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二人の主人を一度に持つと

二人の主人を一度に持つと

加藤健一事務所

兵庫県立芸術文化センター 中ホール(兵庫県)

2024/05/25 (土) ~ 2024/05/25 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2024/05/25 (土) 13:00

価格5,500円

昨年は関西公演がなかったカトケンさん、今回はいつもやってくれてる京都府立府民ホール アルティが耐震工事などで閉館中のため、神戸での公演のみ。

今回の作品はイタリアの劇作家カルロ・ゴルドーニ(Carlo Osvaldo Goldoni)が1745年に書いたコメディ。カルロ・ゴルドーニは1707年に当時のヴェネツィア共和国(Repubblica di Venezia)で医師の子として生また。この時代のイタリアは統一前でヴェネツィア共和国の他、サルデーニャ王国やジェノヴァ共和国、パルマ公国、トスカーナ大公国、ナポリ=シチリア王国などの都市国家で構成されていた。今回の話に登場するトリノ(Torino)はサルデーニャ王国(Regno di Sardegna)の首都だった。

ゴルドーニはパドヴァ(Padova)大学で法律を修め、転じてパヴィア(Pavia)大学を卒業し、その後弁護士として北イタリアの各地を遍歴する傍ら劇作に手を染めた。1748年には弁護士を廃業し、座付き作者として矢継早に斬新な喜劇を世に送り、演劇の改革時代を招来した。

しかし、1753年以降、新しい時代の変革を反映した彼の作品を喜ばない観客に加えて、保守的な劇作家の誹謗、攻撃の的となり、失意のうちに渡仏。1764年、ルイ15世の招請を受け、ベルサイユ宮で王女たちのイタリア語教育に当たったが、フランス革命を迎えてパリに退き、1793年2月にパリで他界した。

主な作品は今回上演の作品の他、「コーヒー店(La bottega del caffe)(1750年)」、「宿屋の女主人(La locandiera)(1753年)」、「キオッジャ騒動(Le baruffe chiozzotte)(1762年)」など。

今回の「二人の主人を一度に持つと」はヴェネツィアを舞台にして、同時に二人の主人に仕えることで、二人分の給料をせしめようとたくらむ男を主人公に繰り広げられるドタバタコメディ。1946年にヴェネツィアで初演され、ミラノピッコロ座(Piccolo Teatro di Milano)の看板演目としても知られる。

今回の上演では主人公の召使の名はトゥルッファルディーノだが、ミラノピッコロ座の公演ではアルレッキーノとなっており、「アルレッキーノ――二人の主人を一度にもつと」と云う邦題で、日本公演も行われたことがある(2009年、世田谷パブリックシアター)。

また、1971年に設立されたオペラ・カンパニー、オペラシアターこんにゃく座もオペラ「アルレッキーノ ―二人の主人を一度に持つと―」として2013年(世田谷パブリックシアター)、2021年(多摩市民館)に公演している。

今回の加藤健一事務所公演は117回目。下北沢の本多劇場の11日間の公演に続いてこの神戸公演が行われた。

主人公のトゥルッファルディーノを演じるのが劇団主宰の加藤健一。以前からの繰り返しになるが、カトケンこと加藤健一は1949年10月静岡県磐田市生まれ。1968年、袋井商業高校卒業後、半年間のサラリーマン生活を経て劇団俳優小劇場の養成所に入所。1970年に養成所を卒業後、つかこうへい事務所の作品に多数客演し、10年後の1980年に加藤健一事務所を創立。

この間、2004年には読売演劇大賞優秀男優賞を受賞、2007年には紫綬褒章を受章、その他にも菊田一夫演劇賞など多くの賞を受けている。毎年3、4本の公演を行っているため、映画やテレビドラマへの出演は限られているが、2016年の吉永小百合と二宮和也の主演した山田洋次監督作品の「母と暮せば」では福原母子の家に出入りする上海のおじさんを演じ、毎日映画コンクール・男優助演賞を受賞している。

トリノからやって来たトゥルッファルディーノの一人目の主人になるベアトリーチェを演じるのは加藤健一事務所俳優教室出身で加藤健一事務所公演ではお馴染みの加藤忍。1973年10月生まれで、神奈川県出身。彼女もテレビドラマや映画にも出ておられ、吹き替えの声優もされている。今回は男装でかっこいい。

もう一人の主人となる、ベアトリーチェの恋人のフロリンドを演じるのは坂本岳大。劇団昴出身。舞台を中心に活動する。シェイクスピア作品などの古典劇から現代劇・ミュージカル、文学館・美術館等の朗読公演まで幅広く演じる。1975年5月生まれで、東京都出身。加藤健一事務所は「あとにさきだつうたかたの(2014年)」や「ペリクリーズ(2015年)」にも参加。

ベアトリーチェの兄の婚約者だったクラリーチェは増田あかね。劇団俳優座27期生。1990年12月生れで、東京都出身。その恋人のシルヴィオを小川蓮。劇団扉座準座員。1996年生れで東京都出身。シルヴィオの父のドットーレは奥村洋治。劇団ワンツーワークス所属。1957年生れ、熊本県出身。

クラリーチェの父のパンタローネは清水明彦。文学座所属。1962年生れで千葉県出身。NHK大河ドラマの「翔ぶが如く(1990年)」や「武蔵 MUSASHI(2003年)」、吉永小百合・天海祐希主演の映画「最高の人生の見つけ方(2019年)」にも出演している。

クラリーチェの女中ズメラルディーナは江原由夏。劇団扉座所属。1985年生れで、千葉県出身。2014年のTBS系の観月ありさ主演の連ドラ「夜のせんせい」に出演している。

宿屋の主人ブリゲッラは土屋良太。ノックアウト所属。1967年まれで、新潟県出身。2019年に23年連れ添った女優の 渡辺えりと離婚した。2016年公開の長谷川博己主演「シン・ゴジラ」に出演している。宿屋のボーイは佐野匡俊。劇団菊地所属。静岡県出身。

演出の鵜山仁は1953年3月奈良県大和高田市生まれで、奈良女子大学文学部附属高等学校、慶應義塾大学文学部フランス文学科卒業。文学座に所属し、劇団の内外で精力的に活動を続け、多くの賞を受賞している。2007年から2010年までは、新国立劇場の演劇部門の第4代芸術監督を務めた。現在は日本演出者協会理事。舞台芸術学院学長。

上演時間は前半が1時間35分で、15分休憩の後、後半40分の合計2時間半。今回の作品は完全にコメディーで、最初から最後まで笑わせてくれる。もちろん主役のトゥルッファルディーノの出番が多いのだが、それ以外の人物も結構出番が多く、トゥルッファルディーノがいない場面も結構あった。しかし、トゥルッファルディーノの口から出まかせは、困ったもんだ。

京都公演ではアフタートークが恒例だったのだが、京都は特別なのね。最初に書いたように京都公演の会場になっているアルティの工事が今年(2024年)8月に終わる予定なので、次回は京都公演が復活すると信じたい。いつやろか~


以上

夏の盛りの蝉のように

夏の盛りの蝉のように

加藤健一事務所

京都府立府民ホールアルティ(京都府)

2022/12/24 (土) ~ 2022/12/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

今年(2022年)も京都で複数公演のカトケンさん。今年2作目はクリスマスシーズンの24日、25日の2日間の上演で、24日の公演を鑑賞。

今回の作品は今年(2022年)3月に92歳で亡くなった劇作家、脚本家の吉永仁郎の戯曲。カトケンさんの舞台は洋物が多く、和物の作品は7年振り。

吉永仁郎は1929年10月、東京本所生まれ。1951年に早稲田大学第一文学部英文科卒業後、都内の中学校に英語教師として勤務。そのかたわら劇作修行を始め、舞台芸術学院講習科を卒業し、劇団虹の会で習作数篇を執筆するも28歳で演劇から離れる。しかし、1969年、40歳になり再び劇作を始め、1974年以降民藝、文学座、俳優座、蝉の会などに戯曲を多数書き下ろした。

主に評伝劇を書き、処女作は1974年の「勤皇やくざ瓦版」(劇団東演初演、後に劇団民藝再演)。主な上演作は、1982年「すててこてこてこ」(民藝、渡辺浩子演出)、83年「夢二・大正さすらい人」(民藝、渡辺浩子)、85年「芝居-月もおぼろに-」(文学座、加藤武)、89年「季節はずれの長屋の花見」(俳優座、阿部廣次)、91年「彫刻のある風景 新宿角筈」(文学座、加藤武)、91年「さりとはつらいね…」(俳優座、三木のり平)、92年「蜆川」(劇団潮流、香川良成)。

21世紀に入ってからも2001年「静かな落日-広津家三代-」(民藝、高橋清祐)、04年「風の中の蝶たち」(文学座、山田風太郎原作、戌井市郎演出)、05年「深川暮色」(民藝、藤沢周平原作、高橋清祐演出)、07年「リビエールの夏の祭り」(俳優座、中野誠也)、13年「集金旅行」(民藝、井伏鱒二原作、高橋清祐演出)、15年「二人だけのお葬式」(青年座、金澤菜乃英)、18年「大正の肖像画」(民藝、高橋清祐)など多数。

90歳を過ぎても創作意欲は衰えず新作を書き下ろし、昨年(2021年)4月に民藝が丹野郁弓演出で上演したロシアの作家ゴーリキー(Maxim Gorky)の「どん底」を原作とした「どん底-1947・東京-」が最後の作品になった。

加藤健一事務所が吉永仁郎の作品を演じるのは、7年前の「滝沢家の内乱」以来2作目。「滝沢家の内乱」は江戸の戯作者滝沢馬琴を描いたもので、94年に蝉の会、渡辺浩子演出で初演されたもの。私もここアルティで見た。今回も出演されている加藤忍さんとの二人芝居だった。

今回の「夏の盛りの蝉のように」は浮世絵師葛飾北斎と彼を取り巻く人間たちを描いたもので、「蝉」として劇団潮流で上演後改定、1990 年に蝉の会で「夏の盛りの蝉のように」として初演。以降蝉の会にて再演を繰り返してきた。2014 年には文学座にて上演。加藤健一事務所では今回が初上演。

蝉の会上演時の出演は大滝秀治(北斎)、加藤剛(華山)、高橋長英(国芳)、草野大悟(北馬)、白石珠江(おえい)、観世葉子(おきょう)。文学座公演は加藤武(北斎)、金内喜久夫(華山)、中村彰男(国芳)、大場泰正(北馬)、富沢亜古(おえい)、古坂るみ子(おきょう)。

今回の加藤健一事務所公演は113回目。今年(2022年)12月に下北沢の本多劇場とこの京都公演が行われた。

以前からの繰り返しになるが、カトケンさんこと加藤健一さんは1949年10月静岡県磐田市生まれ。1968年、袋井商業高校卒業後、半年間のサラリーマン生活を経て劇団俳優小劇場の養成所に入所。1970年に養成所を卒業後、つかこうへい事務所の作品に多数客演し、10年後の1980年に加藤健一事務所を創立されたので、2020年がそれぞれ50周年、40周年だった。

この間、2004年には読売演劇大賞優秀男優賞を受賞、2007年には紫綬褒章を受章、その他にも菊田一夫演劇賞など多くの賞を受けている。毎年3、4本の公演を行っているため、映画やテレビドラマへの出演は限られているが、2016年の吉永小百合と二宮和也の主演した山田洋次監督作品の「母と暮せば」では福原母子の家に出入りする上海のおじさんを演じ、毎日映画コンクール・男優助演賞を受賞している。

現在(2022年4月から1年間)NHK BSプレミアムで再放送されている1981年のNHK大河ドラマ「おんな太閤記」では加藤清正を演じる若き日のカトケンさんを見ることが出来る。当時31歳。

今回の話は上述のように葛飾北斎と彼を取り巻く人間たちの話で、必ずしも北斎が主役ではない。北斎の弟子の中では筆頭にあげられた蹄斎北馬。武士でありながら肖像画を描いて日本一と言われた渡辺崋山。遅咲きながら武者絵や戯画など独創的な浮世絵を生み出した歌川国芳。晩年まで父・北斎の画業を助け、北斎の画才を受け継ぎ一目置かれる絵師となったおえい(葛飾応為)。そして架空の女性だが、結構したたかに生きるおきょう。

この6人が異国船打払命令からシーボルト事件、蛮社の獄とペリー来航までの怒涛のごとくに事件が起こる文化13 年(1816年)から安政5年(1858年)までの43年間に、それぞれが生き様や志を絵にぶつけ北斎に立ち向かっていく。変化する時代の波に翻弄されながら、家柄や流派を超えて切磋琢磨し、世の中を相手に絵師として熱く議論を戦わせる江戸の者たち。暑く眩しい季節に忙しなく聞こえてくる、あの夏の盛りの蝉のように。

おえい役は加藤忍。加藤健一事務所俳優教室出身でカトケンさんの舞台ではお馴染み。1973年10月生まれで、神奈川県出身。彼女もテレビドラマや映画にも出ておられ、吹き替えの声優もされている。

渡辺崋山役の加藤義宗はカトケンさんの息子で彼も何度も見ている。1980年1月生まれ。1996年の加藤健一事務所の「私はラッパポートじゃないよ」が初舞台。自身のプロデュースユニット「義庵」も2020年に立ち上げている。

蹄斎北馬役は新井康弘。私よりは一つ若い1956年12月生まれで、川崎の坂戸育ち。1974年から82年までずうとるびで人気を博した。グループ解散後は俳優業に専念し、1999年から2009年まで続いたTBS系昼帯の「大好き!五つ子」シリーズでの五つ子の父・桜井良介役が当たり役となり広く知られた。加藤健一事務所の舞台も常連で、何度も拝見している。

歌川国芳役は岩崎正寛。1974年9月生まれで神奈川出身。早稲田大学卒業後、演劇集団 円に所属して、俳優の他声優も務めている。私は初めて拝見する。

おきょう役は日和佐美香。1982年10月大阪生まれ。大阪芸術大学卒業後、文学座研究所を経て現在に至る。テレビドラマにはあまり出ておられないようで、初めて拝見した。

演出は黒岩亮(まこと)。1960年生まれで大阪出身。青年座研究所卒業後、入団。1989年「勇者達の伝説」でスタジオ公演初演出。1994年「カデット」で本公演初演出し、注目を浴びる。1997年秋には初めて青年座に書き下ろした永井愛氏の「見よ、飛行機の高く飛べるを」を演出し、芸術祭大賞を受賞。カトケンさんとタッグは初めてかしら。

上演時間は前半が1時間15分で、15分休憩の後、後半1時間の合計2時間半。カトケンさんが主役と云うよりみんなが主役的なストーリーで、ほとんどが北斎の自宅だが(ただし、何度も引っ越してるので毎場面別の家)、北斎が登場しない場面も多い。カトケンさんの舞台なので、笑わせる場面もあるが、どちらかと云うとまじめな話。

終演後30分ほど時間を空けてアルティ館長の雨宮章さんの司会で京都公演恒例のアフタートークがスタート。いつもより遅くのスタートは時代劇で着替えに時間が掛かったとのこと。特に女性は大変だよな。頭(髪の毛)結ってるし。今回はカトケンさんと新井さん、吉宗さん、日和佐さん。5月には久々に京都労演の土屋さんの司会に戻ったが、また雨宮さんだった。

皆さんの今年の漢字の話。カトケンさんは「耐」、新井さんは「覚」、吉宗さんは「挑」、日和佐さんは「運」とのこと。カトケンさんはコロナ禍の影響がまだ大きいそうで、とにかく耐えた1年だったとのこと。

新井さんは人名や年号、歴史を憶えるのが嫌いで勉強しなかったのに、まさかそんな説明を長々と覚えなければならないのが大変だったと。そう云えば、今回のせりふで北斎が110歳まで生きる積もりだったって云うのを210歳って云っちゃったて暴露されてましたが、聞いててあれっ?って思ってたわ。

吉宗さんは自分のプロデュースなどに挑戦の年だったそうで、日和佐さんはこの舞台に立てたことが運が良かったと。そう云えば、大阪出身で応援団の方が多く来られてたそうなのだが、挙手をお願いしたら皆さんもう帰られてたのには笑った。

5時半、30分ほどのアフタートーク終了。で、残念なお知らせも。加藤健一事務所の次回公演は3月末から4月に掛けての「グッドラック、ハリウッド」だが、京都公演はなし。その後は決まってないそうだが、来年(2023年)はその後も京都公演はなし。さらに2024年は年初めから7月までアルティの耐震工事が予定されてるそうで、当然京都公演は無理。早くて、2年後か・・・ 悲しい。


以上

ショウ・マスト・ゴー・オン【12月3日~4日、12月7日、12月21日~24日昼公演中止】

ショウ・マスト・ゴー・オン【12月3日~4日、12月7日、12月21日~24日昼公演中止】

シス・カンパニー

京都劇場(京都府)

2022/11/17 (木) ~ 2022/11/20 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2022/11/17 (木) 19:00

価格5,000円

追加公演の一番安い席(5000円+手数料)が取れたので、2か月前に続いて今度は京都劇場で三谷幸喜さんのコメディを鑑賞。初日17(木)の夜の部。京都劇場は6年半振りで、前回は劇団四季の「コーラスライン(A Chorus Line)」だった。もっと前には三谷さんの文楽「其礼成心中」とか財津和夫さんのコンサートに来たこともある。現役時代には会社のイベントで来たこともあった。

京都駅ビル東ゾーンにある劇場。1997年の駅ビル開業と同時に日本初の駅ビル内劇場「京都シアター1200」として開場。2002年に改装されて京都劇場として再オープンした。再オープン後は劇団四季が通年公演を行っていたが、2016年11月からは準専用劇場となり、並行して劇団四季以外の演劇・コンサートも開催されている。

今回の公演はシス・カンパニー(SIS company)の作品。1980年代の野田秀樹主催の劇団「夢の遊眠社」のマネージメント部門「えーほーしよう会」が前身。1989年に法人独立し、シス・カンパニーとなる。2002年から自社独自の舞台制作を本格化し、2008年に野田秀樹との業務提携を終了している

三谷幸喜さんの所属する芸能事務所で、今回の公演に参加された浅野和之さん、峯村リエさん、井上小百合さんも所属。その他、堤真一さん、高橋克実さん、八嶋智人さん、勝村政信さん、キムラ緑子さん、野村萬斎さんら多くのアーティストらがいる。

2か月前に見た「VAMP SHOW」が1992年初演作品の3回目の再演だったが、今回の「ショー・マスト・ゴー・オン」はもう1年前の1991年に本多劇場で、東京サンシャインボーイズで初演されたコメディ。1994年に紀伊國屋ホールと福岡・大阪にて再演されている。これは「VAMP SHOW」は21年振りの復活だったが、この作品は28年振り。

昨年(2021年)の9月に加藤健一事務所の「SHOW MUST GO ON ~ショーマストゴーオン~」を見たが、こちらはジョン・マーレイ(John Murray)とアレン・ボレッツ(Allen Boretz)の共同執筆作品なので、全く別物。

2022年11月7日(月)から13日(日)まで福岡・キャナルシティ劇場で、11月17日(木)から20日(日)まで京都・京都劇場、そして11月25日(金)から12月27日(火)まで東京・世田谷パブリックシアターで公演。上演時間は前半が55分で、20分休憩の後1時間10分弱の合計2時間25分ほど。

脚本と演出の三谷幸喜さんについては以下のリンクの以前の鑑賞記録を参考の事。
https://stage.corich.jp/watch/529059/stage_comments?fbclid=IwAR216u7VNKBY5l5RyfUZK4Wyk0H1S1TSNHai_SsOFbERpQRq65Vg54CdP1s

舞台監督の進藤役を演じるのは鈴木京香さん。1968年5月生まれ、宮城県仙台市出身。泉高校から東北学院大学経済学部に進み、大学在学中の1989年に女優デビュー。1991年にはNHK朝ドラの「君の名は」のヒロインに抜擢される。2004年公開の映画「血と骨」で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞している。俳優の長谷川博己さんと事実婚の状態。三谷作品では、1995年のテレビドラマ「王様のレストラン」を皮切りに、常連出演者となっており、鎌倉殿では後白河法皇の寵妃、丹後局を演じている。この役は初演、再演とも男性で西村雅彦さんが演じた。

ステージ上の舞台の座長宇沢萬役は尾上松也さん。1985年1月生まれ、東京都中央区出身、堀越高校卒業。歌舞伎名跡「尾上松也」の二代目で、父は六代目尾上松助。1990年、5歳の時に初舞台を踏み、数々の子役で多くの賞を受ける。現在(2022年秋)放送中のフジテレビ系連ドラ「親愛なる僕へ殺意をこめて」にも出演していた。鎌倉殿では後鳥羽上皇を演じている。この役は初演・再演では老役者の設定で、初演では梶原善さん、再演では佐藤B作さん(一部小原雅人さん)が演じた。

舞台監督助手の木戸を演じたのはウエンツ瑛士さん。松也さんの1学年下の1985年10月生まれ、東京都武蔵野市出身。父親はドイツ系アメリカ人で母親が日本人。武蔵野東学園の小中学校から日学櫻丘高校を卒業。4歳からモデルとして芸能活動を始め、NHK教育の「天才てれびくん」にレギュラー出演。以後テレビドラマなどで俳優として活動する一方、小池徹平さんとのデュオ「WaT」として歌手活動も行っていた。2008年公開の映画「ゲゲゲの鬼太郎」で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞している。この役は初演、再演とも(故)伊藤俊人さんが演じた。

同じく舞台監督助手の馬場のえを演じたのは秋元才加さん。1988年7月生まれで、父親は日本人で母親がフィリピン人のハーフ。2020年にラッパーのPUNPEEと結婚。千葉県松戸市出身で船橋西高校(現船橋啓明高校)卒業。2006年から2013年までAKB48で活動し、チームKキャプテンも務めた。その後多くの映画、ドラマに出演している。鎌倉殿では巴御前を演じた。三谷さんの舞台には「国民の映画」や「日本の歴史」に出演している。この役は初演では宮地雅子さん、再演では高橋理恵子さんが演じた。

ステージ上の舞台劇の共演女優、久野あずさを演じたのはシルビア・グラブさん。1974年7月生れで、父親がドイツ系スイス人で母親が日本人。2005年に俳優の髙嶋政宏さんと結婚。東京都出身で聖心インターナショナルスクールからボストン大学音楽学部声楽科を卒業。1997年以降女優としてミュージカルを中心に舞台で活動中。鎌倉殿では藤原兼子を演じている。三谷さんの舞台には「国民の映画」や「ショーガール」、「日本の歴史」に出演している。この役は初演では斉藤清子さん、再演では野仲功さんが演じた。

ステージ上の舞台劇の作家、栗林を演じたのは今井朋彦さん。1967年8月生まれで、東京都出身、慶應義塾高校、慶應義塾大学文学部卒業。大学卒業後、文学座に入団、当初は舞台中心の活動だったが、三谷さんの「HR」出演以降、三谷作品も含めて出演が増加した。NHK大河にも「新選組!」の徳川慶喜役や「真田丸」の大野治長役など重要な役で出演している。三谷さんの舞台には「国民の映画」や「おのれナポレオン」に出演している。この役は初演では小林隆さん、再演では相島一之さんが演じた。

小道具作りの名人、黒木を演じるのは新納慎也さん(前半にガードマン役も)。1975年4月生まれで、神戸市出身、鈴蘭台高校(現神戸鈴蘭台高校)から大阪芸術大学舞台芸術学科演劇コースに進んだが、2年で中退して上京し舞台俳優として活動する。1997年から2年間 、NHK BSの「にこにこぷんがやってきた!」のうたのおにいさんとして出演。2016年のNHK大河ドラマの「真田丸」では豊臣秀次を演じ、「秀次ロス」現象が巻き起こした。鎌倉殿では阿野全成を演じた。三谷さんの舞台には「恐れを知らぬ川上音二郎一座」や「TALK LIKE SINGING」、「日本の歴史」に出演している。この役は初演では小原雅人さん、再演では梶原善さんが演じた。

何故か舞台裏で観劇するチンピラ風の男、中島を演じたのは藤本隆宏さん。1970年7月福岡県北九州市にて出生、宗像市で育つ。西日本短期大学附属高校に在学中、日本代表としてソウルオリンピック200m・400m個人メドレーへ出場。早稲田大学人間科学部へ進学後はバルセロナオリンピックの400m個人メドレーで日本人初のファイナリストとなる(8位)。卒業後の1995年に劇団四季へ入団。98年の退団後はテレビドラマへも進出。2009年から放送されたNHKの「坂の上の雲」広瀬武夫役は私も記憶に残る。この役は初演、再演とも甲本雅裕さんが演じた。

年老いたお医者さんを演じたのは浅野和之さん(前半にガードマン役も)。1954年2月生まれで、東京都出身。桐朋学園芸術短大を出た後、1987年に夢の遊眠社へ入団。テレビドラマや映画などですっかり茶の間にもお馴染み。鎌倉殿では亡くなった辻萬長の代役で急遽伊東祐親を演じた。三谷さんの舞台には「12人の優しい日本人」や「恐れを知らぬ川上音二郎一座」、「大地」に出演している。この役は初演では相島一之さんが演じたが、再演では医者役が見当たらなかった。

何の役だったんだろう、差し入れを管理していた女性を演じてたのは峯村リエさん。1964年3月生まれで、東京都吉祥寺出身。藤本さん同様高校までは水泳の選手で、自由形で東京都大会に出場経験あり。高校卒業後に劇団に参加する。2016年のNHK大河ドラマ「真田丸」の大蔵卿局役の“なりませぬ”が記憶に残る。この役は初演と再演では座長の妻だったと思われるが、それならば初演では横田由和さん、再演では斉藤清子さんが演じた。

左足筋損傷で福岡・京都公演を降板した小林隆さんがするはずだったもう一人の舞台監督助手の父親を三谷さんが演じたが、この役は初演では母親で杉村理加さんが演じた。再演では小林隆さんで今回唯一同じ役者さんだったのだが・・・

この他、中島亜梨沙さんが演じた小屋主は、初演では福島三郎さん、再演では近藤芳正さんが演じた。大野泰広さんが演じた舞台を外された役者の八代役は、初演、再演とも阿南健治さんが演じた。その他、井上小百合さんが現れなかった外国人演出家の通訳役、小澤雄太さんが舞台監督の恋人役、荻野清子さんが舞台劇のピアノ演奏者で出演。

物語の舞台は、演劇公演「マクベス」の舞台袖。しかし、次々にトラブル発生。座長は酔っぱらってるし、演出家は道に迷って現れない。舞台監督助手の一人は舞台監督に叱られたことを根に持って現れず、電話したら代わりにド素人の父親が登場。小道具は壊れ、急遽小道具作りの名人が呼ばれる。作家は、自分の書いた話と全然違うと怒る。さらに音響トラブルも発生・・・ 遂には小屋主が中止を決断するが、舞台監督は云う「幕が開いた後は、私の責任。絶対に幕は降ろさない!」さて、このピンチどうやって乗り越えるか。「ショウ・マスト・ゴー・オン!!!」

悪意のない世界なので、見てて単純に笑えてしまう。三谷さん、福岡公演からの急遽の代役だが、違和感ないわ。鈴木京香さん、貫禄。ウエンツに秋元さんも素晴らしい。そしてやはり松也さん、この人、いろんな役熟せて凄いと改めて感心。ああ、楽しかった。!


以上

VAMP SHOW【8月8日~15日公演中止】

VAMP SHOW【8月8日~15日公演中止】

パルコ・プロデュース

森ノ宮ピロティホール(大阪府)

2022/09/10 (土) ~ 2022/09/11 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

久しぶりに森ノ宮ピロティホールで、久しぶりに三谷幸喜作のコメディを鑑賞。森ノ宮ピロティは9年前の11月以来で、この時は中谷美紀さん主演の「ロスト・イン・ヨンカーズ(Lost in Yonkers)」。ニール・サイモン(Neil Simon)の作品で三谷さんの上演台本・演出だった。

森ノ宮ピロティホールは大阪市の中央区森ノ宮、1997年に閉場され取り壊された日生球場(日本生命球場)の東隣りの北側に、大阪市こども相談センター(当時は大阪市立労働会館)に併設する形で1979年に建てられた多目的ホール。大阪市の財政改革の一環で市の施設としては2008年3月末に閉館し、その後イベント興行会社のキョードー大阪が定期建物賃貸借契約を結び、2010年に再オープン。

敷地の周辺一帯にある森ノ宮遺跡の保存のために、特殊梁による高床式(ピロティ)構造を採用した珍しい建築様式でホールの名前の由来にもなっている。収容人員は1036人で、コンサート、オーケストラ、演劇、落語などのイベントが開催されている。2020年4月から改修工事が行われ、2021年9月にリニューアルオープンした。

今回の公演はパルコ・プロデュース2022の作品。パルコ・プロデュース作品はパルコがPARCO劇場を中心に、全国の劇場で演劇、ミュージカル、ダンスなどのプロデュース公演を展開しているもので、2020年には25作品の公演を行っている。

パルコは国内外の主に大都市中心部でファッションビル「PARCO」などを展開する日本の企業。1957年開店の池袋の東京丸物を前身として、1969年に1号店の池袋PARCOを開店し、現在は18店舗を有する。かつては旧セゾングループ(西武流通グループ)の一員だったが、現在は百貨店の大丸と松坂屋が経営統合したJ.フロントリテイリングの100%子会社。

PARCOはイタリア語で公園を意味し、「人々が集い、時間と空間を共有し、楽しんだりくつろいだりする場(空間)」と云うことから名付けられた。

パルコは文化・ソフト事業も幅広く手がけており、その一つが渋谷パルコにあるPARCO劇場。1973年に西武劇場として開場、1985年に現名称に改称した。現在の劇場は2020年1月に建て替えられた渋谷パルコに再オープンしたもの。旧劇場の約1.5倍となる636席を有する。建て替え前の劇場に1回行ったことがある。

さて、今回公演の「VAMP SHOW」は1992年に鴻上尚史主宰の劇団、第三舞台などを運営するサードステージのプロデュース公演として新宿のスペース・ゼロで初演された三谷幸喜作のホラー・コメディ。2001年にパルコ&サードステージ提携プロデュースとしてPARCO劇場と大阪梅田のシアター・ドラマシティでキャストを一新し再演され、今回21年振りに復活した。上演時間は前半が1時間5分で、20分休憩の後1時間10分の合計2時間35分。

三谷さんは、今年(2020年)のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の脚本を担当している売れっ子劇作家、脚本家、演出家。映画監督も務めるほか、自身が俳優やコメディアンも務め、最近は情報番組のメインキャスターも担当している。

1961年7月生まれ、東京都世田谷区出身で世田谷学園高校を経て日大藝術学部演劇学科を卒業。大学在学中の1983年、劇団「東京サンシャインボーイズ」を結成。その後劇団と並行して放送作家としても活躍、1989年から放送されたフジテレビ系のコメディドラマ「やっぱり猫が好き」の脚本で注目を集め、1994年のフジテレビ系のドラマ「古畑任三郎」でブレイクした。以後、多くの舞台、テレビドラマ、映画などで活躍されている。

1997年には映画「ラヂオの時間」で日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞、2017年には紫綬褒章を受章している。1995年に女優の小林聡美と結婚したが、2011年に離婚、2013年に元女優yumaと再婚し、2014年に男児を設けている。

私は彼の作品は結構好きで、大した本数ではないけど10本以上は見ているが、このところはちょっとご無沙汰で、2014年4月に見たシアター・ドラマシティの「君となら」以来。ああ、竹内結子さん・・・

なお、この作品はオーストリア(Austria)のミュージカル「ダンス・オブ・ヴァンパイア(Tanz der Vampire)」に触発されて書いたものとしている情報もあるが、その初演は1997年で三谷作品より遅く、もしも影響されてるとしたらその元となった1967年公開のロマン・ポランスキー(Roman Polanski)監督作品「吸血鬼(The Fearless Vampire Killers)」か?

いずれにせよ、吸血鬼が出てくるコメディーと云うことしか共通点はない。ちなみにタイトルのVAMPはVampire(吸血鬼)のことと思われるが、魔性の女(妖婦)と云う意味に使われたこともあり、それも意味深。

主演(最後の挨拶が彼だったし)の島寿男役の岡山天音(あまね)君は1994年6月東京国立市生まれ。2009年にNHKの中学生日記シリーズで俳優デビュー以来、個性的な顔立ち、優れた演技力により、数多くの作品に出演している。私が最近見たドラマでは菅田将暉君主演の「ミステリと言う勿れ」の下戸陸太役は印象に残っている。この役は初演では京晋祐さんが、再演では堺雅人さんが演じた。

リーダー的役割の坂東正勝役は平埜生成(ひらの きなり)君。1993年2月生まれ、東京出身。2007年の日本テレビ系のドラマ「セクシーボイスアンドロボ」でデビュー(懐かしいわ、このドラマ。彼のことは全く覚えてないが)。2021年度下半期のNHK朝ドラ「カムカムエヴリバディ」で、最後のひなた編に登場した映画村の社員でひなたの友人の一恵(三浦透子演)と結婚した榊原役は注目を集めた。この役は初演では西村雅彦さんが、再演では佐々木蔵之介さんが演じた。

一番賑やかし的役割の丹下和美役の戸塚純貴君は同じ学年の1992年7月生まれ。盛岡中央高校を卒業後第23回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストにて「理想の恋人賞」を受賞し、芸能界入り。2011年フジテレビ系のドラマ「花ざかりの君たちへ」で俳優デビュー。現在(2020年9月)放送中のテレビ朝日系ドラマ「遺留捜査」で刑事役を演じている。この役は初演では古田新太さんが、再演では橋本潤さんが演じた。

一番落ち着いた感じの佐竹慎一役の塩野瑛久(あきひさ)君は1995年1月生まれで神奈川県相模原市出身。2011年のジュノン・スーパーボーイ・コンテスで、審査員特別賞およびAOKI賞を受賞、2012年のフジテレビ系ドラマ「GTO」で俳優デビュー。彼の出演ドラマの中には見たものあるが、彼は全然覚えてない。この役は初演では池田成志さんが、再演では河原雅彦さんが演じた。

数字やルールに細かい野田英介役は尾上寛之さん。彼はちょっと年で、1985年7月生まれで金光大阪高校出身。1994年にはNHKの朝ドラ「ぴあの」で子役として俳優レギュラーデビュー。もう中堅なので出演作はムチャクチャ多いが、うちでは彼が出る作品では多くの人が死ぬと認識されている。2018年のTBS系のドラマ「アンナチュラル」の犯人役はえげつなかったし、同年フジテレビ系のドラマ「モンテ・クリスト伯」も続いたしね。この作品でも・・・ この役は初演ではまつおあきらさんが、再演では今は亡き伊藤俊人さんが演じた。

彼らが駅で出会う少女、小田巻香役は久保田紗友さん。彼女は若い。2000年1月生まれで札幌出身。2013年のBS-TBSのドラマ「神様のイタズラ」の主演に抜擢され、2017年には映画「ハローグッバイ」で初主演。最近私が見たドラマでは今年(2020年)1月の永瀬廉主演のNHKドラマ「わげもん」を覚えてる。この役は初演では藤井かほりさんが、再演では松尾れい子さんが演じた。

そして駅員役の菅原永二さんは1974年10月生まれで東京都出身。元劇団「猫のホテル」「表現・さわやか」メンバーで多くの舞台作品に出演されている。2020年のNHK朝ドラ「エール」にも出てたんだ。全く覚えてない。この役は初演では三谷幸喜さん本人(一橋壮太朗名義)が、再演では手塚とおるさんが演じた。

演出は河原雅彦さん。1969年7月生まれで、福井市出身。北陸高校から明治大学文学部を卒業。元嫁はともさかりえで、現在は女優の安藤聖と再婚し、女の子の双子がいる。前回の公演(2001年)では佐竹慎一役を務めた。テレビでも2000年のTBS系ドラマ「池袋ウエストゲートパーク」などに出演している。2002年から多くの作品で舞台演出も手掛け、2014年の林遣都主演テレビ東京系ドラマ「玉川区役所 OF THE DEAD」も監督している。

ストーリーはうっそうとした森に囲まれた山間の寂れた駅で、5人の青年と1人の女性が出会うことから始まる物語。明るく楽しい旅行者の青年たちが実は吸血鬼で・・・って話。いい加減な駅員としりとり歌合戦をする5人が登場し、だんだん正体が明らかになって行く。後半には次々と・・・。ホラーと云うほどの怖さはなく、全編にわたって楽しく見ることが出来る。岡山君に戸塚君、尾上さん、ピッタシのイメージやわ。紗友ちゃんは、実は・・・ それが一番怖い!


以上

サンシャイン・ボーイズ

サンシャイン・ボーイズ

加藤健一事務所

京都府立府民ホールアルティ(京都府)

2022/05/03 (火) ~ 2022/05/04 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

今年も京都に来て下さったカトケンさん。今回は3日、4日の2日間の上演で、3日の公演を鑑賞。

今回の作品は4年前(2018年)に91歳で亡くなったアメリカの劇作家、脚本家のニール・サイモン(Neil Simon)が1972年に発表した「サンシャイン・ボーイズ(The Sunshine Boys)」。

ニール・サイモンは1927年7月にニューヨーク(New York)ブロンクス(Bronx)で生まれた。ニューヨーク大学(New York University)、デンバー大学(The University of Denver)で学び、第2次世界大戦中から喜劇の脚本を手がけ、1950年にテレビ番組の脚本スタッフの一員として採用される。1961年に「カム・ブロー・ユア・ホーン(Come Blow Your Horn)」でブロードウェイ(Broadway)デビュー。

以後、60年以上にわたって米国のエンターテインメント業界を支え続けた。ブロードウェイの舞台から映画、時にはテレビ番組に至るまで、彼の作品が上演されていなかった時期はほとんどなく、1960年代後半にはブロードウェイで同時に4作品が上演されていたこともある。手がけた戯曲の数は30本を超え、多数の名作喜劇を生み出し、米史上有数の成功を収めた作家。

1965年には「おかしな二人(The Odd Couple)」でブロードウェイで公演された作品対象に与えられるアメリカの演劇界で最も権威ある賞のトニー賞(Tony Award)の劇作家賞(Best Author (Play))を受賞、さらに1985年の「ビロクシー・ブルース(Biloxi Blues)」と1991年の「ヨンカーズ物語(Lost in Yonkers)」の2本で作品賞(Best Play)を受賞している。

また、脚本家としても1977年の映画「グッバイガール(The Goodbye Girl)」でゴールデングローブ賞(Golden Globe Awards)の脚本賞(Best Screenplay)を受賞した。1968年のジャック・レモン(Jack Lemmon)とウォルター・マッソー(Walter Matthau)の「おかしな二人(The Odd Couple)」や、1978年のマギー・スミス(Maggie Smith)がアカデミー(Academy Award)助演女優賞(Best Supporting Actress)を受賞した「カリフォルニア・スイート(California Suite)」など多くの作品を手掛け、この3作品と1975年の映画化された「サンシャイン・ボーイズ」ではアカデミー脚色賞(Writing Adapted Screenplay)にノミネートされている。

「サンシャイン・ボーイズ」は1972年12月20日にブロードウェイのブロードハースト・シアター(Broadhurst Theatre)でジャック・アルバートソン(Jack Albertson)とサム・レヴェン(Sam Levene)主演、アラン・アーキン(Alan Arkin)演出で初演。

アラン・アーキンは多才な人でミュージシャンや俳優としても活躍しており1966年のノーマン・ジュイソン(Norman Jewison)監督作品の「アメリカ上陸作戦(The Russians Are Coming, the Russians Are Coming)」とロバート・エリス・ミラー(Robert Ellis Miller)監督作品の「愛すれど心さびしく(The Heart Is a Lonely Hunter)」でアカデミー主演男優賞(Best Actor)にノミネートされていた。

近年はバイプレイヤーとして活躍しており、2006年のジョナサン・デイトン(Jonathan Dayton)、ヴァレリー・ファリス(Valerie Faris)夫妻監督作品の「リトル・ミス・サンシャイン(Little Miss Sunshine)」でアカデミー助演男優賞(Best Supporting Actor)を受賞、さらに2012年のベン・アフレック(Ben Affleck)監督作品の「アルゴ(ARGO)」でもノミネートされている。これは見たわ。映画プロデューサー役か。

1975年にハーバート・ロス(Herbert Ross)監督で映画化もされたが、日本では劇場公開されなかった。ウォルター・マッソー(Walter Matthau)とジョージ・バーンズ(George Burns)の主演。ジョージ・バーンズがアカデミー助演男優賞を受賞した他、主演男優賞、脚色賞、美術賞(Best Production Design)にノミネートされた。

1996年にはアメリカCBSテレビで「サンシャイン・ボーイズ/すてきな相棒(原題は同じ)」としてリメイクされた。ジョン・アーマン(John Erman)が監督し、ピーター・フォーク(Peter Falk)とウディ・アレン(Woody Allen)の主演。ウーピー・ゴールドバーグ(Whoopi Goldberg)が看護師役として出演しているがノークレジットだそうだ。

日本での初演は調べた限りでは1984年10月のテアトル・エコー公演。翻訳と演出が酒井洋子。主演は納谷悟朗と熊倉一雄。第39回文化庁芸術祭優秀賞と第19回紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞。1998年、2002年、2005年にも同じ2人で再演されている。

その他、1994年には東京芸術劇場で、小田島雄志・若子夫妻の翻訳、小林裕演出、名古屋章と仲谷登が主演で上演された。また、2008年にパルコ劇場で福田美環子翻訳、福田陽一郎演出、江守徹と西岡徳馬の主演でも上演された。

今回の翻訳はその東京芸術劇場版を翻訳した小田島雄志・若子夫妻の次男の小田島恒志と妻の則子の新訳。小田島恒志は英文学者、翻訳家で現在は早稲田大学文化構想学部教授。1962年生まれ、早大大学院博士課程単位取得満期退学、ロンドン大学大学院修士課程修了。小田島則子も英文学者で翻訳家で駒沢女子大学、目白女子短期大学講師。東京都出身で早稲田大学博士課程、ロンドン大学大学院修士課程修了。

今回の加藤健一事務所公演は元々は加藤健一事務所創立40周年と加藤健一役者人生50周年記念公演の第1弾かつニール・サイモン追悼公演として2020年5月に予定されていたもの。コロナ禍により上演直前に上演中止になったが、今回同一メンバーで復活公演となり、今年(2022年)3月初めに下北沢の本多劇場で上演、3月末の石川県七尾市での能登公演の後、京都にやって来た。この後は5月7日に兵庫公演、5月14日に所沢公演が予定されている。

加藤健一事務所でのニール・サイモン作品上演は、「第二章(Chapter Two)」、「おかしな二人(The Odd Couple)」、「銀幕の向うに(I Ought To Be In Pictures)」、「おお、星条旗娘!(The Star-Spangled Girl)」、「ブロードウェイから 45 秒(45 Seconds From Broadway)」に次いで6本目。

改めて、カトケンさんこと加藤健一さんだが、1949年10月静岡県磐田市生まれ。1968年、袋井商業高校卒業後、半年間のサラリーマン生活を経て劇団俳優小劇場の養成所に入所。1970年に養成所を卒業後、つかこうへい事務所の作品に多数客演し、10年後の1980年に加藤健一事務所を創立されたので、2020年がそれぞれ50周年、40周年だった。

この間、2004年には読売演劇大賞優秀男優賞を受賞、2007年には紫綬褒章を受章、その他にも菊田一夫演劇賞など多くの賞を受けている。毎年3、4本の公演を行っているため、映画やテレビドラマへの出演は限られているが、2016年の吉永小百合と二宮和也の主演した山田洋次監督作品の「母と暮せば」では福原母子の家に出入りする上海のおじさんを演じ、毎日映画コンクール・男優助演賞を受賞している。

今回の話は年老いたヴォードヴィドリアンの物語。なんと云っても元コンビのウィリーとアルとのやり取りがムチャクチャで面白いのだが、ウィリーの甥のベンとの絡みも見逃せないポイント。それと二人で演じる昔の大ヒットコントの再現シーンも見もの。アフタートークで主演の2人を演じたカトケンさんと佐藤B作さんが語られてたが、役者のお二人には非常に難しかったそうだ。

アルを演じた佐藤B作さんは1949年2月生まれなので現在(2022年5月)73歳。福島市の出身。早稲田大学商学部を中退し演劇の道に入り、1973年に劇団東京ヴォードヴィルショーを結成、現在も座長を務めている。本名は「砂糖と塩」ならぬ佐藤俊夫で、芸名は佐藤栄作元首相にちなんで付けたそうだ。3度結婚しており(1人目とは離婚、2人目とは死別)、現在の奥様は女優のあめくみちこさん。カトケンさんとは初共演とのこと。

現在NHK大河の「鎌倉殿の13人」で13人の一人、三浦義澄役を務めており、舞台だけでなくテレビでも映画でも欠かすことが出来ないバイプレイヤーだが、全国的に知られるようになったのは1982年からTBS系で放送された「週刊欽曜日」に出演してから。だよねえ。私はそのイメージが最初だったんで、アフタートークの時、「コント得意やん、B作さん」って思ってしまった。

ウィリーの甥でマネージャーのベンを演じた佐川和正さんは劇団文学座所属の舞台俳優。1975年11月生まれで愛媛県松山市出身。2002年初舞台。声優もされている。

テレビ局で倒れたウィリーがホテルでの静養中の付き添い看護師役を演じるのは田中利花さん。1952年8月生まれで、福岡市出身。1980年、ミュージカル「ヘアー(Hair)」のディオンヌ(Dionne)役で初舞台。2005から2009年は「レ・ミゼラブル(Les Miserables)」に出演、デナルディエ夫人(Madame Thenardier)役を演じ注目を集めた。

テレビ局でのコントでの患者を演じた照屋実さんは、1960年12月生まれで東京出身の宝井プロジェクト所属の俳優さんで、主に舞台で活躍されてる。同じくコントの看護師を演じたのは韓佑華さん。

そのコントのADを演じた加藤義宗さんはカトケンさんの息子。1980年1月生まれ。1996年の加藤健一事務所の「私はラッパポートじゃないよ」が初舞台。自身のプロデュースユニット「義庵」も2020年に立ち上げている。

あと声だけだが、テレビ局のディレクターを演じたのは文学座所属の清水明彦さん。1962年1月生まれで千葉県出身。舞台だけでなく、テレビドラマや映画にも出演されてる。2003年のNHK大河の「武蔵 MUSASHI」の阿部右京役など。

同じく声だけで、テレビのアナウンサーを演じてるのは加藤忍さん。加藤健一事務所俳優教室出身でカトケンさんの舞台ではお馴染み。1973年10月生まれで、神奈川県出身。彼女もテレビドラマや映画にも出ておられ、吹き替えの声優もされている。

演出は堤泰之さん。1960年愛媛県生まれ。東京大学教育学部中退。在学中よりオリジナルミュージカルを創作。1992年にプラチナ・ペーパーズを設立し、幅広いジャンルの脚本・演出を手がけている。 また、1995年にスタートさせたオーディションシステム「ラフカット」は、若手役者の登竜門となっている。

カトケンさんの舞台は2014年の「ブロードウェイから45秒」を皮切りに、「誰も喋ってはならぬ!」、「夢一夜」、「煙が目にしみる」、「Out of Order~イカれてるぜ!~」、「THE SHOW MUST GO ON ~ショーマストゴーオン~」の演出を手掛けてきた。

上演時間は前半が1時間15分で、15分休憩の後、後半1時間弱の合計2時間半弱。前回の「叔母との旅」は結構難しい話で、さほど好みじゃなかったけど、この芝居は実にテンポのいい掛け合いでたっぷり笑わせてもらった。しかし、めんどくさい男を演じるのはカトケンさん得意だなあ~ 絶対に個人的には知り合いになりたくないキャラ ^_^

終演後20分ほど時間を空けてアルティ館長の雨宮章さんの紹介で京都公演恒例のアフタートークがスタート。今回はカトケンさんとB作さん。コロナ禍以降アフタートークの司会は雨宮さんが兼ねられていたが、今回は京都労演事務局長の土屋安見さんが復活。軽妙なやり取りで楽しませて戴いた。特に笑ったのはコント場面の話で、土屋さんが以前別の公演で見た時はコントになってなかったと云う話に、B作さんの「江守さんですか?」って云う突っ込み。

5時15分頃、30分ほどのアフタートーク終了。加藤さんの次回公演は8月に一人芝居の「スカラームーシュ・ジョーンズまたは七つの白い仮面」だが、京都公演は予定がなく、その次の「夏の盛りの蝉のように」が12月に予定されている。

今年(2022年)3月に92歳で亡くなった劇作家、吉永仁郎の作品で、葛飾北斎と彼の家に集まる人々の物語。北斎の娘、お栄も登場する。北斎がカトケンさんなんやろうな。これまためんどくさいキャラ、間違いない。キャストはまだ発表されてないが、楽しみ。

以上

叔母との旅

叔母との旅

加藤健一事務所

京都府立府民ホールアルティ(京都府)

2021/12/04 (土) ~ 2021/12/04 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2021/12/03 (金) 13:00

今年3回目の加藤健一事務所の京都公演。ずっと京都で続けてくださるのがとても嬉しい。1時開演と6時開演の2公演のマチネを鑑賞。

基になっているのはイギリスを代表するストーリーテラーのグレアム・グリーン(Henry Graham Greene)が1969年に発表した小説。グリーンは1904年にロンドン郊外に生まれ、オクスフォード大学(University of Oxford)を卒業後、タイムズ(The Times)紙でジャーナリストとして活躍したのち、1929年の処女長編作「内なる私(The Man Within)」で小説家デビュー。その後、多くの作品を発表。

1949年発表の「第三の男(The Third Man)」はキャロル・リード(Carol Reed)監督による映画化を前提とした作品で、グリーンは脚本も担当し、1950年公開の映画は大ヒットした。1950年にはノーベル文学賞にノミネートされたが、結局最後まで受賞できなかった。1991年にスイスで亡くなった。享年86歳。

この作品を1989年に4人の男優だけで表現する戯曲にしたのが、イギリス人の劇作家であり俳優や演出家のジャイルズ・ハヴァガル(Giles Havergal)。初演の際には自身がその1人として参加した(今回の公演のカトケンさんと同じ役)。

彼は1938年スコットランドのエジンバラ(Edinburgh)生まれ。1969年から2003年までグラスゴー(Glasgow)の市民劇場(Citizens Theatre)のディレクターを務め、劇場運営に大きな革命を起こし、英国を代表する劇場のひとつとしての地位を築き上げた。

現在(2021年)83歳だが、スコットランド王立スコットランド音楽院(Royal Conservatoire of Scotland)やサンフランシスコ(San Francisco)のアメリカ音楽院(American Conservatory Theater)で教鞭を取っている。

翻訳は英文学者、翻訳家で現在は早稲田大学文化構想学部教授の小田島恒志。1962年生まれで早大大学院博士課程単位取得満期退学、ロンドン大学大学院修士課程修了。妻の小田島則子との共訳による翻訳が多い。

この作品の初演は1989年11月10日で、グラスゴーの市民劇場。その後、ロンドン(London)のウエストエンド劇場(West End theatres)、ニューヨーク(New York)のオフブロードウェイ、サンフランシスコでも上演された。1993年度にイギリス版のトニー賞とも云えるローレンス・オリヴィエ賞(Laurence Olivier Award)の最優秀エンタテイメント賞(Best Entertainment)を受賞している。

1972年にジョージ・キューカー(George Cukor)監督、マギー・スミス(Maggie Smith)主演で映画化されているが、これは戯曲化以前であり、小説を脚色したもの。この映画は第45回アカデミー賞(45th Academy Awards)の主演女優賞(Best Actress)など4部門にノミネートされ、衣裳デザイン賞(Best Costume Design)を受賞している。ちなみにこの年の作品賞(Best Picture)は「ゴッドファーザー(The Godfather)」で、主演女優賞は「キャバレー(Cabaret)」のライザ・ミネリ(Liza Minnelli)。

日本でも演劇ファンに人気の高い作品で、日本初演は1995年。演劇集団円で、橋爪功、有川博、勝部演之、吉見一豊のベテラン俳優が演じ、好評を博した。今回の加藤健一事務所公演は先月(2021年11月)に池袋のサンシャイン劇場で行われ、この日の京都公演の後は、翌週に所沢の市民文化センター ミューズのマーキーホールで行われる。

24人の老若男女の登場人物をたった4人の男優で演じ分ける、奇妙で幻想的で笑いの冒険、ロードムービー的躍動感の風刺劇。1人が単に何役も演じ分けるだけでなく、語り手でもあり、主人公でもあるヘンリー(Henry Pulling)すら複数の男優が演じる。それも会話の途中で人が変わる。最初は「これ、何?、何してるの?」って思ってしまった。

また、作品の舞台も、ロンドンからフランス、オリエント急行、そして南米のアルゼンチンからパラグアイと変わる波乱万丈のストーリー。でも、本を読んでいるかのような芝居なんだよね、これが。時代設定は特に明確にされないが、小説が書かれた1960年代後半と思われる。あまり、時代感はない。最後の舞台となるパラグアイの首都アスンシオンには何年か前に滞在したことがあるので懐かしかったな。

演じる4人はカトケンさんの他、天宮良さん、清水明彦さん、加藤義宗さん。天宮さんは1962年4月生まれ。東京都三鷹市出身。1984年に日テレ系のドラマ「昨日、悲別で」の主演で俳優デビュー。NHK大河にも3回出演している。現在も多くのドラマで脇役を務めている。

清水さんは天宮さんより少し早い1962年1月生まれで千葉県出身。文学座所属。舞台、映画、テレビドラマだけでなく吹替やアニメの声優も多く務めている。清水さんもNHK大河に2回出演している。

加藤義宗さんはカトケンさんの息子。1980年1月生まれ。1996年の加藤健一事務所の「私はラッパポートじゃないよ」が初舞台。自身のプロデュースユニット「義庵」も2020年に立ち上げている。

演出の鵜山仁さんは1953年3月奈良県大和高田市生まれで、奈良女子大学文学部附属高等学校、慶應義塾大学文学部フランス文学科卒業。文学座に所属し、劇団の内外で精力的に活動を続け、多くの賞を受賞している。2007年から2010年までは、新国立劇場の演劇部門の第4代芸術監督を務めた。現在は日本演出者協会理事。舞台芸術学院学長。

上演時間は前半が1時間15分で、15分休憩の後、後半1時間の合計2時間半。今回の芝居は、もちろんカトケンさんらしい笑いの要素も多いのではあるが、コメディーと云うよりもやはりドラマって感じ。正直話に付いて行けないようなところもあった。個人的にはあまり好みではない。カトケンさんらしいコメディーが好きだな、私は。

終演後10分ほど時間を空けて京都公演恒例のアフタートーク。今回もアルティ館長の雨宮章さんの司会で、カトケンさんと息子の義宗さんのお話を30分足らず聞かせて戴く。4時10分頃終了。

加藤さんの京都公演、次回は来年(2022年)5月初めに「サンシャイン・ボーイズ(The Sunshine Boys)」。2020年の5月に公演予定だったのがコロナ禍で中止となったもので、佐藤B作さんらと演じる。ニール・サイモン(Neil Simon)の作品と云うことでこれは笑いを期待できそう!

以上

THE SHOW MUST GO ON

THE SHOW MUST GO ON

加藤健一事務所

京都府立府民ホールアルティ(京都府)

2021/09/18 (土) ~ 2021/09/18 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

9月12日に終わるはずだった京都府4度目の緊急事態宣言が月末まで延長されて開催が危ぶまれたが、アルティも腹を決めたようで、無事公演された。1時開演と6時開演の2公演のマチネを鑑賞。

さて、今回の上演作品は1906年生まれ(1984年没)のアメリカ人の劇作家ジョン・マーレイ(John Murray)と1900年生まれ(1985年没)の同じくアメリカ人の劇作家で、作詞家、脚本家でもあったアレン・ボレッツ(Allen Boretz)の共同執筆作品。1937年5月にニューヨーク、ブロードウェイ(Broadway, New York)のコート劇場(Cort Theatre)で初演され、翌年7月まで61週、500公演を記録した。1953年の再演ではジャック・レモン(Jack Lemmon)が若き作家のレオ・デーヴィス(Leo Davis)を演じた。

1938年には当時人気喜劇スターだったチコ(Chico)、ハーボ(Harpo)、グルーチョ(Groucho)のマルクス兄弟(Marx Brothers)の主演で映画化され、さらに1944年にはフランク・シナトラ(Frank Sinatra)主演で芸人ホテル(Step Lively)としてもミュージカル映画化され、アカデミー賞の美術賞にノミネートされた。

日本では1994年に加藤健一事務所で「It's SHOW TIME!」のタイトルで上演。演出が綾田敏樹で、出演は加藤さんのほか、坂口芳貞、市川勇、大島宇三郎、松本きょうじ、酒井敏也、六角精児、大久保了など。酒井さんが作家のレオ役だそうで、六角さんはワグナーだろうか? また、2004年にはテアトル・エコーでも上演されている。酒井洋子の訳・演出で、安原義人がゴードンを演じた。今は亡き納谷悟朗に熊倉一雄も出演している。

京都アルティで公演された前2作品は共に第2次世界大戦下の英国の話だったが、今回は第2次世界大戦直前のアメリカ、ブロードウェイが舞台。1929年の世界大恐慌から立ち直れず、生活は貧しく、先行きの見えない灰色の時代に、なんとか新作の上演を成功させたいプロデューサーや演出家たちが、溜りに溜まったつけで追い出されそうなホテルで、あの手この手でピンチを切り抜ける話。この作品は、前2作品と違って、最初から最後まで大笑いさせてくれる。

加藤さんが演じるのはプロデューサーのゴードン・ミラー(Gordon Miller)。女優の渡辺えりと23年連れあった後2019年に離婚した土屋良太演じる演出家のハリー・ビニオン(Harry Binelli)と劇団ハイリンドの伊原農演ずる舞台監督フェーカー・イングランド(Faker Englund)、さらに藤井隆を彷彿とさせる劇団スタジオライフ所属の千葉健玖演ずる劇作家のレオ・デーヴィスも無理やり加えられ、4人で元ずうとるびの新井康弘演じるホテル監察官のグレゴリー・ワグナー(Wagner)をムチャクチャ云いながら騙しきるのは見もの。間に挟まれた劇団ワンツーワークスの奥村洋治演じるゴードンの義兄のホテル支配人のジョゼフ・グリブル(Joseph Gribble)はさあ大変。

劇団の花形女優のクリスティン・マーロウ(Christine Marlowe)を演じる加藤健一事務所ではお馴染みの加藤忍と、ホテルの秘書で劇作家のレオに一目惚れするヒルダ・マニー(Hilda Manney)を演じる岡﨑加奈が花を添える。

また、長く声優として活躍し続けている辻親八が、ロシア人ウェイターのサーシャル・スミス(Sasha Smirnoff)、グラス医師(Dr. Glass)、ブレーク上院議員(Senator Blake)の3役を務め、Pカンパニー代表を務める林次樹が代理人のサイモン・ジェイキンス(Simon Jenkins)、取り立て屋のティモシー・ホガース(Timothy Hogarth)と不渡り手形を届けに来た銀行員を演じる。

休憩までが45分、15分の休憩後は終演まで1時間15分の実質2時間の芝居だが、一番最初にウェイターのサーシャがゴードンに自分を出演させてくれと売り込む場面から、最後にブレーク上院議員が救いの神になるところまで、のべつ幕無し笑わせてくれる。新井さんの騙されっぷりは見ものの一つ。

終演後は15分開けて京都公演でしかやらないと云うアフタートーク。今回も舞台上で行われたが、このスタイル、ロビーでやるのに比べると俳優さん達と身近に接せないが、落ち着いて座って聞くことが出来るのはメリットだな。今回は加藤さんに加えて新井さんと岡﨑さんの3人が30分、いろいろなお話をしてくださって楽しかった。

この京都公演に関しては、アルティではよく音楽のライブも行われると云う話から、新井さんが次はミュージックプレーヤーとして来たいですと云われていたが、あとで調べたら去年(2020年)にずうとるびって再結成されて、この7月には新曲もリリースされてるんだ。懐かしいわ。1974年デビュー、1982年解散か。私は広島から京都の時期で、大学から新人の頃。もし本当にやるなら見てもいいかな ^_^

そう云えば、これまでのアフタートークの司会はいつも京都労演の土屋安見さんだったが、今回はなぜかは分からないがアルティ館長の雨宮章さんが挨拶の後に引き続き務められた。雨宮さん、低音のすごくいい声で、もちろん演劇のこともよくご存じで、業界上がりの方かと思ってたら、元々は中学校の社会の先生で、30歳から府庁の職員だったのね。ただ、文化畑が長く、現在はアルティだけでなく文化芸術会館の館長も務められてるとのこと。いろんな方がおられるのね、京都府庁。

アフタートーク含めてちょうど3時間ほどで、4時過ぎに終了。さて、加藤さんの京都公演、今年はもう1回来て下さるそうで、次回は12月の「叔母との旅」。4人で24人の登場人物を演じるロードムービーだそうで、楽しみ!

以上

ドレッサー【2月26日(金)は公演中止/兵庫公演中止】

ドレッサー【2月26日(金)は公演中止/兵庫公演中止】

加藤健一事務所

京都府立府民ホールアルティ(京都府)

2021/04/24 (土) ~ 2021/04/24 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

3度目の非常事態宣言が発令された京都府だったが、ギリギリで予定通りに公演が行われて良かった。翌日から宣言が発令されたので、会場のアルティも閉館となり、また翌日予定されていた神戸での公演も中止となった。何が何でもオリンピックをやりたい政府のために迷惑な話やなあ。この程度の規模の人手を抑えることに何の意味があろうか・・・
さて、今回の上演作品は2002年に「戦場のピアニスト(The Pianist)」でロマン・ポランスキー(Roman Polanski)とともにアカデミー脚色賞を受賞しているイギリス人の劇作家・脚本家ロナルド・ハーウッド(Ronald Harwood)の作品。1980年3月に英国のマンチェスター(Manchester)で初演され、その後ロンドン(London)で2年近くロングラン上演され、また81年11月からは米国ブロードウェイ(Broadway)でも公演された。
さらに1983年にピーター・イエーツ(Peter Yates)監督が映画化し、脚色賞の他、作品賞、監督賞、座長役のアルバート・フィニー(Albert Finney)、ノーマン役のトム・コートネイ(Tom Courtenay)の二人が主演男優賞にノミネートされた(この年の最優秀作品賞は
「愛と追憶の日々(Terms of Endearment)」が受賞。
日本では81年に座長:三津田健、ノーマン(Norman):平幹二朗、座長夫人:栗原小巻、アイリーン(Irene):市毛良枝という顔ぶれで初演された。加藤さんも88年に三國連太郎さんの座長に対するノーマン役をされた。他にもノーマンは柄本明さん、西村雅彦さん、小宮孝泰さんらが務め、2013年の三谷幸喜版では大泉洋さんが演じている。加藤健一事務所では3年前の2018年に初演。
約5か月前に上演された「プレッシャー」もそうだったが、これも第2次世界大戦下の英国の話。折からの空襲と戦時下の心労で心神喪失気味な座長と彼を支えるドレッサー(着付け師)を中心として、シェイクスピア(Shakespeare)の「リア王(King Lear)」を上演する舞台裏を描く。
加藤さんは、今回は座長を演じる。三国さんと演じた時からいつか座長をと思われてたととアフタートークでのお話。3年前の初演の時より笑いを抑えた演技にしたとのことで、確かにいつもの加藤さんとはちょっと違う役。
主役はドレッサーのノーマンだな。加納幸和さんは1960年1月生まれなので、61歳。テレビにはほとんど出ない方舞台の方なので、初めて拝見した。劇団「花組芝居」の主宰で、全作品の脚本、演出を手掛け、主に歌舞伎をモチーフにした作品が多いそうだ。ノーマンはとにかくセリフ量がすごい。最初から最後までしゃべりづくめ。笑いを抑えた座長に対しノーマンは結構笑わせてくれる。他のキャストでは結構座長とノーマンは年の差があることがあるのだが、今回は座長に近い年のノーマンでやりたかったそうで、加納さんはピッタシだったわ。
京都公演でしかやらないと云う、このような裏話を聞かせてくれた加藤さんと加納さんの15分余りの舞台上でのアフタートークも含めて3時間余り、楽しく過ごせた。早く平常の公演に戻れますように!

プレッシャー

プレッシャー

加藤健一事務所

京都府立府民ホールアルティ(京都府)

2020/12/05 (土) ~ 2020/12/05 (土)公演終了

満足度★★★★★

私にとっては3年振りの加藤健一事務所公演。5月に予定されていた公演がコロナ禍で中止になり、私は行ってないが19年6月から1年半振り。政府からはこの規模の劇場では満席OKが出ているが、主催者判断だろうが1席置きでの開催。現状ではやむを得ないだろうが、早く満席に戻ることを祈る。加藤さんは終演後の挨拶で、これまでルールを守った公演では観客には1人も感染は出ていないことを強調されていた。今回は映画でも活躍するオリビエ賞受賞の俳優、デービッド・ヘイグ(David Haig)が書いた戯曲で、2014年5月に彼の主演で英国のエジンバラ(Edinburgh)で初上演された。第2次大戦の連合軍のノルマンディー上陸の4日前から、上陸作戦に大きな影響を与える天候予報を行った、スコットランド人の気象学者を中心に、作戦の中止から翌日への延期の舞台裏を実話に基づいて描いている。加藤さんは主役の博士を演じているが、終演後のアフタート-クによると、この舞台を英国で見た方が、加藤さんにピッタシと思って教えてくれたと云うだけあって、まさにピッタシの役。時にはユーモアを交えながら、難しい気象用語もすらすらと操る。ただ、これは結構大変だったそうで、アフタートークで予報で対立する米国人の気象予報士を演じた山崎銀之丞さんと二人で、苦労した旨を話されてた。その銀之丞もこの物語の重要な位置付けになる役を熱演。また、全体としては長台詞も多く、出番の多いアイゼンハワー大将を演じた原康義や大将の私設秘書的な立場の女性中尉を演じる加藤忍さんもとても重要な役を完璧に演じられてた。加藤さんと銀之丞さんの30分の舞台上でのアフタートークも含めて3時間半、久々に至福の時間を過ごすことが出来た。

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