グロテスク 公演情報 楼蘭「グロテスク」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    ■異形の者たちの慟哭の凄まじさ。
     役者たちの鬼気迫る演技と流麗なる舞に痛切なる歌声がひびきあい、さらには怒号とうめきが交錯しつつ舞台は血に染まる。

     あまりにも醜くも美しい歴史的世界を垣間見させた演出の秀逸さ。

     最初から最後まで、ガーゴイルたちの美しさに目を奪われっぱなしだったた。両手の猛獣的しぐさだけで、ゴーガイルの醜悪さを表現している美しき役者たちのキュートさ、というギャップが滑稽でありながらも切ない。「ゴーガイル1」の片山歩美の石像としての静止の演技が藝術的で、「ゴーガイル2」の金子彩奈の一途な思いに満ちた切なさの演技が観客の心を強くゆさぶる。両人とも優雅でバレエ的な舞と会話劇のテンポの良さを笑顔でこなしていて自然体の姿が役者としての質の高さを証明していた。

     「司教」役の松田大知の服装がみすぼらしく、司教らしくなかった(歴史的にはありえない地味さで、その点は時代考証的にミスとも見えなくもないが)。それは、もしかして「意図的な演出」なのだろうか。必要以上に厳格なる司教の高潔さと貧相さをデフォルメしたというならば納得がいくのだから・・・。不機嫌さと傲岸さを格好よく演じているからこそ高潔さが前面に出てくるのかもしれない。スタイリッシュでありながらも、心の葛藤や貧弱さをも時折みせてくれていて、なかなか高度な演技力であった。ピアノを弾きながら歌う場面も粋な演出で、とてもよかった。

     「白痴の子」役の樋口仁美の見事な演技。圧倒的で。よく研究して演じているとおもう。最初から最後まで一貫して、そのものになりきっていて、驚嘆させられた。いとおしい人間の可憐さと純真無垢さが際立っていた。死んで横たわったままの場面の微動だにしない演技も優れており、しかも最後の場面の歌のうまさにも圧倒された。
      
     「花守」役の上埜すみれの洗練された気品と絶望感が居丈高でもあり、かよわくもあり、相手をかばう強さと同時に泣き崩れる罪深さという二つの方向性の絶妙な落差を自在に行きつ戻りつしているグラデーションの工夫が優れていた。すっと立っている姿、そして無駄のない動きが役者としての誠意として凛とした美しさを表現していた。

     「鐘撞き男」の大畠奈菜子の声色が哀愁とボケを同時に醸し出すという意味で、茫洋とした雰囲気の奥底に潜む不気味さをうまく表現していて、おまけに演技も「のたうちまわる痛さ」を観客に味わわせるような見事さだった。醜くも聖なる人間の苦悩を体当たりで演じており、たましいのふるえを痛切に訴えている姿が印象に残った。

     「少年修道士1」の石黒徳子の勇猛果敢さと「少年修道士2」の島貫実梨の秘められた情熱が交錯する様子が「あふれだす感情のうず」を的確に表現していた。身体の限界と闘いながらも、生きようとして愛する相手に積極的に向き合っている姿が「人間のいのちの輝き」を示しているようで、よい演技だと感嘆させられた。

     「エスメラルダ」の鈴木千慧の思いやり深さと狡猾さのブレンドされたような重厚かつ軽妙な動作が嵐のようで、華やかでありつつも寂寥感を垣間見せており、会場全体を疾走する体当たりの演技は立体的で、最強でありながらも、決して勝手な独走をするわけではなく、きちんと全体の流れに沿っていて、実力の凄さを感じさせる。

     「山羊」の大竹太郎のコミカルで勇ましい演技は絶えず流れゆく河のように移り気で、それでいて一本木のけなげさを巧みに表現していて、なかなか工夫した演技だと感心させられた。

     「猫」の冨士枝鈴花の軽快で、お祭りを盛り上げる「けしかけるかのような動作」が敏捷で、狩りをする動物の獰猛さを連想させるような面白さが漂う。

     照明も音響も美術も、まさにフランス的な世界観を丁寧に追究しつつも簡素な演出をとおして素朴に表現しており、役者たちの演技を引き立たせる適度な舞台空間を創り出していた。

     今後も期待している!!!

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    2014/03/23 23:58

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