ぱんだの観てきた!クチコミ一覧

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ミュージカル「ラブ・ネバー・ダイ」

ミュージカル「ラブ・ネバー・ダイ」

TBS

日生劇場(東京都)

2014/03/12 (水) ~ 2014/04/27 (日)公演終了

満足度★★★★★

■壮麗な舞台と歌唱
 舞台美術が壮大で、大道具の動きが圧巻であった。出演者の歌唱力も完璧であり、藝術的な価値の高さに圧倒された。

 最後の場面が、あまりにも悲しいものだったが、カーテンコールの役者たちのあいさつの動きが加わることで、独特な余韻が生じ、よい方向へと向かう希望のきざしが感じられてよかった。

常夜ノ國ノ★アリス

常夜ノ國ノ★アリス

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王子小劇場(東京都)

2014/05/02 (金) ~ 2014/05/06 (火)公演終了

満足度★★★★★

■迫力あるエンターテイメント!
役者たちの気合いのいれかたは、爽快感を生みだすようだった。脚本と演出はテンポがよく、キャスティングも役者ひとりひとりのよさを最大限に引き出していた。

藝術性のある舞台美術や衣装が印象に残った。かなり凝った手作りの機械じかけの舞台装置に感銘を受けた。

ほんとうに素晴らしいデザインの舞台作品で、独特な雰囲気と色彩感覚が秀逸だった。

月面歩行

月面歩行

上智大学劇団リトルスクエア

上智大学一号館講堂(東京都)

2014/03/29 (土) ~ 2014/03/31 (月)公演終了

満足度★★★★★

■ちょっと。
■ちょっと、首をかしげた。わからない。見終わってから、きょとんとした。不可思議な感触だけが、たしかに残る。いったいなんなのだろうか。

 人間の本音がぶつかりあう。しかし、結局のところ、本人にも、わからないまま。いろいろと考えさせられる。しかし、結局、わからない、観客も。

 人間は、ちょっと愛情をもち、ちょっといじわるで、ちょっとどうしようもなくて、ちょっと死にたくはない。――そういう現実を最小限度の道具立てで、延々と見せる。思想劇なのではあるが、怒号の応報が入り込んでいたりして体当たりの群像劇でもある。

 手だけの演技をして姿をあらわさない役者の謎。最も動かない状況のなかで、死を超えて生きつづける人間の真実を最後にアピールしているようで、衝撃的であった!

 橋本七瀬の軽妙かつ重厚な演技の転換の連続に、観客の心は右往左往させられる。二日一達哉の慟哭は心の奥底からの叫びとして会場全体を切り裂く凶器でもあった。小山さくらの演技は、実際にありそうな状況をリアルに表現していて、その迫力は見事きわまりなかった。最後まで姿をあらわさず、キャスト表にも名前がない「謎の登場人物」の名演技としての死体役は感動的であった。あのような演技もあるのか、と心の底からの快哉がこみあげた!

人皮の本と舞い天狗

人皮の本と舞い天狗

劇団回転磁石

シアターシャイン(東京都)

2014/03/28 (金) ~ 2014/03/30 (日)公演終了

満足度★★★★★

■ユニークかつシニカルかつディーセント!!
■役者さんたちのコミカルな動きが、それぞれの人間性のかけがえのなさを表現しているようで、まさに人間模様を見事に魅せる舞台だった。ユニークである。

役者さんたちも脚本家も社会の暗部から決して目をそらさない。いまの日本社会のなかにはびこる差別意識をコミカルに描きながらも、観客にもやんわりと問いかけを突き付ける。しかし、相手おもいのまっすぐさが演劇全体をつつんでいるので、親身さが伝わり、観客はおのずと自己反省できる。

深い慈愛がみなぎる。こまやかな想いが美しく描かれていて、感動をさそう。『たねまき』役の榊林乃愛の演技は純粋で細やかで力強い生命力を表現していた。『天狗』の河合しおりは気丈に振る舞いながらも、時折、心ぼそさを表現しており、感情の揺れ幅の大きさが役柄を魅力的にみせていて美しい。『静』役の山本あんなは、すなおさと快活さを自在に表現しており、前向きに生きる人間性を見事にみせていて可憐なイメージを余韻として残した。『女児』は、むくな人間性を明るく描きながらも、自分を見失う庶民のあわれさを丁寧にみせていて、たしかな演技力を披露していた。

『頼朝』役の酒寄拓は豪快さと気弱さをうまく使い分けながらも、策士かつ弟おもいの無邪気かつ矛盾した人間性の狂気をみせていて、感心させられた。『兄』役の古俣晨は、金儲けの亡者を怪演し、人間の鬼気迫る本音を体当たりでみせていて、爽快だった。『二次元』役の加藤淳也の明るさと、悩みの深さの移り変わる気持ちの描写は見事である。『部下』役の白幡貴一の走り回りかたは徹底しており、部下らしさを見事に表現していた。『部下』のチョンごうきの豪快さと存在感は圧倒的で、演劇全体を支えていた。

主役の『牛若丸』の折原啓太の立ち回りの力強い生命力と、想いがこもったセリフ回しと観客への配慮は礼儀正しく武人の潔さを感じさせた。仲間を大切にいたわる演技が気高く、かっこよい。

美術はていねいで細部までこだわり、照明も役者をうまく目立たせ、見事である。炎が燃え盛る様子を見事にみせていて感心させられた。本の飛び交う映像もよかった。音楽も観客の気持ちを盛り上げていて、よい選曲だった。衣装はおしゃれで近未来的かつ平安的で、いつの時代の人間にも共通する問題点をうまく説明していた。

HIDEYOSHI

HIDEYOSHI

はっぴぃはっぴぃどりーみんぐ

ワーサルシアター(東京都)

2014/03/25 (火) ~ 2014/03/30 (日)公演終了

満足度★★★★★

■変幻自在なる時空間を駆け巡る疾走感と人情
■現在と過去と未来が交錯しながら「今」を真摯に生きる人間の可能性を示してくれる物語の展開が興味深い。

 それぞれの役者の素質を活かす絶妙なキャスティングも成功している。役者たちは、それぞれの技量を活かしながらも、常に相手の動きを理解してチームとして見事に立ち回る。殺陣の疾走感と男性役者たちの人情味あふれるふるまいが爽快でかっこよい。女性役者たちの芯のつよさと洗練されたたたずまいも見事で、かっこよい。

 音楽も美術も小道具も照明もバランスがよく、全体の流れがうまく統一されていた。今回の演劇作品は、総合的に見事な構成によって大成功している。あらゆる要素を美しく整えてまとめあげるという意味で、すぐれた脚本の力によるところが大きい。 板張りの背景は最小限度の装飾だけで、結局は役者ひとりひとりの演技力が観客の想像力をかきたてていることで無限の世界が広がるように工夫されている。

 観客の気持ちをあたためて幕が閉じる。人間の可能性を信じることのよろこびを実感させる舞台である。役者さんそれぞれの「いちずさ」が魅力的であった。うらおもてがまったくない、まっすぐな人間性が、この劇団の特長なのだとおもう。今後も期待している!

グロテスク

グロテスク

楼蘭

東演パラータ(東京都)

2014/03/19 (水) ~ 2014/03/24 (月)公演終了

満足度★★★★★

■立体的な演劇。
 客席と舞台の両方を縦横無尽に行きつ戻りつする役者たちの動きが演劇場の屋内を全部使い切っての立体的な工夫を見せていて、圧倒される。

 観に行って、ほんとうによかった。そして、終演してしまったということが、あまりにもさびしい。また再演がればよいのに、と心から望んでいる!

 役者の演技は的確で無駄がなくダイナミックで、音楽のメロディーも美しく、衣装の色彩やデザインも細部までこだわっていて、総合藝術としての可能性を開拓していて、見事だった。

 ほんとうに良質な舞台藝術づくりをされたすべての関係者に心から拍手を贈りたい。

 

グロテスク

グロテスク

楼蘭

東演パラータ(東京都)

2014/03/19 (水) ~ 2014/03/24 (月)公演終了

満足度★★★★★

■異形の者たちの慟哭の凄まじさ。
 役者たちの鬼気迫る演技と流麗なる舞に痛切なる歌声がひびきあい、さらには怒号とうめきが交錯しつつ舞台は血に染まる。

 あまりにも醜くも美しい歴史的世界を垣間見させた演出の秀逸さ。

 最初から最後まで、ガーゴイルたちの美しさに目を奪われっぱなしだったた。両手の猛獣的しぐさだけで、ゴーガイルの醜悪さを表現している美しき役者たちのキュートさ、というギャップが滑稽でありながらも切ない。「ゴーガイル1」の片山歩美の石像としての静止の演技が藝術的で、「ゴーガイル2」の金子彩奈の一途な思いに満ちた切なさの演技が観客の心を強くゆさぶる。両人とも優雅でバレエ的な舞と会話劇のテンポの良さを笑顔でこなしていて自然体の姿が役者としての質の高さを証明していた。

 「司教」役の松田大知の服装がみすぼらしく、司教らしくなかった(歴史的にはありえない地味さで、その点は時代考証的にミスとも見えなくもないが)。それは、もしかして「意図的な演出」なのだろうか。必要以上に厳格なる司教の高潔さと貧相さをデフォルメしたというならば納得がいくのだから・・・。不機嫌さと傲岸さを格好よく演じているからこそ高潔さが前面に出てくるのかもしれない。スタイリッシュでありながらも、心の葛藤や貧弱さをも時折みせてくれていて、なかなか高度な演技力であった。ピアノを弾きながら歌う場面も粋な演出で、とてもよかった。

 「白痴の子」役の樋口仁美の見事な演技。圧倒的で。よく研究して演じているとおもう。最初から最後まで一貫して、そのものになりきっていて、驚嘆させられた。いとおしい人間の可憐さと純真無垢さが際立っていた。死んで横たわったままの場面の微動だにしない演技も優れており、しかも最後の場面の歌のうまさにも圧倒された。
  
 「花守」役の上埜すみれの洗練された気品と絶望感が居丈高でもあり、かよわくもあり、相手をかばう強さと同時に泣き崩れる罪深さという二つの方向性の絶妙な落差を自在に行きつ戻りつしているグラデーションの工夫が優れていた。すっと立っている姿、そして無駄のない動きが役者としての誠意として凛とした美しさを表現していた。

 「鐘撞き男」の大畠奈菜子の声色が哀愁とボケを同時に醸し出すという意味で、茫洋とした雰囲気の奥底に潜む不気味さをうまく表現していて、おまけに演技も「のたうちまわる痛さ」を観客に味わわせるような見事さだった。醜くも聖なる人間の苦悩を体当たりで演じており、たましいのふるえを痛切に訴えている姿が印象に残った。

 「少年修道士1」の石黒徳子の勇猛果敢さと「少年修道士2」の島貫実梨の秘められた情熱が交錯する様子が「あふれだす感情のうず」を的確に表現していた。身体の限界と闘いながらも、生きようとして愛する相手に積極的に向き合っている姿が「人間のいのちの輝き」を示しているようで、よい演技だと感嘆させられた。

 「エスメラルダ」の鈴木千慧の思いやり深さと狡猾さのブレンドされたような重厚かつ軽妙な動作が嵐のようで、華やかでありつつも寂寥感を垣間見せており、会場全体を疾走する体当たりの演技は立体的で、最強でありながらも、決して勝手な独走をするわけではなく、きちんと全体の流れに沿っていて、実力の凄さを感じさせる。

 「山羊」の大竹太郎のコミカルで勇ましい演技は絶えず流れゆく河のように移り気で、それでいて一本木のけなげさを巧みに表現していて、なかなか工夫した演技だと感心させられた。

 「猫」の冨士枝鈴花の軽快で、お祭りを盛り上げる「けしかけるかのような動作」が敏捷で、狩りをする動物の獰猛さを連想させるような面白さが漂う。

 照明も音響も美術も、まさにフランス的な世界観を丁寧に追究しつつも簡素な演出をとおして素朴に表現しており、役者たちの演技を引き立たせる適度な舞台空間を創り出していた。

 今後も期待している!!!

9days Queen ~九日間の女王~

9days Queen ~九日間の女王~

TBS

赤坂ACTシアター(東京都)

2014/02/26 (水) ~ 2014/03/16 (日)公演終了

満足度★★★★★

■あざやかな人物描写と奥行きのある雰囲気
 イギリス史において最も変動の激しい時代の個性的なそれぞれの王位継承者たちの思惑と駆け引き。あざやかな人物描写と奥行きのある雰囲気が印象的であった。

 ものがなしい結末なのではあるが、余韻が残り、ジェーン・グレイの気高さや意志の強さが決して滅びることなく受け継がれていくことが示唆されていた。単なる現実の記録的出来事をたどるにとどまらず、むしろ人間の生き方の高貴さを観客に実感させ、思索させるような独特な深みが魅力的であった。

もっと泣いてよフラッパー

もっと泣いてよフラッパー

Bunkamura

Bunkamuraシアターコクーン(東京都)

2014/02/08 (土) ~ 2014/03/02 (日)公演終了

満足度★★★★★

■活気と哀愁。
 1920年代のアメリカ合衆国のシカゴの街の雰囲気が伝わる演劇であった。挫折して死にゆく男性たち。つかのまの夢を見ながらも、現実の荒波をたくましく生き抜く女性たち。そういう人間たちの活気と哀愁を描きだしていた。役者たちの「かけひき」に満ちた巧みな演技や賑やかなジャズ音楽などの生演奏の組み合わせが見事であった。

 合計すると3時間20分ほどの長丁場の演劇であった。90分の大学の講義を2コマ聴かされたときのような疲労感が残った。おそらくは、制作者側としては観客へのサービス精神旺盛をモットーとして頑張ったのであろうけれども、少し「過ぎたるは及ばざるが如し」の感があったことは否めない。

あうろらの君

あうろらの君

ヅカ★ガール

秋葉原アトリエ「ACT&B」(東京都)

2014/02/20 (木) ~ 2014/02/23 (日)公演終了

満足度★★★★★

■多様な可能性を秘めた名作。
 この演劇作品は、多様な可能性を秘めた名作である。話の筋、リズム、役者の所作と台詞の述べ方と表情、音響、視覚藝術、照明効果、観客の心の奥底に広がる心象風景――どの要素を鑑みても見事な均整がとれていて美しい。それらの様々な要素を分析しながら眺めていても興味深いし、あるいは作品そのものを漠然とありのままに受け容れて余韻にひたっていても味わい深い。

 この作品を創りあげたひとりひとりの関係者たちに心から拍手と感謝の気持ちを捧げたい。心の残る素晴らしき作品を、ほんとうにどうもありがとう。そして、今後も楽しみにしている。

あうろらの君

あうろらの君

ヅカ★ガール

秋葉原アトリエ「ACT&B」(東京都)

2014/02/20 (木) ~ 2014/02/23 (日)公演終了

満足度★★★★★

■「想い」が響き合い、伝えられていくことの感動
 世代を超えて、住む世界を超えて、動植物の生物的な相違を超えて、とにかく「想い」は響き合い、伝えられていく。そういう稀有なメッセージを舞台空間という「スノードーム」に収めて魅せた創作演劇。

 スノードームは、閉じられた空間であるし、単純な素材しか中には入っていないが、外から眺める者を決して飽きさせない。そとからゆさぶると、無限の動きが生じてくるからである。多様な変化が、めまぐるしく起こりつづけるという面白さや躍動感がある。

 異なる世界を「ひとつの舞台」で描き出すには、観客の心の動きを想像力豊かに導く必要がある。その必要性を満たしているの点が今回の作品の凄さである。言わば「見立て」の巧みな活用である。落語などの際に、巧い落語家が閉じた扇子を用いて箸がわりに動かすと、ほんとうに御飯を食べているかのように見えてしまう。「扇子」という最小限の道具ひとつで様々な場面を多様なかたちで展開していく技術は役者と観客の双方のプロ意識によって洗練されていく(よい作品は役者と観客の認識の仕方の洗練によって生まれていく;目利きとして洞察力を鍛え上げることが重要になる)。

 様々な登場人物の死が描かれる。しかし、彼女たちは決して滅びたわけではない。むしろ、大切な相手を活かそうとして愛情表現を究めることで穏やかな空気のように周囲全体をつつむ生き方へと昇華していく。本作は、まさに、雪が、ほのかな暖かさを残して溶けていくときのものがなしさを見事に舞台化した名作と言えよう。

あうろらの君

あうろらの君

ヅカ★ガール

秋葉原アトリエ「ACT&B」(東京都)

2014/02/20 (木) ~ 2014/02/23 (日)公演終了

満足度★★★★★

■まるで「雪の結晶」のように美しき作品。
 はじまりからして驚かされた。[敬称略で書く]あらかじめ配役表を見ないで、いきなり舞台を観ていた。すると、いつもは勢いのある役柄や穏やかな支え役を見事にこなす佐野綾が「老婆」役で登場した。その声色や振る舞いが、まさに老婆そのもので、「こういう役柄も、たやすくこなせてしまう役者だったのか」と。

 そして、追い打ちをかけるかのように、照明ライトの数々が舞台の上を照らしはじめると、雪の世界が一挙に立ち現れた。その巧みな舞台藝術にも度肝を抜かれた。冷え冷えとして美しい銀世界。巨大な椅子の他は何も置かれていないにもかかわらず、カーテンと床だけで氷点下の世界を一瞬にして浮かび上がらせたのだから脱帽ものである。しかも、その空間は、そのまま茶の間に早変わりしたりする。

 6人の役者たちが何回か舞台上に静止する場面があるのだが、その場面も左右対称に綺麗に立つわけで、その振る舞いそのものが美しく、さまになっていて、役者たちの息がぴったりで、構成的に素晴らしいと、観ていて思わず、うなりました。こうやって考えていくと、作者・演出の飯塚未生の才能の高さが明らかとなる。美しい雪の結晶のような作品を生み出す才能には、感心させられる。今後も期待している。

 「雪の女王」役の上埜すみれの威厳と慈愛の点滅するかのような転換の演技や繊細な感情表現さらには存在感が圧倒的で、堂々としていたのも印象に残っている。「ウツギトワコ」役もこなしており、普通の庶民の感覚を普通に演じており、人情の機微の巧みな表現も奥深かった。しかも、役者仲間や観客に感謝しながら一生懸命演技している様子が伝わってくるので、皆をまきこんで勇気づけてしまうという稀有な才能の持ちぬしなのだろう。

 「ザラメ」役のことうじゅんの役柄は、これまでのヅカ★ガールの諸作品の系譜と連続するかのような凛々しさと勇ましさを再び体現していたのだが、演技表現上の自己コントロールの「抑え」の効かしかたが緻密であり、知性的で、純粋さが増していたので、冷え冷えとした雪の世界の近衛隊長としてのキャラクターの面白さ(一本気な忠誠心と真剣な必死さが可笑しみを呼び覚ます)を最大限に表現していた。ダンスも洗練されていて、無駄のない動きの連続であり、素晴らしい。

 「アラレ」役と「少女」役を披露した木村海香の演技は初めて観たが、無機質な雪の世界の住人の動きと同時に妖精的な可憐さをも見事に演じきっていて、つまり矛盾する要素をいともたやすく一身に表現できてしまうという離れわざには驚嘆させられた。軽快なふりつけの舞踊や歌のユニークさも印象に残った。

 「山賊」役と「モリ先生」役の寿里のダイナミックな動きと控えめな動きの揺れ幅の大きさが主役級の活躍ぶりを見せていて、考えさせられた。まるっきり表情や振る舞いが変化していながらも、本人の天性の格好よさをも垣間見せる演技となっており、まるで三つ役をこなしているかのようで、見ごたえがあった。役者としての演技の多様さをとおして一貫した個性をも見せる高度な技術には心から拍手を送りたい。

 「ブチイヌ」・「警官」・「男」を演じた岡村惇裕の表現力の幅は格段に広がりつつも、一貫して他の役者たちを丁寧に見守りながら支える思慮深さに満ちていた。それゆえに、その「男気」というか「頼もしさ」には感銘をおぼえた。相手を支えて、自分は目立たないように謙虚に振る舞いながらも確固とした実力を備えてきた新境地の役者として今後が楽しみである。ドイツ文学や思想にも造詣が深く、作劇や演出や監督もこなす創造性豊かな岡村の活躍に大いに期待している。

 ほんとうに素晴らしい作品に感謝している。

BINGO

BINGO

Rising Tiptoe

ザ・スズナリ(東京都)

2013/10/29 (火) ~ 2013/11/03 (日)公演終了

満足度★★★★★

■端正な総合藝術!
 チーム「ステア」の公演を観てきました。流麗なるせりふがテンポよくリズミカルに響き渡りました。役者さんひとりひとりのまっすぐなまなざしと自然体のやわらかなふるまいが綺麗でした。舞台美術・音楽・照明が色彩豊かに、さりげなく調和していて、明るく安心感のある空間を創り出していましたが、脚本はシリアスな内容で、その真逆な要素の響きあう世界観の構築を軽々と成し遂げた作者の力量と役者さんたちの演技力に感銘を受けました。

ラフレシア

ラフレシア

白昼夢

明石スタジオ(東京都)

2013/10/16 (水) ~ 2013/10/20 (日)公演終了

満足度★★★★★

■初めての感触。
 午後2:00から4:00まで連続二時間の群像劇。それぞれの登場人物の性質が丁寧に描かれていて、どの役者も主役級の丹精込めた演技を心掛けているようだった。脚本や演出がすぐれているからだろうか、それぞれの役者の持ち味が活き活きと表現されていて、名作だとおもった!

 「救いようのない世界における救い」という壮大な主題が作品の根底に潜んでいるのではないだろうか、と観ていて考えさせられた。どうにもできない囚われの状況で、それでも「相手を大切に想い、支えようと志す人間がいる」ということが、実は救いなのではないだろうか。どんなに状況が最悪であっても、人間は相手を支えつづける意志を保ちつづけることができる。それこそが「ただひとつの希望」なのである。――そういうメッセージを、少なくとも評者は受け取ることができた。感謝している。

 ひとりひとりの役者の真剣なまなざしと演技に圧倒された。これほどに直球勝負で演技に打ち込む青年たちが確かに居るという事実が、あまりにも感動的で、泣けてきた。この舞台作品にたずさわった役者をはじてとして舞台道具・照明・宣伝・運営を誠実にこなしている方々に尊敬の念をいだいた次第である。今後も期待している!

イカルスの星

イカルスの星

ヅカ★ガール

小劇場 楽園(東京都)

2013/05/31 (金) ~ 2013/06/22 (土)公演終了

満足度★★★★★

■チームの熱意に感動!
 2013年6月2日(日)、6月19日(水)、6月22日(土)。つまり三回観た。独特な世界観の構築と工夫に驚嘆させられた。毎回、進化しつづけていく演劇の境地に、わくわくさせられた。今後も期待している。

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