし、物語説明となる歌詞は聞き取りにくいはで、正直どうなるかなとやや不安でしたが、物語が進む内、この作品のかもし出す、温かい舞台の雰囲気が、気持ちに馴染み、とても心地良い観劇体験のできるステージでした。

いつも演技力確かな湖月さんを主役に据え、姿月さんをサイドにしたことも大成功の要因。
二人の声質にピッタリの楽曲も、耳に心地良く響き、オリジナル・ミュージカルの佳品誕生の実感がありました。

最後の、羊水の中から、双子の二人が、寄り添いながら、1人は、正常分娩、1人は死産として、生まれ出でる演出は、大変秀逸で、まるで、上質な絵本の童話を見るようでした。

もう少し、1幕の冒頭部分をカットし、修正したら、もっと素敵な名作になるのではと思いました。

取り立てて、ドラマチックな葛藤場面とかはありませんが、上質で、清廉な、観る者の気持ちを浄化するような、大変素敵な作品で、久しぶりに、自然に涙が溢れるステージに、疲れた心が癒されました。
グロリア

グロリア

ハイリンド×サスペンデッズ

「劇」小劇場(東京都)

2010/10/14 (木) ~ 2010/10/24 (日)公演終了

満足度★★★★★

良作に芸達者揃いで、見応えあり
多忙で観に行けないかと思いつつ、どうしても早船作品は外せないと、無理して行った甲斐がありました。

ハイリンドは初見でしたが、サスペンデッズの役者さんも含め、皆さん、驚く程芸達者ばかり。

現代の日本と、戦時中の日本とアメリカ。時や場所が変わり、役者さん達も何役も兼ねながら、そのどの役にも命を吹き込んだ演技がお見事でした。

何しろ、早船さんの作品には、他作家にはない独自性があり、きちんとご自身で生み出された作品を観る安心感が、観劇好きの心を芳醇に満たして下さいました。
観劇できたことに、心から感謝します。

ネタバレBOX

冒頭の僅かな台詞のやりとりで、和彦と沙織の人間関係を観客に理解させる早船さんの作家としての力量にまず感服します。

最初、取立屋として登場する伊藤総さんの言う、「会社を潰す経営者は、3つの内のどれかだ。馬鹿か、運が悪いか、馬鹿で運が悪いかの3つ…」という意味合いの台詞に、何て言い得て妙!と大納得。

戦時中や、風船爆弾の犠牲者の場面は、内容的にはかなり、辛い部分なのに、こうした、センスあるアイロニーや構成の巧みさで、常にどこかで、笑えるのがまた早船作品のおつなところ。

中でも、チャーボーが、頭のとさかを脱いで、瞬時に戦死した父に豹変するところなど、やり方次第で、はちゃめちゃな舞台になる危険性もあるのに、相当な演出力なのか、これがまた、この舞台の独自性を効果的に表出してお見事でした。鶏の所作の素晴らしい佐野さんの真摯な演技には感動さえしました。

この舞台の素敵さを観ていない方に説明するのは難しいので、できれば、たくさんの方に体感して頂きたくなりました。

欲を言えば、風船爆弾の被害者のアメリカの場面がもう少しだけ比重が少なくても良いのではという印象でした。
和彦が祖母の手記を読み終えた後のオレゴン州の場面なので、観ている方としては、そろそろ終盤という意識がどうしても先行し、その割にはまだ終わらないのかとややですが、冗長に感じるところがあり、残念な気がしました。

風船爆弾の製造シーン、実際の映像の前で、出演者が、ジェスチャーでのみ、演技をする演出が、とても秀逸で、一番目頭が熱くなりました。

役者さんは、誰もが甲乙つけ難い、名演技、演じ分けでしたが、中でも、仕事にあぶれて神経をおかしくしている患者と、戦時中の青年と、アメリカのマセ餓鬼を、それぞれ、実にリアルに体現された伊原さんの役者力には脱帽でした。

ハイリンドも、これからは、観たい劇団のひとつになりました。
Pal Joey

Pal Joey

東京グローブ座

青山劇場(東京都)

2010/10/02 (土) ~ 2010/10/17 (日)公演終了

満足度★★★★★

ショー・ミュージカルの王道舞台を堪能
久々、全てのパーツの揃った、心底満足感に浸れる、素敵なショー・ミュージカルの傑作舞台に出会えて、ハッピーでした。

キャステイング抜群!舞台構成、おしゃれ!やはり、日本版「RENT]初演を大成功させた、ショー・ミュージカルの演出の達人、吉川徹さんの手になるだけのことは、ありました。

特にファンというわけではないけれど、坂本さんの主演ミュージカルは結構欠かさず観ていますが、ステージの度に、メキメキと、ミュージカルスターとしての実力が増し、本当に、感嘆するばかりでした。

最近バラエティ番組の出演が増え、古くからのファンとして、女優としての先行きにやや不安を感じていた高畑さんも、やはり、名女優の貫禄を見せて下さり、安堵感でいっぱいになりました。

それに、存じ上げなかった、桜乃彩音さんの、可憐で、初々しい演技と美しい歌声…。

友人が大ファンだった彩吹さんの舞台は、初見でしたが、抜群の歌唱力に、友人が惹かれたことに大納得。まだ男役の雰囲気が抜けず、女性のセクシーさにはやや欠けるものの、素敵なショー・ガール振りに、大いに好感が持てました。

その他、クラブで働く全てのシンガーやダンサーにも、それぞれ、存在感があり、主演から脇役まで、一体となって、虚構のクラブの雰囲気をリアルに思わせてくれて、皆さんのプロの仕事振りを、観客として、心行くまで堪能することができました。

舞台上にいる、演奏者までが、出演者のかもし出す空気感に溶け合っていて、観ていて、邪魔にならなかったのも、素晴らしい舞台効果の一つでした。

最後は、心から、スタンディング、惜しみない拍手を送れて、この舞台に関わった全てのキャスト・スタッフにお礼を言いたい気持ちになりました。

ネタバレBOX

1930年代のシカゴのクラブ・ショーを、本当に観ている気分になれました。
昔懐かしいテーストのミュージカルなのに、全く古臭さを感じません。

脚本・演出・キャスト・スタッフ・楽曲…。こんなに、全てにおいて満足できる作品は、稀有なので、この舞台に出会えた奇跡に感謝感激!!

高畑さんの久々に真骨頂のミュージカル出演、本当に嬉しくてなりませんでした。

桜乃さんの演じる、リンダと、高畑さん演じる大富豪夫人ウ゛ェラが、坂本さん演じるジョーイを、あげるあげると押し付け合うように歌う楽曲がとても愉快でした。
全てにおいた小粋な作品。
今から、再演が待ち遠しくなる、素敵なミュージカルでした。
エリザベート

エリザベート

東宝

帝国劇場(東京都)

2010/08/09 (月) ~ 2010/10/30 (土)公演終了

満足度★★★★

石丸トート、やや意外な歌いっぷり
今日は、先日、見逃したリベンジで、石丸トート初見でした。

意外!!正統派の歌い方かと思いきや、何だか独特の節回しで、力業のトートでした。ちょっと、演歌チックな、こぶしを回したような歌い方なので、好みは分かれそう。
トイレ待ちの列からも、「城田君の方がいい」などという、関西弁のお客様の意見多数…。
たぶん、宝塚ファンの方には、ビジュアル的にも、城田トートに軍配が上がる公算大な気がしました。

杜けあきさんのゾフィーには、厳格そのものの寿ゾフィーに比べ、やや優しさの滲む母の心情が見えました。

浦井ルドルフと、石川皇帝の父子の確執場面は、今日も一段と見応え、聴き応えがあり、一緒に観た長男も、感心していました。

瀬名エリザベートは、先週より、深みが増して、今日はルドルフの母としての顔も、真実味が増して、これならと、納得ができました。

ネタバレBOX

トート・ダンサーズ、初演の頃に比べて、ダンスが不揃いの気がするのですが…。
何となく、踊り方のバラバラ感が気になって、舞台への集中の邪魔になったように思い、残念でした。
『三姉妹の罠』

『三姉妹の罠』

8割世界【19日20日、愛媛公演!!】

テアトルBONBON(東京都)

2010/10/06 (水) ~ 2010/10/11 (月)公演終了

満足度★★★★

好感持てる罠に安堵しました
この頃、何故か観に行く芝居、どれもこれも、誰が敵か味方か混沌とした、あまり気分の良くない作品にばかり遭遇していたので、まさか8割世界までも、そんな後味の良くない罠を仕掛ける作品だったらどうしようかと、内心かなり恐る恐る劇場に向かいましたが、そんなことは杞憂に過ぎず、いつもながらのこの劇団らしいカラーで、ひとまずほっと胸を撫で下ろしました。

いつも、導入部分が、やや冗長に感じられるのは、今回も例外ではありませんでしたが、それでも、楽日は、2度目だったせいもあり、楽しく観劇できました。

この劇団、何が好きかって、普通のシチュエーションコメディにとかくありがちな、浮気現場が伴侶や恋人にばれそうになって、ドタバタ的な、誰もが心から笑えないような内容のネタが一切ないところです。
だから、舞台が終わる頃には、登場人物全員に何か好意的愛着が湧いてしまうのです。

いろいろ、作者の無茶振りもあるにはあったけれど、この、他にはあまりない、老若男女に受け容れられる、気持ちの良いお笑いネタが効を奏し、今回も、万人受けする楽しいコメディに仕上がっていたと思います。

ネタバレBOX

最初のお尻ネタが、やや長過ぎる気がします。
コメディは、もう少し、早い段階でお客さんの心を掴まないと、その後の展開が難しくなる気がしています。
役者さんも、早くに観客受けしないと、気持ちが焦って、それがまた笑いにくい空気を生みがち。悪循環の危険をはらんでしまいそうに思いました。

三菱UFj書店の編集さんが庭に現れたら、俄然面白くなりましたが…。

8日に初見の時より、野上3姉妹が、本物の姉妹に近くなり、3人のやりとりが自然で、こちらも、自然に笑みがこぼれました。3姉妹の次女役の奥山智恵野さんは、大変魅力的!また1人、一目惚れの女優さんが増えました。

嶋さんは、単独出演の時より、シマーズが揃ってからが、俄然魅力的でした。やはり、妻役のちさえさんの功績大ではと思われます。

長女役の嶋木さんは、8日はまだ幾分固さが見えましたが、楽日の演技は突き抜けていて、爽快感がありました。

初代役の水野さん、小林さんは、それぞれ、異質の持ち味ながら、どちらも好演。

自然な演技で、笑いを誘った今野さん、石丸さんも、前回のミュージシャン役より適任で愉快でした。

いつも、8割世界の隠し味だった、本多さんは、今回も、要所要所で、芝居に良い味付けをして下さいました。

三女役の倉田さんも、8日は、やや不機嫌さが目立って感じましたが、楽日は、複雑な末っ子の気持ちを見事に体現。

(二代目については、故あって、言及を控えます)

全体的に、バランスのとれたカンパニーだったのではと感じました。

ただ、何人かの御指摘があるように、嶋嫁が、灰になる、強引な流れや、最後が3姉妹揃わない点等、やや不満もありはしました。
3姉妹の心の描写にも今一歩踏み込んで頂けたら、より満足できる作品だったように思います。

薫役の奥山さんと、坂本役の飯島さんは、共に、殊勲賞ものの名演技でした。
エリザベート

エリザベート

東宝

帝国劇場(東京都)

2010/08/09 (月) ~ 2010/10/30 (土)公演終了

満足度★★★

流れ作業的展開がやや気になるものの
浦井ルドルフが、更に新境地を開いていて、感嘆してしまいました。

城田トートは、見目麗しく、まるで、テレビゲームのヒーローさながらの雰囲気で、見た目と歌唱は申し分ないものの、やはり、まだ人生の年輪が足りないせいか、酸いも甘いも噛分けた、死神の人間離れした得体の知れなさや狡猾さには欠ける気がしました。10年後が大変楽しみなトートでした。

瀬奈シシーは、若い時の可憐さは良かったのですが、やはり、晩年のエリザベートの苦悩を体現するには無理があり、とてもルドルフの母には見えませんでした。まだ宝塚口調が出てしまうのと、歌に伸びがないのにも、やや興がそがれた気がします。

いつもながら、ビックリするのは、石川禅さんのヨーゼフ皇帝。1幕では、まだ若々しい青年振りを無理なく好演されるのに、だんだん舞台の年月が経過するに従って、歳を重ねて行く様を、実に自然に変化させて演じていらして、本当に驚愕してしまいます。
映像でない、生の舞台で、こんなにリアルに年月の経過を体現できる役者さんは、滅多にいないと、感嘆するばかりです。

主役二人がまだ若いので、今回の舞台、一番、人間ドラマを感じたのは、この禅さんと、浦井さんの父子の葛藤シーン。役者力のあるお二人の場面はとても短いのに、この舞台においては最高に密度が濃かったように思います。

ネタバレBOX

何度も観ていますが、未だに慣れないのが、シシーが木から落ちる巨大映像シーン。あれは、何度観ても、噴出してしまいます。この舞台の空気があそこだけ寸断される気がして、どうも、良い演出だとは思えないのですが…。
ヘッダ・ガーブレル

ヘッダ・ガーブレル

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2010/09/17 (金) ~ 2010/10/11 (月)公演終了

満足度★★★★★

一皮向けた、ベテラン女優に賞賛を惜しまず
いやあ、御見逸れしました。大地真央さん!!

またいつもの、独特な台詞まわしなんだろうなと想像していたのですが、見事に、役になりきっていて、真央色が払拭されていてビックリ!
プライドが高く、身勝手な、でもとても魅惑的なヘッダを、若々しく、美しく、好演されていました。

イプセンの芝居は、本当に、見事に、人間の業を描いているものばかりで、どの作品も、常に、普遍的で、身につまされるストーリーばかりですが、この作品は、特に、女性の性にテーマが集約していて、大変興味深く、時折クスリと笑いながら、共感しつつ拝見しました。

舞台セット、照明、音楽、全てが主張しすぎず、身の程をわきまえた脇役振りで、舞台上の登場人物の造形の手助けになっていました。

宮田さんの演出も、女性ならではの細やかさが随所に見られ、とても丁寧な、まるで、イプセンの原画に、見事な手腕で、色付けされた、美しい塗り絵を鑑賞したような風情に満ちていました。

脇役陣も、皆さん、秀逸。このレベルの舞台が、こんな低価格で観られるなんて、何だか、良いものばかりの福袋を買った気分でした。

見逃した方のために、今から再演希望を出したい作品です。

ネタバレBOX

馬木也さんが、何度も口にする「ヘッダ・ガーブレル」という、台詞の言い方の変化が素晴らしく、昔からのファンとして、大変ゾクっとさせられました。

キャストが全員、好配役で、全員が、この作品で、新境地を開かれたようにさえ感じました。
ガラスの葉

ガラスの葉

世田谷パブリックシアター

世田谷パブリックシアター(東京都)

2010/09/26 (日) ~ 2010/10/10 (日)公演終了

満足度★★★★★

作家と演出の相性抜群
フィリップ・リドリーの以前観た作品よりは、大変わかりやすく、自分の境遇に、卑近な部分も多々あり、終始興味深く観劇することができました。

この作家と、演出の白井さんの相性もピッタリな上、出演者が誰も皆素晴らしくて、のめり込むように舞台に集中してしまいました。

萩原さんの好演は言うまでもありませんが、舞台出演の度に飛躍的に成長している田中圭さんが、「ガラスの動物園」のローラの男性版のような、繊細な心を持つ青年を、魂を込めて熱演され、観ている私まで、胸が締め付けれる思いでした。

ある意味、普遍性のある、家族劇の決定版のような作品でした。

ネタバレBOX

舞台セットが、縦長に組まれ、そのセットが右に左にと軋みながら、移動するアイデアが、この作品の雰囲気に見事マッチし、大変秀逸でした。
セットが軋む音と、登場人物の軋む気持ちが重なり、大変刺激的な舞台美術に、ただただ感服!
まさに、総合芸術の真髄を見た思いです。

暗い芝居なのに、演劇好きな人間としては、大変ワクワクさせられる舞台作品で、心底、観劇できたことを感謝しました。
今の私をカバンにつめて

今の私をカバンにつめて

ネルケプランニング

青山円形劇場(東京都)

2010/09/25 (土) ~ 2010/10/11 (月)公演終了

満足度★★

やっつけ風味で残念な作品(訂正あり)
悪い意味で大変芝居地味ていました。脚本、構成、演出、音楽…、どれを取っても全てが凡庸。
あまり、制作者の熱意が感じられない舞台でした。

もちろん、戸田さんは芸達者だし、それなりに楽しめる作品ではありますが、これ、戸田さんの二部構成のショーで、芝居仕立てでやる公演なら、及第点だと思うぐらいの軽いテイストのステージでした。

期待が大きすぎた分、がっかり度も倍増でした。

ネタバレBOX

【だいたい、何故、オリジナルなのに、わざわざ舞台設定を外国にする意味があるのでしょう?】と思ったのは、私の知識不足と誤解による見解で、実は、これは、翻訳ものだったと、萩尾ひとみさんの新聞評で、知りました。1978年のオフ・ブロードウエー初演作とのこと。
時代背景も違う、ましてやここ日本での今更のこの作品の上演にどれだけ、意味があったのかと、改めて、疑問を感じました。

三谷さん流の翻訳が逆に災いし、雰囲気のどこにも、外人歌手のストーリーらしさが微塵もなく、この違和感ある舞台設定が、より、作品への同化感情を阻害した気がします。


樫の木坂四姉妹

樫の木坂四姉妹

劇団俳優座

シアターX(東京都)

2010/09/20 (月) ~ 2010/10/03 (日)公演終了

満足度★★★★

静謐に生き抜く力の美しさを味わう
新劇の名女優が集結した舞台。
大変期待して行きましたが、客席に空席が目立ったのはとても残念でした。

長崎で被爆した姉妹の戦時中から、老齢までの人生が、静謐なタッチで語られ、井上ひさしんさんの「父と暮らせば」にも通じる世界感でした。

姉妹の長女役の大塚道子さんは、中でも、群を抜いた名女優振り健在で、本当に、その舞台上のお姿を拝見するだけで、後光が射して見えました。
あの年齢で、あんなに矍鑠として、台詞の覚えも口跡も良く、その凛としたお姿を拝見できただけでも、行った甲斐があったと心底感嘆しました。

ネタバレBOX

題名は4姉妹ですが、被爆して亡くなった姉妹がいるので、実際には老齢まで存命している3姉妹が主軸となる舞台。

大塚さん、岩崎さん、川口さんは、舞台上の居ずまいからして、本当の3姉妹のように、時には反目し合い、時には慰め合いながら、被爆の後遺症と闘いながら、それぞれ、懸命に慎ましやかに、身を寄せ合い、生きて来た、その人生の重さが、声高ではなく、淡々と丁寧に描かれた佳作。

それだけに、やや起承転結に欠け、冗長に感じるシーンがあったのも事実です。
もう少し、構成に工夫があり、回想シーンと、現在の場面の転換に、無駄がなければ、更に、深い作品になったのではと惜しまれました。

でも、とにかく、3女優の名競演振りが素晴らしく、作品の凡庸さを払拭する凄みを持っているので、一度も、退屈には感じませんでした。

もっと多くの観客に、是非体感してほしいと思える舞台でした。

回想シーンで、4姉妹と、兄を演じる若い俳優さん達も、ベテランの3人に引けを取らない好演振りで、観客として嬉しく感じました。
井上芳雄 10周年記念コンサート

井上芳雄 10周年記念コンサート

日本テレビ

青山劇場(東京都)

2010/09/11 (土) ~ 2010/09/20 (月)公演終了

満足度★★★★★

完全無欠のショーでした
一部の小池さん演出のミュージカルショーの構成演出が、とにかく素晴らしい!!
こんなに満足できる、ミュージカルショーは生まれて初めて観た気がしました。

デビュー間もなく観た草月ホールでのコンサートでは、まだ井上さんの自己陶酔の雰囲気が見えていましたが、さすが10周年!!

数々の多種多様な演技経験をされて、井上さんが、歌のうまさだけでなく、演技表現者としても、格段の進化を遂げた、実証のような、申し分ないコンサートでした。

ネタバレは、後日追記するかもしれません。

ハーパー・リーガン

ハーパー・リーガン

パルコ・プロデュース

PARCO劇場(東京都)

2010/09/04 (土) ~ 2010/09/26 (日)公演終了

満足度★★★★

長塚演出の新境地を観た
とても、新鮮な演出でした。
アカデミー賞外国映画賞候補になるような味わいのある作品でした。

小林聡美さんも良かったけれど、今回もまた、山崎さんの深い演技表現力に魅了されっぱなしでした。

家族の愛情や感情のもつれは、万国共通のテーマなんだなと、痛感!

ネタバレは、後日追記するかもしれません。

伝説との距離

伝説との距離

シャチキス(少年社中×ホチキス)

シアタートラム(東京都)

2010/09/16 (木) ~ 2010/09/19 (日)公演終了

満足度★★

キャスト陣は健闘ながら
どうも、脚本に創意工夫が足りない印象を受けました。
後半の10分ぐらいは、ようやく、やや血湧き、肉踊る雰囲気になりましたが…。

とても期待していただけに、かなり消化不良でした。

木の皿

木の皿

加藤健一事務所

本多劇場(東京都)

2010/09/08 (水) ~ 2010/09/12 (日)公演終了

満足度★★★★

初演とは違う感慨あり
初演を観たのは何年前だったでしょう?
亡くなった湯浅さんが、老父役でした。
今回は、初演では息子役だった加藤さんが、老父役で、息子は、新井さんが演じられました。

この息子役の新井さんがとても良かった!!
加藤さんの老父は、茶目っ気がありすぎて、そのため、彼の世話に人生を翻弄され、疲れ果てる嫁の苦悩が、あまり客席に伝播しないところがありました。

でも、やはり、この作品自体の投げかける問題提起は、痛切に胸を打ちます。
観ていて、とても辛くなります。

初演では、確か嫁に感情移入して観た記憶がありますが、今回は、木の皿で食事をしなければならない、老父の方に、多大に感情移入して観ている自分に気付きました。
それだけ、加齢を身にしみて感じるこの頃だからでしょうね。

ビリーバー

ビリーバー

シーエイティプロデュース

世田谷パブリックシアター(東京都)

2010/09/03 (金) ~ 2010/09/12 (日)公演終了

満足度★★★

宗教を考え直す…
想像していたより、ずっと重い問いかけのあるストーリーでした。

宗教観を再考する、示唆に富む台詞がたくさんありました。

セットも、鈴木勝秀さんらしい、シンプルな作りで、それを、キャストが自ら位置を変えたりするのにも好感が持てました。

ピアノの生演奏もとても、舞台にマッチングして、素敵な雰囲気作りに一役買っていました。

ただ、期待した川平さんは、いつになく、パワー不足な感じがあり、勝村さんもお忙しいのか、時々台詞を噛んだりされて、このお二人の演技に関しては、やや不満がありました。ちょっと芝居内容にそぐわない悪ふざけが過ぎたのも、少し残念。

その反面、9歳の複雑な少年心を見事に演じきった風間俊介さんの名演技は、本当に素晴らしくて、感嘆してしまいました。
「金八先生」の頃から、類稀な資質のある役者さんだとは思っていましたが、ここまで、役になり切って舞台上にいられる名優に成長されているとは思いもしませんでした。
本当に、素晴らしい!!風間さんを観に行くだけでも、この芝居、観る価値ありです。

ネタバレBOX

父親が、子供心を失っている少年に、一番信じられるものは何かを、身をもって教えようとする、家族の物語。

自分が唯一の神だと、他宗教の者を否定し、根絶やしにするような神は、信じるに値しない、本当に、信じられるのは、世の中の子供達に、平等にプレゼントを配るサンタクロースだと、我が子に力説する父。そんな父や夫を愛しながらも、彼の一途な思いには同調できない、妻と息子。
その、どこにでもいそうな家族の心の機微が見事に描かれた脚本が秀逸でした。

子ども達をキリスト教の学校に通わせた私も、昔から、腑に落ちなかったことが、勝村さん扮する父の台詞として、聞いて、改めて、宗教というものへの、僅かな不審が頭の中で再燃する思いでした。(でも、キリストを信じる方には、不快な台詞かもしれませんが…)

軽いタッチのストーリー展開の中に、示唆に富む台詞がたくさん詰まって、心で、観るタイプのお芝居でしたが、勝村さんと川平さんのやや御ふざけに過ぎた演技が、その味わいを軽減してしまったようで、残念でした。

川平さんの家族以外の全ての登場人物役に、あまり役の色分けがなかったのが、とても残念。精神科医は、やややり過ぎで、逆に面白くありませんでしたが、ダイニングの女給さんは、とてもキュートでした。

草刈民代さんも、初めから女優さんだったかのような、舞台上の佇まいに感じ入りました。

作品の奥行きは、演出でもっと深みが増しそうな可能性があり、これが及第点とは言えないように感じますが、とにかく、風間さんだけは、最初から最後まで、一貫して、素晴らしい名演技を見せて下さいました。
ボックスのみの小道具で、チェロを弾きこなす仕草も超1級!!本当に、御見逸れしました。
叔母との旅

叔母との旅

シス・カンパニー

青山円形劇場(東京都)

2010/08/20 (金) ~ 2010/09/19 (日)公演終了

満足度★★★★★

演劇というプレイを思う存分堪能しました
これは、もうこのキャストでなければ、成功不可能な、遊び心に溢れた舞台構成、演出でした。

劇内容も、もちろん大変面白く拝見しましたが、それ以上に、私の心を射抜いたのは、キャスト4人だけで、様々に演じる多種多様な人間達の、演技表現の妙!!

この芝居の最大功労賞は、この劇形態の趣向の面白さに差し上げたいと、自分としては思いました。

もちろん、それに応えられるだけの演技者としての技量が、4人の役者さんに備わっていたことは言うまでもありません。

台風で、足が水に濡れた方が多く、客席は皆さん、濡れた靴を脱いだり、冷房が寒すぎたりで、大変な惨状でしたが、それでも、満員の客席中、心から芝居を、名演技を楽しむ笑い声が絶えず、本当に、素晴らしい時間が過ごせて、幸せでした。

ネタバレBOX

主人公の青年を4人で交互に演じる冒頭から、気持ちがすぐにこの物語に引き込まれました。

ちょうど、最近観たがれきの太鼓の芝居のように、登場人物全員を4人が持ちまわり的に演じ、主人公役ではない3人がその他と役を引き受けて行きます。

その中で、主に叔母役を演じる段田さん、黒人ワーズワース役の高橋さんの演技が、取り分け印象に残りました。
もちろん、浅野さんも、「39ステップス」の時と同様、男性、女性、様々な役を八面六臂の大活躍で、軽妙洒脱に演じて下さり、その役代わりだけで、観客の気持ちを掻っ攫って下さいました。

最初は嫌っていた叔母と旅行を続け、彼女の半生を聞かされる内に、叔母こそが実の母だとわかり、一緒に暮らすことを決めるまでの、青年の心模様。

裸舞台に、スーツケースだけの小道具で、たった4人の出演者だけで、見事に、観客の心の中に、情景を想起させる、スタッフとキャストの力量に、心から脱帽し、歓喜しました。

天井から吊り下げられた地名を書いた掲示板が、今現在の場所を知らせるべく、するりと下り、また上がって行くというシンプルなアイデアも、とても成功していました。

4人の演技表現の妙を堪能し、笑いながら観ていて、でも、最後には、しかりとした人間ドラマも感じられ、本当に、演劇という名のプレイを心底楽しめる極上の舞台でした。

また是非、このメンバーで再演してほしいと思いました。
ペン

ペン

劇団NLT

俳優座劇場(東京都)

2010/09/02 (木) ~ 2010/09/08 (水)公演終了

作家の自虐ネタ?
相変わらず、名コメディエンヌ振りを思う存分発揮して下さる木村有里さんの存在感は見応えあるし、久しぶりに拝見した井上さんの自然な演技も、私の観た回では申し分なかったのですが、とにかく残念なのは、原作のお粗末な出来。15分で完結しそうなストーリーを、途中休憩挟み、2時間40分も観続けるのは、かなり、精神的にダメージでした。

だいたい、笑いのネタも、自分の大嫌いなタイプのものでしたし、心から心地良く笑える瞬間が一度もなかったことが、とても残念でなりませんでした。

セットは良かったけれど、意味不明の暗転も多く、原作のつまらなさに加味するような演出の手腕のなさも気になりました。

キャスト陣は、賢明に好演していただけに、この原作者の作家性のなさと、この作品を舞台に掛ける決断をされた方の企画力に疑問を感じざるを得ませんでした。

音楽の入り方も、プロの仕事のようには感じられず、老舗の劇団なのに、大変残念で、口惜しい劇後感で、いっぱいになりました。

ネタバレBOX

要するに、人情コメディの体裁を保った、作家の自虐ネタなのでしょうか?
所詮、作家なんて、嘘をまことしやかに文章化する仕事に過ぎないとでもいうような??

娘の代筆をしようとする、父親の書く、ネタが、強姦だったり、近親相姦だったり、異民族に対する差別だったりで、とても、笑う気になれないもののオンパレードなので、その後の、家族愛めいた描写も、鼻白むだけに感じました。

この原作をどう、脚色し、名演出してみたところで、決して名作コメディにはなりようがないと思います。

せっかくの、NLTのコメディなのですから、もっと作品選びには慎重であってほしいと、昔からのファンとしては切望します。

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