THE SHOW MUST GO ON 公演情報 加藤健一事務所「THE SHOW MUST GO ON」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    9月12日に終わるはずだった京都府4度目の緊急事態宣言が月末まで延長されて開催が危ぶまれたが、アルティも腹を決めたようで、無事公演された。1時開演と6時開演の2公演のマチネを鑑賞。

    さて、今回の上演作品は1906年生まれ(1984年没)のアメリカ人の劇作家ジョン・マーレイ(John Murray)と1900年生まれ(1985年没)の同じくアメリカ人の劇作家で、作詞家、脚本家でもあったアレン・ボレッツ(Allen Boretz)の共同執筆作品。1937年5月にニューヨーク、ブロードウェイ(Broadway, New York)のコート劇場(Cort Theatre)で初演され、翌年7月まで61週、500公演を記録した。1953年の再演ではジャック・レモン(Jack Lemmon)が若き作家のレオ・デーヴィス(Leo Davis)を演じた。

    1938年には当時人気喜劇スターだったチコ(Chico)、ハーボ(Harpo)、グルーチョ(Groucho)のマルクス兄弟(Marx Brothers)の主演で映画化され、さらに1944年にはフランク・シナトラ(Frank Sinatra)主演で芸人ホテル(Step Lively)としてもミュージカル映画化され、アカデミー賞の美術賞にノミネートされた。

    日本では1994年に加藤健一事務所で「It's SHOW TIME!」のタイトルで上演。演出が綾田敏樹で、出演は加藤さんのほか、坂口芳貞、市川勇、大島宇三郎、松本きょうじ、酒井敏也、六角精児、大久保了など。酒井さんが作家のレオ役だそうで、六角さんはワグナーだろうか? また、2004年にはテアトル・エコーでも上演されている。酒井洋子の訳・演出で、安原義人がゴードンを演じた。今は亡き納谷悟朗に熊倉一雄も出演している。

    京都アルティで公演された前2作品は共に第2次世界大戦下の英国の話だったが、今回は第2次世界大戦直前のアメリカ、ブロードウェイが舞台。1929年の世界大恐慌から立ち直れず、生活は貧しく、先行きの見えない灰色の時代に、なんとか新作の上演を成功させたいプロデューサーや演出家たちが、溜りに溜まったつけで追い出されそうなホテルで、あの手この手でピンチを切り抜ける話。この作品は、前2作品と違って、最初から最後まで大笑いさせてくれる。

    加藤さんが演じるのはプロデューサーのゴードン・ミラー(Gordon Miller)。女優の渡辺えりと23年連れあった後2019年に離婚した土屋良太演じる演出家のハリー・ビニオン(Harry Binelli)と劇団ハイリンドの伊原農演ずる舞台監督フェーカー・イングランド(Faker Englund)、さらに藤井隆を彷彿とさせる劇団スタジオライフ所属の千葉健玖演ずる劇作家のレオ・デーヴィスも無理やり加えられ、4人で元ずうとるびの新井康弘演じるホテル監察官のグレゴリー・ワグナー(Wagner)をムチャクチャ云いながら騙しきるのは見もの。間に挟まれた劇団ワンツーワークスの奥村洋治演じるゴードンの義兄のホテル支配人のジョゼフ・グリブル(Joseph Gribble)はさあ大変。

    劇団の花形女優のクリスティン・マーロウ(Christine Marlowe)を演じる加藤健一事務所ではお馴染みの加藤忍と、ホテルの秘書で劇作家のレオに一目惚れするヒルダ・マニー(Hilda Manney)を演じる岡﨑加奈が花を添える。

    また、長く声優として活躍し続けている辻親八が、ロシア人ウェイターのサーシャル・スミス(Sasha Smirnoff)、グラス医師(Dr. Glass)、ブレーク上院議員(Senator Blake)の3役を務め、Pカンパニー代表を務める林次樹が代理人のサイモン・ジェイキンス(Simon Jenkins)、取り立て屋のティモシー・ホガース(Timothy Hogarth)と不渡り手形を届けに来た銀行員を演じる。

    休憩までが45分、15分の休憩後は終演まで1時間15分の実質2時間の芝居だが、一番最初にウェイターのサーシャがゴードンに自分を出演させてくれと売り込む場面から、最後にブレーク上院議員が救いの神になるところまで、のべつ幕無し笑わせてくれる。新井さんの騙されっぷりは見ものの一つ。

    終演後は15分開けて京都公演でしかやらないと云うアフタートーク。今回も舞台上で行われたが、このスタイル、ロビーでやるのに比べると俳優さん達と身近に接せないが、落ち着いて座って聞くことが出来るのはメリットだな。今回は加藤さんに加えて新井さんと岡﨑さんの3人が30分、いろいろなお話をしてくださって楽しかった。

    この京都公演に関しては、アルティではよく音楽のライブも行われると云う話から、新井さんが次はミュージックプレーヤーとして来たいですと云われていたが、あとで調べたら去年(2020年)にずうとるびって再結成されて、この7月には新曲もリリースされてるんだ。懐かしいわ。1974年デビュー、1982年解散か。私は広島から京都の時期で、大学から新人の頃。もし本当にやるなら見てもいいかな ^_^

    そう云えば、これまでのアフタートークの司会はいつも京都労演の土屋安見さんだったが、今回はなぜかは分からないがアルティ館長の雨宮章さんが挨拶の後に引き続き務められた。雨宮さん、低音のすごくいい声で、もちろん演劇のこともよくご存じで、業界上がりの方かと思ってたら、元々は中学校の社会の先生で、30歳から府庁の職員だったのね。ただ、文化畑が長く、現在はアルティだけでなく文化芸術会館の館長も務められてるとのこと。いろんな方がおられるのね、京都府庁。

    アフタートーク含めてちょうど3時間ほどで、4時過ぎに終了。さて、加藤さんの京都公演、今年はもう1回来て下さるそうで、次回は12月の「叔母との旅」。4人で24人の登場人物を演じるロードムービーだそうで、楽しみ!

    以上

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    2021/09/23 18:06

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