どんとゆけ
渡辺源四郎商店
こまばアゴラ劇場(東京都)
2008/10/16 (木) ~ 2008/10/19 (日)公演終了
満足度★★★★
誰のための「死刑反対」か
「死刑」というワードに身構えるよりも、「むかーし昔、あるところに、悪いことをして『君、死刑!』と宣告された若者がいました」的なスタンスで観劇した方がよい舞台だ。そうでなければ、「被害者遺族」と「加害者(死刑囚)」、「加害者の妻」と「拘置所の担当職員」というたった5人の当事者だけが集まった民家で、淡々と死刑執行の手続きが執り行われ、時折ブラックジョークが差し込まれるこの状況に戸惑いを感じてしまうだろう。この舞台をブラックコメディだ、と断言することも出来るが、私は今回ほど「死刑」の是非を迷ったことがなかった。
幽霊船
劇団サーカス劇場
夢の島公園 特設テント劇場(東京都)
2008/05/16 (金) ~ 2008/05/26 (月)公演終了
満足度★★
テント公演の収穫は…?
夢の島を舞台にした作品をいざ夢の島で上演する!というのは当人たちにとっては本当にうれしいことだと思う。第五福竜丸が本当にそこにあるとは知らなかったし、「ゴミの島」「死の灰」とくれば作家の想像力を掻き立てるものがあるだろうと思う。ただ、初演ならまだしも再演なのだとしたら、もう少し“場”について検証してほしかった。今、夢の島は綺麗に埋め立てられていることを皆知っていながら、観劇に行く道すがらでは何となく「ゴミ処理場」のようなカラスが飛び交う「ゴミ溜め」を想像している。だから、せめてテントの周辺だけでもその“期待”に応えてゴミやガラクタに埋もれるような感覚を与えてほしかった。再演で勝ち取った夢の島での上演、という高揚感は、その紆余曲折を知らないただの観客には伝わらなかったのかもしれない。
ショウジさんの息子
渡辺源四郎商店
アトリエ春風舎(東京都)
2008/05/22 (木) ~ 2008/05/25 (日)公演終了
満足度★★★★
幸せな出会い!!
これを観てしまうと、今後、若い役者が(若くはなくても年相応とは言えない役者が)老人を演じている舞台がどうにも陳腐に見えてしまうかもしれない、これは本当に危険だ!もちろん、宮越さんがシェイクスピアの台詞を朗々と語るシーンは想像できないので、日常を描いた畑澤作品だからこそその愛すべきキャラクターを活かせるのだと思うが、当日パンフレットにあった畑澤さんの父親への想いも含めて、この舞台の評価のかなりの割合を占めるのが宮越さんの存在だった。それだけに、畑澤さんや劇団が宮越さんを「私物化」してしまいやしないか、といささか心配にもなったり…。だから、宮越さんの演劇界への登場は、本当に危険で幸せだ。
HIDE AND SEEK
パラドックス定数
ザムザ阿佐谷(東京都)
2008/04/24 (木) ~ 2008/04/27 (日)公演終了
満足度★★★★
「読後感」ばっちり…!
江戸川乱歩を小中学校時代に読み漁っていた私としては、もともと「大人目線から見た乱歩」をどうにか時間を見つけて自分の中に構築したい、と思っていた。だから、「宿題やりなさい」と言われて、「今やろうと思ってたのに!」とふくれる小学生のような気分になった。…と、それは個人的な事情だが、文系バリバリの台詞と世界観に溺れるのは本当に気持ちいい。乱歩と横溝と夢野久作が知り合いだった、という事実も何故かうれしいし、その3人ばかりでなくその登場人物まで絡んでくる贅沢。また、変に怪奇趣味に走らずに、ちょっとした幻想でとどめた演出も奥ゆかしく、好感が持てた。
億万長者婦人故郷ニ帰ル。
JAM SESSION
「劇」小劇場(東京都)
2008/04/15 (火) ~ 2008/04/20 (日)公演終了
満足度★★★★
演劇玄人さんたちを味方に!
明転した瞬間から引きこまれた久々の作品!テーマは重苦しいのに、「欲望」「理性」「正義」のせめぎ合いという頭脳戦が楽しくて、終始ニヤニヤしながら見てしまった。まるで明確なテーマが先にあって物語で肉付けされたかのような面白さだ(そういう作風の作家なのかもしれないが)。1956年に書かれた原作だというが、西沢さんにはこういった作品をどんどん掘り起こし、現代によみがえらせてほしいと思った。物語の展開によって(視点が変わることによって)、どういう結末を迎えてほしいかという私自身の正義がコロコロ変わるのも怖かったが、この、永遠に答えの出ない感じは何だろう?と思えば、遺族感情や世論に重きを置いた今の日本の死刑制度に似ているのだ、と思い至った。クレーレは、「復讐」をキーワードに容疑者に対して声高に死刑を叫ぶ遺族のようにも見える。もちろんこの作品にはそれに「金」の要素が加わっているので、そのままとは言えないが、来年以降、同じような選択を迫られる裁判員たちが確実に生まれるのだなあ、と思うと、後味の良さ、悪さは問題ではない、これは一筋縄ではいかないぞ、と何故か覚悟を決めたり…。ずっと後まで影響を与える作品だった。そんな知的な作業をしているだけに、もう少し宣伝ビジュアルを洗練させて、演劇玄人たちを味方につけてほしいと思った。
恋人としては無理
柿喰う客
ギャラリーSite(東京都)
2008/04/13 (日) ~ 2008/04/13 (日)公演終了
満足度★★★★
やったもん勝ち!
他の作品を全く見てない分、ハードルを上げることもなく興味から入り込めた。超ハイスピードな展開にもついていっている自分にびっくり。役者たちが小道具一つで一つの役を入れ替わりながら演じていく演出は珍しくはないけれど、役者の技量は相当なもの。元ネタが聖書からきているというのは興味深く、「恋人としては無理」という人間臭い部分につなげた脚本はよかった(圧倒的な情報量を精査する間もなく終わってしまった感は否めないが)。フランスにも行って(しかもこの演目で!)、凱旋公演なのにたった一日の上演!それ自体がやったもん勝ち!そのまま突っ走っていただきたい。
スケッチ・オブ・ザ・ピザ・ナイト ~香ばしい、春の一夜~
劇団競泳水着
王子小劇場(東京都)
2008/04/01 (火) ~ 2008/04/07 (月)公演終了
満足度★★★
どちらの立場で見るべきか
私の年代だと、「トレンディー・ドラマ」といえば“W浅野”とか「東京ラブストーリー」とか、「金はある!愛は軽い!」というものだったので、クライマックスで小田和正やチャゲアスがかかって爆笑!という展開を勝手に予測して見に行ってしまった。だけどそれは若い皆さんが作っているだけあって、「ハチミツとクローバー」だったのだった。もちろんベタなドラマ風の仕草や台詞に笑いが起きないわけではないが(そしてそれを楽しみにしている方も多いようだが)、昔「りぼん」や「なかよし」で読んだ少女漫画の世界にどっぷりと浸かって見てみれば、俄然受け入れ態勢は万全となり、爽やかにせつなくなったりする。そしてそう言われてみればイケメンが多いじゃないか!とうれしくなったりする。劇団の狙いはいったいどっちなんだ?一度の観劇ではまだ読めない。
葦ノ籠~アシノカゴ~
黒色綺譚カナリア派
青山円形劇場(東京都)
2008/03/19 (水) ~ 2008/03/23 (日)公演終了
満足度★★
勝手な要求か…
ちょっと気になっていたところに観劇のチャンス到来。
「アングラ」というワードから浮かび上がる、観客を独特の劇世界に「ひきずりこむ」ような言葉の応酬と異形の役者たちの存在感を求めて青山円形劇場に向かったが、趣向を凝らした空間作りには感心したものの、全体的に面白いか(楽しめたか?)といわれると、こういう表現方法もあるよね、程度にしか思えなかったのが残念。やはり「ザ・役者」がいないと難しいのか…。もちろん、こういったお芝居は空間が使えてなんぼ、のところもあるので、そういった意味では次回に期待したい。
humming2
ポかリン記憶舎
cafe MURIWUI(東京都)
2008/03/18 (火) ~ 2008/03/24 (月)公演終了
満足度★★★
居心地のよい気恥ずかしさ
「わざわざ劇場に行ってまで見なくてもよかったなぁ…」と思う作品も多いのに、カフェ公演!行く側としてはこれはかなりの冒険!必ず開演時間5分前までに到着しないと中に入れないとか…見る位置によって見え方が違うとか…狭いとか…、いろいろな障害はあるが、そういった不便さも公演を成立させている側の気配りで許せてしまった。ありがとうございます。演者が近すぎて気恥ずかしいのはきっとお互い様…!ふんわりと空間ごと楽しむ(味わう)ライブの醍醐味を堪能させていただきました。
ブレヒトだよ!
劇団衛星
京都市東山青少年活動センター(京都府)
2008/02/23 (土) ~ 2008/03/02 (日)公演終了
満足度★★
単調さが残念…
だいぶん昔に見て以来、久々の観劇。難しいことを抜きにしても楽しめるけど、難しいことを知っていると更に楽しめる、という知的な遊びに満ちている劇団だと今回初めて知った。見た目も演出も何となく学生劇団風で、成り立ってはいるけれども不安感は常に…(すみません)。それは演出が単調だったからかも?同じ展開でもそれを逆手に取って畳み掛けるような変化があれば、こちらも不敵な笑みでお返しできたかもしれません。あと、私は勝手に「ブレヒトだよ!」の「だよ!」を、「8時だよ!全員集合!」の「だよ!」だと思っていたので、テンションの違いに不意をつかれました(笑)!宣言どおりの幕切れで、そこはあっぱれな痛快さでした。
シナトラと猫(改訂版)
MCR
駅前劇場(東京都)
2008/03/11 (火) ~ 2008/03/16 (日)公演終了
満足度★★★
『椎名』を拝見!
初日だったので、これ大丈夫?!というシーンもあったが、それは初日の醍醐味なので一舞台ファンとしては良しとしたい。一度しか見に行けなかったが、十分に満足した。一挙上演するからには、3つの物語をどう絡ませるかが作家の一つの腕の見せ所だろうに、そこを評価できなかったのは残念…そこに乗っかりたかった。また、笑えて泣けてせっかく面白いのに、これまで見に行くことがなかったのは、チラシが目に留まらなかったからのような気がする。これは勿体無い!せめてタイトルと劇団名は読めてほしいな、と思いました。また見に行ってみよう、と思ったのに、次にまたスルーしてしまうと困るので…!