latticeの観てきた!クチコミ一覧

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十二人の怒れる男

十二人の怒れる男

Bunkamura

Bunkamuraシアターコクーン(東京都)

2020/09/11 (金) ~ 2020/10/04 (日)公演終了

満足度★★★★★

9月の11本目。「行って、観て、書く」と年齢のせいか今年は昨年までの2倍疲れる。自粛による運動不足とマスクの影響もあると思う。

舞台すぐ横の、観客がフェイスシールドをさせられる席に座った。やはり近いは正義だ。このお話は映画や変種も含めかなりの数を観ていて、いつもはそんなアホなとかツッコミを入れてしまうのであるが今回は何も考えずに舞台と一体化することができた。

3番山崎一さん、10番吉見一豊さんの暴れっぷりはやっていて面白いだろうなあと思う。主役8番堤真一さんはオリジナルのヘンリー・フォンダ並みに正義の味方風味がきつくて少し鼻についた(まあ、そういうお話なのだが)。私の一番の押しは4番石丸幹二さん、理性的というか単純というか、機械のような人物を生き生きと描いていた。あれ、もしかして4番はAIでこれはSF劇だったのか?

かぶりつき席から観た満足度は星5つ。

私たちは全力でホラーに挑みます!

私たちは全力でホラーに挑みます!

ライオン・パーマ

駅前劇場(東京都)

2020/09/23 (水) ~ 2020/09/27 (日)公演終了

満足度★★★★

9月の観劇も10本目。ノルマは達成した。
構成がしっかり考えられていて気持ちよく決まっていた。と書きたいところだけれど、各パーツの噛み合い具合がもう一つだったというのが正直な感想。花村怜美さんの団地妻的物腰がツボだった。

ネタバレBOX

冒頭のバスの話は私の大好きな中崎タツヤ「じみへん」の35話と基本ネタが丸被りなのでしょっぱなから脱力した。まあバス通勤したことのある人ならだれでも考えることなので仕方がない。20数年前にTVで中崎タツヤ傑作集とかいう番組があってこの話も紹介されていた。絵はそのままで声が付いていたと思う。感動して彼の作品を買い集めたのだった。
おじいちゃんの口笛

おじいちゃんの口笛

東京演劇アンサンブル

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2020/09/23 (水) ~ 2020/09/27 (日)公演終了

満足度★★★★

9月の観劇も9本目。疲れてペースダウン中。
スウェーデンの作家ウルフ・スタルクの子供のころの体験を元にしたお話らしい。絵本は日本語にも訳されている。
CoRich の「説明」にすべてのストーリーが書いてあり、その通りを達者な役者さんたちが丁寧に描いていく。大道具小道具もしっかり用意されていて奇抜な演出もなく安心して観ていられる。

75分と短いこともあって私には物足りなさが残った。心構えを75分にセットして臨むのが良いと思う。

心の嘘

心の嘘

劇団俳優座

俳優座スタジオ(東京都)

2020/09/04 (金) ~ 2020/09/20 (日)公演終了

満足度★★★

9月の8本目。
「これって面白いんですか?」と観客の皆さんに聞いて回りたいくらい見どころが分からなかった。
家族を思い、ぶつかり、すれ違う。そういう物語ではあるのだが「それがどうしたの?」と聞きたくなる。大げさな演技、思わせぶりな言葉はたっぷりあるが実質の中身がない。どうも私はアメリカの現代劇との相性が悪いみたいだ。
年配の俳優さんの演技が的確なことには感心した。

ネタバレBOX

第二部の始まりは母と娘による亡くなった父の話である。ここは劇中劇的な作りになっている。しかし無駄な話が長い。椅子のギシギシ音がそこかしこから聞こえてきて観客が焦れていることが窺える。折角の秘密の暴露があるころには観客は集中力を失っている。
ツバメの幸福

ツバメの幸福

ツツシニウム

キーノートシアター(東京都)

2020/09/09 (水) ~ 2020/09/13 (日)公演終了

満足度★★★★

9月の観劇、オーバーペース気味の7本目。
「幸福の王子」の短い記述を作者の想像力で膨らませた秀作である。
縫子さんとその息子の話、劇作家の話、マッチ売りの少女の話、どれも原作では1ページ程度のあっさりとしたものである。そこに幸福度を計算する父親とその娘、娘の今の恋人と昔の恋人の4人を創造して3つの話に絡ませてくる。

たとえば原作では「マッチ売りの少女がマッチを溝に落としてしまう」としかないところを乱暴な男とぶつかってマッチを落としてしまうということにしている。この男は上記の昔の恋人であってかなり困った人物であることがここまでで観客に十分浸透しているのである。いつマッチを落とすのかと訝しんでいた私は「おおそう来たか」と大きくうなずいた。また作家がマッチ売りの少女に「あなたのことを小説にしても良いですか」と尋ねるところはまあそう書きたくなるよねと思わずニヤついてしまった。

最初の母と息子の話はドタバタギャグで会場では受けているものの私は完全スルーである。しかし不快感を持つ観客がいることも計算の内なのだろう。その後の二つは基本的に落ち着いたものであった。元々原作者はこのような書き加えを想定して簡潔な記述に徹したのではないかという気になるくらい説得力があった。そういうわけで脚本は星5つ。役者さんもみなさんうまい。ただ舞台があまりに貧相である。背景の一枚くらいはあっても良かったのではないだろうか。

コロナ対策は最低だった。澱んだ空気に気分が悪くなった。若い人々で赤字にするわけにはいかなかったのだろうと同情はするものの、またこういう会場設営であったなら行かないだろう。ここはマイナス1、本当はマイナス3にしたいところだ。

フランドン農学校の豚/ピノッキオ

フランドン農学校の豚/ピノッキオ

座・高円寺

座・高円寺1(東京都)

2020/08/28 (金) ~ 2020/10/03 (土)公演終了

満足度★★★★

「フランドン農学校の豚」を観劇。
9月の6本目。
あの文章からこのビジュアルが作られることに驚いた。オープニングとエンディングもしっかりできている。メッセージが子供に伝わるとはとても思えないが、まずは劇場に行くと何か楽しいことがあるよということなのだろう。セリフが聞き取りにくいところがいくつかあったのと豚の最終形態がよく分からないものだったのが残念ポイント。星は3つ半。

ネタバレBOX

大人には内容が単純で時間も短すぎるというのは事前の了解事項なのでしょう。
ひとよ

ひとよ

KAKUTA

本多劇場(東京都)

2020/09/03 (木) ~ 2020/09/13 (日)公演終了

満足度★★★

9月の5本目。
前日に映画版「ひとよ」をアマゾン・プライム・ビデオで観たのが悪かったのか笑いの部分が全然笑えず取り残されてしまった。映画版ではカーチェイスまであってやりすぎ感もあるが、細部まで親切に教えてくれて想像力に欠けた年寄りにやさしい。
映画版と舞台版とでは全然違う話と言って良いくらいで続けて見て混乱している現在は満足度の評価は保留としておく。
→後日記:全体では4つ星だが、長男嫁と外国人風人物の笑いは最も嫌いな笑いなのでマイナス1。

*本多劇場は2席ごとに仕切り板があって、換気もしっかりやっている。しかしその後に入った喫茶店では案内された席の両側の若者2人ずつがマスク無しでしゃべるわしゃべるわで、危険は少ないとは思うものの長居は無用と早々に退散した。

ゲルニカ

ゲルニカ

パルコ・プロデュース

PARCO劇場(東京都)

2020/09/04 (金) ~ 2020/09/27 (日)公演終了

満足度★★★★

9月の4本目。
今回も演劇らしい演劇、しかも硬派の反戦劇である。
歴史上初めて無差別爆撃の行われたスペインのバスク地方の中心地ゲルニカを舞台とし、爆撃までの9か月ほどを描く群像劇である。

革命により没落した貴族の娘が主人公というだけで沢山のドラマが作れそうだがそこに共和国軍と反乱軍の戦争が加わってくるのである。バラエティに富んだ人物が生み出されていると思う反面、作りすぎてわざとらしく感じるところもあった。

娘役の上白石萌歌さんは堅実な演技で紛れもなき主役だった。特に、他人に頼ってばかりの娘から自立した大人へと豹変するところはすっかり引き込まれた。もっともそれは母親役のキムラ緑子さんの憎たらしい演技があって初めて成り立つものだ。おそらく私を含めた観客全員が彼女から鞭を取り上げてひっぱたいてやりたくなったことだろう(笑)。外国特派員役の勝地涼さんは落ち着いた演技で私の一押し。これで重みが着けばとは思うものの「ハケンの品格」での軽目の演技が今の売り物なのだよね。

全員での歌が2度あるが練習していないんじゃないのレベルで星2つ。歌ではないが最後に全員でメッセージを発するところはバラバラで何を言っているのか分からない。ここが数少ないがっかりポイント。

70分+20分休憩+80分。

ネタバレBOX

作りすぎだと感じたのは娘が実は女中の子であったり、結婚相手と母が関係を持っていたりするところである。また話の構成上、娘に子供ができるのは欠かせないところだが何とも無理筋であった気がする(ここはちょっとボカしておく)。また結婚相手の運命がひどすぎる。せめて子供の父親にしてほしい。
かがみの孤城

かがみの孤城

ナッポス・ユナイテッド

サンシャイン劇場(東京都)

2020/08/28 (金) ~ 2020/09/06 (日)公演終了

満足度★★★★

順調に9月の3本目。
分類するとファンタジー少しだけミステリーとなるだろうか。久しぶりに演劇らしい演劇を観た気がする。少なくとも9月の2作は観客を選ぶというか作者が作りたいように作った作品だった。本作は原作が本屋大賞をとったこともあってサービス精神に溢れている。何か変だなあと感じたらそれは伏線で終盤に回収されることになっている。あ、もちろん「どうして鏡の中に入れるの?」といった根本的な疑問はグッと飲み込むしかない(笑)。もっとも長編小説を2時間の舞台にしたのでナレーションが多いなど窮屈なところはある。しかし年寄り頭でも理解に苦しむことはなかった。

生駒里奈さんはNo1グループのセンターとしてはオーラの薄いアイドルであったがそれが幸いして本作のようなしっかりした心を持ちながらもそれを表に出せない、あるいは出さない中学生役にはピッタリである。またこの孤城の中では集められた7人は対等なので生駒さん一人が目立ってしまってはいけない。そういう点でも望ましい特質である。

フェースシールドのせいか全体にセリフの明瞭度が落ちていた。とくに早口で強くいうところはかなり聞きづらい。少しトーンを抑えてゆっくり目にしゃべった方が良いと思う。

コロナのせいで席は一つおき、空いている席に荷物を置いて両方のひじ掛けを独り占めして観劇するなんてコロナ終息後には味わえなくなる贅沢である。思えば夏の小劇場、汗っかきで横幅の広い人の隣になって俺何か悪いことしたっけと泣きたくなったことのあるあなた、今は天国です。

IN HER TWENTIES 2020

IN HER TWENTIES 2020

TOKYO PLAYERS COLLECTION

シアター風姿花伝(東京都)

2020/09/02 (水) ~ 2020/09/07 (月)公演終了

満足度★★★★

9月2本目の観劇。
舞台上手手前から下手手前にかけて半円形に10個の椅子を並べ、反時計回りに20歳から29歳までの主人公役の女優さんが座る。20歳から順に立ち上がって自分のことを語り、過去と未来の自分から突っ込まれるという作りになっている。担当でない年齢の時は友人や同僚役などをも演じる。これが最近ボケの進んだ老人の頭を大いに混乱させてくれたが若い人なら大丈夫だろう。

まあしかし何も大きな事件は起こらない。これならここにいる女優さん達の半生の方がよほど起伏に富んでいるのではないだろうか。今の若い人はそういう現実感のある話の方が共感できて評価するみたいだ。それにしても葛藤がないというか努力が足りないというか、ふあっと流されて行くように見える。それとも努力していることをたとえ物語でも表には出さないというのが現代の若者流なのか。何か年寄りには物足りないので星3つとなる。しかし、24歳役の榎木さりなさんは今田美桜と上戸彩を足して2倍したくらい可愛く美しい。私の子犬のように繊細なハートはいつの間にか盗まれてしまっていた。星1つアップするので返してほしい。

星の数ほど星に願いを

星の数ほど星に願いを

プラグマックス&エンタテインメント/S・D・P/サンライズプロモーション東京

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2020/08/27 (木) ~ 2020/09/06 (日)公演終了

満足度★★★★

コロナの暗雲の切れ間ともいえる9月を勝手ながら「観劇重点化月間」と宣言いたします。目標は最低10本、できれば15本は行きたいものです。その第一弾がこれです。選択肢が少ないので初見の劇団が当然入ってきます。新しい驚きはあるのでしょうか。

さてその結果はというと、内田理央さんをフィーチャーした美しいチラシのイメージとは裏腹な大バカコメディです。これまで私が観たことのないタイプですが、独特な「言葉の外し」が脳みそをほぐしてくれます。一応町工場と銀行員の話というのは池井戸作品へのオマージュなのでしょうけれど観終わってもなあ~んにも得るところがありません。そういう潔い喜劇のファンにはかなりお勧めです。

おまけとも言えるギター演奏が粒のそろった良い音を出していたことと息子のテニスの動きがそれらしく決まっていたことに感心しました。こういうところが締まっていると全て素晴らしいような気になってきます。

それから「バルブはFB認証者優遇に反対!!」さんがおっしゃるようにフェースシールドは意外に気になりませんでした。

天神さまのほそみち

天神さまのほそみち

燐光群

ザ・スズナリ(東京都)

2020/07/03 (金) ~ 2020/07/19 (日)公演終了

満足度★★★★

世の中の不条理な出来事をやや不条理な手法で描いた不条理劇。劇そのものは非常によく分かった(と思いたい)。

1席飛びの「ザ・スズナリ」は普段のひどさと比べるとかなり快適だった。
観客は高齢者がほとんどで平均年齢は60歳以上にもなっていたのではないだろうか。
高齢者はコロナで重症化しやすいと言うけれど「ザ・スズナリ」の階段の方がよほど危険だ。

コロナ明けの観劇の2作目。何を書こうか考えているうちに最初のは忘れてしまった。今回もこれだけ(汗)

バロック

バロック

鵺的(ぬえてき)

ザ・スズナリ(東京都)

2020/03/07 (土) ~ 2020/03/15 (日)公演終了

チラシの絵はバロック期の巨匠ベラスケスの代表作「ラス・メニーナス(女官たち)」(1656)である。中央にいるのは(本来は)スペイン王フェリペ4世(1605-1665)の王女マルガリータ。このスペイン・ハプスブルク家は繰り返された近親婚のためにマルガリータの弟のカルロス2世で断絶する。おそらく作者はこの絵と逸話からインスパイアされて本作を創ったがために「バロック」という題名にしたのだろう。そしてあの優雅な曲線の左右の階段に象徴される建物の造りがバロック風なのかも(全然知らないけど)。

内容はこういう怪奇ホラーファンではない私にはちょっと退屈だった。前列なら舞台との一体感があったのだろうが後列では薄暗い舞台に目が疲れて目を閉じては大音響で起こされるの連続で集中することができなかった。電話に出ると向こうの世界に移動してしまうというMatrixのような場面や近くにいながらお互いに見えないとかの場面もあって舞台を明るくするわけにはいかないという事情は分かるのだが。

月曜の昼間で、この情勢だから席は飛び飛びと思いきや満席である。スズナリの満席はかなり体に優しくない(泣)。終わって外に出ると太陽が燦燦と輝いてふらつく体を更にゆらす。

グロリア

グロリア

ワンツーワークス

赤坂RED/THEATER(東京都)

2020/02/27 (木) ~ 2020/03/08 (日)公演終了

ガラガラじゃないかと心配していたら8割くらいも埋まっていた。申し訳なさそうな花粉症のくしゃみがたまにあるだけで咳の声は皆無である。むしろ芝居には好条件であった。

しかし、演出や照明に凝っているのは分かるのだが内容が全くピンと来なかった。グロリアの境遇が悲惨ということもないし、周りの人もごく普通である。これで恨まれてはかなわない。ストーリーを追うのではなく場面場面を楽しむべきなのか。しかしアメリカの雑誌編集部の日常に興味はないし、わざとらしい笑いに付き合う気もない。観方を間違っているのかなあ。

ネタバレBOX

英語版Wikipediaのページははこちら
https://en.wikipedia.org/wiki/Gloria_(play)

The 2016 Pulitzer Prize Winner in Drama のぺージはこちら
https://www.pulitzer.org/winners/lin-manuel-miranda
受賞は逃したものの最終ノミネートの3作品のひとつであった。
「Gloria, by Branden Jacobs-Jenkins
A play of wit and irony that deftly transports the audience from satire to thriller and back again.
(私の訳:この機知と皮肉の芝居は観客を風刺からスリラーに、そしてまた風刺へと巧みに連れ回す。)

と紹介されている。

2017年のGoodman Theatreにおける公演の宣伝ページはこちら
https://www.goodmantheatre.org/season/1617-Season/Gloria/
YouTubeの短い動画もある。
re-call

re-call

企画演劇集団ボクラ団義

新宿村LIVE(東京都)

2020/02/20 (木) ~ 2020/03/01 (日)公演終了

満足度★★

死後の世界、親子の愛情、義父との確執、三角関係、冬山とかキーワードを並べてAIに放り込んだら出来上がった戯曲という感じだった。妙にこねくり回していて導入からして分かりにくい。中間のサークルの合宿風景もただの時間つぶしだ。終盤の30分は感動の押し売りで役者さんが頑張れば頑張るほど白っとした気分になった。無駄に長い2時間半。

同じような年齢の役者さんが、あまり役の年齢に成りきらずに「お父さん」「お母さん」「先生」とか呼び合っている。これでは脳内補完能力が減退した老人(私だけ?)は入っていけない。

A3版のチラシのサービスは良いんだけどね。

ネタバレBOX

叔父さんが何の深みもないただのゲス人間だったというのは素人級の手抜きだ。主人公が「こんな場面の記憶はない」と何度も言うので何かオチがあるのかと思ったら事故での記憶喪失だったというのも呆れた。
いのうえ歌舞伎『偽義経冥界歌』 【大阪・東京 休演(2月28日~3月17日) / 福岡全公演中止 】

いのうえ歌舞伎『偽義経冥界歌』 【大阪・東京 休演(2月28日~3月17日) / 福岡全公演中止 】

劇団☆新感線

赤坂ACTシアター(東京都)

2020/02/15 (土) ~ 2020/03/24 (火)公演終了

満足度★★★★★

源義経と奥州藤原氏のお話だがいきなり牛若丸(=義経)が死んでしまうなど、いつもの劇団☆新感線である。予備知識はいらないし、ストーリーの細部を追う必要もない。流れに身を任せていれば役者さんの持ち味を存分に楽しむことができるだろう。

このしょうもないお話の中で、あり得ないくらいの振れ幅の役を生田斗真さんは全力で完璧に演じていた。私の鑑賞力、語彙力のなさで素晴らしさをうまく伝えられないのが残念である。
早乙女友貴さんの殺陣は他の方の2倍のスピードだ。出番も多く、ファンの方はたまらないだろう。演技も牛若丸をある時はわがままでアホな主人、あるときは他者を寄せ付けぬ悪の剣豪として見事に表現していた。
藤原さくらさんのフォーク調、カントリー調の歌が意外にこの時代劇の舞台に合っていた。やや小ぶりの「ギター風楽器」は過大な音量増幅が驚くほど効果的であった。歌は本職だからもちろん良いが、セリフは時々芝居らしくないところがあって一瞬現実に引き戻されるのがちょっと気になった。
そして私の一押しは「りょう」さんである。ダイナミックな演技に痺れっぱなしだった。力を込めたセリフがいささかの揺らぎもなく脳天を直撃する。TVで見る不思議な魅力の女優さんというイメージとは全然違っている。一番、いのうえ「歌舞伎」を感じさせてくれた。

私の中に「髑髏城の7人」のイメージがまだ残っているので豊洲の回転劇場で観たかったという思いが最後まで残った。ちょっと渋々のスタンディングオベーション。満足度は星4つ半。

天保十二年のシェイクスピア【東京公演中止2月28日(金)~29日(土)/大阪公演中止3/5(木)~3/10(火)】

天保十二年のシェイクスピア【東京公演中止2月28日(金)~29日(土)/大阪公演中止3/5(木)~3/10(火)】

東宝

日生劇場(東京都)

2020/02/08 (土) ~ 2020/02/29 (土)公演終了

満足度★★★★★

いやあ楽しい!シェークスピアの全作品に触れるというお遊び企画ではあるのだが、しっかりとした物語になっていて、さすがは井上ひさしと感心した。そこに宮川彬良の音楽が重なったところに、高橋一生、浦井健治という人気と実力を兼ね備えた役者さんが登場するのではこれ以上の贅沢はない。

最初は「リア王」と3人の娘のお馴染みの場面。ここでは天保12年(1841年)のヤクザの親分、鰤の十兵衛(辻萬長)の跡目相続である。アホ真面目な三女のお光(唯月ふうか)が弾き出され、長女のお文(樹里咲穂)と次女のお里(土井ケイト)で縄張りを分割して受け継ぐ。そのとたん、長女の夫の紋太と次女の夫の花平が争うようになる。これは「ロミオとジュリエット」のモンタギュー家とキャプレット家ではないか…。以下どんどん書きたくなるが自粛。105分+20分休憩+95分と長いが全然飽きない。

ここまでの役者さんも実に良い味を出しているが梅沢昌代さんの明るい魔女風老婆も嬉しくなるような怪演である。そして進行役の木場勝巳さんの変幻自在のうまさにはあきれるばかりだ。

この場面はシェークスピア作品の何かを考えながら観るのは実に楽しい。私は有名どころの「リア王」「ハムレット」「オセロ」「マクベス」「ロミオとジュリエット」「リチャード三世」くらいしか分からなかったが、通の人は一つ一つの動作にも連想が湧いてくるのだろう。もっともそういうことを一々考えなくても、しっかりとした衣装、美しい舞台装置もあって絢爛豪華な世界をたっぷりと楽しむことができるだろう。文句なしのスタンディングオベーション、絶対のおすすめ。

ネタバレBOX

シェークスピア関連の名前の由来の推定

鰤の十兵衛 = リア王:ブリテン王→ ブリ、テン → 鰤、十
三女、お光 = コーディリア:三→みっつ→みつ
お文の夫、紋太:「ロミオとジュリエット」のモンタギュー
お里の夫、花平:同じくキャプレット→カプレ→かぺ→かへい→花平(読みは、はなひら):ものすごく苦しい(笑)
お里の愛人、幕兵衛:マクベス
主人公、佐渡の三世次:リチャード三世(前半は「オセロ」のイアーゴー役)、ちょっと苦しいけれど”リチャード”が”佐渡”になっているのだろう
三世次のライバル、河岸安:「オセロ」のキャシオー
きじるし王次:「ハムレット」のハムレット王子の性格そのもの
紋太の弟、九郎次:同じくクローディアス
紋太の右腕、ぼろ安:同じくボローニアス:「ぼろ安」はあんまりだ(笑)
ぼろ安の娘、お冬:同じくオフィーリア:音的にすごく綺麗な対応だし、運命をも予感させる

宝井琴凌作の講談「天保水滸伝」からの名前はそのままである。

清滝村:「天保水滸伝」の舞台となる村の一つ。最初、シェークスピア関連で探してしまった(笑)
笹川の繁蔵:力士でもあった侠客、講談では悲劇の若親分として描かれる。
飯岡の助五郎:ライバルの侠客、講談では悪知恵の働く悪親分として描かれる。
佐吉:清滝村の侠客、後に獄門。棺桶屋なのは「ハムレット」の墓堀人からの連想か。ロミオでもある。

どこから来た名前かわからなかったのは次のもの。

十兵衛の長女、お文 = 元はゴネリル
十兵衛の次女、お里 = 元はリーガン
代官、茂平太
代官の妻でお光の双子、おさち
浮舟太夫:佐吉の恋人なのでジュリエット相当。
おこま婆:「マクベス」の魔女。

*パンフレット、ウィキペディアなどを参考にした。
*『天保十二年のシェイクスピア』研究 : 井上ひさし・追悼プロジェクト:磯山甚一, 鈴木健司, 藤井仁奈編著、文教大学出版事業部, 2012.3
という研究書もある。自力解決を諦めたときに見てみよう。
どさくさ

どさくさ

劇団あはひ

本多劇場(東京都)

2020/02/12 (水) ~ 2020/02/16 (日)公演終了

満足度★★★★

じべ。さんのアドバイスに従いウィキペディアのあらすじを読み、さらにYouTubeで小さんと志ん生を聴いてから出かけた。予備知識のお蔭で話が逸れて行くところが自然に分かった。途中は作者の瞑想(迷走)に付き合うことになるが若者の不思議な世界を楽しむことができた。最近の私のお気に入りのミルクボーイも出て来たし。最後の哲学的SF的疑問をどう表現するのかと思っていたら、少し騙されたようではあるが良い感じの結末に仕上がっていた。とはいえ、きっちりと論理的に解説せよと言われると逃げ出すしかないのだが。

コナンさんのときは1時間15分だったということだが今回はちょうど1時間であった。尺稼ぎのタイムリープもどきを省けば45分くらいで終わりそう。

グッドバイ

グッドバイ

東宝・キューブ

シアタークリエ(東京都)

2020/02/04 (火) ~ 2020/02/16 (日)公演終了

満足度★★★

太宰治の未完のコメディ「グッド・バイ」は起承転結で言えば「承」の初めで終わっている作品だが、それを ケラリーノ・サンドロヴィッチが大幅に補充して戯曲として完成させ上演したのが2015年。原作部分は1時間もないものを3時間に膨らませている。今回はその生瀬勝久演出による再演である。

原作は沢山の愛人との関係を解消するはずが美容師と画家の2人で途切れている。ケラ版は愛人の数を原作よりも多い20数人と煽るので続けて色々な愛人が登場するのか思いきや、女医を登場させただけで「承」は終わりとし、コメディであることをパワーアップして大技の「転」を続け、最後は予定調和的な「結」としている。しかしストーリーそのものはかなりやっつけ仕事で、個々の俳優さんの演技を楽しむべきものだと感じられた。

生瀬さん、もちろん出演もする。冒頭いきなり、主人公の藤木直人さんに無茶振りをしてさすがと思わせる。原作では葬儀の帰り道での会話なのだが、本作では葬儀会場での読経の最中の会話として故人への失礼さを際立たせている。そのためにわざわざ喪服を着た会葬者を10名くらい用意するという力の入れようだ。生瀬さんはここがやりたかったのだろう。藤木さんは真面目で気が弱くそれゆえにどの女性にも別れが言えない色男というお得意の役どころだ。女性陣は真飛聖さんがしっかりした奥さんにピッタリだったが、歌わないソニンさんは魅力半減で大振りの演技が空回りするばかりである。そしてこれだけの人がいるのだからラウンドガール(?)のバイオリン以外にももっと派手に歌い踊って欲しかった。

ところでマチルダアパルトマンの「ばいびー、23区の恋人」って「グッド・バイ」からインスパイアされたのだろうか。「ばいびー…」は本当に23人のところを回って行くので、原作の本来の姿に近いのかもしれない。

少女仮面

少女仮面

トライストーン・エンタテイメント

シアタートラム(東京都)

2020/01/24 (金) ~ 2020/02/09 (日)公演終了

満足度★★★

春日野八千代も甘粕大尉も50年前の人々にはなじみがあったのだろう。私は甘粕には興味があるものの春日野のことはまったく知らない。そして興味がある方の甘粕はただのアイテム扱いである。そういうわけでストーリーに入って行くことが困難であった。じっくり思い返してみてもあれのどこを楽しめば良いのかまるで分からない。
まあしかし、唐十郎作品なのだから大きなストーリーが分からなくても歌やダンスで楽しむことができるだろうと期待したが少人数の短く地味なものではまるで盛り上がらない。
唯一、木崎ゆりあさんの眩しいばかりの若さは大いに楽しむことができた。それはテーマの一部が私にも伝わったということなのだろう。

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