オーラルメソッド4
シンクロ少女
駅前劇場(東京都)
2017/12/12 (火) ~ 2017/12/17 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/12/14 (木) 19:30
『This is 30』を観た。再演で、3人兄弟の末弟の30歳の誕生日に久々に兄弟が会い、ドライブに出かける。その間に、いわくつきの相手と末弟が結婚するということが分かり、さまざまな出来事に巻き込まれる、というロード・ムービー風の作り。初演も観たが、役者が変わったことで風合いも随分と変わるのだなぁ、と改めて思った。70分。
おまけ的に、『性的人間』(15分)も上演。これも再演だが、性的な小説を書く作家と妻と弟子の関係が、何とも言えない味を出す。田中のり子が妙に艶っぽいのが、またいい。
オーラルメソッド4
シンクロ少女
駅前劇場(東京都)
2017/12/12 (火) ~ 2017/12/17 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2017/12/12 (火) 19:30
『40歳の童貞男』を観た。主宰の作家・名嘉友美は、作風が変わったのだろうか。シンクロ少女と言えば、SEX関係のセリフが飛び交い、ややダークな印象の劇団だったのだが、前作『LOVE CHAPTER 1』から、むしろ「純愛」系の芝居をやるようになった。今回も、40歳で童貞という安藤を軸に、SEXを題材にしつつも、何かホンワカと「愛」を語るようになっている。130分という長さが苦にならない。欠点はないのだが、役者の無駄遣いは若干気になるけど、それだけ面白い舞台だったということも言える。名嘉の音楽センスは年齢に観合わないと私は前から思っているのだが、今回のエンディング "Aquarius/Let's the Sunshine in"もさることながら、その直前の Apollo 100 "Joy" の選曲は抜群である。
『熱狂』『あの記憶の記録』
劇団チョコレートケーキ
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2017/12/07 (木) ~ 2017/12/19 (火)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/12/10 (日) 19:00
『熱狂』を見た。ヒットラーがナチスに登場し、独裁者に上り詰めるまでの物語を、ヒットラーの世話係である下級兵士の言葉を通して描く。ある程度は史実に基いているので、実在の人物ばかり登場するが、本当にそういう出来事があったかのようなシーンの連続で描かれているのは、確かに「熱狂」である。同劇団として、ギャラリー・ルデコ,サンモール・スタジオに続いての再々演だが、劇場が大きくなっても、それに負けないエネルギーでやっているのは見事だと思う。
ペール・ギュント
世田谷パブリックシアター+兵庫県立芸術文化センター
世田谷パブリックシアター(東京都)
2017/12/06 (水) ~ 2017/12/24 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/12/08 (金) 19:00
イプセンの有名な戯曲(劇詩)を韓国人の演出家が潤色し、韓国人俳優も使って多国語で上演する。原作を読んでいないので、どこまでが原作通りで、どこからが改変か分からない(明らかに改変と分かるシーンもいっぱいある)のだが、おそらく原則よりも祝祭的で派手な作りになっていると思われる。個々のシーンや、舞台美術等の面白さがあるのは確かだが、「理解する」というのは難しく感じた。浦井は大活躍だが、ちょっとそれに頼った舞台という印象も否めない。
ちゅらと修羅
風琴工房
ザ・スズナリ(東京都)
2017/12/07 (木) ~ 2017/12/13 (水)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2017/12/07 (木) 19:30
風琴工房としての最終公演は、沖縄の過去から現状をド直球で扱う硬派な芝居だった。この数年こだわっているように、エンターテインメント性をタイムスリップSFという手法で見せているが、扱う内容は、これでもか、これでもか、と差別され続けた沖縄の状況である。ただし、東京から来た青年という沖縄にとっては「外部」の青年を主人公に置いたことと、霊的な語り部として佐野功を置いたことで、苦しさを感じず冷静に観ていられる。初日だったせいか、終盤に役者が少し疲れた感があったが、130分を興味深く観られる舞台だった。いつもながら、青木タクヘイの音響も見事だし、やんばるの森を再現した美術も見事だった。
サバンナモンキーの憂鬱
くによし組
王子小劇場(東京都)
2017/12/06 (水) ~ 2017/12/10 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/12/06 (水) 19:00
青い睾丸を持ったサバンナモンキーが人間にされてしまう、という設定はシュールだが、会話や物語はシュールでないのが、いつものくによし組とは少し違う。人間の世界と動物の世界を共有するサバンナモンキー→人間の青介という存在がどういう意味を持つのか、人間と動物の類似性に着目しようとしているのか、そんなことを考えつつ観てたが、もう一匹のサルが「これ、友達の話なんですけど」と繰り返すあたりも気になっていた。
たまご祭
味わい堂々
スタジオ空洞(東京都)
2017/12/02 (土) ~ 2017/12/05 (火)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/12/04 (月) 19:30
高校の同級生という女性3人の劇団が10周年に際して企画した上演。一見、脈絡のない3つの話を並べておいて、実は…、という作り方が巧い。劇団員の3人に加えて日替わりゲストが出るのだけれど、適度に力を抜いた下手ウマ系の劇団なので、3人とのコンビネーションもよく、短いけれども楽しい時間を過ごすことができた。もっと適度に世に出てほしい劇団の一つであると言えよう。
クラウドナイン
大人計画
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2017/12/01 (金) ~ 2017/12/17 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/12/03 (日) 18:30
かつて、「劇団青い鳥」時代に本作を3回演出したという木野花の演出で、大人計画のメンバーを主に上演する。何故か、性的倒錯や女装・男装だけが取り上げられがちだが、もっと普遍的な「抑圧」に対して解放されようとする人々の物語として捕らえたいものだ。演出も勿論だが、役者陣もしっかりしており、3時間が苦にならないけれど、95年にパルコで観たときほどの感動は残念ながらなかった。
ちょっと、まってください
ナイロン100℃
本多劇場(東京都)
2017/11/10 (金) ~ 2017/12/03 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/12/03 (日) 13:00
別役実へのオマージュ的に不条理劇をやってみたというが、いつものナイロンとそれほど変わった感じはしなかった。もちろん、電信柱とか別役的なものはいろいろ出てくるのだけれど、それで何かが変わったという印象はなく、良くも悪くも、いつものナイロンだから、一定のレベルは維持されている。今回で面白いと思ったのは、客演のマギーが語り手になっていて物語を動かしているところか。
ホテル・ミラクル5
feblaboプロデュース
新宿シアター・ミラクル(東京都)
2017/12/01 (金) ~ 2017/12/10 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/12/01 (金) 20:00
シアター・ミラクルをラブホテルに仕立て、4人の作家に短編を書いてもらって上演するシリーズの5回目。で、今回は、坂本鈴(劇団だるめしあん),河西裕介(Straw&Berry),藤原佳奈(mizhen),屋代秀樹(日本のラジオ)の4人。奇想天外な設定をやらせたら随一の坂本、自身の欲望に実に忠実(?)な河西、シュールなエンディングの藤原、実に微妙な会話劇の屋代と、4作の色合いが違って、存分に楽しめる。藤原のセリフのキレが楽しい。
グレーのこと
ONEOR8
浅草九劇(東京都)
2017/11/29 (水) ~ 2017/12/10 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/11/30 (木) 19:30
今回はファンタジーを書いてみたと、作者の田村が当パンに書いてて、実際、死者の生まれ変わり先を決める会議という「グレーゾーン」での会話と回想を扱った作品だが、それでもしっかりONEOR8の作品になっていた。会議のシーンと回想シーンが交互に出てくる作りも巧いし、ちょっと変わったキャラを演じる伊藤が回想シーンにより納得できるなど、田村らしい巧妙さが際立つ。だが、何と言ってもエンディング前のシーンのインパクトが強烈だ。12年ぶりの舞台という羽田美智子だが、そうとは思えぬ存在感は見事だ。
一枚のチケット~ビートルズがやってくる!~
演劇女子部
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)
2017/11/27 (月) ~ 2017/12/03 (日)公演終了
満足度★★
鑑賞日2017/11/29 (水) 19:00
ハロー・プロジェクトの演劇セクション的なポジションで、C-ute 解散後に矢島舞美が初めて舞台をやるということだが、個人的には福永マリカ・上野なつひ、あたりの存在感を楽しみに出かけた。ビートルズ招聘に成功し、また、武道の聖地とされていた武道館でのコンサートを行なった、永島達司という実在の人物の物語と、当時の雰囲気や、ファン(の代表としての女子高生)の熱狂などを、歌とダンスを交えて舞台化した。女子部、というだけあって、女性出演者が多く、男役も男装しての演技には少し違和感を感じるし、物語の起伏も予定調和的に完結してしまうあたりは不満がなくもないが、エンターテインメント作品としてギリギリかなぁと思う。
管理人
世田谷パブリックシアター
シアタートラム(東京都)
2017/11/26 (日) ~ 2017/12/17 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/11/27 (月) 19:00
ハロルド・ピンターの出世作となった不条理劇を日本で初演だとか。不条理と言っても、ピンターのは、ベケットとは違って、日常の会話としてありうるものなのに不条理という奇妙な舞台だった。ピンター作品は『ダム・ウェイター』『背信』くらいしか観ていないが、かなり多いセリフが実は何の意味も持っていないという不条理も感じる。温水洋一が、ホームレス寸前から兄弟の部屋に住まわさせてもらっている立場から、段々と偉そうに語っていくというポジションの変化を巧みに演じていたが、若い2人も独特の雰囲気を醸し出して名演と言える。
ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ
シス・カンパニー
世田谷パブリックシアター(東京都)
2017/10/30 (月) ~ 2017/11/26 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2017/11/26 (日) 14:00
3度目のロズギルは千秋楽。菅田の、とてもゆっくりとしたセリフ回しから入り、段々とテンポを上げていくという、メリハリの効いた演出がやや目立った。今回も生田のボケ的ポジションが活きているなぁ、と思え、また、半海の「道化」的な演技が冴えていて、3幕に短く区切ってあるせいもあるが、全く飽きない2時間半だった。しかし今回も、本来の『ハムレット』を(とくにエンディングを)知らない観客はどう思うのが、気になる舞台だった。
グランパと赤い塔
青☆組
吉祥寺シアター(東京都)
2017/11/18 (土) ~ 2017/11/27 (月)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2017/11/18 (土) 19:30
懐かしい芝居だった。昭和44年、祖父母の家が取り壊されるということで久々に訪ねた母娘達が、一緒に暮らしていた昭和33年を回想する。ボイラー会社を経営する三世代の家族と、従業員やら居候やら女中やらの群像劇だが、当時7歳だった長女(今泉舞)をヒロインのように描くのは、青☆組では珍しい。東京タワーが建っていくのに連れて、物語は進み、余韻を残して昭和44年に戻って終わる。135分という上演時間も本劇団にしては長いが、それが意味を持つ長さになっている。私自身が、同じような三世代が同居した家に育ち、東京タワーの完成を見ているので、何だか懐かしい感触にとらわれた。しかし、そうでない世代が見ても、人間を暖かい視線で見る同劇団の本作品は、暖かい気持ちになれるだろう。
三人義理姉妹
年年有魚
駅前劇場(東京都)
2017/11/15 (水) ~ 2017/11/19 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2017/11/17 (金) 20:00
政治家の家に住む、長女、長男、次男。父が死んで、一周忌の日に末弟の次男が後を継ぐ宣言をしようとするシーンから始まり、政治家の家の特殊性やら、それでも人間は同じだ、というメッセージやら、様々なものが入れ込まれた物語。タイトルは、長女、長男の妻、次男の妻の、3人の義理の姉妹の物語という意味だと思うが、それは物語の軸にはなっていない印象がある。辻川は、人間ならぬものであるのは途中で分かるのだが、それを明らかにして終わるエンディングがいい。
本劇団は、本作で活動を休止するというが、人間を信じる作風の劇団がなくなるというのは何とも寂しい。
ファンタジアック
フロアトポロジー
ギャラリーLE DECO(東京都)
2017/11/15 (水) ~ 2017/11/19 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2017/11/16 (木) 19:30
記憶を抽出して他人の脳に埋め込む手法を発見した天才女子科学者が、自分の娘と姉を「生かし続ける」という物語。それが可能か、とか、埋め込まれた人は本当にその人になるのか、という問題は置くとしても、記憶が人格の全てを決めるわけではないという芝居(『プライムたちの夜』)を一昨日観たばかりなので、奇妙な一致感から不思議な感触に囚われた。姉との関係には秘密があるようで、それが明確にならない辺りにはやや不満がないでもない。もう少し分かり易いとよいのだが...。女優が多い芝居で、眼福ではあるし、役者陣もしっかりと役割を演じているのはよいが、若い劇団なので、小崎ととみやまが母と娘の関係に見えない(見えにくい)という問題はあるように思う。
骨と肉
JACROW
【閉館】SPACE 雑遊(東京都)
2017/11/15 (水) ~ 2017/11/20 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/11/15 (水) 20:00
大塚家具の父娘対決を題材にした緊張感ある会話劇。ここ数作で実話ベースの作品にシフトしたJACROWらしい作品と言え、実際にこういうことがあったのかな、と思わせてしまう物語の巧さは流石である。父を演じる谷仲恵輔と娘を演じる川田希の対決シーンは、ちょっとやり過ぎではないかと思うほどだが、だからこそタイトル通りの骨肉の争いが際立つ。エンディングもなかなかに秀逸である。役者陣も過不足なく存在感を示し熱演だが、宍戸香那恵の使い方はやや勿体ない印象である。
散歩する侵略者
イキウメ
シアタートラム(東京都)
2017/10/27 (金) ~ 2017/11/19 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/11/14 (火) 19:00
イキウメの代表作の一つだが、以前にも観て、前川作品でも最も救いのない作品に思えていた。今回観て、そうでもなかったのは何か変わったのだろうか。ただし、大窪の気持ち悪さは、前回と全く同じ印象で、この辺は彼の力量の為せる技と言えよう。内田慈が演じる妻が切ない。
プライムたちの夜
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2017/11/07 (火) ~ 2017/11/26 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/11/14 (火) 14:00
人間そっくりの会話もできるアンドロイドが発明された2062年という近未来を舞台に、人間であることの意味や、AIとの接し方、さらに存在意義を問う日本初演作。夫を母を妻を失った人々を救うためのアンドロイドが、かえって違和感をもたらしてしまうというのは起こりそうな話だが、それらの数々を経てのエンディングは秀逸。人間とアンドロイドを描き分ける役者に2人いるが、演出の力もあるのだろうけれど、見事だった。浅丘ルリ子恐るべし。