
東京物語
松竹
三越劇場(東京都)
2024/01/02 (火) ~ 2024/01/26 (金)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
第一幕60分休憩25分第二幕80分。
2012年1月初演、2013年7月再演。
山田洋次92歳!二代目水谷八重子84歳!
皆高齢だからコンパクトにまとめるだろうと勝手に思っていたが、ガチガチの作風。夢の世界の住人である監督やら役者やらは老いることを知らない。皆もう一度全盛期が訪れるのではないかと思う程のエネルギー!
2013年11月、新橋演舞場で公演した中村勘九郎、今井翼、檀れい主演の『さらば八月の大地』。幻の満映を舞台に狂おしき映画への情熱を描き、小津安二郎愛に溢れていた山田洋次。(あの時の檀れいさんの美しさは未だに筆舌に尽くし難い)。
オリジナルの『東京物語』は小津安二郎52歳、笠智衆49歳、東山千栄子62歳、原節子32歳の陣容。大体日本映画オールタイム・ベストをやると『東京物語』、『七人の侍』、『浮雲』と相場は決まっている。この全人類共有の無常観をどう調理するのかとくと拝見。
ある意味主人公の石原舞子さん(長男の嫁役)が素晴らしかった。三雲孝江を思わせる上品な町医者の奥さん。拘りの舞台美術を背にしたその所作で作品世界を肌感覚で観客に提示。幕が上がると時代も空間も飛び越えて昭和28年の居間に放り込まれる。
話は至ってシンプル。戦争の傷痕もかなり復興し、広島の尾道から年老いた夫婦(田口守氏と水谷八重子さん)が息子夫婦(丹羽貞仁氏と石原舞子さん)のもとを訪ねて上京。特に要件などなかったが、忙しい子供達は厄介に感じて余り相手をしてやれない。夫婦の感じる疎外感。
美容院を経営している長女役、波乃久里子さんがまた巧い。オリジナルでは杉村春子の演じた役を田中眞紀子っぽさもある女傑風に盛り上げてくれた。旦那役の児玉真二氏も最高。
戦死した次男を愛し続けてくれるヒロイン瀬戸摩純(ますみ)さんも見事。
長男の医者、丹羽貞仁氏がまた絶品。結局誰も何も悪くないことを的確に表現。誰も何も悪くない世界で感じるこの痛みの元は何なんだ?
一番、『東京物語』で好きな台詞は「じゃ、しなくたっていいんだね、勉強しなくたっていいんだね。あ〜楽チンだ、あ〜呑気だね。」だったので子役二人の演技には大満足。山田洋次は分かってる。どうでもいいような子役の立ち居振る舞いこそが心臓部だってことを。
赤星東吾君、平山正剛君にリスペクト。
水谷八重子さんが瀬戸摩純さんの狭いアパートに泊めて貰って帰って来る。「東京に来て一番楽しかったわ。」と皆に笑顔で語る。このシーンは必見。受ける共演者も涙ぐむ程の名演。これこそ今作の肝。
田口守氏は笠智衆よりも志村喬っぽい味付け。
是非観に行って頂きたい。

√オーランドー
東京芸術劇場
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2023/12/22 (金) ~ 2023/12/24 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
ヴァージニア・ウルフの『オーランドー』のダンス化と言われても何が何やらさっぱり。ロビーに飾られた『オーランドー』の作品内年表やら何やらをチラ見して「つまらなそうだな」と身構えた。頭でっかちな芸術風味の下らない時間稼ぎをしたり顔で満喫するのは御免だ。そんなものはブランドしか判断基準のない連中の領分。自分の頭で物を考えることを放棄した奴等の末路···、なんて杞憂に終わり、普通に面白かった。
中村蓉さんの挨拶からスタート。後ろに投映される『オーランドー』の序文をパロディにしたような前口上。そこに軟体動物のような動きを繰り返す役者が登場。するとその様子を実況説明し始める役者が現れる。更にその実況している者の動作を実況し始める別の役者。更に···、とメタ的に十数人が誰かの実況をし続ける。一人の女性がダンボール箱から白い紐を取り出し、それにぶら下げた分銅を揺らす。バックでは『オーランドー』の章が進んでいく。凍った池の上でアイススケート。ユーミンの「BLIZZARD」で皆で踊る。そこに中村蓉さんが再登場。照明トラブルの為、一時中断とのこと。始めからやり直すので休憩に。「さっき私凄く噛んじゃったのでもう一度やらせて下さい。」観客笑って大拍手。これで場の空気が和み、時間を置いて再開。遣り口が分かってきたので楽しみ方も準備万端。役者達は振付から動作から先程と変えてみせた。『オーランドー』をパラパラめくっていくように進んで行く。筋ではなく世界観を味わうようなスタイル。
中野亜美さんのスーパーマリオ・ジャンプが炸裂。新聞売りの少年だったり、勲章を追い掛ける群衆だったり。川島信義氏との「価値観の違う二人は一緒に暮らせるのか?」という対称舞踏がとても良かった。
小津安二郎の『晩春』、笠智衆が原節子に説教をする名シーンの音声が延々流れる。「幸せは待っているもんじゃなくって、やっぱり自分達で創り出すもんだよ。」
ヨガのポーズを取りながら延々マイクを持ったインタビュアーに答え続ける女。男から女に性転換する際の3人のチアガール。二人羽織。詩を書き綴る。工夫を凝らして飽きさせない。原作を知らなくても楽しめる。
是非観に行って頂きたい。

天使の群像
鵺的(ぬえてき)
ザ・スズナリ(東京都)
2023/12/21 (木) ~ 2023/12/29 (金)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
女優・堤千穂さんの新境地!ほぼすっぴんで新しい教師像を生み出した。いつも斜め上の虚空をぼんやりと見つめる新任女教師。このキャラクターは大いに魅力的でずっと観客の脳裏にこびり付くことだろう。彼女を観る為だけでも今作に価値はある。
野花紅葉さんは少女漫画のキャラそのもののルックス。小松菜奈に見える位、異様に美しかった。もう矢沢あいとかの描くイラストだ。
森田ガンツ氏は名助演。“カントリーマアム”。
函波窓氏もきっちり高校生になっていた。
佐瀬弘幸氏は『デラシネ』の大御所脚本家と同一人物だと誰が信じる?
寺十吾氏は狙い澄ました通り。
かなり凝ったセットで舞台美術の荒川真央香さんは大変だったろう。斜線が織り成す幾何学的なステージ。床も水平ではない。下手に斜めに走る鏡の壁、奥に透過率を変えたハーフミラー、照明が映し出す格子の影。心象風景の視覚化、何処までも記憶とイメージの世界。照明の阿部将之氏の苦労。客席の前の空間に椅子を並べ出演者達が座ってステージを観ている。相当実験的な作劇。
音響作家・北島とわさんの構築する音が不安を煽り続ける。水の滴る音、何かを叩く音、不快なノイズ音が居心地の悪い空間に木霊し、無意識に潜む記憶を引きずり上げる。
学校が大嫌いだった主人公は勤めていた会社が潰れ、一応持っていた教員免許で高校の臨時的任用教職員に。不登校になった男子生徒に責任を感じて担任は休職中、そのクラスを代理で受け持つ。今では教師はハラスメント対策で常に発言を慎み、スクールカウンセラーにスクールロイヤーが常備。カウンセリングを希望するのは心の病んだ教師達ばかり。病んだ教師と病んだ生徒、病んだ保護者に囲まれて主人公はますます学校が嫌いになっていく。
堤千穂さんに尽きる。これを見逃す手はない。終わり方は大好き。
是非観に行って頂きたい。

閻魔の王宮
劇団俳優座
俳優座劇場(東京都)
2023/12/20 (水) ~ 2023/12/27 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
今作で描かれるのは日本で言うところの「薬害エイズ事件」。1980年代、厚生省と製薬企業5社は血友病患者に対し、ウイルスを加熱処理で不活性化していない非加熱製剤を流通させ、全血友病患者の4割をHIVに感染させた。製造元のミドリ十字は危険性が問題視されていたにも関わらず、在庫処理の為黙って捌き続けた。
1993年頃から1996年頃まで中国河南省(かなんしょう)政府が血液売買を奨励。同じ針を使い回し、血漿成分以外を体内に戻す際、複数人の血液を混ぜたものを使った。河南省の58郡において各平均2万人の農民が売血し、100万人近くがHIV感染。未だに住民の7割が感染して「エイズ村」と呼ばれる地域は数多い。そして残された100万人近くの「エイズ孤児」。
トンネルをイメージしたセット、三基の並べられた長机が道となっている。中央の長机は回転可動式。地獄へと続く地下鉄の線路内のイメージか。映画『エンゼル・ハート』では鉄の檻のような古めかしいエレベーターで地獄堕ちを表現していた。
目当ての清水直子さんはクライマックスで見せ場が待っている。地獄そのものの現実の中で、最後まで「なりたかった自分」になろうと藻掻く。地獄に光を照らす為に、自らを犠牲にする。「暗いと不平を言うよりも、すすんであかりをつけましょう」というカトリックの神父の言葉を思い出した。
滝佑里さんは久我美子を思わせる昭和美人。寅さんのマドンナなんか似合いそう。清楚で品格のある彼女が地獄に堕ちてゆく様が見所。
果たして幸せとは何なのか?カポジ肉腫の斑点が身体中を埋め尽くす。死を前に人は家族の幸福を願う。せめてお前だけでも幸せに生きてくれ。自分を犠牲にしてでも灯したい“希望”、それだけでも己の人生に何某かの意味があったのだと信じたかった人々の話。

abc 赤坂ビーンズクラブ
エヌオーフォー No.4
赤坂RED/THEATER(東京都)
2023/12/13 (水) ~ 2023/12/17 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
水野花梨(かりん)さんが3回目。
高橋紗良(さら)さんと竹内麗(うらら)さんが2回目。
コントとダンスとスケッチと歌のヴォードヴィル・ショー。毎回観ていくうちに嵌ってきた。
大学生の高橋紗良さんと片想いのチャラ男との恋愛話が細切れエピソードで続いていく。恋愛成就には唐揚げ!とリコーダーを吹く。
毎回定番の短編劇、更なる飛躍を求めて小劇団を辞めた元看板女優(美波花音さん)と劇団に残り守り続けた女優(高橋紗良さん)とのエピソード。無理を言って里帰りを果たした美波さんの行動にマネージャー(北村夏未さん)は心中苦々しい。小劇団の今作で女優業の引退を決めた高橋さんとの友情ともライバルともつかない愛憎こもった絆。
一番面白かったのは「死んでやる!」と会社を飛び出した友達を止めようとビルの屋上に上ったOL(北村夏未さん)、飛び降りようとしている女(森下結音〈ゆいね〉さん)を必死に止めるが全くの赤の他人であった。何とも言えない気まずさの中で培われる不思議な関係。
定番の歌とダンスが段々と観客に沁み込んでいく。

ガラスの動物園
劇団銅鑼
銅鑼アトリエ(東京都)
2023/12/15 (金) ~ 2023/12/17 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
今年3月、山中透(ダムタイプ)+壁なき演劇センターの『ライト・オン・テネシー・ウィリアムズ』を観た。『ガラスの動物園』の再構築と作家の人生の紹介みたいな構成で非常に面白かった。それで気になった『ガラスの動物園』を到頭観ることに。
ステージは椅子とドア枠以外、全ての舞台美術、小道具がピアノ線で天井から吊るされている。小さな動物のガラス細工がゆらゆら揺らめき光に反射して美しい。電話やレコードプレイヤー、箪笥、花瓶など全て段ボールと木片の手作り、DIY精神溢れる。吊るす為に軽量化も考えたのだろう。パイプ椅子で四方を囲む形の客席。
会場でかかっているSEが気になった。レナード・コーエン、ニール・ヤング、エディ・ヴェダー系のアイルランド風味の楽曲、雰囲気がある。(ザ・ポーグスか)。
主人公のトムは中山裕斗氏。金城武とショーケンを足したような感じ。
母親のアマンダは大橋由華さん、顔立ちがのんに似ていて華がある。凄い量の台詞の大洪水。母親にしては若過ぎるが。
姉のローラは井上公美子さん、片ちんば(脚長差)で跛を引いている。学生時代は金属の器具で脚を固定していた。負のオーラ。
トムの仕事仲間、ジムは伊藤大輝氏。川地民夫っぽい。
この戯曲が何度も舞台化される理由が分かった。いろんな遣り口があり、いろんな伝え方が出来る。
今回観れたことは有り難い。また別の方法論の作品も観てみたい。役者は金の取れる面子、次作にも興味。

萎れた花の弁明
城山羊の会
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2023/12/08 (金) ~ 2023/12/17 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
『劇団普通』を主催する石黒麻衣さんが女優として出演されるとのことで気になり観に行った。イメージ通りの配役、文句無し。
超満員熱気ムンムン。途中で帰る女性がいたが、それが正常な程下ネタ満載。たけし軍団の臭いがプンプンする。新人マッサージ嬢に金の力で抜きをひたすら要求するような笑い。常連であろう女性客も多かったのが流石。
舞台はそのまま三鷹市芸術文化センター。前説は本物のセンターの副主幹、森元隆樹氏。そこにやって来る岩谷(いわや)健司氏。どうも政府のお偉いさんらしい。森元氏が施設の案内をしようとするも中国人の団体客が押し掛けて来て席を外す。代わりに新卒の岡部ひろき氏が相手をするのだが···。
性欲の化け物、岩谷健司氏が好き放題。ノリがガダルカナル・タカ。全裸になり、巨根を見せ付けながらも立ち居振る舞いが紳士。
岡部ひろき氏はしずるのKAƵMA似。
村上穂乃佳さんが綺麗だった。
岡部たかし氏の中国語が立派だった。
驚く程独特の笑いが炸裂。脳がバグるようなセンス。業の深い因縁が絡み合ったある家族の揉め事に何となく巻き込まれる岩谷氏の物語。誰も予想のつけようがないラスト。
是非観に行って頂きたい。

ジャズ大名【愛知公演中止】
KAAT神奈川芸術劇場
KAAT神奈川芸術劇場・ホール(神奈川県)
2023/12/09 (土) ~ 2023/12/24 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
岡本喜八の大ファンだった筒井康隆、自作の小説『ジャズ大名』を監督が映画化することが決まった時は喜んだもの。二人共ジャズとスラップスティックをこよなく愛した。昔、原作の短編を読んで、「これをどう映画化するのか?」不思議に思った。観てみると成程、フリー・ジャズのジャム・セッションが延々と続き、ジャズの狂騒的なリフ、リズム、ビートの熱に浮かされた人々の精神の高揚が描かれる。ずっと繰り返されるリフの作曲も筒井康隆。盟友山下洋輔が協力した筈。話なんかあってないようなもの、ジャズの狂熱で憂鬱なもの全て吹っ飛ばしちまえ。取り憑かれた様にリフが身体中を這いずり回り訴えかける。何だか判らないけれど、どうもこいつに夢中だ。
舞台化にあたり、主演の千葉雄大氏がまさに適役。すっとぼけた可愛らしさ、ずっと見ていられる。
藤井隆氏なんかキャスティングしとけば何とかしてくれる。
ある意味主役の富田望生(みう)さんはとんでもないパワー。ここまでの存在に成り上がった。
ふざけた家臣は大鶴佐助氏。ニヤニヤニヤニヤ好き放題。
トランペッターの辰巳光英氏は若き筒井康隆に見えた。
「ええじゃないか」の練習にムエタイの首相撲を入れたり細かなギャグが散りばめられている。
入手杏奈さんは何役も兼ねて踊り明かした。へとへとになるまで。
アクターも芸人もダンサーもジャズマンも「ええじゃないか」軍団も訳の分からないフェスにて踊り明かす。演劇を観に来た筈の観客はいつしか何を観せられているのか解らなくなる。しかし終わってみれば全員総立ちのスタンディング・オベーション。訳が分からないが参った!てな感じ。『ジャズ大名』の面白さを作り手が理解している。これはフェスだ。
是非観に行って頂きたい。

夜の初めの数分間
劇団牧羊犬
インディペンデントシアターOji(東京都)
2023/12/13 (水) ~ 2023/12/19 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
フェルナンド・メイレレス監督の『ブラインドネス』を彷彿とさせる設定。
ある時突然、世界中のガラスやレンズや鏡に人間が映らなくなった。鏡の原理とは反射した光を網膜が電気信号に変えて脳が認識する訳だが、人間の姿だけを脳が認識しなくなったのか?とにかく認識出来ないので自分の姿を自分で見ることは不可能。鏡も水面もショーウィンドウも写真も映画も人間だけは写らなくなる。テレビ番組もセットに声だけになり、アニメや人形劇がメイン、エンターテインメントの主流はラジオに戻ることに。
いわゆる「現象」が始まって24年経った。
人々は自分の姿を確認する為に、似顔絵を描く絵描きを「カガミ」と呼び重宝することに。言葉の表現で姿を実況解説する者を「声カガミ」と呼ぶ。
美貌の大人気女優、神戸(ごうど)ひまわりは極秘出産の為、長期休養に入る。ちょうどそのタイミングで「現象」が始まった。産まれた娘、画子を自分専属の「カガミ」として育てるひまわり。毎日毎日母の顔を写生させられる画子。天才的な画力とセンスを兼ね備えた画子は少女にして「ミラー・グランプリ」で優勝。出自を隠して人気「カガミ」となる。
神戸ひまわりに井上薫さん。最早、今作は井上薫オン・ステージ。プライドの高いナルシシスト、嫌味な大女優を素のように演じてみせる。彼女の出ているシーンは全て面白い。ファンは必見。元は間違いなく取れる。
娘の画子に平体まひろさん。全く彼女のイメージとかけ離れたひねくれてすさんだ毒舌家。ボサボサの髪は「た組。」の加藤拓也に寄せているように見えた。
凄い発想をする作家、ワンポイントSFとして面白い。井上薫さんは恐ろしい。
是非観に行って頂きたい。

#34「闇の将軍」四部作
JACROW
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2023/12/08 (金) ~ 2023/12/17 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
第0話『やみのおふくろ』
初演2018年、第4回えんとつ王決定戦(新潟で行われた短編演劇フェスティバル)。半年後に東京で再演。正味20分程の短編。
昭和21年(1946年)から昭和22年(1947年)まで。
初の選挙で敗北、信じて金を渡した有力者に裏切られたと喚く角栄(27歳)を母は諭す。田中フメ役、宮越麻里杏さんが「あんにゃ(長男へ呼び掛ける新潟弁)」と。田中角栄役狩野和馬氏との二人芝居。子供の頃、どもりを克服する為に母に渡された漢詩。何てことはない話なのだがこの二人の織り成す世界が美しい。何というか、そこに嘘がない。
アフタートークの狩野和馬氏の佇まいが西尾友樹氏に似ていた。一流の俳優の醸し出す雰囲気。デ・ニーロとかパチーノとかジョー・ペシとかそんな奴等に酔わされて映画館に通い詰めたもの。マーティン・スコセッシの『アイリッシュマン』に酔い痴れた連中はこういう作品を一度は観てみるべき。
是非観に行って頂きたい。

#34「闇の将軍」四部作
JACROW
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2023/12/08 (金) ~ 2023/12/17 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
第3話『常闇、世を照らす』
2020年初演。
政界叙事詩として完成されたジャンル。こんなやり方があったとは。脚本に唸らされる。
昭和49年(1974年)から平成5年(1993年)まで。
ロッキード事件には余り触れない。失脚した田中角栄が何とか時期を待って返り咲く雌伏の時代。観客は彼が返り咲くことはないことを知っている。しかし舞台上の角栄はずっとそれを信じて待ち続ける。決してこんな所で終わってなるものか!「天命」という言葉を何度も何度も繰り返す角栄。彼はそれだけを頼りにしぶとく生き延びる。
内閣総辞職、逮捕、自民党離党、それでも自民党最大派閥「田中派」の支配者として君臨。「影の総理」、「闇将軍」と呼ばれ党内人事を掌握。
盟友・大平正芳役、内田健介氏が素晴らしい。「なあ昔、俺達が夢見た日本になったのかなあ。」
山東昭子に福田真夕さん、菅野貴夫氏と踊る健康体操。
秘書を3役演じ分ける青木友哉氏。
辻眞佐に江口逢さん。
田中眞紀子に川田希さん。声を似せる。
小沢一郎に菊池豪氏。なんか意外な配役。
金丸信に岡本篤氏!役者が揃った!
竹下登(今里真氏)がキーマン。
竹下登の十八番、『ズンドコ節』。
講和の条約 吉田で暮れて
日ソ協定 鳩山さんで
今じゃ角さんで列島改造
10年たったら竹下さん
角栄側からの視点で政界を見るとこんなふうに見えていたんだなあ。いろんな出来事に合点がいった。
竹下登、金丸信、小沢一郎による「創政会」旗揚げによるクーデター。(後の「経世会」)。
是非観に行って頂きたい。

クリスマス・キャロル
劇団昴
座・高円寺1(東京都)
2023/12/02 (土) ~ 2023/12/10 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
去年観て随分考えさせられたので今年も観た。
主演の宮本充氏は三國連太郎、夏八木勲、堀田眞三ライク。
死を前にした現実主義者の『パウロの回心』が描かれる。
①何故、自分はこんな人間になったのか?
②今、まだ自分にやれることはあるのだろうか?
③もう時間はない。
使いっ走りの少年や妹役等の上林未菜美さんが良かった。何か中野亜美っぽさがある。
市川奈央子さんは善良なモブをこなしつつ、スラム街の魔窟での盗品売買では邪悪な掃除婦を怪演。人間の邪悪さ醜悪さをこれでもかと見せ付ける。更にカーテン・コールでの『きよしこの夜』の合唱では美声が唸った。
小道具の七面鳥が良い出来。
第二の聖霊が自分の上着の下に隠れている二人の汚れた子供を紹介する。「男の子が“無知”で、女の子は“貧困”。男の子の額には“破滅”と記されてある。さあこれを否定してみろ!」
スクルージの悲痛な叫び。
「未来は変えられないのか?せめてティムだけでも!」
来年もきっと観に行くだろう。

#34「闇の将軍」四部作
JACROW
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2023/12/08 (金) ~ 2023/12/17 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
第2話『宵闇、街に登る』
2018年初演、2020年再演。
これは傑作。笠原和夫の実録ヤクザ映画と『ゴッドファーザー』を融合したような。Netflixでドラマ化した方がいい。『ゴッドファーザー PART II』のように過去と現在を同時進行でずらして作品化すべき。そんな妄想するぐらい面白い。
説明の為、入る字幕スーパーがツッコミと化してドッカンドッカン沸く。
「角福戦争」と呼ばれる佐藤栄作の後継者争い、田中角栄対福田赳夫が主軸。昭和46年(1971年)から昭和47年(1972年)まで。
田中角栄の後援会、越山会(えつざんかい)。「越山会の女王」と称され、角栄の秘書を33年務めた佐藤昭(あき)。認知されていないが角栄の娘を産んでいる。
人気ワイドショー番組、「3時のあなた」を上手に活用。山口淑子(李香蘭)!
日米繊維交渉の名台詞「2000億円よろしく頼む」。
中曽根康弘に谷中恵輔氏。ペナルティのわっきーに見えた。
「元帥」木村武雄に菅野貴夫氏。塩見三省っぽい。
「俺の趣味は田中角栄」、二階堂進に山森信太郎氏。
キーマンとなる竹下登に今里真氏。本当にそう見えてくる。
山口淑子に木下祐子さん。客席を回って歌うシーンは盛り上がった。
佐藤昭に小林あやさん。凄く角栄の人格に厚みが出る助演。
秘書の早坂茂三に青木友哉氏。
これは一つの到達点。
是非観に行って頂きたい。

#34「闇の将軍」四部作
JACROW
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2023/12/08 (金) ~ 2023/12/17 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
第1話『夕闇、山を越える』
2016年初演、2018年再演、2020年再々演。
昭和22年(1947年)から昭和32年(1957年)まで。
冒頭、田中角栄の選挙演説から始まる。とにかく新潟県民の暮らしを良くすること、その熱意。現世利益の追求、あやふやな言葉は決して使わない。具体的に何を為すべきか。『全身小説家』のように『田中角栄』という一つのジャンルの体現。誰にも真似などできない。一人の“天才”が『太閤記』宜しく『国盗り物語』を現代でやってのける痛快さ。敗戦後のどん底の日本をどうしたら繁栄に導くことができるのか?
東京、神楽坂の芸妓置屋「金満津」で出会った円弥(辻和子)が重要な位置を占める。昭和21年(1946年)に初対面、翌年二十歳にして角栄が旦那(パトロン)になる。認知された息子2名(娘は早世)、47年間妾として尽くした。
憲法改正をして、アメリカの属国から早く逃れたい岸信介。
対する池田勇人は国の威信よりまず国民の生活、軍事費のかからない分、経済成長に力を入れて通商国家として身を立てるべきとの主張。
どちら側からも陣営に誘われる角栄。
田中角栄は狩野和馬氏。代えは効かない。有田哲平っぽくもある。
盟友、大平正芳に内田健介氏。二瓶正也っぽい。池田勇人派。
池田勇人に佐藤貴也氏。
岸信介(のぶすけ)に林竜三氏。
岸信介の実弟、佐藤栄作に土橋建太氏。「“エイちゃん”と呼べ」。宮台真司っぽい。
福田赳夫(たけお)に小平伸一郎氏。パンクブーブーの佐藤哲夫っぽい。
円弥に井口睦惠(むつえ)さん。
腹心の秘書、本間幸一に青木友哉氏。
存在だけでかなり重要な母親、田中フメに宮越麻里杏さん。今作も完全に成り切ってみせる。完全憑依女優。この方はもっと評価されて然るべき。
そろそろ中盤かと思ったら終わってたぐらい時間の経つのが早い。田中角栄はキツイ発言をした後、必ずハーッハッハッと豪快に笑う。これのあるなしで随分イメージが変わったろう。
是非観に行って頂きたい。

モニュメント
マチルダアパルトマン
イズモギャラリー(東京都)
2023/12/06 (水) ~ 2023/12/17 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
【赤】
メチャクチャ面白かった。
マチルダアパルトマンと言えば永遠の彼女、ハルカ。女子は彼氏を「キミ」と呼ぶ。部屋に散りばめられた映画『レオン』のコラージュアート。やたら並べられたカラフルなTシャツ。アウターを着たり脱いだり。看板女優、松本みゆきさんは劇団そのもののよう。
小学生の時、茂みの中で死にかけた野良猫に魚肉ソーセージとバスタオルを持って行った思い出。次の朝、様子を見に行くと冷たくカチカチになっていた。
部屋の主、藤木陽一氏は13年程この部屋に暮らしているカラオケ店のバイト、32歳。半年前から歯科衛生士の松本みゆきさんと同棲している。松本みゆきさんは結婚を考えたい歳頃なのだが藤木陽一氏は話をいつも聞き流す。近所の人の飼っていたエミュー(オーストラリアの一回り小さいダチョウ)が逃げ出したそうだ。松本みゆきさんはそこらを探しに行こうと言う。
昔の彼女に古着大好きな樋口双葉さん。
カラオケ店の店長にてっぺい右利き氏。彼の登場で客席がざわつく。取扱注意の不穏な劇薬。下手に扱うと作品が乗っ取られてしまう。彼のファンは今作も必見。
部屋の時系列が混線していて過去と現在がシャッフルされて提示。シーンの繋ぎ方が秀逸。
藤木陽一氏の何事も決めかねる浮遊したアイデンティティは何か確かなものに辿り着くことが出来るのだろうか?
是非観に行って頂きたい。

仮面劇・預言者
フライングシアター自由劇場
高田馬場ラビネスト(東京都)
2023/12/05 (火) ~ 2023/12/12 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
『フライングシアター自由劇場』27年振りの再始動作品。
ポーランドの劇作家で風刺作家として高名なスワヴォーミル・ムロージェクの『予言者』が原作。
ある国が荒れて群衆が首相官邸に押し掛けている。首相はもうすぐ“預言者”が現れて神託を述べると宥める。預言者を磔刑に掛け、生贄に捧げるのが古来よりの人間の慣わしのようだ。東方の三賢者もおこぼれを預かりにやって来る。だがやっと到着した“預言者”は何故か二人いた。
一億年前のドラゴンの卵が孵る話が挿話される。存在しない架空の生き物が孵るなんて。
開場時から出演者全員舞台をうろついている。楽屋がない設定で、出番のない時も上手か下手で待機している。
東方の三賢者トリオ、串田十二夜(じゅにや)氏はジャズ調で歌が上手い。太っちょキャラでコミカルな近藤隼氏。柳本璃音さんは華がある。
二人同じ動きになってしまう真那胡敬二氏と大森博史氏、凄く豪勢なキャスティング。いぶし銀。
首相に井内ミワクさん、妙な味。小間使いに串田和美氏。
コント崩れみたいなふざけたノリが続き、「ちょっと失敗したかな」と思う。だが脇に腰掛けていた串田和美氏が仮面を着け役に入った途端、世界は一変する。北野武だったり、川谷拓三だったり、三國連太郎だったり、砂塚秀夫だったり。声に秘密があるのかも知れないが、ぐっと惹き込まれ集中して観てしまう凄味。独りで映画を演っているようだ。いつの間にかに観入ってる。噺家の声色にも通ずるのかも知れない。金の取れる俳優。
劇中歌『草原のライオン』が凄く良かった。
是非観に行って頂きたい。

外地の三人姉妹
KAAT神奈川芸術劇場
KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)
2023/11/29 (水) ~ 2023/12/10 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
舞台上には赤茶けたいろんな小道具が雑然と転がっている。年月を経て赤錆が浮いているようにも見える。開演前、女中のサヨ役の佐山和泉さんが鏡台に座りメイクを始める。ガチで老婆になるまでをやってのける。
1910年日韓併合、日本の植民地とされた朝鮮。舞台は咸鏡北道(かんきょうほくどう=ハムギョンブクト)の都市、羅南(らなん=ナナム)。すぐ北東にソ連のウラジオストクがある緊迫した土地。現在は北朝鮮の領土になっている。
①1935年、父の一周忌であり三女の誕生日でもある一日から幕を開ける。普通学校(朝鮮人学校)の教師をしている長女(伊藤沙保さん)、中学校教師(夏目慎也氏)に嫁ぎ近所に住んでいる次女(李そじんさん)、高等遊民を気取る長男(亀島一徳氏)、女学校を卒業した三女(原田つむぎさん)。この家に長く仕える女中(佐山和泉さん)、離れに下宿している軍医(佐藤誓氏)と“男爵”と呼ばれる中尉(田中佑弥氏)。
赴任して来た中佐(大竹直氏)がこの屋敷に挨拶に来る。
やたら下手糞な俳句を詠む中尉、波佐谷聡氏。板尾創路似。
下手糞な太鼓を叩く伍長、松﨑義邦氏。
長男・亀島一徳氏は大学教授を目指していたが挫折。朝鮮の有力者の娘、ソノク(アン・タジョンさん)と交際している。
ソノクの下女、鄭亜美(チョン・アミ)さん。
近所に住む日本語が下手糞な下男、イ・ソンウォン氏。ピエール瀧似。
第二幕は1936年、第三幕は1939年、第四幕は1942年。
休憩後の第三幕が面白かった。
MVPは屋敷に嫁いで来る長男の嫁ソノク役のアン・タジョンさん。日本人のイメージする韓国人女性を見事に表現。これが火病なのか?
鄭亜美さんも名助演。ラストの舞も美しい。
次女の駄目亭主、夏目慎也氏はトレンディエンジェルのたかしっぽい。
博打に溺れる長男・亀島一徳氏の屑っぷりも痛快。
三女・原田つむぎさんさんは『生きる』の小田切みきの雰囲気。
“男爵”、田中佑弥氏はカンパニーデラシネラの『気配』で印象深い。長身なので絵になる。
『東京節』のメロディー(「ジョージア行進曲」)で韓国独立を煽る当時の朝鮮の歌が流れる(「独立軍軍歌」)。興味深い。

お局ちゃん御用心!!!
片岡自動車工業
駅前劇場(東京都)
2023/11/29 (水) ~ 2023/12/03 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
余りの絶賛の嵐に逆に「何かつまらなそうだな」と斜に構えていた。キツキツの座席配置にげんなりして「失敗した」と。そんな気分で開幕して観終わってみると···。
いやこれ観に行って正解。笑いに対してかなり真剣、レベルが高い。ガウディの建築物のように緻密で偏執狂的、完成図が100%頭に見えている作家(片岡百萬両氏)の作り方。笑いを超えて感心した。
クライマックスの殺陣をつけるシーンは延々と狂った笑いが炸裂。ゴッドタンの「ザ・大声クイズ」や『キス我慢選手権 THE MOVIE2』を観ている感覚。X-GUNの説教ネタや『珍遊記』のようにメタな作品世界をはみ出した笑い。
さんまやいかりや長介のように狂気の座長ツッコミを繰り返す春日局、袋小路林檎さんがMVP。最早何を観せられているのかすら分からない。チャウ・シンチーの『西遊記〜はじまりのはじまり〜』に笑いのテイストが似ているかも。圧倒された。
バズ・ラーマン映画のような色鮮やかな色彩の衣装(植田昇明氏)がきゃりーぱみゅぱみゅ系で振付(Hee-sunさん)がももクロっぽい。皆箱推しになるような結束力。細かい表情やアドリブのような動作も完璧に仕込まれた演出。開演から終演まで計算され尽くしたレヴュー。
大奥に奉公に上がった二人の女中、ヤンキーキャラの川嶋芙優(ふゆ)さんと中国語堪能な木原実優さん。
殿方が戦場に出払った江戸城では女達の権謀術数渦巻く権力争いの日々。
リーダー格の春日局(袋小路林檎さん)と正妻のお江の方(真壁愛さん)が睨み合う。182cmの自称絶世の美女、杉田のぞみさん。幽霊のような存在感、延命聡子さん。酒びたりの寺詣好きは廣瀬響乃さん。くノ一(川上藍香さん)は危急の事態を防ぐ為、常に闇に潜んでいる。
お江の方の娘、千姫(堀内玲さん)と弟の竹千代(椎木ちなつさん)は遊びたい盛り。
真壁愛さんはどことなく菜々緒っぽかった。
川嶋芙優(ふゆ)さんはたかみなと川栄を足したような生意気な可愛らしさ。
堀内玲さんは「チキチキバンバン」(QUEENDOMの曲)で華麗に踊る。やたらT-ARAっぽい曲。
椎木ちなつさんはO次郎キャラ。
伊藤アルフ氏は女性だと思っていた。
終演後に撮影OKのダンスタイムもある。グッズのセンスも抜群。猛スピードで人気劇団になるだろう。
是非観に行って頂きたい。

俺(たち)が居ないと世界は平和
南京豆NAMENAME
OFF OFFシアター(東京都)
2023/11/29 (水) ~ 2023/12/03 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
チーム星
岡本セキユ氏、マシンガンズの滝沢秀一っぽい。
梢栄(こずえ)さん、何か妙に色気がある。
佐藤友美(トム)さん、狂気の暴力女囚。
環幸乃さん、背中丸出しで背骨のラインがエロかった。腕が異常に細い。
日替わり:河村慎也氏、定位置。
多分『涼宮ハルヒの憂鬱』の大学生現実バージョン。(『ハルヒ』は全く観ていないので予想)。何処にも属せないはぐれ者達が集まる奇妙なサークルでのカッコ悪い青春。宇宙に逃避し、現実を諦め、何とか自分を変えようと努力したものの、気が付くとまたいつもの場所、一歩も何処へも踏み出せないままだった。カルマにプログラミングされた行動をただひたすら繰り返すのみ。「駄目な奴は何をやっても駄目」という真理。
環幸乃さんがとても良かった。「ぶーん」。
Beatlesの「In My Life」が効果的に流れる。

空ヲ喰ラウ
劇団桟敷童子
すみだパークシアター倉(東京都)
2023/11/28 (火) ~ 2023/12/10 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
新境地開拓的な斬新さもあり、配役にも捻りを感じた。お馴染みの役柄ではなく、ちょっと意外な設定に。勿論いつもながらの重厚な世界観はどっしり地に根を下ろしたまま。リアルに地の着いた現実を歩き通した果てからかすかに垣間見える奇跡。
『ラ・カンパネラ』〈鐘〉はニコロ・パガニーニ作曲の協奏曲をフランツ・リストが編曲したピアノ曲。耳に入れたAirPodsでそれを聴きながら陶酔するシーンが印象的に繰り返される。空に一番近い場所で神のメロディーに打たれながら溶けていく。
空に一番近い所でする仕事である為、空師(そらし)と呼ばれている伝統的な職人達の住む村。高所や重機の入れられない狭所で高木を伐採する。剪定、枝打ち、下刈り、玉切り。今作では山の森林保全整備を国から受注している。
由緒正しき空師の名門「中村組」は土砂崩れの事故に巻き込まれてからというもの傾きっ放し。先代の息子の嫁である板垣桃子さんが棟梁として一人気を吐く。怪我で空師をやれなくなった息子はびっこを引き、杖代わりの金属バットを振り回しては日がな一日酒を喰らう。村の鼻つまみ者を稲葉能敬(よしたか)氏が森下創氏っぽく怪演。
かつて自分達のもとで修業し独立していった「梁瀬組」、今では比べ物にならない会社に成長。大きな仕事を受注したことから「中村組」に声を掛けてくる。
もりちえさんが渋く寡黙な中村組の女空師役。いぶし銀でカッコイイ。
出戻りの井上カオリさんはムードメーカー、喋りで沸かす。
空師を目指している大手忍さんは茶髪の都会っ子で活躍。
梁瀬組の棟梁は原口健太郎氏、奥さんの藤吉久美子さんが美しい。娘の井上莉沙さんはセーラー服で和ませる。
山に侵入して来たよそ者役はある意味主演の吉田知生(ともき)氏。一見、今野浩喜(元キングオブコメディ)っぽいユーモラスな雰囲気で観客に好感を持たれ易い。傑作、『飛ぶ太陽』の主演も素晴らしかった。今作では金髪が「やる気、元気、モリシ!DON'T STOPだ、この野郎!」で一世を風靡した森嶋猛を思わせる。
かなり身体を酷使する動きが多く、怪我には気を付けて貰いたいもの。板垣桃子さんはかなり鍛えているのだろう。
是非観に行って頂きたい。