高き彼物
(公財)可児市文化芸術振興財団
吉祥寺シアター(東京都)
2012/07/04 (水) ~ 2012/07/10 (火)公演終了
満足度★★★
役者のパフォーマンスに不満あり
石丸謙二郎と高校生役の役者のパフォーマンスに、不満あり。前者は声の高さや他人への振る舞いがころころと変わるなど全体的に人間が軽く感じられ、後者はあまりに演技が上辺だけ過ぎると思いました。もっといい芝居になる余地は大いにあると思いました。
南部高速道路
世田谷パブリックシアター
シアタートラム(東京都)
2012/06/04 (月) ~ 2012/06/24 (日)公演終了
満足度★★★★
よく出来た、おとぎ話
外界からある意味隔絶されている登場人物たちが、他人同士にもかかわらず仲が良く、温かみのある物語だったのが印象に残りました。実際にこのような状況に置かれることを想像すると、いささかおとぎ話の感がありますが、これはこれで良いと思いました。
ワークショップを積み重ねて作り上げた俳優同士の自然で思いやりのある関係性、俳優のコミカルな動きと観客とのフランクなコミュニケーション、控えめだけれど説得力のある照明と音響。演出が持つ人間に対する信頼感、演劇に対する信頼感。それらを全体として形にしたのが、この舞台のような気がしました。
月の岬
青年団
座・高円寺1(東京都)
2012/06/08 (金) ~ 2012/06/17 (日)公演終了
満足度★★★★
上品なエンターテインメント
具象から離れた舞台セットや、長崎弁を使っているにもかかわらず俳優の殊更にニュートラルさを強調した演技は、離島の閉鎖性といった在り来たりのイメージから芝居を引き離しています。空っぽな器の中に洗練された言葉や演技を置いた感じ。芸術作品として上品だと思いました。
ここで描かれているような狭い人間関係に規定されることとは縁のない人生を送ってきた私にとって、あまり身につまされるリアリティを感じない芝居でありました。観た後に何も残らない、エンターテインメントな舞台です。
ディーラーズチョイス
ウォーキング・スタッフ
シアター711(東京都)
2012/06/10 (日) ~ 2012/06/18 (月)公演終了
満足度★★★★★
これは良作。とてもうまくいっている翻訳劇。
翻訳劇を成立させるのは、日本人のホンのそれよりも数段ハードルが高いと思います。しかし研究を積み重ねて細心の注意を払って作り込めば、違う文化圏の表現でも日本の観客に伝えることが十分可能だと、再認識させられました。
今回の芝居について言えば、英国人が普通にするであろう振る舞いや相手に対する言葉のかけ方を写実的に演技することを基調としています。しかしそれが上辺だけの物まねになってしまうと、リアリティのないペラペラなよその国のお芝居になってしまう。そこでおそらく演出は、ポーカーうんぬんをモチーフにしてはいるが人間をきちんと描いた作品だ、というような方針を立て、役者に舞台上でちゃんと相手役とぶつかることを要求したのだと思います。だから、熱い芝居になったのでしょう。これらの要素を両立させるのは、相当難しいと思います。でもそれができたからクオリティが高い芝居になったということでしょう。
あと、英国の労働者階級の人間臭さを生々しく描いた緻密な脚本がいいことが前提としてあります。
暇があったら、ポーカーを本格的にやってみたいな~。
マハーバーラタ 〜ナラ王の冒険〜
SPAC・静岡県舞台芸術センター
舞台芸術公園 野外劇場「有度」(静岡県)
2012/06/02 (土) ~ 2012/06/23 (土)公演終了
満足度★★★★
ビジュアルと音楽の両方で楽しませる祝祭劇
110分全く飽きさせない楽しい舞台。
例年のSPACの野外劇場公演と比べるとマイクを通しての声が全面に出ていて、その分芝居に従来の静謐な趣きが感じられなかったのが、個人的には残念です。賑やかな舞台が好きな人はおススメ。
オリヴィエ・ピィの 『<完全版>ロミオとジュリエット』
SPAC・静岡県舞台芸術センター
静岡芸術劇場(静岡県)
2012/06/09 (土) ~ 2012/06/10 (日)公演終了
満足度★★★★
若者の無軌道なエネルギッシュさを生々しく表現
役者はさすがフランス屈指の国立劇場。身体に無駄な力が全く入っていないから、声が伸びやか。
ジュリエットの年増女ぶりは、違和感あり。
シズウェは死んだ!?
地人会新社
赤坂RED/THEATER(東京都)
2012/05/10 (木) ~ 2012/05/31 (木)公演終了
満足度★★
役者の紋切り型の演技に馴染めず
うとうとしているうちに時間が過ぎてしまいました。戯曲も、冒頭30分程のスタイルズが写真館を開くまでのいきさつは、少々蛇足かなと思ったり。
NASZA KLASA 私たちは共に学んだ
文学座
文学座アトリエ(東京都)
2012/05/18 (金) ~ 2012/06/01 (金)公演終了
満足度★★★★★
演劇はホロコーストを語れるか
舞台上に異様なエネルギーが充満していました。演劇という表現の可能性を追求するような作品だったと思います。これは再演及び戯曲の出版がなられて然るべき。あれこれ思うところ、長文の劇評としてまとめてみました。トラックバックのリンクです。
ベルナルダ・アルバの家
TPT
BankART Studio NYK(神奈川県)
2012/05/09 (水) ~ 2012/05/20 (日)公演終了
負傷者16人 -SIXTEEN WOUNDED-
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2012/04/23 (月) ~ 2012/05/20 (日)公演終了
満足度★★★★★
国立劇場に相応しい企画
「ミュージカル界のプリンス」が目当てで来場するミーハー女性ファンに、ずしりと重い翻訳物の台詞劇を投げかける―国立劇場に相応しい、素晴らしい企画だと思いました。井上芳雄ファンの一部でも、新たに良質なストレートプレイを観劇する習慣を持つようになったら、演劇界にとってかなりの集客UPです。
リーディング公演 エリ・プレスマン作『ドン!』
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2012/05/12 (土) ~ 2012/05/13 (日)公演終了
ユダヤ―イスラームの歴史への眼差し
劇の最後、ユダヤの老人はイスラーム若者に自らの愛用ナイフを渡し、彼の手で自らの殺し屋人生に幕を引きます。これをどう考えるか。結論や持論を提示されるのではなく、観る側が腹で受け止めて考えることを促すような戯曲。
THE BEE Japanese Version
NODA・MAP
水天宮ピット・大スタジオ(東京都)
2012/04/25 (水) ~ 2012/05/20 (日)公演終了
満足度★★★★★
何度も再演を繰り返してほしい名作
一方、野田秀樹という俳優が持つカン高い声とハイテンション、優れた身体性そのものがこの作品のエキセントリックな世界観を担保している、とも思っています。
セチュアンの善人
東京演劇集団風
レパートリーシアターKAZE(東京都)
2012/03/27 (火) ~ 2012/03/31 (土)公演終了
満足度★★
芝居のテンポが遅く、戯曲の構図が薄れる
大仰なアクションにもったいぶった台詞回しをする俳優の演技、いかにも意味ありげな音の効果が疑問でした。シェン・テ/シュイ・タとの関係においてこそ、この劇における街の住民の個性が出てくると思うのですが。戯曲が魅力的なだけに、劇世界の核心が薄れてしまい残念です。
ヤン夫人を演じた辻由美子は、さすが別格の存在でした。
ピーター・ブルックの魔笛
彩の国さいたま芸術劇場
彩の国さいたま芸術劇場 大ホール(埼玉県)
2012/03/22 (木) ~ 2012/03/25 (日)公演終了
歌が弱い
ネット上で随分感想が出ている通り、歌唱がパワー不足。きちんとしたオペラを観たことがない私でもはっきり思いました。なんだかなあと思い、無料配布にしては随分豪華なパンフレットのキャスト一覧を見たら、私が観た楽日は主要キャストはパパゲーノ以外全て、埼玉公演のみの出演とのこと。要するに、一軍メンバーではないということでしょうか。これではきちんとこの作品を観たことにならないのでは・・・。
オペラの敷居を下げて、観客にドラマを優しく手渡そうという意図は伝わってきました。オペラ「魔笛」との関係性の中でこの作品は評価されるべきなのでしょう。
満ちる
MODE
座・高円寺1(東京都)
2012/03/22 (木) ~ 2012/03/31 (土)公演終了
満足度★★
ホンがつまらない
これに尽きると思いました。毒気がなく、MODEらい不条理でシニカルなテイストはすっかり鳴りをひそめていました。すまけいの演技が見られたことが唯一の収穫。
ガラスの動物園
シス・カンパニー
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2012/03/10 (土) ~ 2012/04/03 (火)公演終了
満足度★★★★
深津絵里の演技に見惚れた
同年代では日本一の舞台女優かもしれない。この舞台を観て、そう思いました。
トムとジムを迎えるため部屋を横切り、玄関へと向かう場面。僅かに足を引きずりながらゆっくりと一心に体を前に進めるローラの姿に、心が震えました。
黄色い月
オフィスコットーネ
ザ・スズナリ(東京都)
2012/03/14 (水) ~ 2012/03/18 (日)公演終了
満足度★★★★
物語の力、演劇の力
スコットランドの劇作家が市民劇団へ書き下ろした作品。舞台装置は簡素、俳優が戯曲の「地の文」もしゃべります。シンプルなストーリーに若手二人の衒いのない素直な演技。印象に残る舞台でした。詳細はトラックバック先のブログ記事にて。
サド侯爵夫人
世田谷パブリックシアター
世田谷パブリックシアター(東京都)
2012/03/06 (火) ~ 2012/03/20 (火)公演終了
満足度★★★★
言葉による緊縛
演出の野村萬斎がコピーとしてつけた通り、全体的に俳優はあまり動かず、稽古で積み上げてきた台詞の語りを披露することに神経とエネルギーを集中させる芝居でした。白石加代子と麻美れいの演技スタイルの違いが明瞭で興味深かったです。蒼井優も大健闘。彼女には舞台女優としての華がある! 見た目の可憐さの内側に透けて見える芯の強さが、舞台を成立させるのに相応の役割を果たしていたと感じました。
それにしても休憩2回含め約3時間30分、修辞が係りに係った手強い台詞をひたすら聞かせるこの舞台は、公立劇場だからこそ上演できる企画なのでしょう。ネームバリューのある俳優のおかげで満席になって良かったと思います。
『THE BEE』English Version ワールドツアー
東京芸術劇場
水天宮ピット・大スタジオ(東京都)
2012/02/24 (金) ~ 2012/03/11 (日)公演終了
三人姉妹
文学座
紀伊國屋ホール(東京都)
2012/02/10 (金) ~ 2012/02/19 (日)公演終了
満足度★★★★
本格的な新劇の世界
今までほとんど新劇の芝居を観てこなかった自分にとって、独特の観劇体験でした。俳優の演技の質が、「これが新劇俳優の演技ね!」という感じ。写実的な演技とはこういうものかと。でも、それはそれで舞台上の世界観をきちんと構築できていて、「こういう芝居の成立のさせ方もあるのか~」と、唸った次第です。