生きてるうちが華なのよ TAIAI 公演情報 グワィニャオン「生きてるうちが華なのよ TAIAI」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    今作を観れた幸運に感謝。素晴らしい時間を過ごせた。
    多分作り手の人達と自分が観てきたもの夢中になってきたものの多くが重なり合っているのだろう。何故今作を作りたかったのかが凄く理解出来た。
    ジョージ・A・ロメロが産み出したジャンル、“ゾンビ映画”。1968年モノクロの『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』は『デビルマン』の元ネタの一つだった。ルチオ・フルチの3部作、リチャード・マシスン原作の『地球最後の男オメガマン』、藤子・F・不二雄の『流血鬼』、相原コージの『Z 〜ゼット〜』、大槻ケンヂの『ステーシー』、amazarashiの『虚無病』。今作のノリは映画化もされた人気漫画『アイアムアヒーロー』っぽい。
    全てが崩壊した世界で逆にハッキリしてくるのは自分自身。一体何を求めて生きてきたのか?何を世界に求めていたのか?

    開幕の主人公、わたなべかずひろ氏が最高。若き日の坂上二郎と爆笑問題田中を合わせたようなキャラで、すぐに観客は作品世界に嵌まってしまう。マッチングアプリで浮気していることが同棲中の彼女(桃井絵理香さん)にバレて喧嘩。出て行った彼女はゾンビに噛まれて帰って来る。
    この二人の関係性が泣ける。彼女の携帯のメモに自分の好きな所が100個記されており、それを読みながら主人公は落涙する。余りに二人の愛がリアルだと思ったら、本当の夫婦だった。

    喫茶兼スナックのレトロな店に逃げ込んだ人々。吉田拓郎の『人間なんて』、『元気です。』のジャケットが飾られている時点で敬遠したい重い店。まさかのレーザーカラオケ。そこを基地としての対リビングデッド攻防戦。
    婦人警官二人組、平安山彩(へんざんあや)さんと園山ひかりさんがやたらチャーミングだった。
    僧侶の魚建氏は声が違うので別人かと思った。流石の声優、役柄によって全く声が違う。
    作演出に加え東電の電気工事請負人、西村太佑氏は最早MARVEL並みのヒーロー。今や巨匠のピーター・ジャクソン監督『ブレインデッド』を思わせる活躍ぶり。何か梅沢富美男っぽかった。カッコイイ!

    大口を開けたままの死人、橘佳祐氏も最高だった。この劇団、モブキャラの本気具合がヤバい。

    “TAIAI”とは「逢いたい」を上手く伝えられないゾンビ語だと受け取った。
    吉田拓郎の『今日までそして明日から』がテーマソング。
    それは生者と死人が心で綴るラヴソング。
    是非観に行って頂きたい。

    ネタバレBOX

    主人公のモノローグが普通にブツブツ呟いているヤバイ奴だったことが判明し、後半はそのブツブツを玉城美来さんが引き継ぐ。渡辺利江子さんと上高涼楓(すずか)さんの母娘の物語、宮崎重信氏と関田豊枝さんの夫婦の物語。

    ルチオ・フルチの『サンゲリア』はスピルバーグの『ジョーズ』が大ヒットしていたので「ゾンビVSジョーズ」を急遽売りに組み込んだ。ストーリーとは何の関係もない所でゾンビメイクの役者が海の中で鮫と格闘する。初めてこれを観た時は本当に感動したもの。自分がエンターテインメントに求めているものの一つがこれ。才能の無駄遣い。

    タランティーノが大絶賛して再映までしたルチオ・フルチの『ビヨンド』。頭部を破壊しないとゾンビには効かない、と再三言われているにも関わらず皆が撃つのは胸。その理由は頭部を破壊する特殊効果には金が掛かる為、そう何度もやれないからだった・・・。

    ちょっとラストの演出が暑苦しく、勿体無くも感じた。もっと違う斬り方があった筈。一々失ってみなければ有難みを感じ取れない人間の性(さが)。失くしてしまってから後悔することばかり。その性を生と死の破綻した世界で顕在化することこそが今作のテーマ。肉体はやがて腐り落ちるだろう。魂は精神は何処に消えるのか?どう仮想したら安らげるのか?優しかったあの人のあたたかな心は何処へ?死んだ人間と共に生きていく方法論。

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    2023/11/17 20:23

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