図書館的人生Vol.4 襲ってくるもの
イキウメ
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2018/05/15 (火) ~ 2018/06/03 (日)公演終了
満足度★★★
入り口で渡されるチラシ束の中に二つ折りのパンフレットがあって中に3つの短編の概要が100文字強で書かれています。
普段あまり考える気のしないお勉強を芝居にして、そこそこ笑いもとりながらの手腕は素晴らしいとは思うのですが、ストーリーそのものは物足りなく感じました。
ハングマン
パルコ・プロデュース
彩の国さいたま芸術劇場 大ホール(埼玉県)
2018/05/12 (土) ~ 2018/05/13 (日)公演終了
満足度★★★★
主役の田中哲司さんはいつもの安定感で、傲慢だが自信のない死刑執行人を演じます。そして秋山奈津子さんを始めとするベテラン勢がしっかりと脇を固め、その中に混じって18歳の富田望生(みう)ちゃんが素晴らしく良い味を出していました。
原作者のマーティン・マクドナーは劇作家、脚本家、映画監督でブラックコメディの名手として知られています。昨年(日本では今年公開)彼が監督した映画「スリー・ビルボード」が注目を集めました。この舞台「ハングマン」は2015年ロンドン初演、日本語版は今回が初演です。
パンフレット(1200円)は読みどころが多く楽しめました。武蔵大学准教授の北村紗衣さんの『「ハングマン」観劇ガイド【前編】』では、この作品を観るときは、倫理観とかを忘れておかしなところでは冷たい心で笑いましょうといっています。この論説を参考に少しだけお話の背景などを書いておきます。
舞台は1965年のイギリス北部の片田舎、そこにハリー(田中)が妻のアリス(秋山)と開いているパブがある。パブもかなり盛況な時代。そのころロンドンなどの都市はビートルズに代表される若者文化で活気に溢れていた。娘のシャーリー(富田)はそんな都会に憧れて鬱々たる毎日。そのパブに集まるちょっとねじの緩んだ常連と突然やってきたよそ者が巻き起こすシュールでブラックなコメディ。
ちょうどイギリスで死刑が廃止になって、ハリーがこれまでの仕事についてインタビューを受けるところからメインの話は始まる。振り返ってみると冤罪であったかもしれない事件(冒頭で死刑執行)があって雲行きが怪しくなってくる…。
大傑作とかいうものではなく、達者な俳優さんたちによる芝居らしい芝居という感じがしました。十分5つ星に値すると思うのですが、この作品の世界観が5つ星を拒否するような感覚にとらわれたので4つ星に留めました。
Y FUTAMATA vol.2
ロ字ック
小劇場B1(東京都)
2018/05/09 (水) ~ 2018/05/13 (日)公演終了
満足度★★★
『ぼんやりした話/セプテンバー』
作者の思い付きをそのままつないだもの。フィーリングが合うか合わないかの問題。私は合わなかった。
『Re:』
yozさんが書いていたように説教ぽいお話。くどい割に内容がない。
『カラオケの夜』
これだけ普通の演劇。下手な歌もはっきりしないセリフも友人の愚痴を聞いているようなリアルさがあった。他の二つで作られた気まずい空気のせいで損をしていたかも。
番外公演ということで実験だったのだろう。番外ものに行くのはもう止めようと思う。
1789‐バスティーユの恋人たち‐
東宝
帝国劇場(東京都)
2018/04/09 (月) ~ 2018/05/12 (土)公演終了
満足度★★★★★
小池徹平/神田沙也加/龍真咲の回を観劇。
このロック・ミュージカルは2012年フランスで初演、日本では宝塚版が2015年、東宝版が2016年が最初で今回は主役二人がそのままの再演です。会場は補助席が出ていて驚きました。90分+25分休憩+70分くらい。
若手の有名俳優の皆さんということでちょっとなめていたのですが、期待を大きく上回るものでした。
10人から30人くらいで踊るダンスはシンクロするもの、バラバラにダイナミックに踊るものどれも切れの良い素晴らしいものでした。とくに女性だけによる女性賛歌の踊りと歌には今までにないインパクトがありました。ダンスは私の好み(マイケル・ジャクソンの「スリラー」から最近の女性アイドルグループに至るグループのダンス)に完全に合っていました。惜しむらくは時間が短く、“ああもう少し続けて”と何度もため息をついてしまいました。もちろんこれは私のわがままで全体の構成上はこのくらいがベストだということは分かっているのですが…。
歌はみなさん期待通りですがそれを超えるところまでは行きません。また龍真咲さんが序盤になぜか不調で(終盤には復調していましたが)どうなることかと不安になりました。しかし、そこはソニンさんが好調だったので帳消しです。ソニンさんは以前も感心したことがあるのですが、今回もこのうまい人は誰と思ってチラシを見て納得しました(早く覚えろよ→私)。
ダンスも歌も主役級、準主役級以上にアンサンブルの方々が光っていました。そこには個々の力量も発揮させながら全体では調和させるというダンス演出(振付)のうまさも感じました。
お話しはこの種のものに共通のご都合主義のラブストーリーです。私はこういうものが刺さる時期をとうに過ぎていますが、ここをスルーしても十分楽しめるところもミュージカルの利点の一つです。
舞台装置は大掛かりで美しいものがいくつもあって圧倒されました。衣装も豪華でバラエティに富んだものです。そして役者さんも大劇場にふさわしく大人数でした(たまにある、大劇場なのに少人数で貧乏くさい舞踏会は嫌ですよね)。こういう物量作戦は悪くも言えるのですが、やはりワクワク感は小劇場では味わえないものです。
サイキックバレンタイン
たすいち
新宿シアター・ミラクル(東京都)
2018/04/29 (日) ~ 2018/05/06 (日)公演終了
満足度★★★
Bitter ver. を観劇。
終演後、前に座っていた女性が隣の人に「面白かったね」と感想を言っていた。詳しく知るために、肩に手を置いて心の中を読もうと考えたが、近くの歌舞伎町交番に連れて行かれる情景が予知できたので思いとどまった。…そんなことを夢想するくらい見どころが分からなかった。
役者さんは近所のお兄さんお姉さんから脱し切れていない方も少なくないが、声の調子は揃っているし、演技のテンポも良い。しかし上手いなあというレベルではなく、ストーリーにも光るところは感じなかった。
若い観客は恋のさや当てに心が浮き立つのだろうか。最近、そちら方面にはとんとご無沙汰な年寄りにはちょっと向いていない舞台だった。
ラスト・ナイト・エンド・ファースト・モーニング
悪い芝居
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2018/04/26 (木) ~ 2018/04/30 (月)公演終了
満足度★★★
役者さんはちゃんとした方々だということは分かりますし、舞台セットもなかなか良いものです。
しかし、不条理劇でもなく高尚な思想を語っているわけでもないのに、喜怒哀楽の感情が起こりませんでした。演出技法のショールームという感じです。演劇を作る側の方は面白く感じるのでしょう。
美愁
The Vanity's
APOCシアター(東京都)
2018/04/24 (火) ~ 2018/04/28 (土)公演終了
満足度★★★★★
「観たい!」が66もありますがステマ臭いのも多く、さてどうなんだろうと行ってみてひっくり返りました。
「上質で面白い舞台を作る団体が、己が知らぬだけでまだまだ沢山有るのだなと序盤でふとそんなことを思った。」(c)あさりパクパク、時々しじみさん
にまったく同感です。音楽ものは結構観ているつもりですが、少なくとも歌については小劇場では聴いたことのないクオリティでした。
音楽を除いた演劇としても主宰のいうところの“ダーク・ファンタジー”にどんどん引き込まれて行きました。観客の心に微妙な違和感を生じさせ育てて解消する構成もジャストタイミングでした。
アフターライブも永遠に終わらないでほしいと心底思いました。
もっと広い劇場で多くの人に観てもらいたいものです。
華
劇団スーパー・エキセントリック・シアター(SET)
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)
2018/04/23 (月) ~ 2018/04/29 (日)公演終了
満足度★★★★
歴史劇という丼に歌、踊り、殺陣がトッピングされたという感じの舞台です。どの要素も突出はしてはいませんが十分楽しめるものです。詳しくは「みなみ」さんと「雨模様」さんが書かれている通りです。
役名と俳優さんの表がないので、誰々は素晴らしかったと書こうとしてもできません。
またキップもぎが愛想のない私服のお兄ちゃんでは駄目でしょう。こういう演目では入り口からその気にさせなくっちゃ。
60代以上はNHK大河ドラマ「太閤記」で育っているので「おね」ではなく絶対「ねね」ですね。藤村志保さんの姿が今でも目に浮かびます。こんな大物の名前でもいろいろな説があるんですね。
十二夜
演劇集団円
シアターX(東京都)
2018/04/20 (金) ~ 2018/04/29 (日)公演終了
満足度★★★★★
正統派のシェークスピア劇です。チェックしてみるとほぼ原作通りでした。もちろんちょこちょこと遊びはあってそこも笑わせてくれます。上演時間は 70分+休憩10分+80分くらいです。
all male ということですが美少年ではなく、逆に美くしくない中年でもなく、女装が似合う普通の男性なので自然に観ていられます。とはいえ若干の違和感はあってそれが喜劇を盛り上げています。
役者さんは皆さん安定の演技で楽しく観させていただきました。ただし、歌は私の好みとは少し違っていましたが。
ストーリーの核心が男女の双子なのに顔かたちがそっくりというありえない設定なので、若い頃なら「あほくさ」といって観なかった代物ですが、年をとってくると受け入れられるようになっているのが自分でも不思議です。文庫の解説なんかを読んでシェークスピア劇全体への理解が深まったことも大きいでしょう。
会場はやはり高老年の方が多く。特に最前列はほとんどが白髪頭でした。
A5版12ページのカラー写真入りパンフレットが全員に配布されます。料金4,800円にしては破格のサービスです。
一つだけ苦情を書いておくと、黄色のストッキングの色が薄くてライトが当たるとほとんど白になってしまっていたのが残念でした。
何も目新しいことがないのも確かなので4つ星ですが、パンフレットの件で5つ星にします。
リチャード三世
芸術集団れんこんきすた
アトリエファンファーレ高円寺(東京都)
2018/04/19 (木) ~ 2018/04/22 (日)公演終了
満足度★★★★
書きたいことはほとんど GREAT CHIBA さんが書いてくださいました。追記も同感です(微笑)
舞台の形式も物語の展開法も素晴らしく、俳優さんの演技もダイナミックで星5つです。その一方で20日14:00の公演でもセリフの噛みは伝染病のように連鎖します。これでは星1つ減点です。長ゼリフ頻発の休憩なし2時間半だということは分かりますが…。
昨年、東京芸術劇場で行われたシルヴィウ・プルカレーテ(演出)、佐々木蔵之介(主演)の「リチャード三世」はとにかく場面毎のビジュアルが命でした。上級者が対象だったのでしょう、私には断片的なストーリーの視覚イメージ以外何も残りませんでした。今回の舞台のおかげでようやく物語の全貌のイメージが取得できました。対面の登場人物控え場所と(ここには分不相応なほど)豪華な衣装の力が大きいと思います。
*座席はいくら何でも詰めすぎでしょう(怒)
R老人の終末の御予定
ポップンマッシュルームチキン野郎
シアターKASSAI【閉館】(東京都)
2018/04/18 (水) ~ 2018/04/23 (月)公演終了
満足度★★★★★
PMC野郎は『仏の顔も三度までと言いますが、それはあくまで仏の場合ですので 栄螺』以来の観劇です。前回は過激なヘビメタバンドでオープニングは各方面から抗議が来ないかこちらがハラハラしました。今回は正反対に、家族一緒に観ることができる芸術祭参加公演のようでした(もちろん褒めてます)。
それってつまらないんじゃないのと心配されるかもしれませんが、チラシにもある主題「……だが、知性あるところに争いは起こる。」をPMC野郎流に料理するとポップでキャッチー(?)な舞台になるのです。どうかご安心を。
観終わって「猿の惑星」の繰り返し版とでも呼びたいような感慨を覚えました(あくまで私のイメージです)。メモリーチップから先祖の歴史を知るところでは「北斗の拳」でケンシロウが北斗創世記を知る場面を思い出しました。
前回バンドのボーカルとして暴れまくった小岩崎小恵さんですが、今回は人生の悲しみも喜びもすべてを飲み込んだ菩薩のような老婆役でした。ベタな言い方ですが本当に女優は魔物ですね。
池袋ならビックとヤマダでしょうと思いましたが、どこかの小学校が集団でこれを観に来たときに山田君(さん)がいじめられないような配慮だと気が付きました(ウソ)。
殺しのリハーサル
PureMarry
こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ(東京都)
2018/04/12 (木) ~ 2018/04/15 (日)公演終了
満足度★★★★★
中高年ミステリーファンは必見です。
この作品は最初TVムービーとして作られ、わが国では85年の3月にNHKで放映されました。このころNHKは番組の改編期(?)に、こういう海外の単発ミステリー・サスペンスものを午後の目立たない時間帯に放映していたのでした。
私はそんな時期にはTVの番組表をチェックしていました。そして見つけたこの番組も期待して観ていたのですが、その期待を圧倒的に超える出来栄えに衝撃を受けました。しかし、作者もタイトルも確認しなかったため、今日に至るまであれはいったい何だったのだろうとずっとモヤモヤを抱えていました。
今回corichでタイトルを見て、もしかしてこれが、とピンと来てすぐに予約を入れたのでした。もちろん細部まで記憶しているはずもなく、始まってしばらくは違うかもと思っていましたが、話が進むにつれ、そうそうこれこれと嬉しくなりました。
結論を知っていたため、今回は驚きはありません。しかし、俳優さんは皆さんうまく、初めて見たならば85年と同じような衝撃を受けたことは確実です。AKB48の太田奈緒さんも重苦しいステージの良いアクセントなっていました。
ネックは7,500円という値段です。以前の同じ公演よりキャパがかなり増えているのですからもっと下げても良かったのでは。
内容についてはGREAT CHIBAさんがギリギリまで書いているので付け足しません、というか付け足せません(笑)。
ヘッダ・ガブラー
シス・カンパニー
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2018/04/07 (土) ~ 2018/04/30 (月)公演終了
満足度★★★★
前日観た「百年の秘密」が60年くらいのスパンの物語だったのに対して、こちらはたったの2日間です。登場人物も少なくもちろん時系列に沿って話は展開しますので何も混乱する要素はありません。
時間は75分+15分休憩+60分くらいです。
物語を簡単にまとめると「主人公ヘッダが様々な制約から心の飢餓感を解消することができず、愚行の末に破滅していく」ということになるでしょうか。
舞台装置としては床から舞台の天井まで5-6メートルもありそうな大きなガラス窓が印象的でした。
観客は男女半々で年齢も20代後半から70代まで広く分布していました。割合としては60代以上が多いのはイプセンの戯曲ということに安心感を覚えるのでしょう。
百年の秘密
キューブ
本多劇場(東京都)
2018/04/07 (土) ~ 2018/04/30 (月)公演終了
満足度★★★★
二人の女性の少女から老婆までの物語で正統的な演劇です。
波乱万丈の展開はありませんが普通の人よりは多めに事件は起きます。
一言でいうと、「人生って色々あって大変ですね」的な話です。
105分+15分休憩+85分の長丁場ですが、それでも時間が足りず、ナレーションで済ませる部分もかなりあります。唯一、普通の演劇と違うところは話の展開が時系列に沿ったものではなく、かなり前後することです。これは緊張感を保って、観客が飽きるのを防ぐことが目的のひとつでしょう。年齢が違っても同一人物は一人の役者さんが演じるので化粧などの時間を考えると好き勝手に動かすわけには行きません。逆にうまく動かして時間を稼ぐこともできるでしょう。
俳優さんたちは一流の方々で演技に注文を付けるところはありません。しかし、内容的にはどこか傑出した部分があるわけではなく、もう一回観たいということはないので星4つが適当でしょう。
追加:トッチーさんが書かれているように舞台美術が秀逸でした。とくに舞台中央に陣取る大きな楡の木はまるで本物の迫力です。
僕をみつけて/生きている
かわいいコンビニ店員 飯田さん
OFF OFFシアター(東京都)
2018/04/04 (水) ~ 2018/04/08 (日)公演終了
満足度★★
「生きている」を観劇
一つ目は中途半端に終わったので「起承転結」の「起」だと思った。
二つ目も独立した話としては弱く「承」だと思った。
三つ目で「転」「結」と続くかと思っていたら、「別」とか「異」になってしまった。しかも、この話は*前回の公演を観ていない人にはチンプンカンプン*。
<お断り:最初に書いた時点では、前回の公演に関連する演目があったというのは私の思い込みでしたので訂正しましたが、その後実際にそういう公演があったことが確認できたので原文に戻しました。>
役者さんがしっかりしているので星二つ。
高評価も多いので私とこの劇団との相性が悪いのだろう。
正しい顔面のイジり方
スマッシュルームズ
シアター711(東京都)
2018/04/04 (水) ~ 2018/04/08 (日)公演終了
満足度★★★★
書こうと思ったことはすべて BIGBABY さんが的確に書かれていますので繰り返しません。
ここでは素人の観た10人の俳優さんの寸評を書きます。
メリー・ポピンズ
ホリプロ/東宝/TBS/梅田芸術劇場
東急シアターオーブ(東京都)
2018/03/18 (日) ~ 2018/05/07 (月)公演終了
満足度★★★★★
平原綾香/柿澤勇人/駒田一/木村花代/島田歌穂の回を観劇(80分+休憩25分+70分)
歌、ダンス、舞台装置が高度に完成され融合していて圧倒されました。
今までの私の基準では星は6つは必要です。どこにも文句のつけようがありません。絶対のお勧め。
出口へ向かう途中で、おじさんも、おばさんも、お兄さんも、お姉さんも、子供も、みんなニコニコという絵に描いたような幸せなミュージカルでした。ひねくれジジイの私としてはあまり使いたくない表現ですが他に書きようがありません。
あらすじはご存知の通り「厳格な父親に反発していたずらをする子供たち。躾係にやってきた宇宙人(?)メリー・ポピンズは数々のマジックで一家の綻びを繕って去って行く」というところでしょうか、ここを押さえておけば観劇には十分でしょう。もっと詳しく調べたほうが楽しみは増えます。映画をレンタルして観ておけば相違点を探す楽しみもあります。子供の身長を測るところは小さい点ですが映画を観ていないと意味不明でしょう(巻き尺に性格が表示されるのですが舞台では工夫してそうやっていたとしても見えません)。
歌とダンスの凄さというのは想像がつくでしょうから舞台装置の凄さを少し書いておきます。まずオープニングの舞台上は一家が住む家の前の通りです。家は平面の書割で、なんとも安っぽいなあとがっかりしていると、その家だけ前に出て来て中央から両側に開くと居間のセットになるのです。目の錯覚かと思うほどの鮮やかさです。子供部屋になったり、公園になったり、セットが次々に変化していきます。舞台裏はどうなっているのか見てみたいものです。ワイヤーでの天吊りも何度か効果的に使われます。フィナーレ直前にはそこまでやるかと唸ってしまいました。
始まってちょっとしてから観客席にライトが当たるので、どうしたのかと見回していたら、その隙に舞台にメリー・ポピンズが現れていたなんてこともあったので、舞台から目を離してはいけません。
終盤からカーテンコールにかけて、ここまで盛り上がるのは私には初めての体験でした。これからリピーターが増えてくると大変なことになりそうです。
トリスケリオンの靴音
サンライズプロモーション東京
赤坂RED/THEATER(東京都)
2018/03/28 (水) ~ 2018/04/08 (日)公演終了
満足度★★★★
題名とチラシを見て何か奇妙な味わいの物語というイメージを持っていたが、それは完全な間違いであって、人間模様を描いた伝統的な演劇であった。このトリスケリオン(三脚巴)とは3人芝居を表していると思っていれば観劇には十分である。あと少しの意味は劇中で分かっていくだろう。
内容は、亡くなった彫金師の工房に偶然集まった初対面の弟子、娘、イベント会社員の3人が数日の交流でそれぞれの人生でのわだかまりを解消していくというもの。登場人物はこの3人のみでそれぞれの演技がたっぷり楽しめる。中でも一番若い碓井将大さんには全体をコントロールしているような安定感があった。
粟根まことさんは「髑髏城の7人」の“鳥”そして“上弦の月”での“裏切り渡京”が脳に焼き付いていて、今回は粟根さんを観るのが一番の目的であった。おかしさは控えめだが、髑髏城では役柄の関係で観る機会のなかった渋い演技が心地良い。
観客は仕事帰りの女性会社員が過半であったが、子供から老人まで誰にでも安心して勧められるものである。
ハムレットマシーン
OM-2
日暮里サニーホール(東京都)
2018/03/22 (木) ~ 2018/03/24 (土)公演終了
若者から老人まで休日ということもあって満席である。日本人は勉強家だなあと思っていると外人さんも結構いらっしゃるので現代人は勤勉だと言い直しておく。
これは「ハムレットマシーン」を読んだ脚本家の頭に浮かんだイメージで「ハムレットマシーン」を再構築したものであろう。年をとって柔軟性を失った私の頭には、どの場面も思わせぶり、こけおどしとしか見えなかった。まあ私のこれからの人生とは無縁のものだ。
基準を持っていないので評価は不可能。
Yellow Fever
劇団俳小
d-倉庫(東京都)
2018/03/21 (水) ~ 2018/03/25 (日)公演終了
満足度★★★★
貴重な高齢者向けエンターテインメント。
シリアスな戦争ものでなくこういうのをどんどんやってほしい。
まあこれも戦争が背景にあるのだが、表看板はあくまでハードボイルドである。
おおむね満足なのだが、コートだけは別のものに替えてほしい。
1サイズ大きなコート、ジャケットは冴えない感じを出すためなのだろうが、ちょっとやりすぎで最初の登場シーンでは子供が大人の服を着たようでがっかりした。
追記:開演直前の曲の名前が思い出せないでいたのだが
アルバート・ハモンド「落ち葉のコンチェルト 」
だと丸二日たって突然閃いた。内容には関係ないけどターゲットの世代が分かる。