埋没
TRASHMASTERS
座・高円寺1(東京都)
2018/03/01 (木) ~ 2018/03/11 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/03/02 (金) 19:00
意欲作である。村の中心部がダムに沈み、離島を除いて最も人口の少ない村になってしまった高知県大川村の現在と、ダムに反対する住民が切り崩されていく60年代を交互に描く。同じ役者が時代に応じて親と子を演じるなどの工夫が巧い。国vs地域、多数派vs少数派という対立を描きつつ、個人の(ある家族の)物語として描いていくところが中津留の真骨頂だが、それが見事に発揮されている。そして、社会派と呼ばれていても、結論についてはニュートラルであることが多い中津留が、明確に少数派の立場で描いているのは珍しく、そういった意味でも意欲作である。古参の劇団員が出ないで、若手の男優と女優の川崎初夏が頑張っているが、みやなおこという逸材を得たことで素晴らしい舞台になっていた。今の沖縄をも意識させる作りも巧い。
今度は背中が腫れている
あひるなんちゃら
駅前劇場(東京都)
2018/03/01 (木) ~ 2018/03/05 (月)公演終了
満足度★★★★
前回の初日に、観客の応募の中から選んで付けたタイトルで、芝居をやるという試みが、いかにもあひるらしい。内容も、ある会社の社員の背中が次々に腫れる、という下らない(褒めています)内容で、いつもと同じで、ただただバカバカしいなぁと笑っていればよいという作品だった(繰り返しますけど褒めています)。宮本奈津美の切れ具合がいつもほどではなかったのは少し残念。
疫病神
ピヨピヨレボリューション
北とぴあ つつじホール(東京都)
2018/02/21 (水) ~ 2018/02/25 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/02/23 (金) 19:00
歌とダンスを軸にエンターテインメントをやるピヨピヨだが、今回は疫病神にとりつかれたと思った女子を右手が演じて、ちょっと渋いストーリー。登場人物が多いのだけれど、それぞれの個性や役割が描き切れていないのも、いつものピヨピヨらしい展開だが、400人規模のホールでサイリウムがホンの少し、というのは、ちょっと見栄えが冴えないのが勿体ない。
『人魚 ―死せる花嫁―』
鬼の居ぬ間に
王子小劇場(東京都)
2018/02/21 (水) ~ 2018/02/26 (月)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/02/22 (木) 19:35
人魚伝説が伝わる海辺の貧しい村。嵐が続いて、女を生贄に出さねばならないが…、という、いかにもありがちな物語。興味深い転換があるのかと期待していたがそれもなく、予想された展開のままというのは惜しい。役者陣がしっかりしているだけに、観るべき所はある。
このBARを教会だと思ってる(千秋楽満員御礼、終幕しました!ご感想お待ちしております)
MU
駅前劇場(東京都)
2018/02/21 (水) ~ 2018/02/26 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/02/21 (水) 19:30
作風が少し変わった感じがする。と言うより、作りつつ変化してしまったというところか。三軒茶屋にあるという設定のBARを舞台に、姉妹が会話する第1話、バイトの女の子とその子が目当てでもある帰宅拒否症の男4人のあれやこれやの第2話、BARの上階にあるガールズ・バーの女子がコスプレでドタバタする第3話、そして、姉妹の物語に戻る第4話という構成。第1話でマスターの慰めのシーンが「告解」みたいだとしてSNSに流れたことから「教会だと思ってる」ことになるのだが、終わり方は確かに「教会」的である。ただし、それは舞台全体を良く観ていないと分からないかもしれない。登場人物が多く、それぞれのキャラが立ち切っていないのが惜しい。古市・福永の姉妹の感触がよく、BARマスター役の成川や、ガールズ・バーのリーダー的存在の真嶋は、ハマっている。
卒業式、実行
Aga-risk Entertainment
サンモールスタジオ(東京都)
2018/02/17 (土) ~ 2018/02/25 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/02/20 (火) 19:30
主宰で作・演出の富坂の出身校、千葉県立国府台高校を舞台とした作品。よく似た『ナイゲン』を見たときにも思ったが、この系列の作品では富坂の思いが強すぎて、芝居が長くなる傾向がある。もちろん、ドタバタ的な大笑いの中で展開される、シチュエーション・コメディはよくできているが、もっとスッキリとできそうな気もする。富坂自身が劇中の齊藤的ポジションにいるように思う。そして、この系列では、結局「長い物に巻かれる」結末になっているのが惜しい。
むしろ『時をかける稽古場』のような芝居にシフトする方が良いのではないか。
近松心中物語
シス・カンパニー
新国立劇場 中劇場(東京都)
2018/01/10 (水) ~ 2018/02/18 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/02/18 (日) 13:30
2度目の観劇は千秋楽。ストーリーは単純なのだけれど、役者の力量と舞台遣い(美術+照明+音響etc.)で見せる芝居だと改めて思った。千秋楽なりの力の入り方は特に見られなかった、というより、最初に見たときから豪快な舞台転換と熱演が、千秋楽まで維持されていたように思う。宮沢りえは美しすぎるが、ややバカップル的な小池栄子・池田成志の組み合わせも、改めて絶妙だと思った。
夜、ナク、鳥
オフィスコットーネ
吉祥寺シアター(東京都)
2018/02/17 (土) ~ 2018/02/24 (土)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/02/17 (土) 18:00
福岡の4人の看護師保険金殺人事件に題材を取った大竹野の戯曲を、豪華な役者陣を揃えて、ミナモザの瀬戸山美咲が演出する。実話が題材なので、重たい舞台だが、戯曲がよくできていて、4人の看護師の役割が明確になっている。その点で、主犯格の松永が実に巧い。男性陣もそれぞれの役割をしっかり演じ、緊張感ある舞台になっていたが、不自然に笑う客がいたのは、若干の興醒めと言えよう。
スモール・フリーク・ショー
ひねもすほろすけ
シアターシャイン(東京都)
2018/02/16 (金) ~ 2018/02/18 (日)公演終了
未明かばんをとじた
らまのだ
小劇場 楽園(東京都)
2018/02/14 (水) ~ 2018/02/20 (火)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/02/15 (木) 19:30
昨日に引き続き、同じ作品のR40(平均40歳)バージョンを見る。セリフはほぼ同じだが、様々な役割を演じる女が出ず、完全な4人芝居。役者の年代もあるのだろうが、切実感というかリアリティみたいなものをより強く感じる芝居だった。その分、昨日は何回もあった笑いのシーンが少なくなっていたように思う。個人的には、こちらの方が好き。
未明かばんをとじた
らまのだ
小劇場 楽園(東京都)
2018/02/14 (水) ~ 2018/02/20 (火)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/02/14 (水) 19:30
R25(平均25歳)バージョンを見た。喫茶店でカバンをなくした女、そこに居合わせたフリーライターの男、そのフリーライターにチラシ作成を依頼する教員の男、そしてネイリストの女の4人芝居が基本だが、そこに様々な役割を演じる女を含めた5人芝居で、4人の男女が好きになったり別れたり、等のさまざまを演じる。会話劇だが、会話の途中に別の会話が割り込んで場面転換するのが南出の特徴と言えようか。物語の流れが分かりにくくなるギリギリの線で巧く作られており、なんだか不思議な感触が残る芝居だった。
衣衣 KINUGINU
metro
新宿ゴールデン街劇場(東京都)
2018/02/09 (金) ~ 2018/02/18 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/02/10 (土) 18:00
泉鏡花と古浄瑠璃にテキストを取り、月船さらら・後藤仁美の女優2人と結城座の人形で上演する70分。古い題材を現代化する天願大介の力量と、さまざまな女性を演じ分ける月船の才能には、いつも感服させられる。ただし物語は、残念ながら少し私のテイストではないなと思う。
ノスタルギヤ
Ammo
d-倉庫(東京都)
2018/02/07 (水) ~ 2018/02/12 (月)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/02/09 (金) 19:30
旧ユーゴスラビアが民族的対立から崩壊し戦争となる過程を、日本人のスポーツライター(モデルあり)と天才的サッカー選手の目を通して描く。Ammoの特徴として、個々の場面は丁寧に描けているのだが、全体を通して、何故その題材を描くのか、という点が明白でないということがある。今回も、いい芝居だと思いつつ、何故ユーゴスラビアの問題を、という疑問が消えない。また、民族的対立を描くのであれば、日本人が演じるのであるから、民族が一目見て分かるシンボルが欲しい気がする。唯一孤立した存在であるロマ族を演じた前園の秘めた思いの表現はなかなかのものである。
鵺的トライアルvol.2『天はすべて許し給う』
鵺的(ぬえてき)
コフレリオ新宿シアター(東京都)
2018/02/07 (水) ~ 2018/02/13 (火)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/02/08 (木) 19:30
3人の狂った男達と、その男たちに人生を狂わされた女達と、その周辺の人々の、みんなが狂っていく様子を、ダークに描いた「鵺的の真髄」的作品。ダークさにかけては、ある意味で鵺的以上のモノを持つ elePHANTMoon のマキタカズオミが演出し、最小の表現で最大の効果を上げるような濃密な舞台ができあがっている。普通の人々が、いかにして異常者になりうるかというテーマがあるように思う。
女優陣が皆美女で、主宰・高木登の選球眼には敬服するし、最前列中央での観劇は、眼福と呼ぶしかない。
「3483」
電動夏子安置システム
駅前劇場(東京都)
2018/02/07 (水) ~ 2018/02/12 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/02/07 (水) 19:30
ツイッターで「電夏が社会派になった」という冗談っぽい書き込みを読んで興味深く観たが、確かにそうとも言える作品だった。と言っても、いつもの電夏の「勘違い」系の作品で爆笑の連続なのだけれど、場所も登場する民族も謎で、タイトルさえ謎で、その謎が解けたときに「社会派」的雰囲気が漂う。エンディングを背負う新野アコヤを観て少し涙してしまった。
かさぶた
On7
小劇場B1(東京都)
2018/02/03 (土) ~ 2018/02/11 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/02/05 (月) 19:30
異なる新劇系の30代の女優7人が集まったユニット(今回は渋谷はるかが別公演で欠席で6人)が、あえてセリフを捨てて、ディバイジングという手法での公演。あえて身体に賭けてみるということで、やはりセリフらしいセリフはなく、ダンスというよりムーヴィングでの表現だが、30代であること、女であること、が自然と滲み出てくる舞台だった。興味深く観た。
『カザカミ』
kazakami
王子小劇場(東京都)
2018/01/31 (水) ~ 2018/02/04 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/02/03 (土) 19:30
チラシに書かれている通りの物語で、鬱で休職した女性の見た一種の夢落ち的な展開。ありふれた場面の連鎖で、あまりにも現実にありそうなので、逆にビックリしたが、「法則」という役名のレベッカがいるあたりが、夢だと伝えているのかもしれない。久々に舞台で見た石井舞の安定感は流石だと思う。悪い人はいない、という展開だが、意図の「悪」と表現形の「悪」は区別されるべきで、今は表現形の「悪」が許されていない社会だと思う。白を基調とした抽象舞台と、照明が美しい。
「存在と証明1」とあるのだが「2」はあるのだろうか。観てみたいと思う。
ドアを開ければいつも
オスカープロモーション
テアトルBONBON(東京都)
2018/01/31 (水) ~ 2018/02/04 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/02/03 (土) 13:00
みそじんの鶏由宇お座敷公演で何バージョンか観ている作品だが、劇場での公演は初めて。役者が変わるだけで雰囲気の変わる芝居だと分かっているので、興味深く観た。母の七回忌に久々に集まった四人姉妹の一夜の出来事だが、軸になる次女を演じた田崎那奈が立ち上がり固い感じがしたものの、すぐによくなり、元々がよくできた戯曲なので、気持ちよく観ることができた。笑える演出になっていたと思うのだが、客席が思いの外笑わなかったのは、意外だった。
iaku+小松台東「目頭を押さえた」
iaku
サンモールスタジオ(東京都)
2018/01/30 (火) ~ 2018/02/04 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/01/30 (火) 19:30
山村で元は林業が中心だった地域に残る葬送の習俗「喪屋」。そんな村に住む女子高生2人の心の揺れと、取り巻く人々の物語を、いかにもiaku(横山)らしく描く。物語的には予測可能な展開とも言えるが、喪屋という習俗には違和感を感じる。しかし、それが実際に行なわれるシーンで一気に説得力を持つというのは演劇の力と言えよう。中心となる女優2人を始め、役者陣もしっかりと演じて、優れた芝居が立ち上がったように思う。
『LOVE』Chapter2
シンクロ少女
OFF OFFシアター(東京都)
2018/01/29 (月) ~ 2018/01/31 (水)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/01/29 (月) 19:30
名嘉友美はどうしたのだろう?相変わらず性的な話題はいっぱい出るが、あれほどダークな面を強調する芝居をやっていたのに、本シリーズでは純情系路線に転じている。しかし、それで笑わせてくれる。櫻井と名嘉のコンビもよいが、おがわじゅんやとたなか沙織、そして、徳橋みのりのポジションが絶妙である。一応はchapter1と続いた話で、1話完結ではあるが、chapter1を観ていた方がよく分かる。1話のあらすじが公開されているので、観てない人は読んでから観に行くことをお勧めしたい。そして、エンディングは確実に chapter3を観たくなるような終わり方。