johnnyの観てきた!クチコミ一覧

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龍を撫でた男

龍を撫でた男

オリガト・プラスティコ

本多劇場(東京都)

2012/02/03 (金) ~ 2012/02/12 (日)公演終了

満足度★★★★★

戯曲が大変素晴らしい
戯曲に散りばめられた一見何気ない家則の台詞に含まれる含蓄に心惹かれました。「おもいどおりいってもいかなくても一生は一生さ」「あんたのいう情熱なんでものは、けっきょくのところ、この散文的な家庭生活にはかなわないということですよ」「人生は冒険じゃない。人生はくりかえしですよ。」 こういう昔の傑作が観られる機会は嬉しいです。初演時の劇評を読み漁ってみたいと思いましたが、探していくのにもなかなか骨が折れそうですね。

寿歌(ほぎうた)

寿歌(ほぎうた)

シス・カンパニー

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2012/01/05 (木) ~ 2012/02/02 (木)公演終了

特に感想なし・・・
それほど悪い芝居ではないと思うのだけれど、なぜか深く引き込まれないまま眼前を流れていってしまいました。
そして、その理由を追求することに気持ちが向かず。
端的に言って、この舞台と自分との相性があまりにも良くなかったのでしょう。

十一ぴきのネコ

十一ぴきのネコ

こまつ座

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2012/01/10 (火) ~ 2012/01/31 (火)公演終了

満足度★★

子ども向け? それとも風刺を生かす?
舞台を観る限り、表記のどちらを表現したいのかについて、中途半端だったような気がします。俳優がネコを戯画化したような演技をしたり(「~にゃン」といった風)、旅回りのネコが、切り合いの決闘を可笑しく見せる箇所といった子どもが食いつくようなシーンを挿入することで、芝居に込められている風刺の精神が抜け落ちてしまいます。個人的には、100%大人向けのブラックな作品にした方が、ホンのポテンシャルを引き出せる気がしました。

『三月の5日間』100回公演記念ツアー

『三月の5日間』100回公演記念ツアー

チェルフィッチュ

KAAT神奈川芸術劇場・中スタジオ(神奈川県)

2011/12/16 (金) ~ 2011/12/23 (金)公演終了

満足度★★★★

作品の完成度は高いが、好みではない
今の若い世代の日常のしゃべりをこれほど破綻なくかつ美しく舞台に上げられていること自体が素晴らしいと思いました。語られている内容や俳優の語り口は「ファストフード」的で陳腐なのですが、「チープなことに真摯であれ」という姿勢が作品を貫いていて、そのブレのなさが美しいです。
このカンパニーの作品に登場する、置かれている現状を変えようと具体的な行動に移さない「若者」に全く共感できません。この作品でもそれは変わりませんでした。いくら表現手法が洗練されていて質が高くても、表現しようとしているその対象に興味を持てないとなると、やはりもう観に行きませんね。

ポルノグラフィ

ポルノグラフィ

公益社団法人日本劇団協議会

恵比寿・エコー劇場(東京都)

2011/12/08 (木) ~ 2011/12/13 (火)公演終了

満足度★★★

戯曲を咀嚼しきれず
あれこれ工夫を凝らした演出が目に付いたけれど、肝心の俳優の演技が戯曲の本質に届かず。総じてロンドンの固有名詞あるいは台詞に裏打ちされているカルチャーの違いに阻まれ、台詞あるいは役柄の意味するところを十分に咀嚼しきれないまま本番を迎えてしまった感じが拭えませんでした。異なる文化圏でコンテキストの共有がない舞台作品を受容することの困難を感じざるを得ませんでした。ホン自体は魅力あり。

みんな我が子

みんな我が子

梅田芸術劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2011/12/02 (金) ~ 2011/12/18 (日)公演終了

満足度★★★★★

極めて質の高い作品。見逃すな!
1947年トニー賞受賞の名作。馬力のある物語推進力に引き込まれました。メインの俳優陣はみな熱演、見事なアンサンブルだったと思います。台詞も馴染みやすく、翻訳劇が苦手な人も大丈夫かと。

ソウル市民五部作連続上演

ソウル市民五部作連続上演

青年団

吉祥寺シアター(東京都)

2011/10/29 (土) ~ 2011/12/04 (日)公演終了

満足度★★★★★

五部作制覇
「ソウル市民」
再演を重ねた劇団の看板作品に出演者が安心して身を委ね好演。「同時多発」会話、うまくいっている部分は一方の会話の「間」にもう一方の会話が綺麗に入り込み、美しい。物語の中盤で交わされる家の女中たちと長女の文学談義、朝鮮人への差別意識が露になり、そら恐ろしい。

「ソウル市民1919」
三・一独立運動の高揚感に沸く街角から隔絶された日本人一家を舞台に、大正デモクラシーを下敷として個人の価値観の解放を描く。両者のコントラストがもっとくっきり出れば良かったと個人的には思ったりする。それにしても、「平和ボケ」した篠崎家の描写は愉快。

「ソウル市民・昭和望郷編」
篠崎家を訪れる奇妙な輩と、飛び交うホントかウソか判然としない話の数々。一寸先も不透明な時代を象徴。「日本人」というアイデンティティも俎上に上げる作劇。

「ソウル市民1939・恋愛二重奏」
「恋愛〜」と謳っているが、その華やぎよりむしろ戦争が市民の日常に深く侵食しつつある様子を丁寧に描写。戦地帰りの婿養子を演じた古屋隆太が心の荒廃を見事に表現。

芝居の出来よりも、かつて日本が隣国を植民地化して支配し、朝鮮民族をあからさまに差別したその有り様を、四作もかけて執拗に描いた平田オリザの胆力に感嘆しました。

あなたに会ったことがある

あなたに会ったことがある

MODE

笹塚ファクトリー(東京都)

2011/11/15 (火) ~ 2011/11/20 (日)公演終了

満足度★★★★★

現在の東京の演劇シーンに対するオルタナティブ
俳優が馬や処刑マシーンやボールや子供を表現。そのウィットに富んだイメージの可視化と、演出の高い要求を実現する俳優の力量。
演劇は単に、現在の社会あるいは人々の日常を要約したり切り取ったり、あるいは批判したりするだけの表現ではなくて、表現することそのものの楽しさと深淵さと神秘性を観客に投げかけてくれるんだなという事実を、いつも以上に感じさせてくれた芝居でした。

『ホテル・デュ(神)』『最終生活』

『ホテル・デュ(神)』『最終生活』

劇団解体社

森下スタジオ(東京都)

2011/11/11 (金) ~ 2011/11/13 (日)公演終了

2演目とも前衛の極致
劇団解体社の「最終生活」、ポーランドの劇団・Teatr Cinemaの「Hotel Dieu/ホテル・デュ(神)」、どちらも明確な筋書きはありません(簡単な公演内容はトラックバックのWebページよりご覧ください)。また、この公演ページのやたら長い「説明」を読んでも私には舞台の理解の助けにはなりませんでしたし、公演チラシには「・・・プロセスのあらゆるシーンで「人間以後」が審問に付されていくのです」との文言がありますが、どの辺りが「人間以後」なのかも明確には分からずじまい。解体社初見の観客向けに、もう少し丁寧な解説をどこかで入れてくれたら有り難かったです。

ジェローム・ベル『ザ・ショー・マスト・ゴー・オン』

ジェローム・ベル『ザ・ショー・マスト・ゴー・オン』

フェスティバル/トーキョー実行委員会

彩の国さいたま芸術劇場 大ホール(埼玉県)

2011/11/12 (土) ~ 2011/11/13 (日)公演終了

満足度★★★★★

F/Tのトリを飾るのに相応しい作品
計算された、作品の余白の大きさ。熱狂する大衆の輪に加わるのも、その輪から引いてあれこれ考えを巡らせるのも自由。エンターテイメントとアートを又にかける大作。

ソウル市民五部作連続上演

ソウル市民五部作連続上演

青年団

吉祥寺シアター(東京都)

2011/10/29 (土) ~ 2011/12/04 (日)公演終了

満足度★★

「サンパウロ市民」初日は芝居が緩かった
芝居のディテールを作り込むことができないまま、初日を迎えてしまったという印象でした。演出が行き渡っていないため、会話劇の密度が薄い。
戯曲も話が間延びしている感じで、役者がそれを補おうと、時に観客の笑いを取りに行くような大げさな演技に走ってしまったのが残念です。総じて、青年団の普段の本公演レベルに達していなかったです。
ホンはともかく、日にちが進むと演出・演技は改善する気がしました。あと、作品のモチーフは面白いと思うので、再演を期待したいと思います。

ユーリンタウン-URINETOWN The Musical-

ユーリンタウン-URINETOWN The Musical-

流山児★事務所

座・高円寺1(東京都)

2011/10/14 (金) ~ 2011/10/30 (日)公演終了

満足度★★★★

台本の台詞がよい
「彼らが知らない幸せを彼らの知らないうちに授ける(確かクラッドウェルが市民統治に関して自説を述べる箇所)」「オレたちはホームレスじゃなくてホープレス(ボビー)」「基本的人権には2種類ある。ひとつが生きる権利。もうひとつが将来に希望を持つ権利(ボビー)」 台本を担当した坂手洋二がいい仕事。
役者ではヒロイン役の関谷春子が圧巻の出来栄え。これからも商業演劇だけでなく色んな演出家と仕事をしてほしいと思いました。

遊園地再生事業団『トータル・リビング 1986-2011』

遊園地再生事業団『トータル・リビング 1986-2011』

フェスティバル/トーキョー実行委員会

にしすがも創造舎 【閉館】(東京都)

2011/10/14 (金) ~ 2011/10/24 (月)公演終了

満足度★★★★★

素晴らしさをうまく言語化できない
不明なもやもやが残ったままだけれど、自分自身の知識と想像力を超えたところにある何かがこの作品に格別の強度を与えている気がしました。再演されることを切に願います。

維新派『風景画―東京・池袋』

維新派『風景画―東京・池袋』

フェスティバル/トーキョー実行委員会

西武池袋本店 4階まつりの広場(東京都)

2011/10/07 (金) ~ 2011/10/16 (日)公演終了

満足度★★

池袋の日常に埋没してしまったと感じた
都心の喧騒(電車がホームに到着するアナウンスや電車が通過する騒音、地上から届く無数の通行人のざわめき)、借景としている新宿方面を見通す夕闇の風景、そして顔に当たるそよ風に作品が埋没してしまったと感じました。ただ、佐々木敦氏がTwitter で言っている、彼らのクリエーションの本質は静的で単調な表現の連続の先にあるという意見はなるほどそうかなと思いました。つまり、自分の維新派に対する期待と彼らの創作の方向に隔たりがあったため、今回のように壮大なセットを用いない作品に対して置いてきぼりを食らってしまったのかなということです。

ウエアハウス-circle-

ウエアハウス-circle-

演劇集団円

シアタートラム(東京都)

2011/09/30 (金) ~ 2011/10/12 (水)公演終了

満足度★★★★★

「動物園物語」の見事な変奏
名作のエッセンスを抽出して、現代劇の核とすることに成功している作品でした。ミステリー仕立ての娯楽作品の装いをしながらも、老いと孤独という特に全ての男性にとって向き合わなければならない問題を観客に突きつけています。もちろん芝居に深みを出すのは、橋爪・金田の安定感抜群の演技があってこそ。個人的には、アレン・ギンズバーグの長編詩「吠える」に惹かれました。

『DAIKAIJU EIGA』『Rosa, seulement』

『DAIKAIJU EIGA』『Rosa, seulement』

青年団国際演劇交流プロジェクト

こまばアゴラ劇場(東京都)

2011/09/30 (金) ~ 2011/10/05 (水)公演終了

満足度★★★

○:Rosa, seulement ×:DAIKAIJU EIGA
Rosa, seulement:☆☆☆☆ 監獄という設定。ひたすら同じ動作をまるで禁欲的に黙々と行う女優。看守の誘いを頑として拒絶する姿勢。そして自由と革命への熱い想い。ローザ・ルクセンブルクという革命家の孤独な魂が、テキスト、俳優の声・身体によって見事に表象されていたと思います。ローザ・ルクセンブルク自体が大半の観客にとって馴染みがないため、パフォーマンスの素晴らしさが伝わりづらかった点がマイナスですが。
DAIKAIJU EIGA:☆ ぽこさんがおっしゃっている通り、一言でいうと演劇になっていないです。これをプロの公演として上演するのはマズイと思います。本番にかかる前に制作サイドが現場に入ることは難しいのでしょうか?

ルネ・ポルシュ『無防備映画都市―ルール地方三部作・第二部』

ルネ・ポルシュ『無防備映画都市―ルール地方三部作・第二部』

フェスティバル/トーキョー実行委員会

豊洲公園西側横 野外特設会場(東京都)

2011/09/21 (水) ~ 2011/09/25 (日)公演終了

満足度★★

全く分からない作品だった
しかし、これほどまでに理解不能な作品はそうそうお目にかかれないなと思いました。台詞が分かるには、現代思想やドイツ史についての深い理解が必要。資本主義の矛盾を皮肉っているみたいだけれど、それが全面に出てきているわけではない。また、映画「ドイツ零年」も観たけれど、なぜあえてこの映画なのかも不明でした。他の方のレビューを見る限りでは、色々と想像を膨らませる余地はあるみたいですが・・・。

おしまいのとき

おしまいのとき

ポツドール

ザ・スズナリ(東京都)

2011/09/08 (木) ~ 2011/09/25 (日)公演終了

満足度★★★★

クオリティー高し。
計算して配置したチープな台詞、役者を巧みに誘導して舞台上での演技を刻々と変化させる緻密な演出。三浦大輔という演劇人の力量の高さに改めて感じ入りました。ストーリーや夫を刺殺する場面での演出にどことなく古典名作の影響が感じられました。具体的に何という作品かまでは思い浮かびませんでしたが・・・。

宮澤賢治/夢の島から 飴屋法水『じ め ん』/ロメオ・カステルッチ『わたくしという現象』

宮澤賢治/夢の島から 飴屋法水『じ め ん』/ロメオ・カステルッチ『わたくしという現象』

フェスティバル/トーキョー実行委員会

都立夢の島公園内 多目的コロシアム(東京都)

2011/09/16 (金) ~ 2011/09/17 (土)公演終了

満足度★★★★

対称的な質感の2作品
「わたくしという現象」:
幕切れに闇夜に伸びる青いビームこそが「わたくし」。精緻に作られた文明(椅子の列)が超常的な力で瞬時に崩れ去った後、何もない荒地から立ち上る「わたくし」。キリスト教の世界観を連想させる理知的で美しい表現である一方、体温や肉感の感じられない「展示」作品だったと、個人的には思いました。

「じ め ん」:
ノイズの混じった玉音放送、荒地をひたすら掘る少年が振るうスコップが土に刺さる音、爆弾のオブジェ。どれも演劇的なアクチュアリティを内在しているけれど、その足元にはゴミでできた夢の島が広がっている。虚構の上に成り立っている強烈な生。壮大な遊戯そのものが、演劇という表現の本質を照らし出していました。

連結の子

連結の子

文学座

吉祥寺シアター(東京都)

2011/09/09 (金) ~ 2011/09/23 (金)公演終了

満足度★★★★

さすが老舗劇団、丁寧な作り込み
笑いもありつつ、重いトピックが芝居全体を貫く構成。現代社会における家族の姿を明快に描写しています。多くの観客が受け入れられるクオリティと社会性が備わった、いい芝居だと思いました。

ネタバレBOX

劇の終盤、高原家の男4人が居間に座り込み、趣味の鉄道について語るシーンが素晴らしかったです。熱い想いは伝わるようで伝わらない。そのぎちこちない会話そのものが、現代の家族の絆を象徴していました。

役者は概ねどなたも丁寧な芝居をしていましたが、個人的には保護司を演じた金沢さんの口達者でさばけた中年女ぶりが絶品でした。

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