「月読み右近の副業」
劇団ジャブジャブサーキット
七ツ寺共同スタジオ(愛知県)
2017/05/25 (木) ~ 2017/05/28 (日)公演終了
満足度★★★
今回は、登場人物の立ち位置と背景を伺いながら(探りながら)観る感じが強かったですね。
そんな中、随所に散りばめられた笑いの小ネタ群が良い息抜き。中でも荘加真美さんが一番面白かった。
このバランス感覚がジャブジャブの味ですね。
第24次 笑の内閣『日・韓・米・春のツレウヨまつり』
笑の内閣
アトリエ劇研(京都府)
2017/05/17 (水) ~ 2017/05/29 (月)公演終了
満足度★★★★
アグレッシブな宣伝と炎上の影響で主義主張がもっと色濃い先入観を持っていたけど、それを虚仮にする意味での「コメディ」…までは想定内だったが、「歌謡芝居」風の構成だったのには驚いたな。
3作とも基本の流れは同じだが、複数の国で表現することで高間氏のスタンスを明確化している。どの国、どの主張でも陥り得る普遍の愚行。特に日韓の相反するはずのサイドで結局やってることが同じというのはシニカルで良い。
以降はネタバレboxへ
ネタバレBOX
(続き)
いずれも、ウヨ彼に対するパパ&部下の辛辣な指摘の言葉…(ストーカーの愛…とか)が的を射て小気味良い。教授が最後を纏める「愚かなことをする権利」等々、全編コメディ感が強いわりにシリアスな強い言葉が放たれるのが印象的でした。ウヨに陥る構図として「安易な自己肯定のツール」とみる分析が窺い知れました。
最初は恋人同志の譲歩のお話にもなり得る印象も受けていたけど、ウヨ彼の所業が余りにも馬鹿すぎる描写なので、どうしても対等足りえず、その線は結局薄くなったな。
3作通しの髭だるマンさん、いやらしい存在感パナイ、有罪で妥当(笑)
以下、個別の感想。
アメリカ編】コメディとしては一番出来が良かった。誇張した米国人的リアクション、ゼスチャーをベタながらもしっかり押さえて、一挙手一投足がいちいち面白くなるという付加価値あり。その上、ゼミ友を演じるピンク地底人2号さんの異常性が冴えまくり。「良い言葉を吐く役どころ」にダニエルさんの個性が合って、セリフに説得力を増す感じがあった。
ヒロイン熊谷さんも綺麗な歌声響いてたな。隠しマイク芸も楽しい。
山場の説得シーンは時事的に一番盛り上がった。丸山交通公園さんの喉、大活躍。
日本編】一番印象的な役者は教授役の高瀬川さん、キレッキレの論破感…衣装もまた綺麗。
ヒロイン希理子さん、可愛いは正義の感あり。
松田パパの存在感はキャストの中、際立ってた。
日本編だけ、アレ?って思ったのが、ウヨ彼が序盤で彼女の頭を掴む動作。グワッと鷲掴みが非常に暴力的で、精神的に逃げられなくなったDV関係、共依存を想起したけど、あまりそっちを強調する方向には展開しなかったね。結局、3本とも彼女が彼に固執する理由が見えてこなかったので、あり得る理由にはなるかと思うんだけどね。
韓国編】在日カミングアウトのくだりが悲壮感と強い決意を醸す。どっちからも差別されるのか…きっつ。
山場の説得シーンが「北の国から」になっていたのがジワる、極めてジワる(笑)
キャスティングは韓国人的風貌を優先した感がありましたね。ミソゲキ版「君の名は。」で強烈な個性を放った福原さんが比較的おとなしく見えた… それだけ周りが強烈な個性で埋め尽くされていたってことか。
3バリエーションの類似役で、ほぼ同時に比較される環境って過酷だな。だからこそ生まれる切磋琢磨か。"
名探偵青島青子-劇場版-
片岡自動車工業
HEP HALL(大阪府)
2017/05/19 (金) ~ 2017/05/22 (月)公演終了
満足度★★★★
ほとんどの役が犬!
その犬種毎の個性の表現がいずれも面白い。役者の芝居がもちろん根幹だけど、衣装による表現もホント巧みで目にも楽しい。お話にしたって、見捨てられたペット達の壮絶な悲哀を根幹に筋を通しているけど、やはり目に一番とまるのは、その味付けとなる演出やコメディ要素の数々。総じて、脚本や役者の周りを下支えする演出要素が作品をすごく厚くしている。生演奏、歌舞伎の掛け声、映像投影、ダンス… そして一番印象的だったのは、既成作のパロディとなるBGMや効果音たち。
以降はネタバレboxへ
ネタバレBOX
火サス、金ロー、太陽にほえろ、西部警察… 聴いた事あるどころか、私ぐらいの歳には、脳内に擦り込まれていると言っても過言ではない音たち。条件反射で既定の感情が湧いてくる。ズルイって言いたくなるけどw、これがまたコメディ感を増大させて盛り上がるんだよねぇ。
正直、話としては"迷"探偵モノだけど(笑)、「えっ?、事件起こってたの?」って、作中でセルフツッコミ入れるほどの徹底したコメディ路線は、ある意味繊細と言っても良いですね。
好みだったのは、
・何度もネタを変えて繰り返されるヨークシャーテリアの言い間違え→
・トイプードルの「人生はラーメン」
・震えるチワワ
・ごわす
・文字で雨を降らす演出
・ヘリのローターアクション
辺り…
そして、前説の「携帯を電源から"根こそぎ"お切りください」も忘れられない(笑)
笑いで理屈を根こそぎ刈り取った楽しい作品でした。
レモンキャンディ
匿名劇壇
浄土宗應典院 本堂(大阪府)
2017/05/18 (木) ~ 2017/05/22 (月)公演終了
満足度★★★★★
落下中の飛行船… 床面が斜めにあつらわれた美術は、見事にその不安感を醸す。
だが、徐々に明らかになる…その不自然なまでに不合理な物理的状況に、返って作者の意図を感じずにはいられません。(単にオチを指しての言ではありません。)
他人事であれば誰もが「それはおかしい」と思える状況を無批判に受け容れてもがく舞台上の人々…それを観客に眺めさせて「客観視」を意識させる作りにも思える…何かまた別の現実を投影している様でもある。
同じ環境の中ですら、人それぞれの立場、背景、思惑が様々で、それ故の「他者への無頓着さ」の提示も、また極めて意味ありげです。今、そこにある身の回りの…自分自身の「大前提」を疑えと言っているのだろうか。
以降はネタバレboxへ
ネタバレBOX
「戸惑えよ」と同様… いや、それにも増して、いい感じに観客を突き放すエンディング。さも意味が無かったと思わせる結末だが、作中で何度も示唆される「全てに意味を求めること」への懐疑と絡めると非常に意味深。既成価値観への問題提起か。
彼らのこの数日に、意味を求めずに価値を見い出すことが出来るか否か… それを問われているのかも。
各論。しゃかいもんだいっ!は秀逸。東さんを筆頭に匿名女優陣にコレで一発パフォーマンスをキメて欲しい with 男優陣のオタ芸付き。
冒頭の「あったかもしれない未来を恐れろ」って遣り取りは何気に好き。全編の福谷さんの絡みっぷりがやっぱ面白かった
事故物件、ありますか?
試験管ベビー
千種文化小劇場(愛知県)
2017/04/21 (金) ~ 2017/04/23 (日)公演終了
満足度★★★★
ドッカンドッカン流れてくる事故物件ネタはバラエティに富んでいて単純に面白いんだけど、その根底にあった「なぜ、事故物件なのか?」がすごくキーポイントで、その巧みな隠し方がとても良かった。
以降はネタバレboxへ
ネタバレBOX
(続き)
彼氏の経済力・自律性の欠如を前面に押し出して、さもそれだけが理由であるかの様に見せながら、実は…という展開…のみならず!、観客が最初から目にしていた今の実態からしてソノ想いに基づいていた…という二段階の裏のかき方に痺れる。
それ以外は何から何までとにかくバカバカしいほどに可笑しなアレコレが痛快で、特に敬大の家族への挨拶のくだり、試験管不動産のまどか/シンジに対するプロファイリング、殺人事件再現映像、福田さんのケータイ音、外国人物件の面々、知咲が実は…というギャップあたりが好みでした。(大杉か)
まどか・井上瀬奈さんのマシンガントークは重量級ながら軽快という面白いバランス。シンジとの掛け合いが微笑ましくて、主役ペアに相応しい存在感。シンジ・丸山敬大さんの情けなさの演技も進行する程に面白い。特に寺田さんとWで情けないトコ。加藤奈々さんのターニャ役は私にはかなりツボで、コミカルな優しさが楽しかったけど、一転、冷酷さも秘めていたのが印象的。警官哀れ。
なお、客出しのロビー対応ですらターニャ口調で臨んでいたのが凄い。さすがとしか言いようがない。尊敬。
福田真也さんのクールな仕事ぶりはバッカス・ナイゲンでの監査さんの進化形を彷彿。ファイルを扱う指先の仕草とかキレイやったなぁ。一転、コールガール姿での登場にも驚いた。今度、「フク⤴タァ⤵さん」と呼んでみたい欲求を抑えられない(笑)
そして最後に、ますます磨きがかかる「お客様参加システム」、とても楽しかった。
いやぁ、まさか、ちくさ座の舞台を踏めるとは思わなかったので、自分の最前列趣味も誉めてあげたい。
それにしても、まぁ、色々考えるもんだね。
うちやまつり
オイスターズ
七ツ寺共同スタジオ(愛知県)
2017/04/20 (木) ~ 2017/04/25 (火)公演終了
満足度★★★★★
とある団地で起きた未解決の連続殺人とその容疑者だった青年。彼の周りを行き交う団地の住人たちとその噂話。ありふれた苗字のみを使い、説明要素を省いて繰り広げられる会話等、様々なカモフラージュですんなり頭に入らない背景と関係性。
そんな私の当惑の中、表面上は他愛もない会話に紛れて、ふっと出てくる「住人たちのイレギュラーな関係性」を匂わせる言葉たち…
以降はネタバレboxへ
ネタバレBOX
更に、役者の視線や仕草で…全ての言葉が意味深に伝わってきて、混乱の波紋が更に広がっていく。登場人物の誰も彼もが、その発する言葉を額面通り受け取れぬ雰囲気があるから尚更。
おそらくは誰が犯人でも辻褄を合わせられる曖昧さを孕む。一見どこにでもいそうな人たちなのに、その実、誰もが心の内に深い闇を抱えている様に感じさせる…
当初、同一犯による限定された猟奇殺人のイメージだったのに、実はそれは氷山の一角で、団地の住人全体が病んでいるのだという印象が浸透してくる。
現代的に共存意識が薄く見える集団なのに、無意識に共有化されていく「後ろめたい意識」の繋がりは、ある種のムラ社会にも見えた。
誰の身にも… 誰の周りにも起こりうる異常性。気づかぬ間に、自分もその一員となっていてもおかしくない。
犯人は…観ていた私でした… アレコレ考えた今となっては、そんな結末もアリかもしれないと妄想に耽る。
それにしても、演出もさることながら、役者さん方の思わせぶりは、どなたも見事でしたね。
藤さん、川上さんが演じる田中姉妹が、想像がつかないという意味で一番ミステリアスだったな。
そして藤島さんは、今度は前髪演技で私を恐怖に突き落としてった(笑)
あ、カッコンの竹
コトリ会議
ナンジャーレ(愛知県)
2017/04/21 (金) ~ 2017/04/23 (日)公演終了
満足度★★★★★
心地良い混乱に身を委ねる素敵なひととき。他じゃあ観れない種類のお話を堪能。
役者も美術等々も、本当に見どころ多かったです。
私の青空!
MICRO SHAYS
千種文化小劇場(愛知県)
2017/04/07 (金) ~ 2017/04/09 (日)公演終了
満足度★★★
戦中を思わせる不穏な空気を背景に、生きる活力を失いつつある人々、テロリストを彷彿とさせる不気味な秘密結社。昭和テイストだけど、ああ…これは今なんだな…だから今、演るんだなと思える。
以降はネタバレboxへ
ネタバレBOX
世の中が推す「耳障りの良い前向きな価値観」。それが導いた結果と対比させ、その価値観をぼんやりと…でも強烈に皮肉る言葉と空気の数々。人の感動の裏に潜む「心の闇」をも引き摺り出す。フミエの「感動的でしょ?」という嘲笑が印象的。
「永久に始まらない明日サーカス」も皮肉的で良かったなぁ。
一方で「世の中が切り捨てがちな価値観」との共存をいとおしむ。印象的なのは考古学者と同じと評された「読めない文字の本」を楽しむ梅子。今なら「多様性の受容」というところ。まぁ、それすらも今はポピュラーに使われ、都合の良いように置き換えられる。これもまた「耳障りの良い価値観」と見做される時代かも。所詮、人は都合よく思想を取り込むものだから、本当に皮肉られるのは思想よりも、多数派の心理なのかも。な~んとなく皮肉が強すぎて、ラストで素直に「心の中の青空」を感じられない私でした。
でも、序盤で使われた「想像でモノが生まれる仕組み」なんかは新鮮で好きだった。人の生き方も、自分の考え方次第ということなのだろうか。
役者。
ゲタムラ・うえっていさんの0.1tonアタック、痛快(笑)
そして冒頭の客入れ芝居でみせた、ゲタ等の小道具を様々に使った謎の所作は、良い角度でもっと見たかった。
真田・藤島さん。善意のキャラで通すのかと思いきや、フミエとの口論で表出する本音の芝居が熱かった。藤島さん得意(?)の毒のある感じの芝居が刺さる。
フミエ・しんかさん。先述の芝居はもちろん、陰を持って佇む芝居を真ん前で観れるタイミングもあって、重苦しい雰囲気を堪能しました。
「風車の街、はこ舟の少女」
劇団ひとひらり
ユースクエア(名古屋市青少年交流プラザ) (愛知県)
2017/03/31 (金) ~ 2017/04/02 (日)公演終了
満足度★★★
想像以上に不条理劇。個々の事象はさほど不自然ではないが、…繋がらない、躱される、積み重なる意味ありげな台詞。理解出来ぬまま、頭に残らず流れていく言葉。不十分なピースで妄想の世界に舟を漕ぎ出した私です。そう、これは感想でなく妄想。
以降、ネタバレboxへ
ネタバレBOX
汲み取れた状況…
・発言は必ずしも正しくない? 言動不一致?
・みんな、人間関係を忘れていく?
・対人関係の設定が変わっていく?
気になった言葉…
・いつも勝手に決められる人生
・明かされぬ「いつか気付く日が来ます」
・他人から教えられるのでは意味がない結論とは?
・この街、ある人は昼に賑わうと言い、ある人は、夜にこそ盛り上がるという。
・風が無くても回る風車の暗示とは?
・風車を破壊しょうとすることが意味するものとは?
(私の脳内の)混乱の中…
…解釈の鍵になったのは「風車」
いや、もっと明確に言うと、
「(裏方的に)風車を回している人」でした。
この風車、舞台装置としては、軸を役者が人力で回す仕組みですが、もっと隠せばよいものを、風車構造の中に照明が届いて顔が丸見えだわ、装置への入りとハケでも役者が身を隠す気配が無い…
こんな目立つ行為に演出意図が無いはずはない!
…と辿り着いた結論が、
これが「この世界が作り物である暗示」だろうということ。
そう考え出したら、
・もしかしたら、ここはネットゲームかSNSの世界?
・一部の人はNPCでは?
あるいは、虚構の世界に取り込まれた(取り憑かれた)人々か?
と発想が繋がっていく。
そんな仮想空間を想像しつつも、一方で、人力風車は「人が歯車と化した現代社会」への皮肉… 無限/不滅/永遠と思っていた社会が、人々に延々と課される苦役の礎に立っていることの暗示?…虚構になぞらえた実社会の暗喩なのかもしれんな…とか
…妄想が浮かんで来る来る。
そういう世界への懐疑と同調圧力と抵抗と諦めと…一艘の希望が描かれている…
なんてな(°_°)
作り手の意図とはあさっての方向に舟を漕いでる自覚はある(笑)
解釈は纏まらなかったが、人一倍この作品を楽しんだ自信はあるよ。
解釈ばっか書いてしまったけど、
役者では、主演女優…井上直美さんか…の、台詞を言った後の表情がすっごく意味ありげで、私の混乱に拍車を掛けました(笑)
絶妙( ´ ▽ ` )ノ
ヒカリノ国
劇団星めぐり
ナンジャーレ(愛知県)
2017/03/24 (金) ~ 2017/03/26 (日)公演終了
満足度★★★
星にアカリを灯す水配達人…
たぶん、これだけ聞くと何のことを言っているのかサッパリだと思いますが、絵本から飛び出したような設定の世界を、可愛い中に妙な現実味を漂わせる女の子たちが演じる舞台が、不思議に調和していました。
無理に辻褄を合わせたり、説明的なことをせず、「だって、実際にそうなんだもん。そういう世界だもん。」と臆することなく、堂々と世界を創造した空気が味わえました。
それでいて、メルヘン一辺倒ではない風刺の精神が仕込まれていたのがオツで、「童話」と言うより「寓話」の色が強いです。
また、星を掻き消すほどの…煌々と照る街灯り(=科学?)を嘆く空気に浸りつつ…、「星にアカリを灯す」方がむしろ超科学じゃ~んと思わせちゃうあたり、面白いバランスしてる作品だな~と思いました。
胎内
刈馬演劇設計社
七ツ寺共同スタジオ(愛知県)
2017/03/23 (木) ~ 2017/03/26 (日)公演終了
満足度★★★★★
刈馬作品をここ3年観続け、当初は緻密な戯曲に痺れていましたが、前作「猫がいない」の演出がかなり秀でていたので、演出専念・2種演出という好機にかなり期待していました。そして、期待を裏切りませんでした。
話の筋としては、極限状況の恐怖の中で、反芻される人間の思考が激しくぶつかり合い、自己正当化、責任転嫁、駆け引きとを繰り返しながら、いつしか懺悔や退行や自己肯定などに陥っていき、徐々に壊れていく過程がつぶさに描かれる感じ。
以降、ネタバレboxへ
ネタバレBOX
(続き)
それをカルマ・ストレートでは、奇をてらうことなく、役者3名の表現力に全てを注ぎ込んだ感じで、まさしくストレート真っ向勝負でグイグイ押してくる。3名ともが「見えないものを見せてくる」迫力は圧巻。
今津さんは、喉の掠れ声からして凄い存在感。それが佐山の置かれた過去・現在を体現するようで、全身全霊を注ぎ込んでいる印象がすごく伝わってきます。
岡本さんは、導入部で何かいつもと違う声色で入るのが印象的で、その後、延々と連なる生々しさが半端なかったです。初めて芝居を拝見した頃の影響で、すごく無感情のドール的な印象が個人的には根強かったのですが、遥か昔の話になりましたね。俳優A賞女優やし。
いちぢくさんには、もう何も言えないっていうか、やはり見えないものを見せる感は一番強力で、もがき、のたうちまわる様は圧巻という他はありません。
全般で一番好きなのは、佐山と村子が互いの想い人の幻影を…互いに投影して、二重に妄想の芝居を重ねるシーン…心の内面を吐露しながらも、根本的に食い違わざるを得ない切なさを見せながら、何か共通する要素が漂って、二乗で利いてきました。
さて、一方のカオス・ハイミックス。
アンサンブル・キャスト…すなわちコロスですかね、それを使うということで、…先述の「見えないもの」を視覚的に表現するのを予想していましたが、それだけに留まりませんでした。
「メインキャストの代弁」にまで及ぶ演技演出は、解釈の拡がりを感じさせてくれる…。個人の内面の吐露のみならず、「世の中の苦悩の代弁」にも見えました。本戯曲が戦後の苦悩を表わした社会派の作品にも見えることから、この表現は秀でてアリですよね。まるで怨霊の様なメイクと所作が、戦争で積み重ねられた闇を良く感じさせてくれる。
そういえば、音響も戦争を強く意識させる効果が追加されていたような気がします。総じて、ストレートが「人の闇と業」にフォーカスしたのに対し、ハイミックスには「暗澹たる世情」を見た気がしますね。
役者的には、
にへいさんの暗黒面の芝居は…少なくともよこしまブロッコリーでは絶対観れない気がして、すっごい貴重な機会でした。
元山さんは、やっぱり(?)こういう役どころにはピッタリの空気を醸し出してきますよね。
中村さんは、狂人めいた芝居が似合いそうな方で、佐山もハマりますが、もっと歳を取ったら花岡の方がよりイケるような予感を感じつつ観てました。
最後に共通の演出ですが、エンディングで使われる某歌が、すっごいインパクトありましたよね。
終演の空気との対照さが、切なさと皮肉感をいや増して、なんとも凄い後味となりました。
あ~、それにつけても、2演出という本企画はホント至福でしたね~。
てんとてんを、むすぶせん。からなる、立体。そのなかに、つまっている、いくつもの。ことなった、世界。および、ひかりについて。
マームとジプシー
穂の国とよはし芸術劇場PLAT アートスペース(愛知県)
2017/03/18 (土) ~ 2017/03/19 (日)公演終了
満足度★★★★
スクリーンに流れる映像、舞台上に置かれる…時には役者が持つ「カメラ」による映像。本来、客席からの定点観測しか許されない観客に、視覚的に多彩な刺激を与えてくれます。
「同じシーン」を微妙に変えながら繰り返し、ジワジワと観る者の心を浸食してくる感覚も溜まりません。(あるいは観る側の印象の方が変わっていくだけなのかもしれませんが…)
以降、ネタバレboxへ
ネタバレBOX
幼馴染たちに降りかかった忌まわしき事件。
当事者とまでは言い難い彼女・彼らに、だからこそジワリと忍び寄り、圧し潰してくる無言の恐怖と嫌悪。
観客には、現実の災害・事件を想起させることで、彼女・彼らの心情に重ねさせている模様。
純粋で不器用な葛藤と抵抗と共感願望と選択。
忌まわしき場所から、出てゆく者がいる、留まる者がいる… 忌まわしきモノへの心の処し方、立ち向かい方の違いによる分岐を見せてくれました。思春期の苦悩に重なるような表現も多かった。
「私は成りたくない私に成ってゆく」という言葉が印象的です。
役者個体の演技による表現ではなく、感情を視覚化する多角的な演出も印象深いです。
点は人、線は人の繋がり、立体は社会、世界は人生、光は希望…ぐらいか…?
最後のはちと安易な解釈かなぁ…
なお、全般シリアスな空気が漂うのに、突如、爆発的に現れた「バスのドアに挟まれてブルブルしてるシーン」、「犬による探索シーン」の笑いに大うけ。あれは何だったんだろうねぇ。一瞬、過ぎ去った嵐(笑)
四色定理
廃墟文藝部
spazio rita(愛知県)
2017/03/09 (木) ~ 2017/03/11 (土)公演終了
満足度★★★★★
3作は初演当時に観ていた訳だけど、新作含めて4作並べると充実感ある。4女優が奏でる光と闇の感情の機微を堪能しました。
以降、4作ごとの感想をネタバレboxへ
ネタバレBOX
【私は小綺麗なゴミ箱】
「私」シリーズ元祖にして、最も切ない物語。
「私」を取り巻くIF(Imaginary Friend)と定義される3人は、精神医学上のIFよりは、「私」の自我を構成する要素の分解・解釈する手段の色合いが濃いように思われた。IFを含む4人の会話は、個人の葛藤や逡巡を分かりやすく可視化し、舞台として非常に見映えが良い。
IF3人で順繰りに言葉を継いでいくスタイルが多いせいか、初演の時は3人の性質の違いが「セリフでの表現」程の違いはないかなと思ったのだが、基本1個人の脳内であればIF相互に類似性があるのは当然と言えば当然。むしろ「私」の核たる個性を象徴するものかも。
自分を押し殺して生きてきたかにみえる「私」の、自身の行為の正当化・意義の合理化は、非常に危うい雰囲気を漂わせるが、彼を元気づけた「人生にifは無いよ」というセリフが、IFに依存する自分に言い聞かせる様でいて印象深い。
ラストの電話シーン。頭の中でIFが囁く「選択肢としての可能性」を静かに穏やかに制した理性。それを表現する「間」が好きだったな。初演の時は、ラストにもっと前進の予兆が欲しい…なんて思ったんだが、
今回はむしろ、穏やかながら…IFの囁きに揺らぐことのなかった「私」に力強さを感じた。
「結果は同じ」でも、選択したプロセスが違う…彼女は変われたんじゃないかと思えた。演出が微妙に違うのか、女優の演技が変わったのか、観客として受け取る私が変わったのか。本当にちょっとしたことで芝居から得られる印象ってのは変わるんだな。面白いよ、芝居ってヤツは。昨日も似たようなこと言ってるが、それが再演観劇の面白さだな。
【私は4色のクレヨン】
分かり易そうでいて、なんか一番捉えどころが難しい作品である気がしてならない。
起承転結の「転」となる「四姉妹の置かれた境遇」は、物語としてはそんなに意外性があるでなく、初演の時でも、途中からソレを予感させる展開だった。だから、きっとその「実は…」の設定そのものは核心じゃない気がしてきている。
でも、それ以外はさしたる事件がある訳でもなく、楽しく彩られてはいるけど、淡々とした彼女たちの人となりを示す日常の羅列。
だから、それに添えられている…半ば無意識の様な彼女たちの言葉を掻き集めて意味を探ろうと思った。
それで、観劇の感想としては邪道な気もするけど、購入した台本を読み返した。
姉妹の性格・好みがバラバラであることを強調し、それこそが共存の秘訣だったかの語り口。一方、性格の表現型はその人を表現する唯一の要素ではなく、各々の表現型が「誰にだって少しずつある」と言ってみせる。
バラバラの性格要素が個人を構成し、バラバラの性格の個人が集まることで家族という1個体がうまく機能する。面白い対照だ。血液型性格判定の話から、血縁の定めみたいなものへの懐疑へ展開するのも、設定への布石とだけ捉えるのは浅はかかな…
そして終始、「私たちは家族」という呪文を繰り返す姉妹。
舞台で見る限り、ほとんど理想的なコミュニケーションとバランスを持っているかにみえるのに…、バラバラの個人が集って機能することを実感として示していて、説得力もあるのに…、何がそんなに不安なのかと訝しく思えるほどに繰り返される「家族」のキーワード。
それほどまでに、今の幸せでは拭えないほどに、過去に背負ったトラウマが重いのか…。血縁への抗えぬ渇望を逆に感じさせて、とても切ない。
台本のおまけ小説「私はデニッシュ生地の氷塊」の終盤に出てくる「せめて…」のくだりがジンワリ沁みるのです。
姉妹に幸あれと願わずにはいられません。
【私は分裂するくらげ】劇闘版、新栄トワイライト版、そして今回の単独公演版と…都合3度観ていて、私の感じた印象がだんだん変わっていくのが不思議。
「最後、あんなだったっけ?」
というのが観た直後の感想だったのだ。劇闘版は、宮谷さん演出だから…というのもあるけど、奇妙な設定と4人の私の軽妙なコミュニケーションを楽しんだ感じが強くて、最後も天井からドサッと紙が落ちて敷き詰められ、まるで夢オチの様に「元通り」みたいな、ある種、爽快な後味だった。新栄版では、小屋の制約もあって地味めとなったが、廃墟文藝部らしいプロジェクター演出で、言葉の印象付けが巧みとの印象が主だった。
で、実はこの時のラストは
「何かさりげなく終わってしまった…」
って印象に過ぎなかったのだ、私には。そして今回。
その最終展開に、まるでサイコホラーの様な印象を強く受けて驚いた…
元に戻るのではなく、一切の自己の喪失。
穏やかな日常が始まるかの様に見えながら、
私のすべてを失って「もぬけのカラ」になった「私」がそこに居るだけ… 「今日もいい天気!」という最後のセリフがひどく皮肉に感じる…怖い後味を残した。
実は後で新栄の動画を見返したのだけど、基本やってたことは今回も変わらない。今思えば、新栄を観た時は、私は劇闘でのエンディングに意識を引き摺られてて、…核心のピースを拾えていなかったと感じた。まあ、私の目が節穴だったと言ってしまえばそれまでだし、今回の私の印象もおそらく一つの感じ方でしかないけど、ちょっとしたことで、こんなに受け取れる意味が変わるのかと…感動すら覚える。一つは女優の個性の影響も強いのかもしれない。新栄の「私」は天然癒し系の池場さんで悲壮感が薄まっていたかも。今回の瑠水さんの沈んだ虚無感の演技は、ダークな結末に相性が良かった。
それにしても、本作は、本当にエンディング次第で残す印象を大きく変えられそう。
切り捨てた私達が生き生きと活躍する様は、
「自分の嫌な性質も、切り出し方次第でポジティブに活かせる。」
みたいな前向きの結論も導き出せるし(廃墟文藝部にはひどく不似合いかも)、「分裂する私」って面白い素材だ。
【私はためらう環状線】
今回の新作。春子の感情が非常に微妙なところを漂うのを、瀧川さんが好演。彼女を取り巻く環状線は、無意識のうちに自己に形成してしまった「殻」ってトコなんでしょうか。
最初は、自分が庇護するべき相手であった冬子の成長に、戸惑い、置いていかれる焦燥感みたいなもの… 裏切られたかのような逆恨み感情みたいなものが出てくるのかと思って観ていたのですが、一切そんな感じじゃなかったですよね。
冬子は、どこまでいってもやっぱり愛おしい幼馴染であり、自分の歩んだ・選択した道に思うところはあっても、他者に責任転嫁しない春子の精神性は素敵だ。
ラストであっけなく超えてしまった線路で、春子が漏らすささやかな嘆息と笑みは、軽い自嘲なんでしょうか。彼女はこの先、環状線を超えていくのか、
それとも、なお留まってこの町で生きていくのか(それもまたアリ)…
色んな想像を掻き立ててくれますね。
なんか、4作で一番、等身大の物語な感じがしました。それはさておき、池場冬ちゃんの幼子芝居、完璧ですね。お姉ちゃんキャラと対極を行きそうなのに、なんなんでしょう、彼女に共存するこのキャラクター達は。美味しいとこだけさらっていく… ばみゅん…恐ろしい娘((((;゚Д゚)))))
ラブソング
劇団雪花火
ユースクエア(名古屋市青少年交流プラザ) (愛知県)
2017/03/04 (土) ~ 2017/03/05 (日)公演終了
満足度★★★★
宇宙船で淡々とルーチンワークをこなす可愛いいでたちのキャラ達。隠された設定を少しずつ薄皮を剝がすように明らかにしていきますが、それを気づかせる「違和感」を日常にさりげなく…適切に仕込んだ展開が心地よい。結果としてSFよりはファンタジーに近い味わい。
以降、ネタバレboxへ
ネタバレBOX
黙々と働き…その価値の有無も定かでない使命をひたむきに全うしていくモノたちに、社会での我が身を投影している様でいてとても切なく、それでも生きる意欲を繋ぐ展開が慈愛に満ちていました。クレジット以外、一切表に出ない「ラブソング」というタイトルワードに…表に出さないからこその秘めた想いが託されている様で作演の心の芯を感じます。
演出で楽しかったのは、送信を模した数字のラップかな。ガイド映像も、印象としては「前説」を、意義としてはボイジャーやパイオニア探査機を想起してギャップが面白かったですが、そんなロマンで済まされる事態ではありませんでしたね。そこもギャップ良し。
また、一貫して舞台にある小道具の箱が、最後にとても重要な意味を持つのが心憎い。「キーアイテムを、それと気づかせず最初から無造作に置く」という細工が謎解きモノとして好感です。SF的モールドで舞台の装飾的な機能を一貫して担いながら、最後に「観客の目の前に拡がる光景の意味を180°転換させる効果」を持っていて、唸りました。
私はあの箱に「機能を失って隔離されたHDD上のクラスタ」を想起しました…
後味が深い作品でしたね。
『凪の砦』総収編
烏丸ストロークロック
ナビロフト(愛知県)
2017/02/25 (土) ~ 2017/02/26 (日)公演終了
満足度★★★★★
結末があまりにも壮絶。絶句というのが終演直後の正直な気持ちでした。
以降、ネタバレboxへ
ネタバレBOX
「三ツ山養生所」と称する、見た目はいわゆるポスピスの様相だが、世話をする方も、される方も実は"ワケあり"ばかりの施設。肩を寄せ合い生きていく風情は、作中で語られる「落ち葉の下のてんとう虫」という表現が言い得て妙。介護に忙殺されながらも愚痴一つ言わぬ…楽しそうと言っても過言ではないスタッフの強く明るい振る舞いが、対照的に悲壮感を滲ませる。
舞台で幾度となく繰り返される「生死の輪廻」の言葉は、本来そんな悪い言葉じゃないはずなのに、あたかも無間地獄のイメージを刷り込んでくる。死者が今なお成仏せずに普通の生活を続けるラストのイメージは、その無限地獄の体現にも映り、強烈でした。それらの「空気」を作る「役者」の力量を強く感じた芝居でもありました。話の都合で人が順に動くのではなく、各々の生活の集合で舞台が成り立っている感覚が強く、「あぁ、この人たち、みんな各々で生きているんだなぁ」と現実なら当たり前のことを、…非現実の舞台で強く実感できました。
それ故に、やはり結末があまりにも皮肉で切ない。いや、だからこそ、この結末が活きるのか。
「生と死」ばかりでなく、震災を引き合いにした「施設の契機と終焉」、すべからく輪廻と対照が際立つ作品でした。
個別には、「まるでタイムスリップでその場に入り込んでしまったかの様に始まり、進行する回想シーン」の演出、「パイプ椅子を老婆に見立てた下の世話のシーン」、舞台をぐるりと囲む落ち葉、生演奏の音響、…様々に強い印象を残してくれました。
アイデンティティ
南山大学演劇部「HI-SECO」企画
ナビロフト(愛知県)
2017/02/10 (金) ~ 2017/02/12 (日)公演終了
満足度★★★★
Bキャストで観劇。
愛、社会、性別、様々なカテゴリーにおける…タイトル通りの「アイデンティティ」を巡る苦悩と葛藤が全編に溢れる。
それらが、すごく理屈っぽく展開されていくところが好み。
如何にも人の成長過程にありがちな精神本位の恋愛観や、無自覚な自己愛に主人公が翻弄されるのは当然として、周りがしっかり洗練された落とし所を持っていて、適切に手を差し伸べて自己肯定感を育む過程はとても好感。それらを糧にラストに繋げていく展開も、主人公の成長物語としても見応えあった。
ネタバレBOX
特にラス前に直面する危機に元カノ・キョウコがフラッシュバックして主人公を導き、拙いが故に心に響く言葉を主人公が紡いでミツキの危機を押し留めるくだりが最高に高揚する名場面。あのシーンが現実か否かの含みがあったが、どっちでもいいなぁ。
カーテンコールに入っても尚、感極まって涙を抑え切れない光起さん&明石さんがとても印象的で、別のドラマも観せて貰った思いでした。
総じて他の役者さん達も良く、中村さん、奥谷さんの両男優や、瀧川さん、人見さん辺りの存在感が素敵でした。けど、やっぱり今回の肝は脚本だねぇ。LGBTへの世の関心は今、非常に高いから、そういう作品も多く目にするけど、敢えて少し昔を舞台に作りこみ、更に他のアイデンティティ絡みも取り込んで、一般的な人格形成プロセスに統合したのが意欲的。
いかものぐるい
オレンヂスタ
千種文化小劇場(愛知県)
2017/02/10 (金) ~ 2017/02/12 (日)公演終了
満足度★★★★
地域振興、痴呆、介護、ニート、創作芸能での生き辛さ、家族分裂、不倫、ストーカー…世の中のあらゆる問題を「ごった煮」にし、誘致活動、落語、アイドル、バンド、漫画等の様々な媒体を通して、そのまま舞台に投影。まさしく「如何物食い」状態でしたね。印象で繋がるモチーフを敢えて消化せずに、一鍋に放り込んで連鎖させるかのような感覚は、観客の脳内を触媒にして、各々に何らかの闇を想起させる感じがあります。
ネタバレBOX
充足されぬ、ジンワリとした抑圧の中、人々の様々な足掻きが全編に漂い、蠢く。その空気感を何よりも雄弁に語るのがメインキャストの周りを彷徨うコロス(アンサンブル・キャスト)の一団でした。
表を演じているメインキャストの"脳内"を表出させるが如き、暗黒舞踏さながらの動きと、象徴的な黒いテープ・ビニール布、更にそれを照らす照明が、もやもや~とした心の内を見事に映して、観る者の印象を支配していましたね…
軋轢が一点に集約して起きた悲劇…。とことんまで崩壊した後に残る「家族ゴッコ」が、現代が軽んじてきた形式の真意を暗示するかのようでもあり、理想と乖離していても尚、断ち切るべきでない繋がりの尊さを感じさせます。
敢えて解放のモチーフに凧を選んでいるところが意味深なんだねぇ…
壊れなければ気づけない、優しくもなれない… あまりにも切ないですね、人間ってヤツは。
【雑感】悩んだ末の正面下手席。文乃さんのマヨネーズ和えが死角でよく見えない代償に、ラストシーンのジワリとうつろう文乃さんの表情の芝居が間近でラッキー。席で目にするものが相当に違う演出も面白い趣向だけど、生演奏のいちろーさんも見切れた!
ポン輔。何ゆえ彼は、何もかも背負い込むことになったのか…
単なる引きこもりでは説明のつかない重荷と足枷が、説明されないからこそ醸造される深みと強固さをもって伝わってきました。こういう芝居をさせると今津さんはハマるなぁ。
悪食プリン。劇本2のニノさん作品は本作からのスピンオフだったんだね。客席上空の高~い位置での生演奏は迫力満点で贅沢だった。あと、永遠の17歳おナツさんのアイドル姿、もっと観たかったぁ。そういえば、ミソゲキでセーラー服だったよなぁ(笑)
大脇ぱんださん。ご本人は癒し系の微笑ましいキャラクターなのに、ごっつうシビアな狂気まとうオバさん役で、存在感ハンパなかった。女優なんだなぁ…と痛切に感じた。
うぇってぃさんの進撃の巨人スーツに大ウケ。もっと暴れて欲しかった。
いきばなし
F's Company
津あけぼの座(三重県)
2017/02/11 (土) ~ 2017/02/12 (日)公演終了
満足度★★★★
細胞整形という新技術の治験希望者面接に集う3人。面接を待つ控え室で繰り広げられる、一癖も二癖もある人物達の駆け引きに息が詰まる。筋の通ったことを言っている様でいて、誰一人、本当のことは言ってなさそうな、ひりつくような空気が堪らない。いきる為に我が身を変えたいエゴのぶつかり合いは、じわ~りじわ~りと激しさを増し、綺麗事の一切つけ入る隙のない、まさしく身を削る空間でした。
ミステリー感もたっぷりで、結末の見えない展開も遂には一つの落としどころに辿り着きますが、な~んか、この話は色んなマルチエンディングが作れそうな面白みがありましたね。
ネタバレBOX
最後の、地獄から響くような敗者の咆哮と、生き残ったはずの勝者の憔悴の吐息が、非常ぉ~に複雑な後味を作ってくれて、実質は誰も生き残りはしなかった… 「しにばなし」的な感触を残しましたが、このせめぎ合いが「生きる」という事なのかも… 役者の芝居のディテールに感嘆です。
わずか1時間が本当に濃密で、どっと疲労感が滲む充実した時間でした。
ルーミー・イン・ザ・異世界・ウィズ・ダイナマイツ
天然求心力アルファ
七ツ寺共同スタジオ(愛知県)
2017/02/03 (金) ~ 2017/02/05 (日)公演終了
満足度★★★
稀代のリアル中二病ドラマ(笑)
バカバカしさに渾身の力を込める作品作り…の態を装ってはいるが、話が結構 凝った展開になってたり、一転メタ芝居になったり、怪しげな見せ場もふんだんで、多彩な楽しみ満載。特に千秋楽は「羽目外し御免」で美味しい回でしたね~。ガツガツ、「脱線」を詰め込みまくって、バラエティ感を満喫。客入り・中休憩・客出し含めて3時間を優に超える七ツ寺滞在体験は初めてでした~。
ネタバレBOX
やっぱ、山場は「ガンバスターの音楽に乗ってせり上がってくる長沼さん登場シーン」ですが、この準備がまた秀逸。最初、何やっているのか全然理解できなかったけど、舞台でスンゴイ時間掛けて準備されたソレは、まるで古代ローマの奴隷労働さながら! コレだけでも観た甲斐があったw
カルデックの無駄にシンクロ感溢れる衣裳、ハイプの雛菊とかも面白かった~。
本番中にあんなに叱られてる人は初めてみたよ、高田さんw
アゲイン
長久手市劇団 座☆NAGAKUTE
長久手市文化の家 風のホール(愛知県)
2017/01/28 (土) ~ 2017/01/29 (日)公演終了
満足度★★★
想像以上にド派手で楽しめる展開。「かつてのヒーローが老いた姿」への役者さん達のハマリ具合が堪りません。そんな中で若さを取り戻す怪人二十面相に女性を登用したのは良かったなぁ。宝塚みたいな華々しさが添えられて良かったなぁ。
以降はネタバレboxへ
ネタバレBOX
そして、私ぐらいの年代にはド真ん中ストライクの選曲がされていて、少年探偵団BD7のテーマやドリフ・コントのどたばた撤収時の曲とか、効果音含めて「音」に心揺さぶられる部分が大きい。色々忘れていても、音には反応するもんなんだなぁ。「さぁがせ(探せ)、追えっ、謎をとけっ♪」に湧き上がる高揚感が抑えられない。70年代テーマ、素晴らしい。
シリアスな部分でも「大人になれば、無傷じゃいられない」とかのセリフは刺さるわ。それでいて、そこが全肯定にならない厳しさも好き。幼い頃の「理想」と、歳を経てからの「現実」との対峙は、不思議に、その直前にひとひらり公演で観た星の王子様ベースの「たとえば明日の世界から」にも通じるところがあって、この日はそういう話に縁があるなぁと感じる一日でした。