実演鑑賞
満足度★★★★
始まりはつげ義春の『ねじ式』を思わせる。水木しげるのアシスタントをしていた頃、下宿先の屋上で見た夢を描いたもの。
ぼんやりと夢なのか記憶の中なのか妄想なのかふわふわした場面を彷徨い歩く。目玉探偵が現れ、回想捜索をアシストしてくれる。記憶のパラレル・ワールド。記憶の世界線。無数の有り得たかも知れない可能性が枝分かれしていく。
唐十郎作品のような設定だが、筒井康隆作品みたいなムードが自分好み。
どうもここは誰かが覗き込んでいる世界らしい。その証拠に空に巨大な目玉が浮かんでいる。
ああケイトウが始まった。夕闇の赤に塗り潰されていく。これに呑まれると自分を失くし誰かの設定に引き摺り込まれてしまう。
彷徨い歩く“私”は中山祐一朗氏。『オールド・ボーイ』のチェ・ミンシクを思わせる。別れた前妻との、全く交流がないままになってしまった息子を追憶する。
“あいつ”こと息子は大久保祥太郎氏。弟の坂本慶介氏と日替わりで入れ替わるWキャスト。
息子の嫁役は智順(ちすん)さん。篠田麻里子っぽい美人。彼女が一日の行動を述懐するシーンが今作の一つの肝。
息子のマンションの住人達、村岡希美さんと富岡晃一郎氏。村岡希美さんは作品内に収まらないスケールで最早一つのジャンルそのもの。お釈迦様の手の上で作品が踊らされているみたいだった。
富岡晃一郎氏は今作では「とろサーモン」の久保田みたいなスプラトゥーン中毒。
目玉探偵に長塚圭史氏、妖怪人間ベムに見えた。
秘書の緑は李千鶴さん。流されていく女。
もう一人の目玉探偵に伊達暁氏。今作ではリリー・フランキーっぽい。
喫茶店のウエイトレスに内藤ゆきさん。この人の伊達暁氏との遣り取りがかなり面白かった。
目玉探偵は「時空のおっさん」の回想世界線バージョン。
タイトルはジェームス・ディーンの遺作『ジャイアンツ』からだろう。
是非観に行って頂きたい。