やまけんの観てきた!クチコミ一覧

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音埜淳の凄まじくボンヤリした人生

音埜淳の凄まじくボンヤリした人生

ほろびて/horobite

STスポット(神奈川県)

2024/06/21 (金) ~ 2024/06/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

過去作再演シリーズ。初演は未見。

ネタバレBOX

時間という概念抜きで見る世界はどのように見えるのかという某SF作品の肝となるアイディアをほぼそのまま使いながら、それを俳優の演技へのアプローチと認知症の世界認識とつなげたアイディアが秀逸。同時に上演自体が、そうして演技することを通して認知症の人の感覚する世界をどうにか理解したいという祈りのようなものにも感じられる。
おい!サイコーに愛なんだが涙

おい!サイコーに愛なんだが涙

宝宝(bǎo・bǎo)

インストールの途中だビル・インストジオ(東京都)

2024/05/30 (木) ~ 2024/06/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

ひとりの美大生がある地下芸人との出会いをきっかけに自分のセクシュアリティと向き合い、ゲイとして生きる自分を認められるようになっていくまでを描いた一人芝居。個人的にはもう少し社会を描いてほしい、あるいは社会に働きかけてほしいと思わなくもないのだが、観客に自分の話をするようなモードをベースに、物真似、映像、人形劇など一人複数役を様々なかたちで見せる趣向も楽しく、長井のチャーミングなキャラクターと巧みな演技で飽きさせない。宝宝の次の公演も見たいと思わされたし、上演台本もよくできていたので、長井と共同で脚本を書いた藤田恭輔のかるがも団地の8月の公演もチェックしてみようと思った。

オッケイ

オッケイ

川久保一人暮らし

OFF OFFシアター(東京都)

2024/06/07 (金) ~ 2024/06/09 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

テレビドラマなどにも活躍の場を広げつつある俳優・川久保晴の自作自演一人芝居企画。コメディエンヌの賞であるエミィ賞のグランプリを受賞しているだけあって、一人芝居三本立てをバリエーション豊かに見せて飽きさせない。全体を通して母への想いという一つの軸を見せる構成にも好感。ただ、笑いとシリアスのバランスというか、組み合わせ方にはもう少し工夫が必要だったように思う。三本立てのどれも、そして全体を通しても、前半の笑いから後半のシリアスへ(しかも重め)という流れになっていたのだが、両者が分離したままやや唐突にモードが切り替わっているような印象があり、観客として笑いもシリアスもどちらも受け取り損ねてしまう瞬間が少なからずあった。笑いながら泣いてしまう、真剣なのに滑稽、というのはある種の人生の真理ではあると思うので、それをまざまざと感じられるような舞台をこの先の活動に期待したい。

ファジー「theirs」

ファジー「theirs」

TeXi’s

アトリエ春風舎(東京都)

2024/06/09 (日) ~ 2024/06/16 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

「加害性」について考える1年間のプロジェクト/三部作の一作目。今作では「男性が背負っている加害性を表面化し、その先にある人間として誰もが持ち得る普遍的な加害性を描」くとのことだったが、作品が特に焦点をあてていたのは「家」の制度や家父長制だったように思う。上演において複数の異なるレイヤー(多くの場合、大人/子供/現実の三つのレイヤー)が重なり合うTeXi'sのスタイルを巧みに使い、俳優の身体に異なる方向を向いた複数のベクトルを宿らせることで「家」をめぐるアンビバレンツや男性が抱く屈折した感情を身体化してみせることに成功していた。三部作の一作目ということもあってかテーマを示すにとどまってしまった感はあり、ここからプロジェクトがどう展開していくのか見守りたい。攻撃的・暴力的言動が続くので見ていてしんどい時間が長く、TeXi'sに限らずこのようなテーマを扱う際にそれをどう処理すべきかというのは考えるべき点なように思う。上演自体が撃つべき暴力の反復になりがちなので。

ライカムで待っとく

ライカムで待っとく

KAAT神奈川芸術劇場

KAAT神奈川芸術劇場・中スタジオ(神奈川県)

2024/05/24 (金) ~ 2024/06/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

2022年の初演を観たときの衝撃が忘れがたい作品。今回の再演&ツアーでより多くの人に届けられるのは本当に意義のあることだと思う。

ネタバレBOX

一方、上演がはじまってすぐに感じたのは、先の展開を知りながらこの物語を辿ることのしんどさであり、そういう物語が待ち受けることを知りながらそれを(娯楽として?芸術として?)観ようとしている私のこの行為はこの作品(が突きつけるもの)に対する裏切りなのでは?という疑念だったのであった。
理想郷

理想郷

小田尚稔の演劇

水性(東京都)

2024/05/23 (木) ~ 2024/05/29 (水)公演終了

実演鑑賞

それぞれに事情を抱えた4人の女性が共同生活をはじめ、そしてそれぞれに去っていくまでを描いた作品、なのだが、それぞれの女性の設定を見せたところで終わってしまったような印象で大いに消化不良。
また、小田作品では多くこじらせた非モテ男性が描かれ、もちろんその切実さと解像度の高さこそが小田作品の持つ「力」だったと思うのだが、そこに内在していたミソジニーが今作では悪い方向で発露していたようにも思う。それぞれの「事情」の背後に明らかに男性がいる場合にもその存在が透明化され、あたかも責任が女性にあるかのように描かれている場面が散見されたのもいただけない。

べつのほしにいくまえに

べつのほしにいくまえに

趣向

スタジオ「HIKARI」(神奈川県)

2024/05/23 (木) ~ 2024/05/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

「互助・共助のための結婚法」の施行を間近に控えたある国の話、を、『夏の夜の夢』+αの登場人物の名前と設定の一部を借りながら語る。ラブ婚とケア婚、LGBTQなど結婚に関わるトピックてんこ盛りながら『夏の夜の夢』の枠組みを借りることで2時間の枠内で(ひとまず)まとめあげた劇作が巧み。ただ、個人的にはこの作品が誰に向けられたものなのかという点が気になった。あまりに多くのトピックが詰め込まれているので、普段からこの類の問題に興味を持たない人にとっては(一応ある程度の説明はあるものの)ついていくのがかなり難しい部分もあったように思うし、逆に私のように普段からその周辺の問題に関心を寄せるものからすると新たな発見や驚きが感じられる部分はなかった(祖母と孫のエピソードにはその可能性の萌芽は感じたが)。登場人物それぞれも人間というよりは設定を背負ったキャラクターとして配置されている印象が強く(だからこそ『夏の夜の夢』の枠組みが有効に働くわけだが)、もっとトピックを絞って人間のドラマとして見たかった気もする。同じ興味関心を、もっと言えば、おおよそ同じ方向に社会が「よくなる」ことを臨む人々にとっては志を同じくするものの集うセーフスペースとしての意義はあったかもしれない(が、私自身は演劇にその機能は求めていない)。

Deep in the woods

Deep in the woods

終のすみか

調布市せんがわ劇場(東京都)

2024/05/24 (金) ~ 2024/05/26 (日)公演終了

実演鑑賞

2022年の『idk.』以来の観劇。会話が(まずは作劇の面で)巧みになっていて驚いた。俳優の演技に拠る部分も大きいが、特に明確な「引き」のない会話が続くつくりにも関わらず、飽きずに集中して見続けられる上演になっていた。ただ、その上演を通して立ち上がってくるものとして会話や場の空気以上のものが感じられなかった点は大いに不満。巧さは十分にあるのでそれで何を書くのかを観たい。

若き日の詩人たちの肖像

若き日の詩人たちの肖像

平泳ぎ本店/Hiraoyogi Co.

戸山公園(箱根山地区)陸軍戸山学校軍楽隊 野外演奏場跡(東京都)

2024/05/17 (金) ~ 2024/05/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

戸山公園野外演劇祭参加作品。平泳ぎ本店の俳優たちのチャーミングさと野外劇ならではの空気、時間の経過に伴うその変化などが相互に作用しあってよい上演になっていた。
堀田善衞『若き日の詩人たちの肖像』を原作とした舞台を戸山公園(箱根山地区)陸軍戸山学校軍楽隊野外演奏場跡で上演するという趣向は、能のような効果をあげているという点において評価できる一方、平泳ぎ本店の「マッチョ」なキャラクターは(それはチャーミングさとも切り離せないものなので一概にそれだけで否定すべきものでもないと思いつつ)作品で描かれる反戦的なメッセージを裏切っているようにも思え、テキスト構成の(見れないほど破綻しているわけではないが必然性もさほど感じられない)ゆるさも相まって、やはり演出家なりドラマトゥルクなりが必要だったのではとも。

かちかち山の台所

かちかち山の台所

SPAC・静岡県舞台芸術センター

舞台芸術公園 ほか(静岡県)

2024/04/27 (土) ~ 2024/04/29 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

「かちかち山」をモチーフに、舞台芸術公園とその周辺を歩き回りながら鑑賞するツアーパフォーマンス。「かちかち山」をおじいさんの視点ではなくたぬきやおばあさん、うさぎの視点=周縁化された視点から語り直す趣向と、舞台芸術公園の周囲=外側に観客の意識を向けさせるパフォーマンスの重なり合いが巧み。どこからか聞こえてくるオーボエの音に誘われるようにして自然と視線も周囲に開かれていく。かなりの高低差のある道のりを自分の足で歩き回ることで、そこがどのような土地なのかということが(もちろんそれはその土地のごくごく一部でしかないのだが)自分の感覚でもってたしかに感じられる体験だった。

ストレンジシード静岡

ストレンジシード静岡

ストレンジシード

駿府城公園、青葉シンボルロード、静岡市役所・葵区役所など静岡市内(静岡県)

2024/05/04 (土) ~ 2024/05/06 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

オムニバス・ストーリーズ・プロジェクト『パレードとレモネード』を観劇。
50名以上の登場人物のプロフィールからそれぞれの短いエピソードを立ち上げ、それらを連ねるかたちで演劇作品をつくり上げる「オムニバス・ストーリーズ・プロジェクト」の静岡版。東京芸術祭2023で劇場空間で上演された『オムニバス・ストーリーズ・プロジェクト(カタログ版)』ではエピソードごとに異なる時空間を次々と舞台上に立ち上げていくスタッフ・キャストの巧みさに唸らされたが、街中で上演された今回のバージョンでは、実際に街の中で行なわれている様々な営みと同じレイヤーで上演を観ることになるため、「ああ、こんなにもいろいろな人がここにはいるんだ」ということを改めて、鮮やかに感じる上演になっていたように思う。ストリートシアターのフェスティバルで上演するにふさわしい作品であるのみならず、作品のポテンシャルも十二分に引き出された素晴らしい上演だった。

デカローグ1~4

デカローグ1~4

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2024/04/13 (土) ~ 2024/05/06 (月)公演終了

実演鑑賞

プログラムAを鑑賞。デカローグ1&3はどちらも普遍的な物語だとは思うものの、プログラムAだけを観た現時点では 1980 年代のポーランド・ワルシャワを描いた映画をなぜわざわざ2024年の日本の国立の劇場がしかも演劇でやるのかが全く見えなかった。特に、なぜ演劇でこれをやるのかという点については大いに疑問。プログラムAについては団地の一部を模した舞台美術が全く機能しておらず(機能するように使えておらず)、単に見づらいだけでなく空間の使い方があまりにルーズで(どこまでが部屋でどこに壁があるのかなどが不明瞭)それがいちいち引っかかる。観客の想像力に都合よく甘えるべきではない。

Le Fils 息子

Le Fils 息子

東京芸術劇場

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2024/04/09 (火) ~ 2024/04/30 (火)公演終了

実演鑑賞

家族の不和を描く劇作家フロリアン・ゼレールの筆の巧みさが冴え渡る一作。最悪の結末が容易に予期できるだけに避けがたく終わりが近づく様が観ているこちらの心も削る。

ネタバレBOX

だが、そんな観客の心を弄ぶかのようなラスト——最悪の結末は避けられたのだと思わせておいてそれが父の願望でしかなかったということを明かすその手つき——はその巧みさゆえに邪悪ですらあるように感じてしまった。それは物語や描かれる主題による要請というよりも観客の心をより揺さぶるために選ばれた結末ではなかったか。あのようなかたちで心を揺さぶることを私はよしとはできない。
内容が内容だけにトリガーワーニングも必要だったのではないかと思う。
La Mère 母

La Mère 母

東京芸術劇場

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2024/04/05 (金) ~ 2024/04/29 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

同時上演の『Le Fils 息子』と同じく家族に訪れる危機を巧みに描いた一作。家父長制を基盤とする「家族」に生じる歪みを描き、子が自立した母に訪れる「空の巣症候群」を通して「母」という存在を問い直しているという点では今の日本で上演する意味も大いにある作品だと言える。
だが、上演時間の大半を母の「狂気」を描くことに費やし、しかもそれをことさらに笑えるものであるかのように提示する手つきには疑問を感じる。妄執に取り憑かれた母の姿はたしかに滑稽かもしれないが、それは本人が真剣だからこその、ほとんど悲愴と見紛うばかりの滑稽さであるはずだ。

processing and tuning

processing and tuning

オータムプロダクションズ

SCOOL(東京都)

2024/04/09 (火) ~ 2024/04/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

タイトルが示すように最終的なアウトプットとしてのダンスを楽しむというよりむしろそこに至るプロセスを共有し、ダンサーと向き合う観客の知覚をチューニングするような上演。
開場中から、ジャグリングボールを使ってパフォーマーと観客、あるいは観客同士でのキャッチボールを促し、そこからボールをキャッチするときの体の重心のあり方に、さらには椅子を持って移動するときの体の重心のあり方に観客の意識を向けさせる導入がスマート。
ジャグラーの目黒陽介とダンサーの仁田晶凱はそれぞれに身体が鍛え上げられているのはもちろんだが、観客の知覚に働きかける語りも巧み。
語りと字幕で提供される言語情報の働きかけによって観客としての自分の知覚のモードが操作され、しかもそのこと自体も自覚させられるので、目の前の身体の動きと同じくらい、自分がそれをどう見ているのかにも意識が向く上演だった。

正夢

正夢

星歌オムニバスひとりしばい公演

北池袋 新生館シアター(東京都)

2024/03/28 (木) ~ 2024/03/31 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

オノマリコ作の「19才」が出色。「女はコントで男役ができないからお前とはコンビを組めない」と星歌に言い放つ若手男芸人を星歌が演じる。

ネタバレBOX

当日パンフレットにオノマが「若手芸人の有様などを含んだ話をいろいろ聞いた」と書いていることもあり、「うわー、こういうホモソ芸人いそう……」と思ってしまうのだが、そこから話はその若手芸人が年上の業界関係者らしき人物に性的に搾取される話に転調していく。搾取する側される側の性別をステレオタイプなそれから反転することでイメージをずらしつつ、観客はそこにそれを演じている星歌に対する搾取の可能性をも、単なるドキュメンタリーや暴露とはまた別の形で読み込むことになる。暴露でも説教でもないかたちで観客に性的搾取をめぐる思考を促す戦略が巧み。
一方、櫻井智也作の「je t'aime★je t'aime」と鈴江俊郎「私は、恋をした。」の2作品では、年上男性が年下女性に当て書きし書き下ろしたのがどちらも「一人の男に執着する女の話」であることの気持ち悪さを感じてしまった。オノマ作品がラインナップに含まれていることもあってより一層その気持ち悪さが際立って感じられてしまった面もあるがそれはオノマがいい仕事をしているということでしかない。

演技も巧みな星歌だが何よりこれだけの劇作家陣に書き下ろしを依頼しその上演を実現した企画力・実行力に脱帽。
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しあわせ学級崩壊

ART THEATER 上野小劇場(東京都)

2018/05/30 (水) ~ 2018/06/03 (日)公演終了

満足度

フェティシズムを共有しないものには見ているのが辛い舞台だった。「おとうさま」のもと、ともに暮らす「姉妹たち」。ある種の新興宗教を思わせる設定で、どうやら性的虐待も行なわれていたことが匂わされる。「おとうさま」はすでに殺されていて舞台上には登場しないのだが、その代わりのようにして舞台上には作・演出・演奏の僻みひなたがいる。多くのセリフが音楽に乗せる形で発せられるこの作品において、舞台上で音楽を演奏する僻みの持つ「権力」は通常の演劇作品における作・演出のそれよりもさらに絶対的で、それは「おとうさま」の遺した呪いのようでもある。そこに批評的距離は感じられず、意識してやっているのであれば申し訳ないがただただ気持ち悪い。若い世代がこのような女性の描き方をよしとすることには大きな危機感を覚える。

iaku演劇作品集

iaku演劇作品集

iaku

こまばアゴラ劇場(東京都)

2018/05/16 (水) ~ 2018/05/28 (月)公演終了

満足度★★★

CoRich舞台芸術まつり!の審査対象は『粛々と運針』。安楽死と出産/中絶、命の自己決定権をめぐる二つのテーマを並置した構成も、それぞれのテーマを担う二組の俳優も巧い。だがそれ以上のものにはなっておらず、むしろ巧さ=作り手の作為が透けて見えるがゆえに心動かされることはなかった。終盤でクロスこそするものの、会話は兄弟/夫婦の二人の間で閉じており、そのためか会話からテーマが浮かび上がるというよりはテーマのために会話している印象を受けた。展開される議論もそれをめぐる対立も既視感のあるもので、新しい思考に導かれることがなかった点も物足りない。

青春超特急

青春超特急

20歳の国

サンモールスタジオ(東京都)

2018/04/19 (木) ~ 2018/04/29 (日)公演終了

満足度★★★

青春ショーケースとばかりに描かれる高校生たちのバリエーション。完成度は高くそれなりに楽しくは見たものの、このように青春を描くことにノスタルジーを反芻する以上の意味はあるのだろうか。(後悔も含めて)甘酸っぱい青春という枠組みは誰もが共有する思い出のようでいて、そこから取りこぼされてしまう人や出来事が多過ぎる。
作品としては登場人物それぞれのエピソードを均等に描いていた点に好感は持ったものの、それゆえ個々のエピソードはさほど掘り下げられず、上演全体は冗長に感じた。均等な青春などというものはあり得ない。思い切って偏った描き方をした方が青春の残酷さも浮き上がったのではないだろうか(それはやりたいことではないのだろうけど)。

さようなら

さようなら

オパンポン創造社

王子小劇場(東京都)

2018/04/19 (木) ~ 2018/04/22 (日)公演終了

満足度★★★★★

紋切り型の演技と類型化されたキャラクター、コテコテの関西ノリ(と私が思うもの)に初めは「ウッ」となったのだが、「ウッ」となったところが悉くあとで効いてくるので感心してしまった。完全に思うツボである。紋切り型と類型化は抜け出せない退屈な世界を描くのに効果的な手段であると同時に、観客に「この人はこういう人」という思い込みの枠を嵌める役割を果たす。だからこそ、登場人物がそこから外れた言動を取ったときに観客は揺さぶられる。
俳優たちは皆、演出の意図を十分に汲んだ演技を見せていたが、柴田という男のヘラヘラしたうわべとその向こうに垣間見える苛立ち、それでいて変化を望まぬ弱さを演じる野村有志(作・演出でもある)の演技が巧みで印象に残った。

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