カツの観てきた!クチコミ一覧

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トランス

トランス

中野成樹+フランケンズ

STスポット(神奈川県)

2008/11/07 (金) ~ 2008/11/09 (日)公演終了

満足度★★★★★

タダフラだ!
横浜へ足を伸ばしただけのかいがあった!
確実にそう思わせてくれる舞台でした。
東京デスロック多田淳之介さんとフランケンズ4名がガップリと組み合った傑作で、どちらの色も良くでた、演劇の楽しさ、魅力がギュッと詰まった75分でした。
演劇が好きだったら、この演劇の可能性を追求した舞台は必見!(と言ってももう終わってしまってますが・・・)

ネタバレBOX

既に江古田公演のレビューでも記されてますが、最初多田さんが開演前の挨拶をされて、その時に「では、この『トランス』という作品のあらすじを説明します。」と始まります。
まずここで客席から笑いが!
で、そのまま登場人物と作品解説を続けて、「それでこの作品のオチは・・・」とオチを説明しはじめます。これには場内でまた笑い!
「・・・で、最後は何となく良いことを言って終わる、という話です。」という前説でした。
あらかじめ物語をオチまで説明するデスロックで良くみられる方式で、見るべきは物語ではなく、舞台そのものだ、という多田さんの意図が凝縮された前説でした。

舞台はほぼ素舞台。小道具もセットもなく、ライティングも非常に簡素です。


今回は東京デスロックの「ジャックとその主人」の時に取上げた「目隠し」を掘り下げて、最初から最後まで役者は目隠しです。
入ってくるときからアイマスク着用で、手探りで入ってきます。
アフタートークで語られていましたが、目隠しした上に更に目をつぶっているそうです。

おそらく江古田より狭い空間のSTスポット。
ここでの上演しか見ていないので比較できないのですが、狭い空間を目隠しした役者さんたちが4名でしっかりと埋めているところはさすがでした。
演技は近代のアメリカ戯曲をよく取上げるフランケンズらしい、骨太のしっかりした演技で、見ていて安心感があるのだけど、そこに目隠しという不確定要素を足すことでなんとも言えない緊張感を生み出す事に成功しています。

3名の登場人物の「トランス」を4名のフランケンズでどのように上演するのか気になっていましたが、それを解決する方法が目隠しだったそうです。
最初は誰がどの役、というのは決まっています。
登場人物の語りをしていきます。

途中で二重人格の男のもう一方の人格が現れます。
これが別の役者さんが演じられて、それで舞台上に4名の役者が登場することになります。
「私は天皇だ」と語る彼。
「自分は南朝の第○代天皇であり、皇居に行かなければならない。北朝の間違った血筋がいる場所ではないのです。」と語るあたりは鴻上さんの書いた戯曲ですが、かなりヤバい、天皇の血筋と系譜の問題に触れていて、今でも渡辺文樹監督の「天皇伝説」という映画でも触れられているタブーの問題でもあり、これが15年前に書かれたというあたりはかなり衝撃でもあります。
この、天皇として登場する方は、最初しばらく隅で怯えているだけですが、アフタートークでは、あの何も語らずに怯えているシーンが実は一番疲れるそうです。(笑)

その後3名の人間関係が複雑に入り乱れ、多田さん得意の抽象的な演出と
フランケンズの骨太な語りが組み合わさって、緊迫した舞台が続きます。

そして、だんだんと「誰がどの役」というのが崩れていきます。
このあたりは戯曲のクライマックスで、実は精神を病んでいたと思っていたひとが医師で、先生と思っていたのが患者だった、というドンデン返しが繰り返されてゆくのですが、このあたりは誰がどの役になっているのか見ていてわからなくなってしまって、役によって喋り方に特徴ががあるわけでもないし、小道具を使って「これを持っているのがどの役」と言うわけでもなかったのでドンデン返しの効果がうまく伝わらなかったと思います。

目隠しを最後に外して、まぶしそうな目線をのぞかせたところで舞台は終わります。
見ていた側からすると、全てが夢だったような、そんな印象を受けました。


アフタートークは中野茂樹さんと夏目慎也さんによるもので、それに多田さんがリアルタイムでダメ出しをするという企画で、楽しみにしてました。
でも、これはちょっと不発だったかな?
いや、夏目さんのトークという時点で既に面白かったのですが、ダメだしが生かしきれてなかった気がします。
ダメだしというのは、「そこは違うからもう一回こんな感じでやってみて」というダメだしの仕方でした。

「もしこの『トランス』で、鴻上さんと多田さんと、両方から同時にオファーが着たらどちらを選ぶか」という中野さんの質問に、夏目さんが「そうですねえ・・・、鴻上さんかなあ」というのに、「それは正解なんだけど、多田と答えるバージョンも見たいのでそっちでやってみて」というのは面白かったです。
『リズム三兄妹』 / 『はやねはやおき朝御飯』

『リズム三兄妹』 / 『はやねはやおき朝御飯』

岡崎藝術座

こまばアゴラ劇場(東京都)

2008/10/30 (木) ~ 2008/11/10 (月)公演終了

満足度★★★★

バカに振り切れると凄い世界が生まれる・・・
もうどこをとってもバカバカしくて楽しい!
どんな劇団とも違う、岡崎藝術座だけの世界がそこに作りだされていました。
「三月の5日間」新百合ヶ丘公演ではじめてみたけど、毎回アイデアに溢れたバカバカしい凄い世界を作っているのですね。
リズム三兄弟はチラシの宣伝文句からしてどうかしちゃってる感があったのですが、それを超えてました。

大好きです!

ネタバレBOX

最近「演出」って何だろうと考えさせられる舞台をよくみます。
ハイバイ「オムニだす」、フランケンズ「トランス」。

リアルにシーンを再現することだけが演出ではない、と言うことは良くわかっているけど、岡崎藝術座の場合戯曲のエッセンスを効果的に表現するための手法としての演出ともまたちょっと違う気がします。
演出で遊ぶ余裕というのが見えます。
その遊びが尋常ではないです。

過剰な遊びが物語を更に際立たせて、むしろ演出が主役というくらいのところまできているのが楽しいです。
今回、便所で脱糞していると、落ちたのを表現するために財布から小銭をだして「ジャラジャラジャラ」と落としていました。
「おつり」が来ないので、汲み取り式便所ではないってことですね。(笑)
オープニングがもっと引き締まったらもっと良かったと思います。

次回どんな演出を見せてくれるのか、楽しみです。
テキサス芝刈機

テキサス芝刈機

クロムモリブデン

青山円形劇場(東京都)

2008/11/06 (木) ~ 2008/11/09 (日)公演終了

満足度★★★★

劇団の勢いに乗った作品
ついこの間THEATER/TOPSでやっていたと思っていたクロムモリブデン。
この早いスパンでの新作で、しかも充実した内容に劇団の今の勢いを感じました。
正直なところ、中盤からちょっとダレたと思うけど、ラストへ向けて怒涛の勢いで巻き返してゆくところはさすが!

ネタバレBOX

板倉チヒロさんの裏返った声が耳障りだなあと思っていたけど、あれは伏線だったのですね。
名探偵コナンだったのか。コナンの大人を気絶させて声だけ吹き替えるというのを実際やられるとなんだか残酷で滑稽なんですね。

ところどころ音楽が被さってセリフが聞きづらかったところがあったのが残念でした。
最後電車の中の人たちがどんどんゾンビ化してしまってどうなるかと思ったら、皆で力を合わせて扉を開けるあたり、セットの使い方のうまさもあって感動的でした。
図書館的人生vol.2 盾と矛

図書館的人生vol.2 盾と矛

イキウメ

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2008/10/24 (金) ~ 2008/11/03 (月)公演終了

満足度★★★★

完成度の高いオムニバス
個々に見ても完成度がとてつもなく高いオムニバス4本立て。
なんとも贅沢な140分でした。
長いんだけど、それぞれはちょうど良い長さだし、思わず見入ってしまう。かなりエンターテイメントな作品たちでもありました。

最近粗悪な作品を集めて「オムニバス」「短編集」として、上演コマ数を増やす団体が多い中、一回の入場でこれだけレベルの高い作品を4つも見れるという贅沢な作りに感謝。

ネタバレBOX

「亡者」の箱を沢山置いて、それを積ませては破壊しての行為を繰り返す鬼がおかしかった!
最後の思わず本音をもらすところとそれによるどんでん返しがまた良かった!

「懐石」は好みに合わなかったな。ホラーですかね。後味の悪さが何とも言えず嫌な感じ。

「帝王」の感情を顔に表すことが出来なくて、代わりに身体の行動に出てしまうという設定が不思議な世界を作っていました。
なんとまあユーモアに富んだ作品なんでしょう!
夫婦の間にあった秘密が、それを明らかにすることによって逆に世界中で誰よりも彼の事を理解できるようになる、という逆転がとても暖かい終わりかたでした。

「幸福」は、見ると幸福な気持ちに取り付かれてしまい、自分を見失ってしまう不思議な隕石の話。
幸福によるテロだなんて、凄い発想だなあ。
幸福を与えられることで逆に不幸になるというパラドクスがイキウメらしい。
でも、あの思わず石を落としてしまって終わるというあの終わり方はちょっと安易な気がするのだけどな。
でも、他に良い終わり方もない気もするけど。

「懐石」以外なら☆は5つだったのだけどな・・・。
0号

0号

ゲキバカ

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2008/10/30 (木) ~ 2008/11/04 (火)公演終了

満足度★★★★

素晴らしいエンターテイメント
前作が自分的に受付けなかったのだけど、今回は現代劇ということで改めて期待して鑑賞。
すっばらしい!

歌あり踊りあり殺陣あり、笑いあり涙あり・・・。
アンサンブルが入って、殺陣も殺陣要員が、踊りは踊り要員がしっかり入って、ゴージャスな仕上がりの舞台になっています。
140分の長さを感じさせない程の、誰もが理屈抜きに楽しめる作品に仕上がっていました。
BIG TREEすら狭いと感じさせる劇団コーヒー牛乳。そろそろ次のレベルに行っても良いくらい完成度が高かったです。

ネタバレBOX

「幽霊」のあたりをうまく使って、巧みに伏線を張ってきれいにまとめられてます。
誰が見ても文句を言いようがなく、笑いのレベルも感動のレベルも高いです。
ただ、誰もが見れる作りだけに、ちょっとありきたりにまとまり過ぎている部分も・・・。

剣さんが最高でした!
ハローワーク

ハローワーク

国分寺大人倶楽部

王子小劇場(東京都)

2008/10/30 (木) ~ 2008/11/03 (月)公演終了

満足度★★★★

自然な群像劇
リアルで自然な会話を中心とした群像劇。
台本があって喋っているように見えない部分も多いんだけど、ちゃんと台本があるのだろうなあと考えると、役者さんのレベルの高さを感じます。
見ていて、舞台上の役が役ではなくてひとりの人間として見えてくる感じで、目指していることは充分成功していると思います。

話は大きな事件は起こらないのに何で見ていて飽きがこないのか不思議なくらい、よく練られた、よくできた会話劇でした。
ひとりの人にスポットを当てないで、それぞれに等しくウェイトをかけたのが、物語に捕らわれないで何かを描き出す方向性にフィットしていたと思います。

ネタバレBOX

「仕事」「労働」というテーマにした割にはバイト君たちのダラダラした部分が目に付いて、この工場大丈夫なのか?と思ってしまう。
でも「仕事」ばかりに話を持っていってしまうと見ていてつまらなくなってしまうので、その中間にいるフリーターが主軸になっているのかな。
働くことという部分では、描き方がステレオタイプだったのがもったいないけど、それは当日パンフにも書いてあった通り、働いたことのないひとが書いた働く話だからかな。

おまけの「ジャンボ尾崎豊」が爆笑もので、短い作品だけど大好きでした。
こんなことも出来るのね。
正に現代口語コント。
最初の役者と演出の怒鳴りあいがまずおかしい!
「大体俺は多摩なんて行ったことないんだよ!」には爆笑でした。
「ジャンボ」「尾崎」「豊」の三兄妹が描くしんみりした話を主軸としつつ、そのしんみり度合いがその他の演出によって逆におかしく見えてくるうまい作り方。
ずっとこの方向性で行ってくれとは思わないけど、毎回おまけ程度に見たいな。
ジャンボ兄さんがふたりの弟の名前を呼ぶ時の「尾崎、豊」だけで爆笑なんだから。
ただ、場内でも最初に言っていたけど、本編の余韻を大切にしたいひとは見てはいけない作品です。
プラスチックレモン

プラスチックレモン

アマヤドリ

吉祥寺シアター(東京都)

2008/10/31 (金) ~ 2008/11/05 (水)公演終了

満足度★★★★★

リリカルで美しい
最初始まった時はチェルフィッチュ?と思ってしまいました。
日常的なセリフと説明的なセリフを交互に出しつつ、動く。ただ動くだけでなく、身体表現。

「一万年」という途方もない時間を描き出すために、物理学と哲学の情報量でしっかりしたバックボーンを作り出します。これが説明的でダメ、というひとはいるかもしれない。
でも、個人的にはとても面白い観念で、それ自体も楽しめました。

「絶対的な孤独」を前にしていかに生きるか。
難しいテーマを丁寧に丁寧に紡いでいました。

役者さんはどのひとも印象的で、誰かに偏らずにこれだけ印象に残らせる脚本と役者の力量には圧倒されました。
ちびっこドーナツのふたりとチョウソンハさんは特に素晴らしかったです。

前作が宗教的だったし作り的に雑に思えたのだけど、今回のひょっとこ乱舞はとても丁寧な作りで自分好みの作品でした。

ネタバレBOX

一万年、世界にたったひとりで過ごすという絶対的な孤独は死よりもつらいと思う。
だからその前に自殺を選ぶというのがよく分かります。
全てを捨てて一緒に連れて行ってほしいというのも素敵です。

一万年後、彼らは何を見たのだろう?と考えさせられる舞台でした。
終わり方もしっかり作りこまれていて好きでした。

舞台美術、衣装、照明、音楽、全てが一体となってひとつの世界を生み出すことに成功してました。
笑うフレゴリ

笑うフレゴリ

電動夏子安置システム

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2008/10/23 (木) ~ 2008/10/26 (日)公演終了

満足度★★★★

パズルのように組み合わさってゆく快感
電動夏子はどの劇団とも違う、ある一定のルールに縛られた舞台を作ってそれを笑いに昇華するという職人芸を見せてくれます。

今回は「目の錯覚」。
最初は意味がわからないシーンが延々展開されているのだけど、それが話が進むに従ってパズルのように組み合わさり解明されてゆく快感。
これは電夏でないと味わえない!
しかもそれが上質な笑いに転化されてるのだから凄い。
この丁寧な作劇が魅力です。

これから3ヶ月連続公演。
3ヶ月連続で見れるのが嬉しいです。

幸せ最高ありがとうマジで!

幸せ最高ありがとうマジで!

パルコ・プロデュース

PARCO劇場(東京都)

2008/10/21 (火) ~ 2008/11/09 (日)公演終了

満足度★★★★

本谷さんらしかったよ
とっても本谷さんらしい作品で、自分的には大満足です。
永作さんがちょっとキレイすぎるかな?

ネタバレBOX

29歳の兄の壊れっぷりがおかしかった!
「インテリジェンス!」と言ってメガネを投げつけるあたり爆笑。あと義妹に「パンツみせて」とか。
役者さんがどれをとっても素晴らしい。
前田亜季さんを舞台で初めて見たけど、声が良く通って良いです。

「壊れる理由のあるひと」たちを羨ましがる、「壊れる理由のない壊れたひと」。
現代的なテーマです。
ゾワゾワとさせられた。
ぼくのおうさま

ぼくのおうさま

アイサツ

早稲田小劇場どらま館(東京都)

2008/10/24 (金) ~ 2008/10/27 (月)公演終了

期待してたけど・・・
「15minutes made vol.4」で気に入った団体だったので見てきました。
でも、期待していたものとは随分違うものでした。

「リアルなコミュニケーション」というのは今の演劇界では特に売りにはならない謳い文句で、「15minutes made vol.4」ではそんな中で表現されたズレた感覚や笑いが面白かったのに、今回は作劇で失敗している印象。

これを見てしまうと「15minutes made vol.4」は結局役者さんが良かったから面白かったのかなあ、と感じてしまうのでした。

貧乏が顔に出る。

貧乏が顔に出る。

MCR

劇場MOMO(東京都)

2008/10/21 (火) ~ 2008/10/26 (日)公演終了

満足度★★★★★

おかしくも味わい深い
今回で3回目のMCR。
今週は見たいものが沢山あったけど、とりあえずMCRは無条件で見たい劇団です。

30代のダメ男3人のグダグダ貧乏友情物語、と簡単にはまとめ切れない深い舞台でした。
MCRの軽さが好きだ、って人には違和感があるのかもしれないですが、個人的には相変わらずの笑いだけでなく、しっかりとしたテーマやとても巧妙な伏線の張り方、キャラの生かし方に大満足でした。

ネタバレBOX

オープニングはかなりグダグダな感じで、役者たちも素で笑っているような感じで大丈夫かな、と思ったり。
チェーンソーを何の脈絡もなく出してくるのも、それに「青年団って書いてあるぞ!」っていうのにも大笑いしつつも、役者半笑いのやりとりに不安を覚える。でも、チェーンソーがあんな風に最後につながっていくのですね!
大事な思い出や感覚と引き換えにお金を渡すというリアルな地蔵の存在もおっかしい、と笑っていたら、最後ああやって物語が一点に集約されていくとは。。。

役者さんの演技はまだ安定していなかったけど、でもそれぞれの味が出ていて良かったです。
中川さんのキャラがまたダメダメで、出てくる人みんな、とにかく駄目な人ばかりで、でも愛すべき駄目人間たち。
うーん、好きだなあ、こういう話。
あなたと私のやわらかな棘

あなたと私のやわらかな棘

ジェットラグ

新宿シアタートップス(東京都)

2008/10/17 (金) ~ 2008/10/26 (日)公演終了

満足度★★★★

楽しいアトラクション!
柿が好きなので、中屋敷氏が他人の脚本でどう演出するのか興味津々で見てきました。
今年良く見る初音さん始め、役者さんたちが中屋敷色にしっかり染められた舞台でした。結構人数は出ているけど、作品の雰囲気としては少人数の「傷は浅いぞ」に近いかなと感じたり。役者さんが同時に出ている人数が少なかったから、大人数の時のようなアンサンブルがなかったからかな?
最前列で見れたので、とにかく初音さんが可愛くて素敵で目を奪われてしまいました。
演技で一番光っていたのは、登場シーンは少なくても深谷さんだったな。声の張りと凛とした表情が、他の役者さんとは違う空気を生み出してました。

脚本はシンプルなものだけど、シンプルなだけに演出に遊びの余裕があって、結果的に中屋敷色が出せたのかな?

自分にとっては、期待を裏切らないアトラクションのような楽しい舞台でした。

JANIS

JANIS

DULL-COLORED POP

タイニイアリス(東京都)

2008/10/08 (水) ~ 2008/10/13 (月)公演終了

満足度★★★

ちょっと違和感
JANISを舞台化したかったという谷さんの思いが、見事に歌に乗ってました。
演奏だけだとあそこまでジーンとこなかったと思うけど、ちゃんとドラマと合っていて、それが歌を更に印象深いものにしていたと思います。
ただ、劇団の役者さんは別として、他の人たちの演技は正直違和感がありました。演出の指導なのかもしれないですが、古いアメリカ戯曲をイメージさせる言葉回しと振りが安っぽい印象を与えてしまってました。
ただ、ライブと舞台の融合と言う試みでは、珍しく成功していたと思います。

肝心のジャニスのドラマが薄くて軽いのが弱点でしょうか。
でもジャニス役の武井翔子さんの演技は良かったです。あと千葉さんのドラムが良い。マネージャー役の方もとても印象に残ります。
それ以外で劇団員じゃない方は、ちょっと・・・。

ネタバレBOX

最後の最後にジャニス・ジョップリン本人の歌うレコードをかけてしまったのは、あれは失敗ではないでしょうか。
せっかく武井翔子という姿にジャニスをダブらせていたのに、本物の歌が流れては流石に敵いません。「本物のジャニスの歌声は凄いなあ」と現実に引き戻されてしまいました。
The Diver

The Diver

世田谷パブリックシアター

シアタートラム(東京都)

2008/09/26 (金) ~ 2008/10/13 (月)公演終了

満足度★★★★

外人演じる源氏物語
あまり派手な舞台美術ではなくて、シンプルにまとめあげられたセット。日本の古典を演じるならちょうど良いです。
野田秀樹さんはこれくらい好き勝手に演出した方が面白いですね。1時間半にまとめられた源氏物語と現代のサイコサスペンス。
抽象を多用することで、凄くイメージが膨らんで、舞台の何倍ものスケールが感じられました。

ネタバレBOX

源氏が次々と女を変えてゆくプレイボーイぶりを見せるシーンで、まるでテレビ番組のバラエティみたいな演出をしていたのが笑えました。特に外人演じる英語のショーというのが本場のバラエティを感じさせてとても軽快で楽しかったです。
そまりえ

そまりえ

黒色綺譚カナリア派

ザムザ阿佐谷(東京都)

2008/10/03 (金) ~ 2008/10/13 (月)公演終了

満足度★★★★

初カナリア
前からずっと見たいと思っていたけどタイミングが合わなくて見れなかったカナリア派。ようやく見ることが出来ました。
昭和初期をイメージさせるこの作品。それぞれがわざとミニチュアサイズで作られている舞台セット・小道具が美しい!
音楽もセンス良くて、始まる前からワクワクさせられました。

ネタバレBOX

事前に情報が入ってしまっていたけど、男役を女性が女役を男性が演じていました。これが見事にそれぞれの性別を際立たせる事に成功してるように感じました。特にこの作品は「男性であること」「女性であること」に重要な意味があるので、良かったと思います。
最後の方でワンシーンだけそれぞれの性別に戻してそれまでの舞台のシーンを演じさせた演出の意図がちょっとわからなかったけど。アフタートークとかあったら話を聞きたかったな。

日替わりゲストはモダンスイマーズの津村さん。他の役者さんたちから抜けた存在感はさすがでした。妖艶で謎めいたな女性を魅力的に演じていました。この舞台では一番印象に残った役者さんだった、というのが皮肉です。。。
でも、他の役者さんも素晴らしかったです。
芝原弘さんの贋作女流画家の、ためてためての最後の独白は舞台全てを持っていってしまう力強さ。
向井孝成さん演じる尽くす妻は、表情豊かでコミカルで、一番おいしい役でしたね。
赤熊の弟子青木を演じた升ノゾミさんは、若さがあって活き活きとしていて見ていて気持ちよかったです。ただ、その恋人役の男性の役者さんが、セリフを言うだけでいっぱいいっぱいな感じがあったのが残念でした。

舞台、衣装、照明、音楽。全てが一体となって作り出される。
舞台が総合芸術だなとかんじさせてくれる歎美な作品で、すっかりカナリア派のファンになってしまったのでした。
ハート

ハート

掘出者

王子小劇場(東京都)

2008/10/10 (金) ~ 2008/10/14 (火)公演終了

満足度★★★★★

繊細で傷つきやすい
静かに始まりそのまま静かに展開してゆく舞台。
でも、とても繊細で傷つきやすくて、暖かくて。
「他人を理解する」「他人とつながる」ことがテーマのお話だけど、実際は理解できず、理解されず、ちょっとしたズレが原因でお互いを傷つけていってしまう。「つながりたくない他人」とも実はつながっていたりする。
子供から主婦、生徒・保護者と学校、息子と父親。様々な人間の「関係性」を丁寧に丁寧に描いた、残酷なんだけど暖かい舞台でした。

大澤夏美さんという女優さんは見る人をひきつける魅力があります。
前半は彼女がひっぱり、後半はもう一人の女優き北川麗さんがひっぱりますが、こちらもとても魅力的。
どの俳優さんも魅力的で、その俳優の魅力がこの作品に人をひきつける魅力になっていると思います。

前回公演で始めてみて素晴らしいと思ったけど、今回を見て劇団の魅力を確信しました。
多くの人に見てもらいたい公演です。

ネタバレBOX

役者さんは固定の役を演じる事はなくて、皆さん次々と役を入れ替えていきます。
小道具を使って、「小道具=役」という感じで切り替えてゆくので、見ていて分かりやすいけど、この間の4×1hの「ひとさまにみせるもんじゃない」の「ポーズ=役」を思い出してしまった。最近流行りなのかな?
でも、こちらは力技ではなく演技が繊細なので、単に小道具の入替えだけではなく、はっきりと役も入替わっている事が分かります。
お姉ちゃんを演じた後弟を演じて、その後はお母さんと同じ役者が続けて演じても、多分小道具の切替なしでも分かるくらいにしっかり演じ分けてます。

繊細だけど笑ってしまうシーンも多くて、見ていて飽きるところがありませんでした。細かい人間関係の機微が丁寧に描かれていて、その関係の在り方、崩れて行き方から目が離せませんでした。

無邪気な子供を笑顔で演じつつ相手を傷つけたり傷つけられたり、主婦同士の小さな仲間社会での陰口など、とにかく丁寧に表現されてます。

ステージが白で統一されていて、役者さんが黒の衣装で統一されていたけど、「黒」というのは死を意識させる色なので、もしそういった意味がなく、単に舞台上のコントラストで色を選んでいるなら、黒はやめた方が良いような気がします・・・。繊細な舞台だからこそ、そう言った事まで考えてしまいます。

あと、役者さんは総じて良かったのだけど、その分赤星さんという方だけはどうも表情が硬いのが目立ってしまった。。。

舞台セットも、派手ではないけど暖かい照明もとても良かったです。
葡萄

葡萄

THE SHAMPOO HAT

ザ・スズナリ(東京都)

2008/09/10 (水) ~ 2008/09/23 (火)公演終了

満足度★★★

ありふれた世界の日常
期待が大きすぎたせいか、ちょっと肩透かしを食らってしまった感じ。
舞台はスズナリにひし形に作られた和風の居間。そこで展開する何気ないありふれた日常の景色。
・・・かと思いきやそうでもなく、段々とズレた世界があらわになってくるあたりの繊細さはさすがです。
でも、見終わっての感想は「だからどうした」という感じで、物足りない。
ちょっとおとなしく作り過ぎたように感じました。

演劇LOVE2008 ~愛の行方3本立て~ 

演劇LOVE2008 ~愛の行方3本立て~ 

東京デスロック

リトルモア地下(東京都)

2008/09/12 (金) ~ 2008/09/23 (火)公演終了

満足度★★★★★

発情期「HERE I AM - ドン・キホーテがやってくる!-」
3作とも見るつもりですが、まず一番見たかったこいつを鑑賞。
夏目さんの一人芝居ということで楽しみにしていたけど、期待を裏切らない面白さ!
ただ、これを演劇と呼んでよいのかコントと呼ぶべきか、正直悩んでしまうところ。ただ、面白さは一級品です!
東京デスロックの舞台でしか感じられないワクワク感が満載でした。

ネタバレBOX

途中、一度ズボンを脱いだらひもが中に入ってしまって結べなくなるハプニングがあったけど、舞台袖にいた多田さんのベルトを借りて難を逃れてました。。。
そんな苦笑するような場面もひとつのシーンとして受け止められてしまう土壌が東京デスロックにあります。
アフタートークがまた面白くて、今回の芝居は一人芝居なので、夏目さんの部屋でふたりきりで作っていて、最初は人形をドン・キホーテにみたてていたけど、それだと客席から見づらいという決定的な欠点があって、今回の客席に向いて語りかけるようなスタイルになったとか。
あと、夏目さんに客演の機会を増やすための舞台なので、どこかの劇団で使ってやってください、と言ってたのがおかしかったです!
東京デスロック自体が夏目さんのうだつを上げるために作られた、壮大なギャグだった、と自分で語ってるあたり、人柄が出てて凄く良かったです。
シャープさんフラットさん

シャープさんフラットさん

ナイロン100℃

本多劇場(東京都)

2008/09/15 (月) ~ 2008/10/19 (日)公演終了

満足度★★★★

ブラックチーム鑑賞
昨年の「わが闇」が余りにも良かったため、期待して鑑賞。
笑いを盛り込みつつも、作家の苦悩やそれを取り巻く人物たちの悲喜こもごもを描いた素敵な作品でした。大倉孝二さん、気難しくて難解な役所を好演していて素敵でした。マギーが味のある演技で舞台に彩りを与えてくれます。

ただ、この内容にしては長いですね。。。
2時間40分、休憩なし。

でも、ホワイトチームも見る予定なので、こちらも楽しみです。

ネタバレBOX

バブル期を舞台にした、自伝的舞台ということで、衣装なども古めかしくて、雰囲気を良く出していて良かったです。
わがままな主人公が何かをつかんだかに見えた時に訪れる唐突な悲しい結末が痛々しかったです。

ただ、登場人物が多くてそれぞれにドラマを盛り込んだので、全体としてみると散漫な気がしてしまったのは残念。
もう少し話を絞って、2時間にまとめたほうが良い作品になったと思います。
[EKKKYO-!]  冨士山アネット・快快・劇団山縣家・ピンク・夙川アトム・FUKAIPRODUCE羽衣参加!

[EKKKYO-!] 冨士山アネット・快快・劇団山縣家・ピンク・夙川アトム・FUKAIPRODUCE羽衣参加!

冨士山アネット

ザ・スズナリ(東京都)

2008/09/02 (火) ~ 2008/09/03 (水)公演終了

満足度★★★

垣根を越えた見本市
快快が出ると知って、平日2日開催にもかかわらず迷わずチケットを予約した冨士山アネットのイベント公演。

お笑い、ダンス、演劇、ミュージカル(?)。ジャンルを問わずに詰め込んだ賑やかなイベント。会場は超満員でした。ギリギリに行ったけど、最前列桟敷席で、長時間の鑑賞にはきつかったです。

15 minits madeと違ってジャンルを問わないイベントなので、自分の感性に合う合わないでつらかったりするのもあって、難しいなと思いました。

ネタバレBOX

快快「いそうろう」はまた変わった演出でした。
ひとりがずっと2人分の台詞を語ってます。
でも、舞台にはもうひとりいます。
最初は後から出てきた方がもう一方のセリフを言うのかと思ってたけど、終始ひとり芝居、ひとり語りが続き、もう一方はその状況を言葉の変わりに身体をフルに使って表現して伝えてます。
内容的にはまあまあの作品かな?
「霊感少女ヒドミ」「ジンジャーに乗って」には全くおよばないけど、快快らしさは見れて良かったです。

もうひとつのお目当てピンクはアゴラでやったピンク祭の短縮版のような内容でした。
でもやっぱり楽しい!
意外と短かったので、もっと見たかったし、新しいものを見たかったな。

夙川アトムさんは、パフォーマーというよりは芸人さんでした。

山縣家は初見でした。こののんびりした雰囲気がハッとする瞬間があって、これが本当の親子、家族でやってるっていうのがおかしくてしょうがなかったです。
お母さんが踊りだすのがおかしかった!

FUKAIPRODUCEはこの間のアゴラでの公演を見れなかったので、ようやく見れたけど、個人的にはあまり楽しめなかったです。
性をテーマにするのはありだし、ミュージカルにするのもいいんだけど、笑いの感性が合わなかったようでした。
逆にちょっと引いてしまった・・・。

冨士山アネットも初めて見ました。
映像を使った実験性と、コンタクトインプロビゼーションをベースとした身体の使い方は面白かったけど、それだけかな?
ハッとするものがなかったのが残念でした。
クッションを使いつつプロレスの技を小出しにしてたのは面白かったですけどね。
クッキーがどうとかいうのが特に興味なかったのと、終盤で足腰が痛くて集中して見れなかったのが残念。

次やる時は、もう少し企画の方向性を明確にした方が良いように思います。

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