latticeの観てきた!クチコミ一覧

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その探偵の名、〜エコソン少年の殺人〜

その探偵の名、〜エコソン少年の殺人〜

インプロカンパニーPlatform

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2018/05/19 (土) ~ 2018/05/27 (日)公演終了

満足度★★★★★

観客参加型の即興的要素の多い推理劇です。基本的にコメディですが犯人当ての部分はガチです。なかなか面白い方式で私は大いに楽しめました。こういうものの愛好家には絶対のお勧めです。

カーテンコールで、その場限りのものなのでネタバレという概念はなく何でも書いて結構という発言があったので、少し丁寧に紹介しておきます。

「インプロカンパニーPlatform」という団体は「即興と台本の越境(コンセプト・インプロ)」を旗印に、いろいろなイベントを主催しているようです。観客からお題をもらったり、重要な選択を観客に委ねたりするのが特徴です。

今回の「その探偵の名、~エコソン少年の殺人~」ではおおよそ以下のように仕掛けになっています。私も初めての観劇なので細部で間違いがあるかもしれませんがご容赦を。

まず短い殺人のシーンの後、刑事と7人の容疑者が登場します。

容疑者は被害者の愛人や家政婦、会社の部下などです。
容疑者は
殺意/嫉妬/尊敬/母性/友情/依存/恐怖/愛情
と書かれた8枚のカードから1枚を引きます。これは容疑者が被害者に対して持っていた感情を表します。もちろん「殺意」を引いた者が犯人となります。だれが何を引いたかは観客にも本人以外の役者にも分かりません。

容疑者はその感情を持っていることを表すようにアドリブを加えて台本を演じます。どの程度、感情を表に出すかは役者に委ねられているようで、さりげなく、しかし後で振り返ったときに「あれがそうだったのか、なるほど!」といわれる演技をおそらく目標としているのでしょう。

本編が始まる前に、殺された被害者の職業を観客に決めてもらいます。私の回は「不動産」という発言だったので「不動産屋の社長」ということになりました。以下、台本をそのように読み替えて演技をするのです。

そこからは刑事(と一部で観客)の指定した容疑者(1~2名)と被害者との最近のエピソードが演じられます。それを見て刑事がその容疑者の持っている感情(=引いたカード)を当てます。ここはいくつかの候補から観客の拍手で決めたりもします。当たった場合は以後、刑事と一緒に推理をすることになり、外れた場合はそのまま演技を続けます。一定の長さの演技をしますので、そう何回も当てる機会があるわけではありません。私のときは6~7回目くらいで犯人を当てましたが、それ以前の公演では時間切れで当てることができなかったそうです。刑事は被害者役も演じるので、忙しくて推理に集中できないので無理もありません。

観客がすることは上で書いた以外に最初に配られる小さな紙にキーワードを書いて提出することがあります。その紙は集められ、途中の寸劇の中でくじ引きされて使われ、話をカオスに陥れたり、歌の題名になったりします。なお、解答用紙を回収して正解者には賞品というような企画はありません。

劇の途中で意見を聞かれたりするのは困るという人は、×マスクをもらうことができますし、前2列、通路側2列を避ければまず聞かれないでしょう。

なんだか説明がよく分からないという方も含め、ここまで読んだ方はぜひ劇場へ!

はりこみ

はりこみ

殿様ランチ

駅前劇場(東京都)

2018/05/16 (水) ~ 2018/05/20 (日)公演終了

満足度★★★★★

チラシの図案からは松本清張風の刑事ものを想像しましたが実際は180度違うものでした。しかし、その勘違いが幸いして今まで観たことのないような舞台に、脳味噌が大喜びです。マンガでいうと、中崎タツヤかポテチ次郎が書いた「はりこみ」という題名の4コマあるいは短編の連作を読んでいるような感じもしました。ただし、あくまで私のイメージで全然違うじゃないかと後で追及されても困ります(笑)。

会話劇ですが、普通の会話から、いつもはかけているリミッターを外したものが多く、本音より先に行き過ぎてしまうものもあって、笑いながらも結構怖くなることもあります。もちろん、ほとんどは「ぐはは」と笑ってしまうものですが、「なるほど」と納得させられるものもある一方で、「それはないわ」というものも紛れ込んでいて油断ができません。

それぞれの会話は「はりこみ」とは関係のないものも多いのですが、全体としては確かに「はりこみ」だったなあと納得させられます。私の筆力、記憶力の欠如で実態にあまり迫ることができていませんが、(ドタバタでもエログロでもない)おバカな演劇を観たいという方には絶対のお勧めです。

NoBody,NoParty

NoBody,NoParty

東京AZARASHI団

シアターサンモール(東京都)

2018/05/16 (水) ~ 2018/05/20 (日)公演終了

満足度★★★★★

観客の笑いでシアター・サンモールが揺れてました。喜劇としての面白さに仕掛けの面白さが加わって、すっきりと笑いながら深く感心しました。アイディア勝負の面があるので肝心のところが書けないのが残念ですが、芝居のアイディアとか仕掛けとかが好きな人は必見です。

最後がグダグダべたべたになったので減点したいところですが、秘書役の那海さんにハートを射抜かれてしまったので星は5つです。

なおORICON NEWS 4/13 に那海さんのインタビューが載っています。
“5/16(水)から始まる舞台「NoBody,NoParty」に出演! 那海さんにインタビュー”

少しだけ引用すると

『あるお屋敷で連続殺人事件が発生する』という内容の舞台を上演する劇団の物語で、舞台で行われているお芝居の中でいろんなハプニングが起こってしまい、それをどう乗り越えられるか?というのを見せていく作品です。…

ということです。…から先はネタ晴らしになるので知りたい方は元記事をご覧ください。

底ん処をよろしく

底ん処をよろしく

東京ストーリーテラー

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2018/05/16 (水) ~ 2018/05/20 (日)公演終了

満足度★★★★

平成の今に、戦後間もなくから始まる大衆食堂がある。
頑固一徹の父を婚期を逃した娘が助けているが、そんな食堂も時代の流れで経営は今や風前の灯火。
そこを舞台にした常連さんと訳ありの新規客が巻き起こす(少し)笑って(大いに)泣ける物語、と書けばあとは皆さんの想像通りの昭和人情劇の王道の展開である。

役者さんも若い人からベテランまで適材適所で安定した演技を見せてくれる。こういうドラマの愛好家にはもちろん、そうでない方にも年に一度の観劇をお勧めしたい。

まあしかし、あまりに典型的でもう少しなんとか新しい試みはできないのかという不満もあるので星は4つ止まり。時代劇と同じで「余計なことはするな王道をまっすぐに進め」という方には星5つだろう。

途中で店の宣伝のビラが配られるので積極的に貰っておけば後で良いことがあるかも。

図書館的人生Vol.4 襲ってくるもの

図書館的人生Vol.4 襲ってくるもの

イキウメ

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2018/05/15 (火) ~ 2018/06/03 (日)公演終了

満足度★★★

入り口で渡されるチラシ束の中に二つ折りのパンフレットがあって中に3つの短編の概要が100文字強で書かれています。

普段あまり考える気のしないお勉強を芝居にして、そこそこ笑いもとりながらの手腕は素晴らしいとは思うのですが、ストーリーそのものは物足りなく感じました。

ネタバレBOX

観終わった私が概要をギューッと圧縮して書けば
#1 脳をコンピュータに移し替える話。
#2 衝動をコントロールできない話。
#3 人間関係と個人の意思の話。
というところでしょうか。
#1#2では脳の外部からの脳への刺激と意思の問題を扱い、#3ではより現実的な、マクロな意味での個人の意思への他人の意思の影響を扱っています。
ハングマン

ハングマン

パルコ・プロデュース

彩の国さいたま芸術劇場 大ホール(埼玉県)

2018/05/12 (土) ~ 2018/05/13 (日)公演終了

満足度★★★★

主役の田中哲司さんはいつもの安定感で、傲慢だが自信のない死刑執行人を演じます。そして秋山奈津子さんを始めとするベテラン勢がしっかりと脇を固め、その中に混じって18歳の富田望生(みう)ちゃんが素晴らしく良い味を出していました。

原作者のマーティン・マクドナーは劇作家、脚本家、映画監督でブラックコメディの名手として知られています。昨年(日本では今年公開)彼が監督した映画「スリー・ビルボード」が注目を集めました。この舞台「ハングマン」は2015年ロンドン初演、日本語版は今回が初演です。

パンフレット(1200円)は読みどころが多く楽しめました。武蔵大学准教授の北村紗衣さんの『「ハングマン」観劇ガイド【前編】』では、この作品を観るときは、倫理観とかを忘れておかしなところでは冷たい心で笑いましょうといっています。この論説を参考に少しだけお話の背景などを書いておきます。

 舞台は1965年のイギリス北部の片田舎、そこにハリー(田中)が妻のアリス(秋山)と開いているパブがある。パブもかなり盛況な時代。そのころロンドンなどの都市はビートルズに代表される若者文化で活気に溢れていた。娘のシャーリー(富田)はそんな都会に憧れて鬱々たる毎日。そのパブに集まるちょっとねじの緩んだ常連と突然やってきたよそ者が巻き起こすシュールでブラックなコメディ。
 ちょうどイギリスで死刑が廃止になって、ハリーがこれまでの仕事についてインタビューを受けるところからメインの話は始まる。振り返ってみると冤罪であったかもしれない事件(冒頭で死刑執行)があって雲行きが怪しくなってくる…。

大傑作とかいうものではなく、達者な俳優さんたちによる芝居らしい芝居という感じがしました。十分5つ星に値すると思うのですが、この作品の世界観が5つ星を拒否するような感覚にとらわれたので4つ星に留めました。

Y FUTAMATA vol.2

Y FUTAMATA vol.2

ロ字ック

小劇場B1(東京都)

2018/05/09 (水) ~ 2018/05/13 (日)公演終了

満足度★★★

『ぼんやりした話/セプテンバー』
作者の思い付きをそのままつないだもの。フィーリングが合うか合わないかの問題。私は合わなかった。

『Re:』
yozさんが書いていたように説教ぽいお話。くどい割に内容がない。

『カラオケの夜』
これだけ普通の演劇。下手な歌もはっきりしないセリフも友人の愚痴を聞いているようなリアルさがあった。他の二つで作られた気まずい空気のせいで損をしていたかも。

番外公演ということで実験だったのだろう。番外ものに行くのはもう止めようと思う。

1789‐バスティーユの恋人たち‐

1789‐バスティーユの恋人たち‐

東宝

帝国劇場(東京都)

2018/04/09 (月) ~ 2018/05/12 (土)公演終了

満足度★★★★★

小池徹平/神田沙也加/龍真咲の回を観劇。

このロック・ミュージカルは2012年フランスで初演、日本では宝塚版が2015年、東宝版が2016年が最初で今回は主役二人がそのままの再演です。会場は補助席が出ていて驚きました。90分+25分休憩+70分くらい。

若手の有名俳優の皆さんということでちょっとなめていたのですが、期待を大きく上回るものでした。

10人から30人くらいで踊るダンスはシンクロするもの、バラバラにダイナミックに踊るものどれも切れの良い素晴らしいものでした。とくに女性だけによる女性賛歌の踊りと歌には今までにないインパクトがありました。ダンスは私の好み(マイケル・ジャクソンの「スリラー」から最近の女性アイドルグループに至るグループのダンス)に完全に合っていました。惜しむらくは時間が短く、“ああもう少し続けて”と何度もため息をついてしまいました。もちろんこれは私のわがままで全体の構成上はこのくらいがベストだということは分かっているのですが…。

歌はみなさん期待通りですがそれを超えるところまでは行きません。また龍真咲さんが序盤になぜか不調で(終盤には復調していましたが)どうなることかと不安になりました。しかし、そこはソニンさんが好調だったので帳消しです。ソニンさんは以前も感心したことがあるのですが、今回もこのうまい人は誰と思ってチラシを見て納得しました(早く覚えろよ→私)。

ダンスも歌も主役級、準主役級以上にアンサンブルの方々が光っていました。そこには個々の力量も発揮させながら全体では調和させるというダンス演出(振付)のうまさも感じました。

お話しはこの種のものに共通のご都合主義のラブストーリーです。私はこういうものが刺さる時期をとうに過ぎていますが、ここをスルーしても十分楽しめるところもミュージカルの利点の一つです。

舞台装置は大掛かりで美しいものがいくつもあって圧倒されました。衣装も豪華でバラエティに富んだものです。そして役者さんも大劇場にふさわしく大人数でした(たまにある、大劇場なのに少人数で貧乏くさい舞踏会は嫌ですよね)。こういう物量作戦は悪くも言えるのですが、やはりワクワク感は小劇場では味わえないものです。

サイキックバレンタイン

サイキックバレンタイン

たすいち

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2018/04/29 (日) ~ 2018/05/06 (日)公演終了

満足度★★★

Bitter ver. を観劇。

終演後、前に座っていた女性が隣の人に「面白かったね」と感想を言っていた。詳しく知るために、肩に手を置いて心の中を読もうと考えたが、近くの歌舞伎町交番に連れて行かれる情景が予知できたので思いとどまった。…そんなことを夢想するくらい見どころが分からなかった。

役者さんは近所のお兄さんお姉さんから脱し切れていない方も少なくないが、声の調子は揃っているし、演技のテンポも良い。しかし上手いなあというレベルではなく、ストーリーにも光るところは感じなかった。

若い観客は恋のさや当てに心が浮き立つのだろうか。最近、そちら方面にはとんとご無沙汰な年寄りにはちょっと向いていない舞台だった。

ラスト・ナイト・エンド・ファースト・モーニング

ラスト・ナイト・エンド・ファースト・モーニング

悪い芝居

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2018/04/26 (木) ~ 2018/04/30 (月)公演終了

満足度★★★

役者さんはちゃんとした方々だということは分かりますし、舞台セットもなかなか良いものです。
しかし、不条理劇でもなく高尚な思想を語っているわけでもないのに、喜怒哀楽の感情が起こりませんでした。演出技法のショールームという感じです。演劇を作る側の方は面白く感じるのでしょう。

美愁

美愁

The Vanity's

APOCシアター(東京都)

2018/04/24 (火) ~ 2018/04/28 (土)公演終了

満足度★★★★★

「観たい!」が66もありますがステマ臭いのも多く、さてどうなんだろうと行ってみてひっくり返りました。

「上質で面白い舞台を作る団体が、己が知らぬだけでまだまだ沢山有るのだなと序盤でふとそんなことを思った。」(c)あさりパクパク、時々しじみさん

にまったく同感です。音楽ものは結構観ているつもりですが、少なくとも歌については小劇場では聴いたことのないクオリティでした。

音楽を除いた演劇としても主宰のいうところの“ダーク・ファンタジー”にどんどん引き込まれて行きました。観客の心に微妙な違和感を生じさせ育てて解消する構成もジャストタイミングでした。

アフターライブも永遠に終わらないでほしいと心底思いました。
もっと広い劇場で多くの人に観てもらいたいものです。

華

劇団スーパー・エキセントリック・シアター(SET)

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2018/04/23 (月) ~ 2018/04/29 (日)公演終了

満足度★★★★

歴史劇という丼に歌、踊り、殺陣がトッピングされたという感じの舞台です。どの要素も突出はしてはいませんが十分楽しめるものです。詳しくは「みなみ」さんと「雨模様」さんが書かれている通りです。

役名と俳優さんの表がないので、誰々は素晴らしかったと書こうとしてもできません。
またキップもぎが愛想のない私服のお兄ちゃんでは駄目でしょう。こういう演目では入り口からその気にさせなくっちゃ。

60代以上はNHK大河ドラマ「太閤記」で育っているので「おね」ではなく絶対「ねね」ですね。藤村志保さんの姿が今でも目に浮かびます。こんな大物の名前でもいろいろな説があるんですね。

十二夜

十二夜

演劇集団円

シアターX(東京都)

2018/04/20 (金) ~ 2018/04/29 (日)公演終了

満足度★★★★★

正統派のシェークスピア劇です。チェックしてみるとほぼ原作通りでした。もちろんちょこちょこと遊びはあってそこも笑わせてくれます。上演時間は 70分+休憩10分+80分くらいです。

all male ということですが美少年ではなく、逆に美くしくない中年でもなく、女装が似合う普通の男性なので自然に観ていられます。とはいえ若干の違和感はあってそれが喜劇を盛り上げています。

役者さんは皆さん安定の演技で楽しく観させていただきました。ただし、歌は私の好みとは少し違っていましたが。

ストーリーの核心が男女の双子なのに顔かたちがそっくりというありえない設定なので、若い頃なら「あほくさ」といって観なかった代物ですが、年をとってくると受け入れられるようになっているのが自分でも不思議です。文庫の解説なんかを読んでシェークスピア劇全体への理解が深まったことも大きいでしょう。

会場はやはり高老年の方が多く。特に最前列はほとんどが白髪頭でした。

A5版12ページのカラー写真入りパンフレットが全員に配布されます。料金4,800円にしては破格のサービスです。

一つだけ苦情を書いておくと、黄色のストッキングの色が薄くてライトが当たるとほとんど白になってしまっていたのが残念でした。

何も目新しいことがないのも確かなので4つ星ですが、パンフレットの件で5つ星にします。

リチャード三世

リチャード三世

芸術集団れんこんきすた

アトリエファンファーレ高円寺(東京都)

2018/04/19 (木) ~ 2018/04/22 (日)公演終了

満足度★★★★

書きたいことはほとんど GREAT CHIBA さんが書いてくださいました。追記も同感です(微笑)

舞台の形式も物語の展開法も素晴らしく、俳優さんの演技もダイナミックで星5つです。その一方で20日14:00の公演でもセリフの噛みは伝染病のように連鎖します。これでは星1つ減点です。長ゼリフ頻発の休憩なし2時間半だということは分かりますが…。

昨年、東京芸術劇場で行われたシルヴィウ・プルカレーテ(演出)、佐々木蔵之介(主演)の「リチャード三世」はとにかく場面毎のビジュアルが命でした。上級者が対象だったのでしょう、私には断片的なストーリーの視覚イメージ以外何も残りませんでした。今回の舞台のおかげでようやく物語の全貌のイメージが取得できました。対面の登場人物控え場所と(ここには分不相応なほど)豪華な衣装の力が大きいと思います。

*座席はいくら何でも詰めすぎでしょう(怒)

ネタバレBOX


原作では殺し屋はよくしゃべる二人組で、プルカレーテ版ではビジュアル的にもかなり重要な役割を負っていましたが、この公演では殺し屋に別の設定を置いています。今回の演出との整合性を考えると原作の設定は捨てざるを得ず、この解は確かにありだと少しだけ演出の意図が分かった気がしました。
R老人の終末の御予定

R老人の終末の御予定

ポップンマッシュルームチキン野郎

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2018/04/18 (水) ~ 2018/04/23 (月)公演終了

満足度★★★★★

PMC野郎は『仏の顔も三度までと言いますが、それはあくまで仏の場合ですので 栄螺』以来の観劇です。前回は過激なヘビメタバンドでオープニングは各方面から抗議が来ないかこちらがハラハラしました。今回は正反対に、家族一緒に観ることができる芸術祭参加公演のようでした(もちろん褒めてます)。

それってつまらないんじゃないのと心配されるかもしれませんが、チラシにもある主題「……だが、知性あるところに争いは起こる。」をPMC野郎流に料理するとポップでキャッチー(?)な舞台になるのです。どうかご安心を。

観終わって「猿の惑星」の繰り返し版とでも呼びたいような感慨を覚えました(あくまで私のイメージです)。メモリーチップから先祖の歴史を知るところでは「北斗の拳」でケンシロウが北斗創世記を知る場面を思い出しました。

前回バンドのボーカルとして暴れまくった小岩崎小恵さんですが、今回は人生の悲しみも喜びもすべてを飲み込んだ菩薩のような老婆役でした。ベタな言い方ですが本当に女優は魔物ですね。

池袋ならビックとヤマダでしょうと思いましたが、どこかの小学校が集団でこれを観に来たときに山田君(さん)がいじめられないような配慮だと気が付きました(ウソ)。

殺しのリハーサル

殺しのリハーサル

PureMarry

こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ(東京都)

2018/04/12 (木) ~ 2018/04/15 (日)公演終了

満足度★★★★★

中高年ミステリーファンは必見です。

この作品は最初TVムービーとして作られ、わが国では85年の3月にNHKで放映されました。このころNHKは番組の改編期(?)に、こういう海外の単発ミステリー・サスペンスものを午後の目立たない時間帯に放映していたのでした。

私はそんな時期にはTVの番組表をチェックしていました。そして見つけたこの番組も期待して観ていたのですが、その期待を圧倒的に超える出来栄えに衝撃を受けました。しかし、作者もタイトルも確認しなかったため、今日に至るまであれはいったい何だったのだろうとずっとモヤモヤを抱えていました。

今回corichでタイトルを見て、もしかしてこれが、とピンと来てすぐに予約を入れたのでした。もちろん細部まで記憶しているはずもなく、始まってしばらくは違うかもと思っていましたが、話が進むにつれ、そうそうこれこれと嬉しくなりました。

結論を知っていたため、今回は驚きはありません。しかし、俳優さんは皆さんうまく、初めて見たならば85年と同じような衝撃を受けたことは確実です。AKB48の太田奈緒さんも重苦しいステージの良いアクセントなっていました。

ネックは7,500円という値段です。以前の同じ公演よりキャパがかなり増えているのですからもっと下げても良かったのでは。

内容についてはGREAT CHIBAさんがギリギリまで書いているので付け足しません、というか付け足せません(笑)。

ヘッダ・ガブラー

ヘッダ・ガブラー

シス・カンパニー

Bunkamuraシアターコクーン(東京都)

2018/04/07 (土) ~ 2018/04/30 (月)公演終了

満足度★★★★

前日観た「百年の秘密」が60年くらいのスパンの物語だったのに対して、こちらはたったの2日間です。登場人物も少なくもちろん時系列に沿って話は展開しますので何も混乱する要素はありません。
時間は75分+15分休憩+60分くらいです。

物語を簡単にまとめると「主人公ヘッダが様々な制約から心の飢餓感を解消することができず、愚行の末に破滅していく」ということになるでしょうか。

舞台装置としては床から舞台の天井まで5-6メートルもありそうな大きなガラス窓が印象的でした。

観客は男女半々で年齢も20代後半から70代まで広く分布していました。割合としては60代以上が多いのはイプセンの戯曲ということに安心感を覚えるのでしょう。

ネタバレBOX

物語は5か月間の新婚旅行を終えて新居に帰ったところから始まります。
これは学者であって(であるから?)単純な好人物と長期間同行し、退屈の限界に達していることを表しています。その後の展開はcorichの説明に詳しく書かれています。

俳優さんは癖のある方が揃っていて何かをやってくれそうな期待が高まります。

寺島しのぶさんは不安定な心を抱えて本人もわからぬまま最終地点に突進してしまう様をしっかりと表現します。

しかし、小日向文世さんにこの能天気な旦那の役は単純すぎたのではないでしょうか。彼がやる役なのだからどこかで心の闇が顔を出すのではないかと余計な期待をしてしまいました(私の偏見かな?)。

池田成志さんも本領を発揮する場面のない役のような気がしました。役作りの途中なのかもしれませんが。

家政婦役の福井裕子さんの凛とした立ち居振る舞いには感動しました。この年齢になって初めてできる役をしっかりとこなしています。
百年の秘密

百年の秘密

キューブ

本多劇場(東京都)

2018/04/07 (土) ~ 2018/04/30 (月)公演終了

満足度★★★★

二人の女性の少女から老婆までの物語で正統的な演劇です。
波乱万丈の展開はありませんが普通の人よりは多めに事件は起きます。
一言でいうと、「人生って色々あって大変ですね」的な話です。

105分+15分休憩+85分の長丁場ですが、それでも時間が足りず、ナレーションで済ませる部分もかなりあります。唯一、普通の演劇と違うところは話の展開が時系列に沿ったものではなく、かなり前後することです。これは緊張感を保って、観客が飽きるのを防ぐことが目的のひとつでしょう。年齢が違っても同一人物は一人の役者さんが演じるので化粧などの時間を考えると好き勝手に動かすわけには行きません。逆にうまく動かして時間を稼ぐこともできるでしょう。

俳優さんたちは一流の方々で演技に注文を付けるところはありません。しかし、内容的にはどこか傑出した部分があるわけではなく、もう一回観たいということはないので星4つが適当でしょう。

追加:トッチーさんが書かれているように舞台美術が秀逸でした。とくに舞台中央に陣取る大きな楡の木はまるで本物の迫力です。

ネタバレBOX

時間の前後の一番大きなところは前半の最後です。それまで出ていなかった息子が登場し困窮しているのです。私は話のギャップを埋められず、途中で居眠りでもしたのだろうかと休憩時間中ずっと頭を抱えていました。これは結末の一部を先に見せて、どうしてこうなったのかと観客に興味を持たせるための手段で、私はまんまと術中に落ちていたのです。後半に入るとすぐに詳しく説明され疑問は氷解しました。
僕をみつけて/生きている

僕をみつけて/生きている

かわいいコンビニ店員 飯田さん

OFF OFFシアター(東京都)

2018/04/04 (水) ~ 2018/04/08 (日)公演終了

満足度★★

「生きている」を観劇

一つ目は中途半端に終わったので「起承転結」の「起」だと思った。
二つ目も独立した話としては弱く「承」だと思った。
三つ目で「転」「結」と続くかと思っていたら、「別」とか「異」になってしまった。しかも、この話は*前回の公演を観ていない人にはチンプンカンプン*。
<お断り:最初に書いた時点では、前回の公演に関連する演目があったというのは私の思い込みでしたので訂正しましたが、その後実際にそういう公演があったことが確認できたので原文に戻しました。>

役者さんがしっかりしているので星二つ。
高評価も多いので私とこの劇団との相性が悪いのだろう。

正しい顔面のイジり方

正しい顔面のイジり方

スマッシュルームズ

シアター711(東京都)

2018/04/04 (水) ~ 2018/04/08 (日)公演終了

満足度★★★★

書こうと思ったことはすべて BIGBABY さんが的確に書かれていますので繰り返しません。
ここでは素人の観た10人の俳優さんの寸評を書きます。

ネタバレBOX

福田和子時代
 佐藤来夏:根っからの悪人振りがさまになっていた。
 小川諒:振り回される優しい旦那が自然。
高井初美時代
 小林知未:どこのバー、スナックにも必ずいそうなホステスさんが見事に出現。名セリフを振りまく。
 中島晃紀:下り坂になるとメンタルの弱さが顔を出す小悪党をうまくこなす。
小野寺華世時代
 佐藤千夏:ドヤ顔のポーズをどんどん決める。(低音部にちょっと難ありだが)歌も良い。
 滑川喬樹:老舗和菓子屋の何もできないボンボン役も良いが刑事役もピッタリ。
倉本かおる時代
 あおのゆきか:ここだけキャラ設定が異なり悲壮感の漂う役。この役と陽気な被害者役をしっかりこなす。
 河原雅幸:破滅に突き進む男の美学が心地良い。
中村有希子時代
 國津ヒロ:(捜査の進展に注意を集めるためか)キャラ設定が希薄でやりにくいところをルックスで補う。
 市川フー:八百屋でも魚屋でも飲み屋でも何でも説得力のありそうな俳優さん。刑事役も堂に入っている。

これらの5つの時代が唯一交錯するのが和菓子屋のボンボンが高井初美と飲むシーン。ここは難しく私はずっと???で終演後しばらくしてようやくわかった。ここで見染めて妻にするという流れを読み取れというのはちょっと無理ではないかと(源氏名云々というセリフはあったけれど)。

初美の名セリフの例:
絶望して自殺しようとしている男に向かって、
“あんたが思っているどん底をちょっと掘ってみい、うちがおるけん。”(記憶曖昧)
追記:
The worst is not, So long as we can say, 'This is the worst.'.
「これが最悪だ」と言えるうちは最悪ではない。(シェイクピア“リア王”)

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