胎内 公演情報 刈馬演劇設計社「胎内」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    刈馬作品をここ3年観続け、当初は緻密な戯曲に痺れていましたが、前作「猫がいない」の演出がかなり秀でていたので、演出専念・2種演出という好機にかなり期待していました。そして、期待を裏切りませんでした。

    話の筋としては、極限状況の恐怖の中で、反芻される人間の思考が激しくぶつかり合い、自己正当化、責任転嫁、駆け引きとを繰り返しながら、いつしか懺悔や退行や自己肯定などに陥っていき、徐々に壊れていく過程がつぶさに描かれる感じ。

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    (続き)
    それをカルマ・ストレートでは、奇をてらうことなく、役者3名の表現力に全てを注ぎ込んだ感じで、まさしくストレート真っ向勝負でグイグイ押してくる。3名ともが「見えないものを見せてくる」迫力は圧巻。
    今津さんは、喉の掠れ声からして凄い存在感。それが佐山の置かれた過去・現在を体現するようで、全身全霊を注ぎ込んでいる印象がすごく伝わってきます。
    岡本さんは、導入部で何かいつもと違う声色で入るのが印象的で、その後、延々と連なる生々しさが半端なかったです。初めて芝居を拝見した頃の影響で、すごく無感情のドール的な印象が個人的には根強かったのですが、遥か昔の話になりましたね。俳優A賞女優やし。
    いちぢくさんには、もう何も言えないっていうか、やはり見えないものを見せる感は一番強力で、もがき、のたうちまわる様は圧巻という他はありません。

    全般で一番好きなのは、佐山と村子が互いの想い人の幻影を…互いに投影して、二重に妄想の芝居を重ねるシーン…心の内面を吐露しながらも、根本的に食い違わざるを得ない切なさを見せながら、何か共通する要素が漂って、二乗で利いてきました。

    さて、一方のカオス・ハイミックス。
    アンサンブル・キャスト…すなわちコロスですかね、それを使うということで、…先述の「見えないもの」を視覚的に表現するのを予想していましたが、それだけに留まりませんでした。

    「メインキャストの代弁」にまで及ぶ演技演出は、解釈の拡がりを感じさせてくれる…。個人の内面の吐露のみならず、「世の中の苦悩の代弁」にも見えました。本戯曲が戦後の苦悩を表わした社会派の作品にも見えることから、この表現は秀でてアリですよね。まるで怨霊の様なメイクと所作が、戦争で積み重ねられた闇を良く感じさせてくれる。
    そういえば、音響も戦争を強く意識させる効果が追加されていたような気がします。総じて、ストレートが「人の闇と業」にフォーカスしたのに対し、ハイミックスには「暗澹たる世情」を見た気がしますね。

    役者的には、
    にへいさんの暗黒面の芝居は…少なくともよこしまブロッコリーでは絶対観れない気がして、すっごい貴重な機会でした。
    元山さんは、やっぱり(?)こういう役どころにはピッタリの空気を醸し出してきますよね。

    中村さんは、狂人めいた芝居が似合いそうな方で、佐山もハマりますが、もっと歳を取ったら花岡の方がよりイケるような予感を感じつつ観てました。

    最後に共通の演出ですが、エンディングで使われる某歌が、すっごいインパクトありましたよね。
    終演の空気との対照さが、切なさと皮肉感をいや増して、なんとも凄い後味となりました。

    あ~、それにつけても、2演出という本企画はホント至福でしたね~。

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    2018/01/04 16:42

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