外地の三人姉妹 公演情報 KAAT神奈川芸術劇場「外地の三人姉妹」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    舞台上には赤茶けたいろんな小道具が雑然と転がっている。年月を経て赤錆が浮いているようにも見える。開演前、女中のサヨ役の佐山和泉さんが鏡台に座りメイクを始める。ガチで老婆になるまでをやってのける。

    1910年日韓併合、日本の植民地とされた朝鮮。舞台は咸鏡北道(かんきょうほくどう=ハムギョンブクト)の都市、羅南(らなん=ナナム)。すぐ北東にソ連のウラジオストクがある緊迫した土地。現在は北朝鮮の領土になっている。

    ①1935年、父の一周忌であり三女の誕生日でもある一日から幕を開ける。普通学校(朝鮮人学校)の教師をしている長女(伊藤沙保さん)、中学校教師(夏目慎也氏)に嫁ぎ近所に住んでいる次女(李そじんさん)、高等遊民を気取る長男(亀島一徳氏)、女学校を卒業した三女(原田つむぎさん)。この家に長く仕える女中(佐山和泉さん)、離れに下宿している軍医(佐藤誓氏)と“男爵”と呼ばれる中尉(田中佑弥氏)。
    赴任して来た中佐(大竹直氏)がこの屋敷に挨拶に来る。

    やたら下手糞な俳句を詠む中尉、波佐谷聡氏。板尾創路似。
    下手糞な太鼓を叩く伍長、松﨑義邦氏。
    長男・亀島一徳氏は大学教授を目指していたが挫折。朝鮮の有力者の娘、ソノク(アン・タジョンさん)と交際している。
    ソノクの下女、鄭亜美(チョン・アミ)さん。
    近所に住む日本語が下手糞な下男、イ・ソンウォン氏。ピエール瀧似。

    第二幕は1936年、第三幕は1939年、第四幕は1942年。

    休憩後の第三幕が面白かった。
    MVPは屋敷に嫁いで来る長男の嫁ソノク役のアン・タジョンさん。日本人のイメージする韓国人女性を見事に表現。これが火病なのか?
    鄭亜美さんも名助演。ラストの舞も美しい。
    次女の駄目亭主、夏目慎也氏はトレンディエンジェルのたかしっぽい。
    博打に溺れる長男・亀島一徳氏の屑っぷりも痛快。
    三女・原田つむぎさんさんは『生きる』の小田切みきの雰囲気。
    “男爵”、田中佑弥氏はカンパニーデラシネラの『気配』で印象深い。長身なので絵になる。

    『東京節』のメロディー(「ジョージア行進曲」)で韓国独立を煽る当時の朝鮮の歌が流れる(「独立軍軍歌」)。興味深い。

    ネタバレBOX

    ②1936年、長男に嫁いで子供をもうけたソノク、徐々に家を仕切り始める。男が女装し女が男装する仮装の祭が行われている。中佐と次女は不倫関係に。
    ③1939年、町で大きな火事が起こり、被災者への救援活動を行う三人姉妹。中佐への愛を次女が姉妹に告白する。
    ④1942年、“男爵”と結婚することを決めた三女。だが“男爵”は決闘で殺されてしまう。中佐は南方戦線へと派遣、次女との別れ。

    全てを失い「死にたい」と叫ぶ妹達に長女は言う。「生きるのよ!先に進むの!」「先って何処?」「きっと皆が見ている方よ。」
    皆同じ方向を見て去って行く日本人。
    残った朝鮮人達が何も失くなった大地でゆっくりと踊り出す。

    『三人姉妹』としても植民地時代の朝鮮モノとしても中途半端。ガッチリ『三人姉妹』を描くか、全くの別物として振り切った方が良かった。英国傑作ミステリー『荊の城』をパク・チャヌク監督が日本統治時代の朝鮮に翻案した韓国映画『お嬢さん』なんか素晴らしかった。三人姉妹を朝鮮人にした方が良かったのでは。朝鮮人の名家の三人姉妹が日本の侵略と崩壊を身を以て味わいその実像を顕現させる話の方が観たかった。

    『三人姉妹』の魅力は三人が確かに生きていたことだろう。抗えない時代の波に呑まれながらも必死に自分の人生を生きようとした。今作では次女の不倫と別れ、三女の“男爵”との結婚もエピソードの踏襲にしか見えない。そうでなくてはならない必然性が伝わらない。舞台を朝鮮に変えたアレンジに意味がない。唯一、ソノク(アン・タジョンさん)の言い分だけが筋が通る。日本人の『三人姉妹』公演が終わった頃、朝鮮人達が「やれやれ」と顔を出すような感じ。そうではなく、本当に共感できる『三人姉妹』が観たかったのだ。

    チェーホフ作品は皆似通っているので、『天保十二年のシェイクスピア』みたいに一緒くたにしてみてはどうだろう?もうあるのかも知れないが。

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    2023/12/04 19:12

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